あけましておめでとうございます。
今年の抱負は「誤字脱字を無くす」です。
去年の抱負も同じだったので、来年の抱負も同じにならないように頑張ります。
背後から誰かが走っている足音が聞こえる。
振り返ると、そこに居たのは見覚えのある三人が居た。
「この暗いモヤみたいなのは何だ?」
「ソリッドヴィジョンではあろうが……分からん」
「……っ、あの人は!」
この声は……
「先生!? 良かった、無事で……!」
「あの時、気絶したまま柚子と共に次元ホールに巻き込まれたので心配していたが……無事で何よりだ」
「貧弱な身体だから余計不安だったが、まあ良かったぜ」
遊矢、権現坂、沢渡。
その三人が私を見て安心した様子で近付いて来た。
だけど、私がデュエルディスクを構えているのを見て……自然と対戦相手へと視線が向いて行く。
「あいつは誰だ?」
「まさか、アカデミアかっ!」
「いいや」
私は静かに首を振った。
……今はデュエルに集中しよう。
「先生、今にも倒れそうじゃないか! そんな身体でデュエルするのは無理だ!」
「そうだそうだ、この沢渡シンゴ様に代われ! 相手が誰だか知らないが、コテンパンにしてやんよ!」
「俺も二人と同じ気持ちだ。それ以上無理せず代わって欲しい」
そんなに私はボロボロに見えるのだろうか。
確かに視界もチカチカしてるし、立っているだけで身体の節々が悲鳴をあげている。
手足の先は氷のように冷たくなっていた。
最早感覚がある部位の方が少ないかもしれない。
だけど、それがどうした。
「あのね。出来ない、無理って言うのは嘘吐きの言葉なの」
「先生……?」
「もうその名で呼ばないで。私にはきっと……相応しくないだろうから」
私はカイトに向き直った。
彼については詳しく知らないけど……
あの雰囲気で逃げ出せるような相手には見えない。
そんな生温い世界で生きてきたわけないだろうし。
「先生……? なんか、雰囲気がいつもと違——」
耳がキーンとする。
流石にカードの発動宣言を聞き逃すのは不味い。
私は一言足りとも聞き逃さないように集中する。
「……仲間が居たようだな」
「そうだね。私も知らなかった。卑怯だって思う?」
「別に構わん。俺のやる事は変わらんからな」
誰に対しても等しく向けられる敵意。
彼のそれを感じてピリピリと肌が痛む感覚がした。
もう既に寒さも暑さも感じない筈なのに。
……我ながら呆れてしまう。
何に対しても無気力な私だけど、唯一デュエルの中だけなら幾らでも気力が溢れてくる。
全く……何処から湧いて来るかも分からない。
でも、それが私の行く道を照らす道標になるかもしれない。
しかし、カイトは違うだろう。
彼の詳しい事情は知らない。
推測するに、黒咲と似た経歴ではあるのだろう。
……デュエルする前から疑問に思っていた事が、ふと口に出た。
「何故ここまで抵抗する、何故諦めない……?」
「そんな事、考えた事もない。俺に残されたのはただ一つ。アカデミアへの怒りと復讐心だけだ!」
分からない……、
いや、正確に言うと少し違う。
理解はできるが、納得はできない。
どんなに怒ろうが悲しもうが、いずれは虚無へ消える感情だろうに。
「同情はするけれど……同感はしないね」
「そんなもの、最初から求めてなどいない」
「そう……」
もし私にも……そんな生き方が選べたら。
いや、それは無理な話だ。
私と彼とでは立場も事情も違うから。
選ぼうともしなかった私が今更何を言おうが……負け犬の遠吠えと変わらない。
ならせめてこのデュエルには勝ってみようか。
どうせ、私にはそれくらいしか能がないのだから。
「……俺は『
光波双顎機 ATK 1600
「光波双顎機の効果発動! 手札の『
光波双顎機 ATK 1600
……強いな。
引きが強い。
間違いなく、この世界において彼は強者に分類されている。
しかも、捨てたカードはそいつか。
「さらに墓地に行った光波異邦臣の効果発動! デッキからサイファーと名のつく魔法・罠カードを手札に加える。俺が手札に加えるのは、『
「RUM……!」
「やはり、あいつもエクシーズモンスターを使うのか!」
……あれは速攻魔法。
もし私の伏せが奈落や強脱だったら躱されてしまうところだった。
だが、断言しても良い。
決して障害にはなり得ない。
「サイファーモンスターが召喚・特殊召喚に成功した瞬間、手札の
光波複葉機 ATK 1000
……どうやら私の伏せカードを警戒してるみたい。
さっきシャドウディストピアの効果を使われたから、当たり前と言えば当たり前か。
すぐに対策を思い付くとは中々柔軟な思考をしている。
素材のモンスターを除去されてもカバーできるように展開してきた。
仮に私が伏せカードを使ってきても、確実にエクシーズ召喚はされてしまうってわけだ。
……うん、私がどう足掻いてもエクシーズ召喚自体は阻止できないか。
「更に永続魔法『
「レベルが4から8に……来るのか!?」
「俺はレベル8となった2体の光波双顎機でオーバーレイ!」
……来る。
「闇に輝く銀河よ。復讐の鬼神に宿りて我がしもべとなれ! エクシーズ召喚! 降臨せよ! ランク8! 『
銀河眼の光波竜 ATK 3000
光り輝く竜が顕現する。
怒りに満ちたその眼を見て私は思う。
飽くなき怒りはただ、虚しいだけだと。
昔からずっとそうだった。
私は自分や他人の感情に無頓着だった。
何も感じる事はない。
喜怒哀楽は全て一時だけで、いずれは消える感情だから。
「貴方が今考えている事を当ててあげる」
「何?」
私はまずフィールド魔法を指差した。
「貴方はシャドウディストピアは自分のフィールドのモンスターをリリースして発動する場合、1ターンに1度だけ相手のモンスターを代わりにリリースできる。この効果は直接破壊でもしない限り躱しようがない、と」
実際、サイクロンとかが引けないのなら防ぎようのない除去を毎ターン受ける事になる。
これをどうにかするには除去を受けた上で立ち回る必要がある。
例えば、除去されたエースモンスターを蘇生するとかね。
「相手にコストを押し付ける効果だと……? インチキだろそれ!」
「先生とは言え……俺にはあまり愉快な効果ではないな」
「……先生」
「手っ取り早くこのカードを破壊するカードがないならどうすれば良いのか……考えた結果、貴方はその伏せカードを温存した」
私はカイトの伏せカードを指差してそう言った。
彼の表情は変わらない……が。
私の勘は当たっていると、何となく分かる。
「それは墓地のモンスターを復活させるカード。そうだね……具体名を挙げるなら、『リビングデッドの呼び声』か『戦線復帰』かな?」
「……っ」
微かに表情が揺らいだ。
これは当たりだね。
「貴方の狙いはこうだ。まず、エースである銀河眼の光波竜を召喚する。大型のエクシーズモンスターを餌に私の伏せカードを使わせ、その後温存した蘇生効果のカードを使う……そんな所でしょ? RUMもこのターン中に私を確実に倒す為の一手。永続魔法『光波干渉』と『二重露光』を組み合わせれば大半のモンスターを殴り倒せるしね」
仮に銀河眼の光波竜の効果を使わなくても同名モンスターを生み出せる。
その結果、攻撃力が二倍になったモンスターで私は削り殺されるってわけ。
まあ、だから敢えて攻撃表示にしておいたんだけどね。
こうすれば仕掛けてくる可能性が高まる……要するに、相手が攻勢に出るように誘導した。
この伏せカードに賭けた。
そして、賭けに勝った。
「……闇に抱かれて消えろ、銀河をその眼に宿せし竜よ」
別に特別なカードでもない、昔から色んなデュエリストが使って来ただろうそのカード。
それを見た途端、カイトの顔色は流石に変わった。
「『闇のデッキ破壊ウイルス』……だと!?」
「……このカードの効果は知っているみたいだね。まず、闇属性で攻撃力が2500以上のモンスターをリリースして発動する。通常なら光属性で相手のモンスターである銀河眼の光波竜をリリースできないけれど……シャドウディストピアの効果により、私はそのドラゴンをリリースできる」
無惨にも闇に飲み込まれて行く銀河眼の光波竜。
だが、カイトの闘志は消えていない。
……まだ抵抗するか。
「私は魔法か罠かを宣言し、相手の手札及び魔法・罠カードと相手ターンで数えて3ターンの間にドローしたカードを全て確認する。そして、私が宣言した種類のカードを全て破壊する。私が宣言するのは魔法カード」
「ぐっ……」
私はカイトの手札を確認するけど、このピーピングに意味はない。
先程サーチした『RUM-光波昇華』なのは分かっているからね。
そして、セットカードは《リビングデッドの呼び声》だったか。
やはり正解だった。
「すげぇ……永続魔法2枚を破壊してRUMを封じた上で、相手のエースモンスターを葬りやがった!」
「たった一手で戦況を完全に傾けてみせた……やはり、デュエルの腕前は凄まじい」
「先生、流石です!」
さて、一見有利に見えるけれどまだ危ない。
カイトの逆転の目はまだ残されている。
そう見えているに違いない。
「貴方は諦めないんでしょうね」
「この身が朽ち果てるまで戦い続けると誓ったからな」
「そう。それが無意味で無価値な行動としか思えないけれど……そうしたいならそうすれば良いよ」
私はそう思うけれど、その思考を他人に押し付けようとは思わない。
「私は誰が何をしようと気にしない。好きにすれば良い」
「貴様に言われずとも、俺は為すべき事をするだけだ」
私の心はいつだって揺らぎはしない。
ちっぽけな心が動いたところで、何かが変わらないと知っているから。
この広い世界において、私如きが抗えるわけがないだろう。
でも……どうしてだろうか。
上手く言葉にできないけれど、何かがもどかしい。
大事な事を見落としているみたいな感覚がある。
一体何だろう……?
アカデミア兵をカードに変えた時と似ているようだけど全く異なる感覚だ。
だけど……何となく方向性と言うか、根源は同じ気がする。
やっぱりどうにも気になる。
気になるけれど……
いや、別に気にしなくてもいいだろう。
幾ら考えたところで無駄だろうし。
虚しいだけだ。
「……俺は永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動し、墓地の『光波翼機』を特殊召喚する。さらに、『光波複葉機』のモンスター効果発動。フィールドのモンスター2体のレベルを8にする」
「レベル8のモンスターがまた2体揃った……!」
「まさか、またあのドラゴンが来るのか!?」
「先生っ!」
……大丈夫。
私にはまだもう1枚切り札がある。
ここで切るのは少し勿体ないけど、私のライフが0になるので致し方無し。
「再び降臨せよ、『
銀河眼の光波竜 ATK 3000
2枚目があったか。
やはり、これを切らざるを得ないようだ。
「『銀河眼の光波竜』の効果発動! オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドのモンスター1体のコントロールを得る。奪ったモンスターは効果が無効となり、攻撃力を3000にしてカード名を『銀河眼の光波竜』として扱う! ただし、この効果を使った『銀河眼の光波竜』以外のモンスターはこのターン直接攻撃ができない」
銀河眼の光波竜
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
レベル8モンスター×2
(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。
この効果でコントロールを得たモンスターの効果は無効化され、
攻撃力は3000になり、カード名を「銀河眼の光波竜」として扱う。
この効果の発動後、ターン終了時までこのカード以外の自分のモンスターは直接攻撃できない。
「モンスターを奪った上で攻撃力を3000に!?」
「先生の残りライフは2600。2体分の攻撃を受ければ……」
「先生っ!」
……何故、彼等は私を心配しているんだろう。
長い付き合いでもないのに。
意味が分からない。
「私の事は気にしなくても良い」
「でも、このままじゃ先生が……」
「私の身が砕けようが弾け散ろうが、貴方には関係ないでしょう?」
「そんな訳ないじゃないか!」
……私自身よりも私の心配をするのか。
そこは遊佐と同じだ。
私なんかと一緒に居ようとするのは、時間の無駄なのに。
本当なら煩わしい。
でも、遊佐の事だけはどうしても切り捨てられなかった。
差し伸べられた手を払い退ける事もできた筈なのに。
彼女の言葉だけは唯一耳を傾けようとできたから。
それと同じで、彼の言葉も聞き届けるべきだろうか。
考えても答えは出ない。
どうして私に関わろうとするの……?
何故、人はこんなにも何かに心を傾けられるの?
「俺は『邪悪龍エビルナイト・ドラゴン』を選択!」
「……理解できない。理解する必要もない」
「貴様、何を言って——」
あれこれと考えるのは、もうやめよう。
どうせ答えなんか求めても結末は何も変わらない。
私がこのまま死にながら現世を彷徨い続けるだろう。
煩わしい周囲を黙らせるには、どうすれば良いか。
この世界にはあるじゃないか。
言葉よりも雄弁に語り合えるものが。
「全員、黙れ」
「「「っ!!」」」
私なりに精一杯大きく息を吸って、声を出した。
それでも大した声量ではなかったけれど、私の声に皆たじろいだ。
「どいつもこいつも……私に何か物申す資格を得たいのなら、その前に私にデュエルで勝ってからにしろ」
そう言い放ち、私は手札のカードをディスクに叩き付けた。
切り札だ。
「手札の『カイザー・グライダー-ゴールデン・バースト』の効果を発動。自分フィールドのモンスター1体をリリースし、自身を手札から特殊召喚する」
「っ、まだそんな手を隠していたか!」
本当はここで使いたく無かったけど……まあ、良い。
「上手い、サクリファイス・エスケープだ!」
「これならモンスターを奪われずに済む」
「さらに、『カイザー・グライダー-ゴールデン・バースト』の効果発動。ターン終了時まで、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力と同じ攻撃力にできる」
カイザー・グライダー-ゴールデン・バースト ATK 2400 → 3000
「ならば、『銀河眼の光波竜』で『ヘル・ドラゴン』を攻撃!」
「……」
明美 LP 2400 → 1400
「『ヘル・ドラゴン』の効果は、使用しない」
「耐えられたか……俺はこれで、ターンエンドだ」
「エンドフェイズ、シャドウディストピアの効果で相手のフィールドにシャドウトークンを2体特殊召喚する。また、カイザー・グライダーの攻撃力も元に戻る」
シャドウトークン DEF 1000 ×2
カイザー・グライダー-ゴールデン・バースト ATK 3000 → 2400
「私のターン……」
私はドローカードを見て確信する。
勝った、と。
「私は『
巨竜の聖騎士 ATK 1700
聖騎士なんて名前なのに闇属性となったその姿は、この世の無情さを現しているかのようだ。
どれだけ高潔な魂を持っていようが呆気なく崩れて消え去ってしまう。
そのような脆い意志に何の意味があるだろうか。
「巨竜の聖騎士の効果発動。デッキからレベル7か8のドラゴン族モンスター1体を選んで自身に装備する。私が装備するのは……『闇黒の魔王ディアボロス』」
さて、墓地には丁度エビルナイト・ドラゴンが居る。
コントロールを得るのが『ヘル・ドラゴン』だったら若干面倒だったね。
まあ、誤差か。
「『巨竜の聖騎士』のもう一つの効果。このカードと自分フィールドのモンスターをリリースする事で、墓地のレベル7か8のドラゴン族モンスターを特殊召喚する。私はシャドウディストピアの効果を使い、『銀河眼の光波竜』と『巨竜の聖騎士』をリリースする」
再び、『銀河眼の光波竜』を闇が覆う。
結果は変わらなかったね。
「幾らやっても無駄だろうに。何故抗う、何故諦めない……いや、答えは聞かない。どうせ、私には理解できないだろうから」
私が溢した言葉をカイトは拾った。
返答なんて求めていないのに。
彼も言葉でする会話を望んではいないだろうに。
「俺は誰かに理解されたくて行動しているわけではないな」
「そう……私が特殊召喚するのは、今墓地に送られた『闇黒の魔王ディアボロス』」
『銀河眼の光波竜』にも勝るとも劣らない体躯の黒いドラゴンが顕現する。
その出立ちはまるで魔王のようだ。
「……深い悲しみを湛えているな、そのモンスターは」
「そう見える?」
「ああ。それはお前のエースモンスターか?」
「ううん、違う」
私は同じデッキはあまり使わない。
その理由は……
理由、は……
……あれ?
何で私は、こんなにデッキを使い分けているんだろう?
「そうか。なら、少し訂正しよう。そのドラゴンだけでない。お前のモンスターは皆、程度の差はあれど同じ様に見える」
「……?」
それは一体、どう言う事だろうか。
「デュエルモンスターには魂が宿る……そんな話もあったな。お前はどうやら、好かれているらしい。或いは……」
モンスターに、魂……
私自身にすらあるかどうか怪しいものがカードに?
目には見えないものだけど、確かに存在するのなら……
私が生きている理由も見えてないだけであるのかも、しれない。
なんかかなり長くなった。
新年スペシャルってことでどうかお許しください……
あとこれは予告ですが、このデュエルはここでぶち切りになります。
デュエル途中終了が本当によろしくないのは承知しております。
その、今までそうやって頑張ろうとしてアホみたいに遅れてしまっていたので……
非力な私を許してくれ……
それと、もう一つお知らせがあります。
「私は気ままにデュエルがしたい」完結後に投稿する予定の遊戯王二次創作を考えています。
アニメ遊戯王をリスペクトした世界観ですが、過去シリーズの世界ではなくオリジナルのお話になります。
なお、主人公はやはり女の子です……これはもう作者が私なので仕方ない。
原作をなるべくリスペクトして行きたいと願っています。
まあ今の所プリキュアっぽさも混じっちゃってるけど
正直、今のペースだと来年が終わるまでに完結できるか怪しいですが……
無理しない程度に頑張らせて頂きます。