ウマ娘の頭悪いサイド   作:にゃんこぱん

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ええ、はい。お祖母様の決定でしたら、わたくしは受け入れるのみですわ。たとえ相手があんなのでもあんなのでも、それがメジロ家のタメになるのでしたら、謹んでお受けいたしますわ!

 

 しかしいざ蓋を開けてみたら仕事に追われてそれどころではなかった。あの女、仕事にやる気がありすぎる。おれはライブの計画書を手元で眺めながらスマホに喋った。

 

 うーっす。ハコは抑えときましたよー。スタッフはそっちでいいんスよねェ?

 

『はい! ……でも、よく押さえられましたよね。スケジュールは厳しかったと思うんですが……』

 

 おれァやると言ったらやる男ですよ。こういう時に人脈ってのが役にたつんでね。……なんて、軽薄に言ってはみたものの、御大に借りを作ることになっちまったのは内緒だ。まったくライブってのは一仕事だ、正直甘く見てた。デモライブでこの作業量……スタッフが今のところおれとゆるふわしかいないのが明らかにダメな原因なのだが……。

 

 予算計画書、向こうに出してくれました? 反応どうスか?

 

『問題なく通ると思います! ……でも、それって本来はこちら側の仕事なんですけど……。あっという間に枠組みが整っていくなんて……やっぱり噂通り、すごい人なんですね』

 

 ……まァ、そうすね。まぁどうせやるならパパッと済ませたい性分なんで。会場セットとマイクリストは後でメールしときます。後は……演者か。

 

 どうします? こっちで選んでもいいスけど、ハローさん決めます?

 

『! 協力してくれる学園のウマ娘に心当たりが?』

 

 そうっすね──

 

 グランドライブ、というものが何なのか、おれは正直よく分かっていなかった。そりゃ名前の響きからしてデカいライブらしいのは分かるし、ウマ娘がファンに感謝を伝えるために歌うとか、大きなステージで全員が輝くライブとか、文言は理解している。理解しているが、今一つピンと来ていないのが実情だ。

 

 今回の一件は、ゆるふわがどうしてもグランドライブをやりたいと言うので、学園側からはおれが協力している。仕事柄ガキどもには顔が効く(なんかイヤな表現だが)、ガキどもから協力を募るのは比較的容易だ。

 

 しかし……どうやって説明したらいいんだ? グランドライブってのをやるんでちょっと手伝ってくれない? って頼むのは簡単だが、肝心のおれがグランドライブのことをよく分かってない。説明を求められると困るな。

 

『まさかオーディションをやるというわけにもいきませんから……。私も悩んでいたんです。生徒たちの理解を得られるかどうかは、重要な部分だと思うんです。そのためには、これがグランドライブだと一目で理解できるような、そんなライブをしてくれる子が有難いです』

 

 それでいて、やりますって言ってくれるヤツね……。そんなの居るかなぁ。

 

 ガラッと扉が開いた。

 

「……あれれ? 電話中だった?」

 

 コテっとわざとらしく首を傾げてクソガキが入ってきた。おれが電話中だと見るや、意外にも行儀良く椅子に座って黙っている。おれはスマホを耳に当てながらクソガキをなんとなく見た。目が合った。

 

 一発目ってのは大事だ、成功の可否は今後に関わる。身も蓋もないが、目を引くヤツがいい。衆目を集めることに慣れていて、ステージ上での経験が多く、やる気があり、グランドライブの広告塔としてプロジェクトを宣伝できる人材……。

 

 ……。

 

 ハローさんよ。ちょうど目の前に使えそうなのがいるんスけど、興味あります?

 

 

 

 

「うん、いいよ? お兄ちゃんの頼みなら、カレン、なーんでもやってあげる」

 

 ほーん……。殊勝な心構えだ。唯一の懸念点は性根が腐り切っていて、裏でめっちゃファンの悪口とか言ってそうなところだが、まあ取り繕うことにかけてこのガキの上をいくヤツはそうそういないだろうし大丈夫だろ。

 

「うーん? ここで死にたい?」

 

 死にたくはない。ところでおまえ、協力してくれンのはいいが、大丈夫なわけ? レースとかなんか色々あるだろ、知らんけど。

 

「心配してくれてるの? だけどカレンは大丈夫だよ。そ・れ・に〜……お兄ちゃんの頼みだもん。カレン頑張っちゃう! ファンの人たちに感謝を伝えるライブって言うのも素敵だし、断る理由が見つからないかな?」

 

 ふむ……。

 

「ところでさ。イベントプロデューサーのライトハローさん? って、もしかしなくても女の人?」

 

 ああ。トレセンのOGだってさ。先輩だぞ。

 

「ふーん……また女の人? エリさんといい、次から次へと取っ替え引っ替え。そういうの良くないと思うなー。お兄ちゃんにはカレンがいるのに」

 

 仕事の関係だ。ティーンってのはすぐ色恋沙汰にして騒ぎ出す。面倒極まるな。要らん、積極的に要らん。

 

「遠慮しなくていいのに〜。こんなにカワイイ女の子を好きにしていいんだよ? ファンの人たちが知ったら、お兄ちゃんすっごい恨まれると思うな〜」

 

 そうですか。じゃ、これ今後のスケジュールね。選曲なり演出に希望あるなら次のミーティングで出しとけ。ゆるふわにも話してみるが、おまえにプロモーションの依頼を出そうと思ってる。やる気ある?

 

「カレン、いつでもお仕事は大歓迎だよ。でもお兄ちゃんの頼みなら、お金なんて貰わなくたってやってあげるのに」

 

 報酬の存在しない仕事は無責任なものになる。名言botことラーメンハゲの言葉だ。だいたい、仕事の依頼じゃなくて個人的なお願いだった場合、見返りに何を要求してくるか分かったもんじゃない。おまえとは距離を保ちたいんでね。

 

「ひっどーい! そんなこと言い出したら、グランドライブへの協力自体、お兄ちゃんの個人的なお願いじゃないの?」

 

 チッ、そうだよ。だから貸しにしとくっつってんだ。

 

「……! 言質取ったからね!?」

 

 はぁ。仕事進めるために自分を切り売りするようなやり方をするのは良くないんだが、それも今更か。気にしてたらトレーナーなぞやってられん。それともう一つ言っておくが、おまえがおれに対価を求める以上、おまえにも成果を求める。

 

 分かってンな。半端はいらんぞ。

 

「言ったでしょ、なんでもしてあげるって。カレンに期待してて? お兄ちゃんの想像なんて、軽く飛び越えちゃうんだから」

 

 クソガキは不敵に微笑んだ。実際のところ、コイツの性格はともかく、能力についておれはあまり心配していない。ファンサは慣れたものだろう。ソーシャルネットに習熟しているのもポイント高い。上手くやるだろう。

 

 悪いな。

 

「ううん、いいんだよ。カレンからしてみたら、別にそれほど大変なことじゃないし、お兄ちゃんと一緒にお仕事までやれるなんて、とっても楽しそうだもん。それに、これでしばらくはカレンを遠ざけられないよね?」

 

 とりあえず協力者は1人確保だ。ステージのことを考えるとあと2、3人くらいは欲しいとこだが、まあなんとかなるでしょ。

 

 そういやおまえ、何の用?

 

「……そうだった! もう、すっかりお兄ちゃんのペースに乗せられちゃった。あのね、ちょっと確認なんだけどさ、お兄ちゃん……結婚するの?」

 

 なんだと? 

 

「お兄ちゃんがマックイーンさんと結婚するって、学園中で噂になってるんだよ。もうその話で持ちきりで、マックイーンさんも全然否定しないって」

 

 ……、…………おれには──……。

 

 誰が噂の火元か、手に取るように分かった。完全にピンと来た。もう読者の皆さんもお分かりのことだろう。頭がスンと冷えていくのが分かった。

 

 ……質問に答えてくれるか?

 

「えっ、なに?」

 

 誰が、いつ……それを最初に話したか、分かるか?

 

「流石に分かんないかな。でも、カレンが聞いたのは今朝だったけど、こういう噂って広まるのがとっても早いから、たぶん……すっごく最近広まったんだと思う」

 

 条件は限られている。メジロの関係者か、あるいは……いや、こんな白々しい思考は馬鹿らしい。テイオーに違いない……あいつ……。

 

 ……あの、クソガキ……!! 何が仲直り、何が和解、何が停戦条約だ……ッ!! あんなことを言っておきながら翌日には掌返し……!! おれは腹の底から登ってくるグツグツとした怒りを懸命に押し付けた。冷静にならなければ。クールに行かなくては上手く行かない……あのガキ……許さねェ。殺す。

 

 ここに条約は破られた。

 

「あの、お兄ちゃん? ホントに結婚なんてしないよね、また何か変なことになってるんだよね? 結婚なんてウソだよね?」

 

 おいカレン。

 

「えっ?」

 

 おれァ用事が出来た。手伝え。

 

「う、うん。……分かった、何したらいいの?」

 

 テイオーを……探し出す……。

 

 いい加減冗談では済まさない。今回の一件はラインを完全に超えた。もはや信用も信頼も残ってはない、あとは関係が破綻するだけだ。許さねェ。

 

 

 

 

 ヤツはその辺を呑気に歩いて、想像よりも簡単に見つかった。おれから隠れるという発想すらない。舐めやがって……。

 

「アレ? トレーナーじゃん、どうしたの、怖い顔して」

 

 オイ……

 

「え、何? ちょ、ちょっと、なに、なに!?」

 

 おれがズカズカと詰め寄っていくと、テイオーは後退りした。なんだテメェ、おれを舐めるのも大概にしろよ。テイオーのかかとが後ろの壁にぶつかって、テイオーは怯えたようにおれを見て、後ろにいるカレンを見て、またおれを見た。

 

「な、なんなの……? やめてよ、トレーナー、怖いよ……」

 

 しらばっくれてくれるな。そういうところで下らん誤魔化しをしないのは、おまえの美点だと思っていたんだがな。おれはテイオーに壁ドンした。至近距離で両目を覗き込んでみるが、その瞳の中には怯えと戸惑いだけが浮かんでいる。本心の発露にしか見えない……役者だねェ、テイオー。演技の才能もあるっての? 知らなかったぜ、なあ?

 

「だから、何の話してるの!? 昨日仲良くしようって話したばっかりじゃん、ボクやっとワケわかんないことに巻き込まれずに済むんだなって安心してたのに……」

 

 トボけんじゃねェ!!

 

「ひうっ!?」

 

 テイオーがぎゅっと身を縮こませた。……つくづく役者だな、ああ!? 

 

「どっ、怒鳴らないでよぉ、ボクなんかした!? 説明してよ、謝るからさぁっ!」

 

 おれはつくづく頭に来た。オイオイオイオイ……説明されなきゃわかんねェか!? ええ!?

 

「え? …………イヤイヤイヤ! 違う、違う! ボクじゃない! ボクじゃないよ!!」

 

 おまえじゃなきゃ誰なんだ? なぁ。おまえじゃないなら教えてくれよ、誰が火元なんだ? なぁって。オイ。

 

「アレでしょ!? マックイーンとトレーナーが結婚するとか婚約したとかってヤツでしょ!? 違うよ、違うって! ボクだって聞いた時びっくりしたよ、まだボク誰にも話してないのにって!」

 

 言葉に気をつけろ。言い間違えただけか? それとも、どっちみちやるつもりだったか?

 

「約束したじゃん、やらないつもりだったよ! 信じてトレーナー、ボクじゃない!!」

 

 お前じゃねェなら誰なんだ!? ああ!?

 

「し、知らないよぉっ、怖いよぉ、やめてってば……っ」

 

 何だァこのガキ、都合のいい時だけ怯えた顔しやがって。それも演技か? これまでのことはすっかり忘れちまったのか? なぁ。なあって。おれが何か喋るたび、テイオーはぎゅっと身を縮こませた。

 

 ガッとカレンがおれの肩を持った。

 

「……お兄ちゃん、やりすぎだよ。どうしたの、らしくないよ。テイオーさん、ホントに怯えてる」

 

 あ? なんだと、コイツが……怯えて……?

 

 その理屈がどうなっていたかは分からないが、おれはそう言われて、テイオーの有り様を改めて眺めて、急に自分の中の勢いが無くなっていくのを感じていた。

 

 ……はっきり言っておれは身長が低い、認めよう。だからテイオーと並んだって、正直大して目線の高さが変わらない、なのに、どうして……こんなに、コイツが、小さく見えるんだ……。

 

 まるで冷水をぶっかけられたみたいだ、さっきまで頭ン中に溜まってた苛立ちが嘘のように消えていた。急に自分を客観視して愕然とした。おれは……こんなガキ相手に、何を怒鳴り散らかしてる……。

 

 一方的に決めつけて、言い分を聞き入れようともせず……怖がらせて……いい年した大人が、子供に向かって……ダサくて、情けない……。

 

 ……悪い、テイオー。熱くなってた。おれが悪かった、すまん。

 

「……え? い、いや。それは、だって、ボクも……普段から、トレーナーに疑われるようなことばっかしてるし……しょうがないよ、こっちこそゴメン」

 

 テイオーには済まないことをした自覚がある。この借りはいずれ何かで返そうと思う、が……一応自覚はあるのか、コイツも。

 

「でも、今回はホントに違うんだ……」

 

 ……だが、テイオーじゃないとなると、それこそ本当に誰が火元か分からない。容疑者ははっきりしていて、多分メジロ家の関係者だ。あの時マックの屋敷にいた誰かが1番怪しい。

 

 おれは少し考えてみた。マックを始めとしたメジロのお嬢様方は実際、育ちのいいのが揃っている。連中が個人のプライベートを嬉々としてばら撒くような真似をするとは思えない。そりゃ死ぬほど口が固いというわけでもないだろう、友達やチームメイトにそのことを話すことだってあるだろう、そこから噂が広がることもあるだろう。だが、昨日の今日でってのは、流石に……

 

「ねえお兄ちゃん、カレンはテイオーさんが嘘ついてるって思えないよ。だったらもう、消去法でしょ?」

 

 ……それしかないか。順番に連中を当たってみることにする。

 

 

 

 

 -

 

 

 

 

 メジロ家ってのもなんというか、正直な感想を言わせていただくと、みょうちきりんな名前だと思う。いやそれはいいんだが、おれは別にお嬢様方とそこまで深い関わりがあるわけじゃない。マックを除いてね。

 

 そのマックにしたって、ババアに頼まれでもしなけりゃ今ほど関わってなかったろうってのが本音だ。そりゃ昔はババアからカネ貰ってた都合上、定期的にメジロ家に顔出してはいたが、だからって孫娘と仲良くなる都合も理由も感じてなかった、というかそもそもそんなことを考える余裕もなかったものだから、まあお互い顔と名前ぐらいは知ってるぐらいの関係だ。

 

 しかしお嬢様の中には若干一名、病弱なのが居て……こんな表現をしたくはないんだが、過去の記憶の中に居座る幼馴染の姿に重なり、既視感が剥がれてくれなかった。ということはつまり、無関心では居られなかったということでもある。

 

 しかしおれに何が出来たわけでもない。病弱だとか、生まれつきだとか、そういうモンに対しては特にな。それにお淑やかなのは正直苦手だ。もうぶっちゃけてしまうとテイオーみたいなのが1番接しやすいのだ、おれみたいなのにとってはな。

 

 おれはクソガキ×2をそれぞれのトレーニングに向かわせた。正直、ヤツとはサシのがやりやすい。

 

 どうも、お姫様。ご機嫌よう。

 

「……まあ、柊木さん。こんにちは、先日振りですね」

 

 学内の保健室である。おれがアルファードを立ち上げるまでは、ここがトレセン唯一の医療室だったらしい。しかし学内はガキどもの視線と囁き声により、実に居心地が悪かった。そんなのに一々説明してたら日が暮れちまう。

 

 おれは保健室の先生に軽く手を挙げて挨拶した。ちっとお邪魔させてもらうよ、先生。

 

「ちょうど良かった。柊木くん、少し交代してもらえませんか? 所用があるもので」

 

 構わないが、早く戻ってこないと保健室を頂いちゃうかもな。

 

「かなりのところまで奪われてますよ、ありがたいことにね。それじゃ、頼みましたよ」

 

 白衣を翻して先生は去って行った。まぁちょうどいいか。おれはベッドの脇にある椅子に腰掛けた。お姫様は窓の外を穏やかに眺めている。……チッ、こういうところが重なるんだ。イヤだねェ。

 

 ハァ。またサボってんじゃねぇだろうな。

 

「ふふ。そうだと言ったら、叱って下さるのですか?」

 

 お望みとあらばな。だが体調が悪いなら寮帰って寝たらどうだ。保健室のベッドは、別に寝心地よかないだろ。

 

「好きなんです。廊下の方から僅かに聞こえる声や、同級生が掛け声を上げてランニングしている姿、カーテンから透ける陽の光……──この時間の寮は少し、寂しくて」

 

 そうかい。そりゃ悪かったな。

 

 この透明感溢れるお嬢様の名はメジロアルダン、又の名を……クレイジーダイアモンド。深窓の令嬢みたいな雰囲気を醸し出してはいるし、こんな姿を見れば誰でも病弱体質なんだろうなと勘違いすること請け合いだが、別にそんなことはない。ただ少々足が脆いだけだ、日常生活に支障が出るほどではない。

 

 そもそもおれはコイツが保健室にいること自体、仮病によるサボりなのではないかと疑っている。別に現在抱えている持病だとかがないことをおれは知っているためだ。検査結果までこの目で確認したので間違いない。

 

「……ふふ。ええ、仰る通りです。今日は少し……サボりたい気分だったんです。それに……」

 

 お姫様は窓の外からおれに視線を移し、穏やかに微笑んだ。

 

「ここにいたら、柊木さんが訪ねてきてくれるだろう、と思っていました。本当に来てくださって、嬉しいです」

 

 ……どういう意味だ? まさか……いや、そんなバカな。おれは疑いの目をお姫様に向けた。お姫様はコテンと首を傾けて、掴みどころのない微笑みを崩さない。

 

「柊木さんは、私に御用があるのでしょうか?」

 

 ものすごい強キャラ感だ。黒幕のような貫禄を感じる。……いや、まさか、そんなバカな。流石にない……か? おれは内心の疑念を隠して軽口を叩くことにした。

 

 畏まってくれるな。お堅いのは苦手でな、それに用が無ければ、会いに来ちゃいけないってこともないだろ?

 

「まあ! それではただ私に会いに来てくださったのですね、尚更嬉しく思います」

 

 ……イヤ、悪いな。冗談だ、言っちゃなんだが最近はどうも忙しくってな。自由時間も何もない。去年の年末からは天中殺って言うのかね、星の巡りが悪いっつーか、このおれをして、なかなか厳しい期間だと言っていい。さらにありがたいことに現在進行形でさ。

 

 おれはジロリとお姫様を睨んだ。

 

「? ……ふふ、どうなさったのですか? そんなに見つめられると……照れてしまいます」

 

 ほんのりと頬を染めてお姫様は口元を緩める。……強キャラだ。分かっていたことだがおれはコイツが苦手だ。照れてるとこ悪いんだが、別におれン中にはおまえへの熱い情熱とかは篭ってねェ。

 

「照れ隠しなんて、なさらないでください。でも……そんなところも、可愛いです」

 

 コイツ、無敵か……? 内心の戦慄を隠し、おれはさっさと話を進めることにした。あのさあ、なんか学園内でおれとマックが結婚するとかしないとかって噂になってるらしいじゃん。おまえなんか知ってる?

 

「ええ、存じていますよ」

 

 そうか。ないとは信じているんだが、一応聞いておく。おまえが犯人か?

 

「はい。私から皆様にお伝えさせて頂きました」

 

 そうか。そりゃそうだよな、お姫様に限ってそんなことやるわけねーよな。邪魔して悪かった、じゃあおれァもう行くんで。

 

「もう去ってしまうのですか? もう少し、私とお話してはもらえないのでしょうか……」

 

 お姫様のお望みはなるべく叶えてやりたいが、今はちょっとやることがある。また今度な。おれは保健室のドアをガラッと開けて外に出た。

 

 しかし参ったな、この調子じゃ他の連中に当たっても同じ答えが返ってくる気ィしかしない。ただでさえ犯人探しにゃ気が重いってのに……。

 

 ……。

 

 …………今、なんて?

 

 おれは、逆再生のように後ろ歩きで保健室に再入場した。自然すぎて聞き流してしまったが、しかし、理解したらしたで信じられない。

 

 もう一度言ってもらえるか?

 

「も、もう少し……柊木さんと、話していたいと、言いました……」

 

 恥ずかしいことを言った自覚からか、お姫様は顔をちょっと赤くして俯いた。違うそこじゃない、もう一つ前だ。噂話を流したのは誰って言った?

 

「ええと、はい。私から皆様にお伝えしました」

 

 確かに聞こえた。おれは宇宙猫のようにポカンと口を開くほかなかった。そんなバナナ……。

 




やっぱり分かってやってますねぇ

・カレンチャン
 かわいい。カレン的にはお兄ちゃんと一緒に居られる時間が増えるので、誘われた時は内心大喜びだったはず。

・メジロアルダン
 かわいい。感想で、トレーナーとアルダンが関わりありそうってのを読んで確かにそうだなって思ったので登場しました。攻撃力の高さは本作でも随一。

ちょっと今回キリ悪いですが、とりあえず投稿する精神が大事の精神の大事の精神です
でも流星のロックマンやってるので投稿は間違いなく遅れます……

いつも読んでくれてありがとうございます。感想、ここ好き、お気に入りはモチベーションになってます(ハーメルン作者はこれよく言ってますけど社交辞令とではなくガチです)
じゃあ評価と感想置いてけ!!
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