「どうしてこうなった……」
月明かりの差し込む部屋の中、机に突っ伏して頭を抱える。
千明と話していたら、なぜかキスされた。
意味がわからないとかそういうレベルじゃない。しかもこれからよろしくなって、まるで恋人になったみたいな言い方して……
「あんな嬉しそうな千明、初めてみたな……」
いつものいたずら好きっぽい笑みじゃなくて、心の底から喜んでいるような笑顔。ずっと一緒にいたからよくわかる。千明は本当に喜んでいた。
「まさか、千明もボクのこと、好きってこと?」
じゃないとキスなんてしないよね。やっぱ、そういうことなのかな……
「みんな、ボクなんかのなにがいいんだろ……」
ボクはできた人間じゃない。元ボッチだし、クソザコだし、ちっこいし、はっきり言ってダメ人間もいいところだ。
そんなボクをなぜかみんなは好きだという。それが全然わからない。
「はぁ、明日からどうしよ」
学校休んじゃおうかな。いや、そんなことしたらなでしこあたりが家に突撃してくるに決まってるか。
それにみんなに心配させたくない。でもこれからどんな顔して会えばいいんだろう。
「はぁ……」
八方塞がりと言わんばかりの状況に思わずため息が漏れる。
みんなのことは大好きだ。それは今でも変わってない。だからこそ困っている。
やめてくれって言えたらどれだけ楽だろう。きっとあの子たちなら言えばやめてくれるに違いない。
でもそれを言ってみんなを悲しませたくない。だってボクはみんなが大好きで大好きでしかたないからだ。
「うぅ……なんでこうなるんだよぉ」
ボクはただみんなと仲良くしたかっただけなのに……
本当に困ったことになった。なにが困ってるって、ちょっと嬉しいって思ってる自分にだ。
たぶんだけど、ボクは女の子が好きなんだと思う。
今まで恋愛なんてまるで縁がなかったからわからなかったけど、きっとそうだ。
ボクの友だちはみんなすごく美人ですごくかわいい。それに加えてすごく優しくて、すごくいい子でもある。
そんな子たちに好きって言われてキスされて、嬉しくないわけがない。
どうせなら、もっと滅茶苦茶にしてくれてもいいのに……
「……はっ!?」
自分の考えていたことに戦慄する。みんなはただの友だち、そう、ただの友だち……
ピコン!
「うひゃ!?」
いきなり鳴り響いたスマホにびくりと驚く。いきなりなんだよぉ
「って、綾乃か」
驚きつつもスマホを取る。
綾乃:最近どう?
双葉:元気だよー
綾乃:今電話大丈夫?
双葉:大丈夫だよー
ボクの返信に既読がついた瞬間、綾乃から電話がかかってきた。そんなにボクと話したいことがあるのかな。
「もしもし?」
『お、出た出た。おひさー』
「うん、ひさしぶりー 最近どう? 元気にしてる?」
『うん、元気元気。相変わらずいろんなところ走り回ってる。あとで写真送るね』
「近いうちにまたどっか行こうよ。最近あんま会えてないしさ」
『さんせー この前は双葉が来てくれたし、今度はあたしがそっち行くよ』
「うん! 楽しみにしてる」
いつもどおりのやりとりに心がほっとする。よかった。綾乃はいつもどおりだ。
『……でさ、最近どう?』
「ど、どうって?」
いきなり声色が変わった綾乃に困惑する。
『わたし、なでしこから聞いちゃったんだよねー 双葉がリンちゃんとなでしことキスしたって。それって、本当?』
「……え? あ、うん。し、知ってたんだ」
『ふーん、そっか。キス、しちゃったんだ。まあ双葉かわいいもんね』
今電話で話している子は、ほんとうにボクの友だちなんだろうか。そう思ってしまうくらい、綾乃の声は冷たかった。
「なんか、よくわかんないけど、みんなボクのことその……す、好きみたいでさ……」
『リンちゃんはなんとなく怪しいなーって思ってたけど、なでちゃんもかぁー』
「あ、綾乃?」
『え? ううん、なんでもないよーただの独り言だから』
「そ、そっか」
『……あの言い方だと他にもいるっぽい? ほんとずるいなあ、みんな』
綾乃が電話の向こうで、小声でなにかぶつぶつ言っているけれど、いまいいち聞き取れない。
『ねえ双葉、次の金曜、家泊まっていい? なんかお悩みっぽいしこの綾乃さんが相談に乗ってしんぜよー』
「えっ? 本当に!? ありがとー! ちょうど綾乃にも相談しようかなって思ってたんだ」
『うんうん、
ブツりと消える電話。
綾乃の頼もしい言葉に、心に活力が湧いてくる。やっぱり、持つべきものは友だちだ。
「よし! ずっとウジウジしてたってしかたない! ボクも頑張ってみんなを元に戻さなきゃ!」
きっとみんなちょっと勘違いしてるだけなんだ。ずっと一緒だったから親愛と恋愛を勘違いしてるだけ。そうに違いない。
だから、言えば絶対わかってくれるはず!
「よーし! 頑張るぞー!」
と、意気込んでいたボクだったけど……
「な、なあ、イヌ子。さすがにやべえんじゃねえの?」
「大丈夫やろ。ここら辺人なんてこうへんし」
薄暗い部室にあおいと千明の話声がこだまする。
綾乃と電話した次の日、ボクは千明とあおいに部室に連れ込まれていた。
「あ、あのさ、あおい」
「うん? どないしたん双葉ちゃん」
床に座り込んだボクをあおいが背中からぎゅっと抱きしめる。背中越しに感じる暖かい感触に顔が燃えるように熱くなるのがわかった。
「な、なんでボク、部室に連れ込まれてるの? 今日野クルないよね?」
「そんなん、双葉ちゃんとキスするために決まっとるやん」
「な、なんでぇ?」
「双葉ちゃんリンちゃんとなでしこちゃんとキスしとるんやろ? ほんまずるいわぁ、わたしらだって双葉ちゃんのこと好きなのに」
あ、やっぱりあおいもボクのこと好きなんだ。って、そうじゃない。
「そ、そうだぞー! あいつらだけずるい! あたしらにもちょっとわけろ!」
「わ、わけるって、ボク物じゃないよぉ」
意味がわからない。
なんでなでしことキスしてるのがばれたのかはさておいて、そこからあおいと千明にキスされることになるのは、いくらなんでも話が飛躍しすぎている。
「双葉ちゃんが、悪いんやで」
耳元であおいがささやく。熱い吐息があたり身体がびくりと震える。
「今ビクってした。ふふ、ほんまかわええなぁ。そんな反応されたら、わたしらだって本気になってまうでー」
「ゃ、やめっ……」
「あーむっ」
耳たぶを優しく噛まれる。柔らかい唇が、ムニムニと耳たぶをほぐしていき、白い歯がコリコリと甘噛みしていく。
こ、この展開はまずい。なんとかして離れないと……そんな思いとは裏腹に身体は動こうとしない。
「だ、だめ、ぼ、ぼく、へ、変な声、で、でちゃうよぉ……」
き、きもちいい。もっと、してほしい……ち、違う、ボクそんなこと思ってない……
「ず、ずるいぞイヌ子だけ。じゃ、じゃああたしも……」
正面に座る千明が、ボクにゆっくりと這い寄ってくる。
ただでさえ、いっぱいいっぱいなのに千明にまでなにかされたらボクはどうなってしまうんだろうか。
ごくりと唾を飲み込む。
「い、いくぞ……んっ」
啄むように優しくキスをされる。
まるで突き立てのお餅のようなほどよい弾力の唇。時折お互いの眼鏡がコツンコツンとあたる。
「……んっ……っ……れる」
馬乗りになりキスをされ、後ろから抱きつかれ、耳や首筋にキスをされる。
「……ぁ、……ぅ……」
考えていたことや、やろうとしていたことが前と後ろから与えられる快楽に押し流されていく。
「双葉ちゃん、むっちゃびくびくしとる。ふふっ、そない気持ちええんか?」
なにも、考えられない。女の子どうしのキスって、なんでこんなに気持ちいいんだろう……
しあわせ……ずっと、こうされていたい……もっと、してほしい……
「……すき……んっ……」
はやく、やめさせなきゃ……
あれ? やめさせるって、なにをだったっけ?
……もう、わかんないや。身体の力を抜き、身を委ねる。
目を閉じる。
「ほな、また明日なー」
「じゃ、じゃあな!」
「えへへぇ、ばいばーい」
壁にもたれながら、部室を去る2人に手を振る。
静まり返った部室で、甘ったるい余韻に浸りながら虚空をぼんやりと眺める。
「きもちよかったなぁ……」
前からキスされて、後ろからは抱きしめられて、かわいいとささやかれ、好きと言われ、嬉しくて、幸せて、それしか考えられないくて……
「もっと、してほしかったなぁ……」
……
…………
………………
「いや、まってまってまって」
おかしくなっていた思考がまとまりを取り戻していく。
なにが『もっとしてほしかったなあ』だよ! めっちゃ喜んじゃってるじゃん。全然拒否できてないじゃん。
「うがぁぁ! やめさせるって決めたのにー!」
髪をぐしゃぐしゃにかき回しながら涙目になりながら叫ぶ。みんな寄ってたかってなんだなんだよぉ。
「とにかく、もうこんなはしたないこともうやめさせないと!」
明日こそみんなに言おう。こんなことはやめようって。じゃないと、ボクがもたない。
名残惜しいと思っているのは絶対に気のせいだ。
立ち上がりながら、乱れたセーラー服を整えていく。うわ、お腹とか丸見えじゃん。
そのときだった。
「ふっふっふ、お盛んですなぁ」
突然前から聞こえてきた声に、ぎょっとして振り返る。
「見ちゃったよー」
「え、恵那?」
部室のドアの隙間から、恵那がニヤニヤとこっちを見ていた。ま、まずい、見られた?
「ふぅーん、アキちゃんたち意外と大胆だねぇ。どう? 気持ちよかった?」
「うん、すっごく気持ちよかっ……って、なに言わせるんだよー!」
「うん、勝手に自爆しただけだよね?」
「あっ」
「あはは、双葉ったら変なのー」
ボクが自分の失言に絶句している横で、恵那が部室に入ってくる。
「あーもう、髪ぐしゃぐしゃじゃん。ダメだよー女の子なんだから」
そう言いながら、髪をクシで梳いていく恵那。なんていうか全然びっくりしている様子じゃない。
「ど、どこから見てた?」
「ほぼ最初っからだよー 双葉、すっごい気持ちよさそうだったねー」
「う、うぅ……」
は、恥ずかしい。もはや醜態とかそんなレベルじゃない。部室であんなえっちなことして……しかもよりにもよって恵那に見られるなんて……
「だ、誰にも言わないでね」
「うん! もちろん言わないよ」
「ほっ……」
恵那の言葉にため息をつく。見られたのはまずかったけど、恵那でよかった。他の生徒や先生に見られたら大問題になってたところだった。
「なんで、こんなことになっちゃったんだろうなあ……」
「そういえば、リンも双葉とキスしてるんだっけ? あ、なでしこちゃんもだったっけ?」
「うん……」
ロッカーを背にしてへたり込むように座りながら恵那に言う。
あれ? なんでリンとなでしことキスしてるって知ってるんだろう。まあいいか……
「みんなね、ボクのこと好きって言うんだ……」
「わお、モテモテだねぇ。モテ期ってやつじゃん」
みんな人が変わったみたいにボクを求めてきて、恋愛のことなんて考えたこともなかったから、どうすればいいか全然わからない。
「もうわけわかんないよぉー」
「うーん、なんか大変そうだね」
ボクの隣にしゃがんだ恵那が、顎に手を当てながらそう言った。
ボクたちの中では一番客観的に物事を考えられるであろう恵那なら、きっとこの状況の打開策を教えてくれるはず。
「でも、それって双葉の自業自得だよね?」
「……へ?」
自業、自得? ボクが? なんで?
「ど、どういうこと?」
「双葉って、ことあるごとにみんなに大好きーって言ってたり、抱きついたりしてたじゃん?」
「だって……みんなのこと大好きだったから……」
大好きだったからもっと仲良くなりたくて自分なりにできることをした。ただそれだけだった。
「たぶん双葉はみんなと仲良くしたかっただけなんだろうけど、みんなはそれだけじゃ満足できなくなっちゃったんだよ。きっと」
恵那はいったいなにを言っているんだろうか。それって、ボクがいけなかったってこと?
「ぼ、ボクはみんなと仲良くしたかっただけで……」
「仲良くなれたじゃん。キスするくらい」
「そ、そうじゃなくてー!」
「あ! もっとキス上手になりたいとか? 双葉ずっと受け身だもんねー」
「違うよー!」
話が噛み合わない。
「でも、今はいいけどずっと受け身だとみんないつか飽きちゃうかもねー」
「あ、飽きる?」
「無償の愛なんてしょせん幻想にすぎないのだよ。ふふっ、なーんてね」
笑いながら恵那が言った言葉に、まるで足元が崩れ落ちるかのような衝撃を受ける。
「みんなは双葉が好きで好きでしかたないのに、肝心の本人がいやいやーってしてたら、どんなに好きでも飽きちゃうよねー」
飽きる……嫌われる……みんなが離れていく……
「……そ、そんなのやだ!」
最悪の未来が脳裏によぎり、思わず叫ぶ。
みんなから嫌われるなんて、そんなの絶対嫌だ! やっと友だちができたのに、また1人になんてなりたくない。
認めたくないけど本当はキスされたり好きって言われてすごく嬉しかった。でも、このままだと嫌われてしまうかもしれない。恵那はそう言う。
「ど、どうすればいいのかな!」
「うーん、まずはキスをもっと上手になるのが先かなー? 見てて思ったけど、双葉ってずっとされてるだけで自分からなんもしないよね。それってわたしどうかと思うな」
「き、キスのやり方なんて知らないよぉ」
一年前まで恋愛はおろか友だち付き合いすらしたことなかったのに、キスのやり方なんて知ってるわけがない。
「……じゃあ、わたしで練習してみる?」
「れ、練習?」
恵那の言葉に耳を疑う。
けど、聞きただす前に床に置いたボクの手に、恵那の手が重なった。いつもと違うどこか艶かしい瞳がボクを見つめる。
「そ、練習。わたし、こう見えてもけっこうキス自信あるんだよー?」
膝に手が置かれる。白くて長い綺麗な指が、ゆっくりとボクの太ももを這っていく。
どんどんと近づいてくる恵那の顔。どこかデジャブを感じるやり取りに、これから起こるであろう出来事を想像する。
「知ってる? お互いが本気になったキスって、それだけですっごい気持ちいいんだよ?」
「そ、そうなの?」
「想像してみて……舌と舌が絡みあって、お互いに息ができなくなるまでキスし続けるところ」
あと少し顔を動かせばキスしてしまうほどに恵那が近づく。熱い吐息がボクの唇を湿らす。
「息ができなくて苦しくて、でもやめられなくて、ずっとキスし続けるの」
「ぅ、うん……」
耳元で囁かれる言葉に、頭がだんだんぼんやりとしてくる。心臓が飛び出そうなほどに脈打つ。
「指をね、こうやって絡ませて……身体と身体をくっつけて、匂いを混ぜ合わせてなにもかも一つにするの。それがね、すっごく気持ちいいんだよ?」
ボクの手を握りながら絡みつくよう抱きつく恵那。匂いがする。シャンプーとは違う、恵那の匂いとしか言いようがない甘い匂い……
「息荒いね双葉。もしかして想像しちゃった? 双葉って、意外とえっちなんだね」
頭がぼんやりとする。なにも考えられない。ボク、なに話してたんだっけ……思い出せない……
「してみたい?」
「ぇ……ぁ、ぅ、うん」
「じゃあ……練習、しちゃおっか」
れんしゅう……練習……そうだ、練習しないと……
「そ、そっか……れ、練習なら、しかたないよね……」
白い肌、綺麗な唇。長いまつ毛。ゆっくりと近づいてくる恵那の顔を目に焼き付ける。そうだ。これは練習……ただの練習。
「じゃ、じゃあ、するね?」
「……うん、来て」
目を瞑り、顔を近づける。
「……んっ」
唇が触れる。
「いや、なにしてんだよボクぅ……」
リビングのソファーに顔を埋めながら自己嫌悪に浸る。
恵那とキスしてから3日がたった。
あれからみんなとの行為はエスカレートしていき、今じゃ隙あらば影に連れ込まれ、求められる毎日だ。
朝にリンとキスをして、昼になでしことキスをして、放課後には千明とあおいにキスをされ、帰り際に恵那とキスをする。
拒むことすらできず、ただされるがままに求められる。
ちょっと違うのは最近はボクも抱き返したりするようになったことだろうか。
たまに盛り上がりすぎて服を脱がされたりするときもあるけど、今のところキスだけですんでいる。
学校には勉強をしにきたはずなのに、最近はキスをしに学校に行っているんじゃないかと思うくらいだ。
「きっとみんないつか飽きてしなくなるよね。うんうん、そうに決まってる」
だからそれまでは、このままでいいよね。だって、しょうがないもんね。
「そういえば、今日綾乃来るんだっけ」
時間的にはそろそろだろう。
綾乃は、どうなんだろうか。まさか綾乃も? いや、そんなわけないか。
……でも、もしそうだったらボクはどうすればいいんだろう。
ピンポーンと、チャイムがなる。どうやら来たみたいだ。玄関に駆け寄って、ドアを開ける。
「おひさー」
「こ、こんばんは……」
目を見開く。綾乃とリンがボクを見ていた。
顔を赤らめ、瞳を潤ませて、まるでなにかを期待するかのようにボクを見つめる2人。
「久しぶりー双葉!」
ガバリと抱きつく綾乃。ずっとバイクで走ってきたから冷えてるはずなのに、やけに身体が熱いのは気のせいだろうか。
「昨日電話でリンちゃんと話してさー リンちゃんも泊まりたいんだって」
「い、いいかな? 双葉」
顔を赤くして、モジモジとしながらボクに聞くリン。断るわけにもいかず、無言でうなずくボク。
「そーいえば双葉のお母さんって、今日いる?」
ボクの背中に腕を回しながら、綾乃がたずねる。
なんだかいつもよりも息が荒いのは気のせいだろうか。気のせいだと思いたい。
なにかすごく嫌な予感がする……
「い、いないけど、それがどうしたの?」
「ん? べつにー」
綾乃が笑う。それはそれは楽しそうに笑う。
「じゃ、
耳元でささやかれた声、熱い吐息が耳をくすぐりゾクリと背筋が震える。
うん……やっぱ、そうなんだ。まあ、わかってた。知ってたよ。どうせこうなるだろうって。
きっと、これからボクは2人にいろいろされるんだろう。キスだけで終わってくれるといいんだけどなあ。
「たっぷり、お話、しよーね」
そう言って、綾乃がボクにキスをする。ボクは、そんな綾乃の背中に黙って腕を回すのだった。
それから先のことはあんまり覚えていない。
気づいたら朝になっていて、3人で裸になって同じベッドに寝ていた。覚えているのはすごく幸せだったことだけ。
けっきょく、ボクは誰1人拒むことができなかった。
友情とか恋愛とか、そんな感情を通り越してボクはみんなが大好きで大好きでしょうがないからだ。
きっとこれからもボクはみんなに求められ続けるんだろう。恵那の言葉を借りるなら、ボクが悪いってやつだ。
でも、それでもいいかなって思ったりもする。本当に少しだけだけどね。
時が経てばこの生活も終わる。永遠に続くわけじゃない。なら、その時までは少しくらい楽しんでもいいんじゃないだろうか。
ボクはみんなが大好きで、みんなもボクが好き。なら、それでいいじゃないか。
ちっとも終わる気がしないどころか、この先何年も続きそうな気がするのはきっと気のせいだと思いたい……
ほんと、どうしてこうなったんだろう。いや、ほんとに。
これにてハーレム編完結です。
最後にアンケートで地味に人気の多かった桜さんを書いてガチ百合編はラストになると思います。
ちなみに次回はおまけ編を投稿する予定です。
それはそれとして抜き取ったシーンはこちらからどうぞ(※R18)
https://syosetu.org/novel/269338/