私は気ままにデュエルがしたい   作:紙吹雪

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デュエルほぼ無しで、しかも結構短め……
これは紅蓮の悪魔の仕業でございます。




54話

 

 

「……あれ?」

 

 唐突に私の身体が前のめりに倒れた。

 硬い地面から視線を動かそうとしたけれど、身体が言う事を聞かない。

 辛うじて意識は保ったままでいられた。

 

 身体が限界を迎えたらしい。

 地面にぶつかっても痛みすら感じなかった。

 おでこに微かな熱を感じたくらい。

 流石にこれ以上デュエルの続行は物理的に不可能だった。

 

 だって、カードを持った手すら挙げられないのだから。

 

「先生っ!」

「……寧ろ、ここまで耐えられていたのが不思議だな」

 

 声が聞こえる。

 だけど、段々と霞んで行く。

 頭も……回らない。

 

 私はこの感覚を知っている。

 ただ、眠りに着くだけだ。

 この程度では私は死にはしない。

 死神があの世へと導いたりはしないだろう。

 

 私が望む事を、決して叶えたりはしない。

 

「くっ、ただでさえ身体の虚弱な先生が……早く、安全な場所に移動させないと!」

「ちょっと待てよ、そんな場所が何処にあるんだよ?」

 

 私の身体を丁寧に起こしたのは遊矢か。

 すると、視界の端に見覚えのある顔が見えた。

 あれは……黒咲か。

 

「彼女は、俺の仲間だ」

「お前は——」

 

 また声が聞こえた。

 でも、もう聞こえない。

 段々と意識が沈んで行く。

 

 ……ああ。

 この感覚だけは、唯一受け入れられるな。

 

 私は身体が求めるまま、静かに目を閉じて意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 変な声がして、私の意識は浮上する。

 

 私が目を覚ますと、見知らぬ天井が視界に入った。

 どうやらここは建物の中らしい。

 辺りを見渡すと、災害の避難所みたいな光景があった。

 炊き出しをしているしそれっぽく見える。

 

「……」

 

 いいや、やる事も無いしこのまましばらく寝ていよう。

 そう思って私は再び目を閉じた。

 このまま目が覚めなければ良いけれど……そうはならないだろう。

 

 何もする事のない時間、か。

 ただ苦痛を感じつつ緩慢に死に続けるだけの人生に何の意味があるんだろう。

 目を閉じてから少しすると、小さな溜め息と共に私の元へと近付く足音が聞こえた。

 

「この人は……まだ目覚めてないわ。まるで、死んでいるみたい……」

 

 やる事もやりたい事もやるべき事もない。

 そんな私が自発的に何かをしようとは思わない。

 このまま、眠っていればいい。

 

 遊佐の話だと……この世界は一度創り変わるらしい。

 

 四つの次元に分かれた世界とその元凶。

 この物語の結末。

 それを聞いた時、私は特に何の感傷も抱かなかった。

 

 どうせ、そのように転がって行く世界なら……何をしても変わらないだろう。

 私が居たところで大した差は発生していない。

 何も変わらないのならこのまま、眠ったままでも問題はないだろう——

 

「先生、まだ目覚めてないのか」

「ええ……」

「この人が遊矢の先生? なんか地味〜」

 

 知らない人達の話し声が聞こえる。

 いや、一人は知っている声だ。

 多分遊矢だろう。

 

「エンタメデュエルの師匠だと思ってたから、ちょっと期待外れだね」

「先生は凄い人だよ。俺もまだ一度も勝てたことがないくらいだ」

「え、それ本当!?」

「……ほう」

 

 流石にうるさい。

 私は思わず目を開けた。

 

「ねぇ」

「……えっ」

「うるさいんだけど」

「先生!? もう起きてたのか!?」

 

 ……はぁ。

 私が寝ている間に何があったんだろうか。

 この金髪と銀髪の女性二人は誰?

 あともう一人女の子がいるけど、話に入って来る気配はなさそう。

 

 遊佐から聞いたのは話の根幹に関わる秘密の部分だけ。

 細かいところまではあんまり覚えていない。

 どうせ原作でも登場する人物なんだろうけど。

 

「先生、俺達は今から融合次元に向かう。先生はここに居てくれ」

「そう」

「そうって……先生、やっぱり前からおかしいぞ」

「今が本当の私ってだけ」

「……」

 

 遊矢は悲しそうに私を見る。

 私はその視線が鬱陶しくて目を逸らした。

 勝手に期待しないで欲しい。

 

 

 

 私があのように振る舞っていたのは、遊佐の影響だ。

 他人と話す時は彼女のようにしていれば円滑に進む。

 学校では遊佐はどの学年でもクラスの人気者だった。

 

 遊佐と全く同じ性格になり切れば……

 私も人間らしさが身につくだろうか。

 そう思って模倣を始めたのが大学生の頃だったかな。

 

 最初、私のこれを見て遊佐は嬉しそうにしてくれた。

 真似をしただけと伝えると、微妙な顔をされたけど。

 とにかく、あのように振る舞えば……彼女ようになれる。

 

 

 

 私が唯一心を砕くに値する、あの黄金みたいに輝く人に。

 

 

 

「前の先生はもっと、口数が多くて……」

 

 遊矢はまだ何か文句を言っている。

 黙らせるか。

 

「これ以上何か言いたいことがあるなら……デュエルで私に勝ってからにしろ」

「うっ……」

 

 私が冷たく一瞥してやると、ようやく彼は大人しくなった。

 

 これでまた寝られる。

 そう思っていたけど、一つ誤算があった。

 全く予想の出来なかったことに……

 

 

 ここに一人、遊矢のファンがいたらしい。

 

 

「ねぇ、さっきから黙って聞いてればさぁ。遊矢の先生だか何だか知らないけど、ちょっと余所余所しいんじゃない?」

「……はぁ」

 

 なんか絡まれてしまった。

 だから誰なのこの人は。

 よく見たら金髪の人と服装も顔も似ているし、姉妹なの?

 

「あ、この人はアカデミア出身だけど、俺達に協力するって決めてくれたからもう敵じゃないんだ」

「……そう」

 

 事情はよく分からないけど、要するに元敵ってことか。

 そう言えばそれっぽい服装の奴等が結構居るな。

 和解する話は聞いたような聞いてないような……

 

 遊佐、あれでいて結構大雑把だからざっくりとして説明だったんだよ。

 

「私はグレース・タイラー。こっちが姉のグロリア・タイラーだよ」

「それで、何か?」

「だーかーらー! 遊矢に冷たくするのは何様なんだって言ってんの!」

「……君は遊矢のファンか何か?」

 

 私との温度差を感じないのかこいつは。

 と言うか、多分この姉妹は私が寝ている間に知り合った仲でしょ?

 打ち解け過ぎじゃない?

 

「いや、私は別に……」

「そのくだりはもういいから、姉さん」

 

 ……付き合ってられない。

 私はもう無視して寝ようとする。

 しかし、そうは問屋が下さないとばかりに張り上げる声が聞こえた。

 

「こら、無視するなって!」

「も、もういいから……俺は別に気にしてなんか……」

 

 何処からどう見ても気にしてるな。

 どうでもいいけど。

 

 はぁ、面倒な……

 

「……そんなに許せないなら、デュエルで決めようか」

「ちょ、先生!? そんな身体じゃ無茶だろ!」

 

 うるさいな。

 

「これはね、私の問題なんだ。貴方如きが割り込むなんて……烏滸がましいよ」

「そんな……先生?」

 

 化けの皮は剥がれた。

 擬態をするのはもう辞めた。

 意味がないと、本質は決して変わらないと理解してしまったから。

 誰も求めていないのだから。

 

 もし、今の私に出来る事があるとすれば……

 デュエルだけだろう。

 最早、破滅へと進む私に唯一残った意志がそれだけだって話だ。

 

 軽く身体を動かした限り、特に支障はない。

 私の状態は普段通りに戻っている。

 元から死にかけみたいな脆弱過ぎる身体だけどね。

 どれだけ時間が経ったのかは知らないが、これならデュエルできるだろう。

 

「何もしないで寝ているか、デュエルするかなら……後者を選ぼうか。分からせるまで静かにしてくれそうにもないしね」

「病み上がりだと聞いたが……平気なのか?」

「その、私は無茶だと思います。だって、ついさっき計ったこの方の体温は凄い低かったんです」

 

 今まで黙ってた女の子が、話に割り込んできた。

 体温か……

 

「私の平熱は35℃だから、問題ない」

「えっ……」

「……先生、水風呂に平気な顔で入ってるとは聞いてたけど」

 

 さて、やるか。

 私達は揃って外に出る。

 相変わらずの荒廃した世界だが、戦火は既に絶たれたらしい。

 もうここでアカデミアの侵略は行われない。

 

 知らん内に戦いが終わってたらしいね。

 それは困るな。

 デュエルの機会が無くなりそうだ。

 私を終わらせるようなデュエルがあるならば、してみたいものだ。

 

「先生だか何だか知らないけどさ。なんか私、貴女のこと気に入らないな〜?」

「……」

 

 面倒臭い奴だ。

 とっとと終わらせてやろう。

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

明美 LP 4000

グレース LP 4000

 

 

「先攻は私からね」

 

 アカデミア出身らしいから、多分融合使いだろうな。

 特にそこは対策してないが問題はない。

 ピンポイントメタを張るよりは力でねじ伏せた方が早いからね。

 

「フィールド魔法、『アマゾネスの里』を発動!」

 

 ……アマゾネスか。

 いくつか面倒なモンスターを擁するカテゴリだがそこまで厄介ではない。

 射手だけは注意が必要だけど、アマゾネス単体なら怖くはない。

 

「いきなり行かせて貰うわよ。魔法カード『融合』を発動! 手札の『アマゾネス女王(クィーン)』と『アマゾネスの戦士』を融合! 密林の女王よ、勇猛なる剣士の力を取り込み全てを統べる帝国を築け! 融合召喚! 現れろ! レベル8、『アマゾネス女帝(エンプレス)』!」

 

 

アマゾネス女帝 ATK 2800 → 3000

 

 

 ふむ。

 

「更にカードを1枚伏せて、ターンエンド! さあ、遊矢の先生らしい貴女の実力を見せてもらおうじゃない」

「あいつ……タッグデュエルじゃなくても強いな」

「まあな。私と同じで最も得意なのはタッグなのは間違いないが」

 

 タッグデュエルねぇ。

 決闘者の味方は常に一人だろうに。

 

「私のターン、ドロー」

 

 引いたカードと手札を見る。

 悪くない引きだ。

 これなら相手の伏せにもよるが……

 

 

 

 このターン中に終わるだろう。

 

 

 

「先に言っておこうか」

「何よ。負けた時の言い訳でも考えてる?」

「それは考えた事がない」

 

 私はこの場にいる全員を見渡してから……こう言った。

 

 

 

「お前達はこれより……おぞましい物をみるだろう」

 

 






腐れ!

って訳でここからしばらくデュエル編に突入します。


Q.遊佐の真似ってことは、つまり性癖も?
A.寧ろ、遊佐のショタロリコンの元は遊佐です。先生はよく分かんないけどそっくり人格を模倣してキャッキャ言ってました。
本物(遊佐)なら素良に出会った途端吸引する不審者だったんじゃないでしょうか。解像度が若干低くて助かったね素良くん。

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