【悲報】転生したらしいんだけど秒でオークと鬼ごっこしてる【どこここ?】 作:火壁
草木も眠るウシミツアワー……には少し早い午前1時。風扶突拭かない山伏峠は静寂に包まれ、道路を挟むように生い茂る木々の影に賢斗達はいた。
事前に組織の周辺で張り込んでいた仲間より、救助対象を乗せたトラックが発車した事を受け、立てた作戦を実行するために、改めて楓から無線が届く。
『これより10分後、ポイントに対象が接近する。先ずは高嶺の術で敵勢力の無力化。制圧後、救護者を回収し、退散します』
先の会議は、結論として賢斗と穂稀の意見を聞き入れはしたが、大半は颯のワンマンシップで決定された。内容は、対象のトラックを賢斗のジケルドで拘束。敵対勢力を無力化した後に救助対象を回収するというもの。シンプルで分かりやすいものではあるが、スレ民からしてみれば「ガバガバどころかスカスカ」評価は待ったなしの作戦であった。因みにスレ民の場合、「どうせ堕ちてるから爆破!!」とかやる。どっちもどっちである。
「ふうま、そっちはどうだ?」
『気味が悪い程には上々だ。基地内に人員が一人もいない』
「一人も?見張りもか?」
『ああ、少しきな臭い』
恙なく作戦を遂行出来るのは僥倖である。しかし、余りにも妨害が無い場合、それは更なる脅威を警戒するべきである。
『そろそろ対象がポイントに着くわよ!今は目の前の事に集中して!』
「マジか……了解。そちらも気を付けて!」
遠くから小さい光が徐々に近づいてくる。木陰より右手を構え、
「ジケルド!!」
強大な磁力を持つ球体は、ゆっくりと道路へ動き、対向車線に留まる。急ブレーキをかけるトラックだったが、瞬く間に磁力の球体が弾ける。磁力を帯びたトラックは荷台をひしゃげさせ、稼働を完全に停止させた。
『ちょ、ちょっと!アレ、中の人は大丈夫なの!?』
「対魔忍なんだから大丈夫大丈夫。それより早く。遅れたらそれこそ怪我人出るぞ」
『……分かったわ。救助隊、行くわよ!!』
颯の合図で、穂稀含む救助隊がトラックへ押し寄せる。運転手や荷台にいたオークを蹴散らし、収容されているであろう扉を開けると
「……いない?」
「っ!全員退避!!!」
賢斗の叫びも虚しく、トラックに火炎弾が飛来する。大半はトラックの爆発を回避出来たが、一部荷台の奥にいたメンバーは火炎に巻き込まれてしまう。
「クソッ!ふうま!予感的中だ!」
『こっちもだ!入口をオークに封鎖されて出られない!応援は頼めないか!』
「敵勢力を把握出来ていない!!どうにか人員を割くから耐えてくれ」
『任せろ賢斗!俺の爆炎で全部蹴散らしてやる!!』
舞華が心配させまいと檄を飛ばすが、現実はトラブルが容赦なく襲い掛かっている。火炎を打ち込んだ犯人は特定できず、トラックに取り残された数名と救助対象が見つからない。最悪の想定が首をもたげる。そして、それに応えを示すように、賢斗の後方から、数本の苦無が投げられる。
「っ!ちぃいっ!!」
「アレ?見ない顔だったから新顔だと思ってたんだけど、案外とやるね~」
「……俺としては情事にかまけて腕が落ちてると考えてたんだがね」
「それは見通しが甘くない?これでも対魔忍なんだけど?」
「お、そうだな。だけど元と裏切り者って但し書きを忘れんなよな~」
軽口の応酬の中には、確かに剣吞な空気が漂っていた。そして、瞬きの後
「ザケル!!」
「ハハッ!仲間にも容赦なーい!」
賢斗の放つ第一の術を、 大回りに回避する対魔忍。隙と見て苦無を再び投げるが、賢斗も対応して回避する。一定の距離を保ちつつ、両者は再び向き直る。
「動きが無いと暇だろ?裏切った理由でも教えてくれよ」
「殺し合いの中で世間話とか余裕だねー。まあ強いて言うなら……刺激?オークのチンポって知ってる?人の腕よりおっきいんだよ?彼氏とのセックスとか思い出してもさ~。あのチンポに比べたら満足出来そうにないってかwそんで、オークのチンポ欲しかったら新しい娘連れて来いって言うじゃん?じゃあやるか~ってね」
「……随分ベラベラ喋るな」
「まっ殺すから関係ないって事で。じゃあ死ね」
空気が変わる。相手の殺気が賢斗に刺さり、大きく後ろに飛び退く。次の瞬間、賢斗のいた場所に人間大の剣山が賢斗の胴を突き刺すように現れていた。
「こいつ……さっきの火炎の奴じゃない!」
賢斗がトラックの方へ振り返ると、そこには救助隊のメンバーにいなかった人物が二人、颯と穂稀を中心に戦闘を開始していた。
「クソッタレ……多くて二人と思っていたんだがな」
「当てが外れたって奴~?どっちにしてもこれで終わりだけどね」
対魔忍は躊躇無く土遁を繰り出す。連続的に現れる剣山を回避する賢斗。すかさず
「ゴハッ!あーもう!さっさと死ねよ!!」
「死ぬわけねえだろ!ザグルゼム!!ザグルゼム!!」
「ッ!……痛くない?てことは他に何かあるよね?ここは逃げる!」
「逃がさねえ!!ザケルガァ!!!」
賢斗の術に当たらないようにジグザグに逃げる敵だったが、
「なっ!?ぎゃああああああああああ!!!」
第七の術で強化された第五の術が敵に突き刺さる。耐え切れず破壊された対魔忍スーツから彼女の柔肌が溢れ出るが、賢斗は気にしている暇はない。
「良し、隊長!」
賢斗は振り返り、救助隊の様子を確認する。するとそこには
「っ!」
炎上したトラックを背に、負傷した颯を庇うように立つ穂稀が、自身の武器を構えて戦っていた。
アポロウーサ禁止になってブルー入ってます。