憑依したらクレイマンだった件 (転スラネタバレ注意) 作:謎のコーラX
「う、ここは……?」
ベッドの上で身体を起こした
木の温もりが感じられる清潔で静かな部屋――ここは魔領ジスターヴの城内に存在する静養室だ。
彼が周囲の様子を探っていると、部屋の傍らに立っていた一人の女性と目が合った。
「あぁ、目を覚ましたようですね」
緑髪の美しい女性――ミュウランが、ほっとしたように穏やかな笑みを浮かべた。
彼女が少し目を伏せると、その背後からすっと影が差すように、一人の少年が姿を見せる。
「えっと……この子は?」
怪我の手当てを受けた
するとミュウランは少年に一礼し、口を開く。
「この方はアニスク――」
「僕はアニス! 魔王クレイマン様の配下さ」
ミュウランが言葉を最後まで言い切る前に、少年――アニスが勢いよく割り込んだ。
ミュウランは言いかけた口を挟まれ、少し訝しげな表情を浮かべる。
しかし、アニスが厳しい表情で無言の圧をかけると、ミュウランは呆れたように小さくため息をついた。
「……ええ、はい。この方……いえ、この子は、我が主である魔王クレイマン様の従者のような子です」
その言葉を聞いた瞬間、
「っ!?」
彼は酷く驚き、まるで弾かれたようにベッドから飛び降りた。
そして、そのまま床に突っ伏すようにして、ミュウランとアニスの前で激しく膝をついた。
「わ、私をお助けくださり、誠にありがとうございます! ですが……それでいて、図々しいとは承知の上で、お願いがございます!」
懇願する
「……何かな?」
「里を……いえ、我ら
その真摯で悲痛な叫びに、アニスは少しの間だけ思索に耽る素振りを見せ、静かに首を頷かせた。
「……続けて。何があったの?」
「はい……! 今朝、我が里にて恐ろしいクーデターが起きたのです……!」
「本来であれば、族長の息子である若が次期族長を継ぐはずでした。……しかし、里でもそれなりに腕の立った一人の男が、ある日を境に何やら奇怪で恐ろしい術を身につけ……同胞たちを次々と洗脳し、操り始めたのです! 知識も力も奪われ、意思なき兵隊に変えられ……そして、その狂気の手で、族長様を殺害いたしました……!」
言葉を詰まらせ、涙を浮かべながら彼は続ける。
「私めは、若や姫様をお逃がしするために敵を引きつけ、途中で離れ離れになってしまいました……。ゆえに現在の里がどうなっているかは分かりませぬが、間違いなく危険極まりない状況です……!」
そう語り終えると、
「どうか……! どうか我らをお助けくださいっ……!!」
部屋の中に重苦しい静寂が落ちる。
アニスは腕を組み、顎に手を当てて考え込む素振りを見せた後、ゆっくりと声をかけた。
「……わかりました。この件は、僕からクレイマン様へとお伝えしておきます。あなたは傷も深いですし、今はゆっくりとお休みください」
「あ、ありがとうございます……!」
感謝の言葉を述べる
次の瞬間、空間がぐにゃりと歪み――アニスとミュウランの姿は、一瞬にして静養室から消え去っていたのであった。