私は気ままにデュエルがしたい   作:紙吹雪

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ここから自分探し編が始まりますが多分すぐ終わります。




57話

 

 

「遊矢、あの人は君の先生なのか?」

「そうだよエド。でも今は、その……」

「腕は確かなようだが、デュエルをしたのにあんな顔をしているような奴を、僕は君の関係者だとは思いたくないな」

 

 あの銀髪の男……

 デュエルの途中で観戦した奴だったか。

 エド……そんな名前のキャラも居たような気がする。

 察するにあの姉妹と同じでアカデミア側の人間なんだろう。

 

「遊矢。ごめんね、勝てなくて……」

「いいんだ。俺の為に怒ってくれてありがとう」

 

 はぁ……また苛ついて来たな。

 もう無縁だと思っていたのに、人である限り逃げられないのか。

 下らない感情になんてとっくに捨ててしまったのに。

 

「今度は僕と相手してくれるかな」

「エド!?」

「司令官殿も挑戦するって言うの?」

「ああ。あれほどのデュエルをしたというのに笑っていない人を……僕は見過ごせない。それも、遊矢の関係者であるなら尚更だ」

 

 そう言ってエドという男は私に対して歩み寄る。

 笑っていない、か。

 なんとまあ、遊矢みたいなことを言う奴だ。

 

「いいよ。まだ私は……満足していないから」

 

 私は別のデッキを取り出して先程使ったデッキと入れ替える。

 改めてデュエルディスクを構え直した。

 

「君が何を抱えているのかは知らないが……まだ僕が侵略者だった頃のエクシーズ次元の人達よりも酷い顔をしているように見えるな」

「人はそれぞれ自分だけの人生を抱えてるものだね。そして、下手に踏み込むような行為は嫌われて然るべしなんじゃないかな」

「余計なお節介だとしても、だ。放っていては気分が悪いな」

 

 ……こいつもまた面倒な奴だ。

 私も人のことは言えないか。

 

「少なくとも……君を放置したままにしておいてはアカデミアに反旗を翻した意味がない。君のような人間を新たに生まない為に僕はアカデミアを裏切る決心をしたのだからな」

「そう。どうでも良いね」

「先生! そんな言い方は……」

 

 遊矢が声を大きくして噛み付いてきた。

 まあ、彼はそうするだろうね。

 そうすると分かっていることに怒りを覚える必要はない筈だ。

 

 だから……今抱いた怒りも、すぐに散っていくだろう。

 

「君がどう足掻こうが。変わらないんだ。大きな流れというものは、手のひらでは受け止めきれないように」

 

 私が生きてきた今までの全て……私の意思があったとしても、何も変わらなかっただろう。

 苦しみで回る世の中だから。

 私は生まれた時から不幸になるのが決まっていたんだ。

 

「……それは、運命とも言い換えられるね。僕は運命を信じている。遊矢との出会いも運命と呼べるものだったから。だが、それが人の手で変えられない物だとは思わない」

 

 痛切なまでに真剣な表情でそう語るエド。

 私に対して何かしら思う所があるのは分かる。

 それが真剣である事も。

 

 だけど、全ては流れて消える一抹でしかないのだから。

 私はそれを否定する。

 そうするしかなかった。

 

 

 

 だって、そう思わなければ……怒りと憎しみで狂ってしまいそうだったから。

 

 

 

「くだらない言葉よりかは、デュエルで語ってくれないか?」

 

 私の言葉に、彼は目を瞑る。

 何を考えているのかは分からない。

 だが、覚悟を決めたように見えるのはきっと気の所為ではないだろう。

 

 じゃあ……()るか。

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

「先攻は僕が貰う。僕は『D-HERO ドリルガイ』を召喚。そして、ドリルガイのエフェクト発動! 手札から『D-HERO ディバインガイ』を特殊召喚!」

 

 

D-HERO ドリルガイ ATK 1600

 

D-HERO ディバインガイ ATK 1600

 

 

 はぁ……これは。

 偶然だろうか。

 だが、どうせ気にする必要はないだろう。

 

「更に魔法カード『置換融合』を発動! フィールドのモンスターを素材に融合召喚を行う。僕はドリルガイとディバインガイを融合! 運命の岩盤を穿つ英雄よ! 神聖なる使命を授かりし英雄よ! 今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ! 融合召喚! カモン! D-HERO ディストピアガイ!」

 

 

 D-HERO ディストピアガイ ATK 2800

 

 

「ディストピアガイのエフェクト発動! このカードが特殊召喚に成功した場合、セメタリーのレベル4以下のD-HEROを1体選び、その攻撃力分のダメージを与える。くらえ、スクイズ・パーム!」

「っ……!」

 

 

明美 LP 4000 → 2400

 

 

 ドリルガイとディバインガイの攻撃力は1600。

 それなりのバーンダメージを食らってしまった……

 やはり、バーン対策はしておいた方が良いかもしれない。

 

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド。さあ、先程のデュエルで見せた実力をもう一度見せてみろ!」

「……」

 

 私は手札を見る。

 悪くない……いや、寧ろかなり良い方の手札だ。

 まあいい、引いてから考えよう。

 

「私のターン、ドロー」

 

 引いたカードを見て私は即座に行動を決めた。

 展開に寄与しない罠、『無限泡影』を引いたからだ。

 ……さっきのターンに握っててもドリルガイに撃つのは微妙だから多分温存したか。

 

「魔法カード『ヒーローアライブ』発動。このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。ライフを半分払うことで、デッキから『HERO』モンスターを特殊召喚する。私が特殊召喚するのは『E・HERO エアーマン』」

「HERO、だと?」

 

 

明美 LP 2400 → 1200

 

E・HERO エアーマン ATK 1800

 

 

「エアーマンの効果発動。このカードは召喚・特殊召喚に成功した時にデッキから『HERO』モンスター1体を手札に加えることができる。または、フィールドの他の『HERO』モンスターの数まで魔法・罠カードを選んで破壊できるが……今は関係ない。私はエアーマンの効果でデッキから『D-HERO ダイヤモンドガイ』を手札に加え、そのまま召喚!」

「何っ!?」

 

 

D-HERO ダイヤモンドガイ ATK 1400

 

 

 そう、何故か使用カテゴリが被っていた。

 私のデッキタイプを鑑みるとミラーとまでは行かないが……

 運命、か。

 

「君も……D-HEROを使うのか?」

「とんだ偶然だな」

 

 今の私の手札ではデッキトップの操作ができない。

 素引きで何が出るかな。

 最悪の場合でもフォローは可能だし、当たればラッキーくらいのつもりでやるか。

 

 ……デッキの魔法カードの割合はまあまあと言ったところ。

 アライブ三積みだしモンスターや罠の枚数は絞っている。

 実のところ、そこそこ期待値は高い筈だな。

 

「ダイヤモンドガイの効果、発動。デッキトップのカードを1枚めくり、それが通常魔法カードなら墓地に送る。違った場合はデッキボトムに戻す。この効果で通常魔法カードを墓地に送った場合、次のターンの私のターンのメインフェイズにそのカードの効果を発動できる」

「魔法カードを次のターンに発動できる効果? なんか、微妙な効果のような気がするけど」

「いや、違う。僕には分かる。この効果で使用する魔法カードには……」

 

 さて、何が出るかな?

 

 

「……ほう」

 

 

 めくったカードは……なるほど、これが来たか。

 どうやら今日はついているらしい。

 

 

 

 

「私がめくったのは通常魔法『大逆転クイズ』。よって、墓地に送る」

「……大逆転クイズ?」

 

 前のターンにバーンを喰らい、しかもこのターンにアライブまで使った。

 その状態でこれを引けたのはかなり大きい。

 何たって、このカードの効果は……

 

「あのカードは、自分のデッキの一番上のカードの種類を当てることが出来れば、お互いのライフを入れ替える効果のカード……!」

「何!?」

「ああ。でも、あのカードは手札とフィールドのカードを全て墓地に送らないと使えない筈だ」

 

 遊矢には以前、見せたことがあっただろうか?

 授業で取り扱った記憶はあるような気がする。

 実戦で使ったかどうかまでは記憶が曖昧だ。

 

 ……記憶が曖昧ってことは、きっとどうでも良い事だな。

 一先ず、訂正してやろう。

 

「いや、違う。ダイヤモンドガイの効果なら、発動条件やコストを完全に踏み倒せる」

「なんだって!?」

 

 でも、それくらいしてくれないと主軸にはできないからね。

 それが◯しい所なんだけど。

 

「でも『大逆転クイズ』って魔法はデッキの一番上のカードの種類を当てないといけないんでしょ? モンスターか魔法か罠か。そう簡単に当てられるわけじゃないんじゃない?」

「俺もそう思う。デッキのカードが全て魔法カードとかじゃない限りは……」

 

 【緑一色】なら確かに『大逆転クイズ』を確実に成功させられる。

 だが……他にも方法は幾らでもある。

 

「ダイヤモンドガイの効果を使用する為と、『大逆転クイズ』を成功させる。その両方を解決するには、デッキの一番上のカードを確認するか持って来る効果を使えば良い。今回は偶然だったようだが……奴が次のターンにそのどちらかの効果を持つカードを引く可能性は低くないだろうな」

 

 司令官だか何だか知らないが……洞察力はまあまああるようだ。

 その点は認めてやっても良い。

 だが、一つ間違いがあるな。

 

 

 

 私は既に()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 このターン中には使えないが、次のターンには使う事ができる。

 だから今使ったダイヤモンドガイの効果は当たればラッキー程度の期待度だった。

 次のターンで奴が私を仕留められなければ……勝利がほぼ決定する。

 

 

 

 ああ、〇しみだ。

 

 

 

 ……今、私は何を考えた?

 いや、今はそれよりもデュエルに集中しようか。

 

「私は手札から魔法カード『フュージョン・デステニー』を発動。手札とデッキから融合素材モンスターを墓地に送り、『D-HERO』モンスターを融合素材とする融合モンスターを融合召喚する」

「デッキ融合……!」

 

 生憎、手札の他のカードはダイヤモンドガイ用の魔法カードばかり。

 本当はもっと展開してから使いたかったが……仕方がない。

 最低限これを引いていただけ充分だろう。

 

 と言うか、これだけで勝てそうだから問題無い。

 突破してみろ。

 そのちっぽけな力で足掻いて見せろ。

 

「私はデッキの『D-HERO ダークエンジェル』と『D-HERO ディアボリックガイ』を融合する。現れよ、レベル8! 死と破壊を繰り返す無敵の英雄! 『D-HERO デストロイフェニックスガイ!」

 

 

 不吉な予感が脳裏に過ぎる、震え上がる恐怖を携えてそいつはその姿を現した。

 

 赤黒い鎧を身に纏い破壊的なオーラを帯びた英雄。

 今にも暴れ出しそうな程な凶暴性が見え隠れする。

 まるで、自らをも喰らい尽くす炎のような衝動が全身を巡っているかのように。

 

 でも、私にはその姿が美しく見えた。

 私の抱いた苦痛を引き受けているようにも思えたから。

 

「なんだ、この融合モンスターは……」

「さっきのエクシーズモンスターと比べても遜色のないくらいの圧を感じるぞ!?」

「魔法カード1枚で召喚するモンスターなのか、これが……?」

 

 デストロイフェニックスガイが低く唸るように吠える。

 求めているんだ……己の力で齎す破壊を。

 

 

 

 私の心臓の鼓動は酷く緩やかで、か細い。

 私はこの音があまり好きではなかった。

 今にも途絶えそうな音は……不思議と私に鬱陶しさを感じさせる。

 

 死ぬ迄付き合わされるのだから、いっその事止まってしまえと。

 眠る時に私はそう考えずに居られない日は無かった。

 

 

 

 でも……今は違う。

 少し、ほんの少しだけだけど。

 高鳴っている。

 

 私に従ってくれるモンスターの為になら、私は……

 なけなしの気力を振り絞って頑張れる気がした。

 私がカードを見つめていた時間の長さだけ、私はカードを愛しているから。

 カードがそれに応えてくれるのならば……やらなければならない。

 

 

 今、解き放ってあげる。

 

 

「デストロイフェニックスガイの効果。相手モンスターの攻撃力は私の墓地の『HERO』カード1枚につき200ダウンする」

 

 

D-HERO ディストピアガイ ATK 2800 → 2400

 

 

 今私の墓地にいるのは融合素材として墓地に送られたディアボリックガイとダークエンジェルのみ。

 ディストピアガイがいる状況だと、この効果は余計でしかないが……

 だがしかし、大した問題にはならない。

 

 デストロイフェニックスガイの迫力に気圧されたのか、ディストピアガイが後ずさる。

 近付く者を寄せ付けないプレッシャーを放っている。

 でも……相手も怯えているだけではない。

 

「それなら、ディトピアガイの効果を発動! このカードの攻撃力が変化している場合、元々の攻撃力に戻すことでフィールドのカードを1枚破壊できる。デストロイフェニックスガイには、すぐに退場してもらおうか……『ノーブルジャスティス』!」

 

 ディストピアガイの掌から空気が吸い込まれて行く。

 本来なら、そのまま何も出来ずに破壊されてしまうだろう。

 実際、デストロイフェニックスガイには耐性の類はない。

 

 だが……破壊と死は彼の領域だ。

 同じ土俵で戦うにはディストピアガイでは力不足。

 まだ私と対等に戦えるとでも思っているのだろうか。

 

 デストロイフェニックスガイは視線を妖しくギラつかせる。

 自らに降りかかる破滅を、寧ろ楽しんでいるかのように。

 その異様さはエドにも伝わったらしい。

 彼の額に冷や汗がハラリと流れた。

 

「なんなんだ、このモンスターは……!?」

「理解していないようだな。こいつの力を」

「何だと?」

 

 ならば、理解させてやろうか。

 

 この世界の輝かしいものなんか……全て真っ赤な偽物だって事を。

 

 






エドの新規が発表された近日にVSエドの話を書くことになるとは……
時計塔とドレッドノートが強くなって新登場。
俺、嬉しくて涙が出そうだよ。
でもニビルには弱いんじゃねと思うなどした。

5/14
最後の方を少し加筆。
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