銀英伝の艦隊戦の源流ってどこにあるんやろうか?やっぱ13日戦争時代の宇宙軍同士の戦闘とか?から思いついた代物を自由惑星同盟士官学校のレポート風味にしてでっち上げたブツです。

※この小説はらいとすたっふルール2015年改訂版に従って作成しております。

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13日戦争期における宇宙戦線、並びに当時の宇宙戦闘についての考察

今日の自由惑星同盟宇宙軍に至るまでの宇宙に至る軍事行動の主体たる宇宙軍とそのその基礎を成す軍事ドクトリンの源流はいったい何なのであるのか。これは地球統合政府宇宙軍や黒旗軍にその源流を求めるのが今日における一般的な見解であるが、地球統合政府軍や黒旗軍のそれはなにをもとに生み出されていったのか。

 

自由惑星同盟のみならず帝国や地球教徒の公開資料に食指を広げ、その結果として私は13日戦争期の二大超大国、核の炎の傍らに忘れられた「宇宙戦線」ともいうべき戦線にその源流を求めようと考えた。

13日戦争以前において人類は火星にまで足を広げ、二大国が高空から小国群を威圧するための宇宙軍を保有していたことは諸兄らもご存じのとおりである。(とりわけ有名なのは当時としては圧倒的な戦力を誇ったとされる北方国家連合航空宇宙軍であろう。)

北方連合国家のそれは高空から威圧し、有事があれば遥か彼方から爆撃するといういわば対地攻撃を主軸に置かれたものであった。(事実、北方連合国家の数少ない初期艦艇のうちいくつかが核攻撃に従事している。)

 

ではもう一つの大国、三大陸合州国のそれはどうだったのであろうか。これはあまり知られていないことであるが合州国宇宙軍のそれは当時としては珍しい「宇宙戦闘」を主軸に設計されていたことが判明した。つまるところ、北方連合国家宇宙軍の迎撃、すなわち「初歩的な」宇宙艦隊戦を視野に入れていたものであることがよく分かる。

 

対地攻撃と宇宙戦闘、この二つの相反するドクトリンの軍隊はどのようにしてぶつかったのか。残念ながら、花火が上がるほど華々しかった地表での戦闘と比較すると、あんまり華々しくない、むしろ地味なものであったというのが分かった。

 

13日戦争において両宇宙軍は地表をはじめ衛星軌道上や月、火星にいくつかの泊地ともいえる軍事基地をそれぞれ建設していた。これは将来における(結局2166年まで待たないといけなかった)宇宙探査及び開拓に向けての基地であると同時に、両国の威信をそれぞれの相手に誇示するための巨大なモニュメントとしての意味合いを持っていた。そこから、かなりの規模の軍事基地であったとうかがえる(月面に存在する一部の基地は月面都市の基礎として機能した歴史がある)

 

13日戦争における「宇宙戦線」とは、この幸運にも生き残ったいくつかの宇宙泊地をめぐってのいくつかの小規模な戦闘を指して言うのである。

 

ではそれは具体的にどのようなものであったか。ここからは詳細に書かれた資料に巡り合うことはなかったため、いくつかの資料から推察できることを記しておく。

まず戦争勃発から13日間、すなわち13日戦争においてである。ここでは警戒用に残された一部の艦艇を除いて、北方連合国家宇宙軍が搭載された核兵器を惜しげもなく合州国や中立国に向けて撃っていた時期である。当然ながら宇宙に残存していた合州国宇宙軍が迎撃のために出撃するも、とんでもない事実にぶち当たったのである。そもそも敵の位置が分からないのだ。地上の司令部やレーダーサイドからの情報は当然核兵器で焼け焦げてしまっているので使い物にならず、連合航空宇宙軍がどこにいるかすらも分からないのである。結局、残存燃料の観点から今回は撤退することになったのである。

 

二回目はそれから半年たってからのことである。生き残った生存者を求めて地表に降り立とうと合州国軍が大気圏突入を行おうとすると、同じく生存者を求めて降り立とうとする連合航空宇宙軍艦艇と鉢合わせたのである。当然両軍は戦闘に突入するも、何分宇宙という地上とは勝手が違う戦場のこと、弾がやたらめったら見当違いのところに飛ぶことがよくあることであり、当時は装甲技術がそこまで進歩していなかったことから、弾がかすっただけで致命傷になったという。結局、両軍の艦艇はなれない戦闘で消耗していき、大気圏突入態勢も取れずに燃え尽きてしまい、貴重な戦力を浪費する結果に終わった。

 

三回目はそれからまた半年ほどたった時である。生き残りが存在することを悟った両軍は広大な宇宙を貴重な装備を使って探し回り、ついにその所在を突き止めたのである。両軍はさっそく攻略部隊を敵基地に派遣、ついに会敵に至ったのである。だがここで問題が発生した。これまで隊列を組んでの戦闘ではなく、単艦による警告や威圧がほとんどであったので、どのように会戦を行うべきかわからなかったのだ。結局、とりあえず横陣や縦陣を組んで射撃戦を展開することとなった。広い宇宙のことなので、あまり火器の射程が足りず、かといって陣形も後世のように統制されているとは言い切れず、記念すべき人類初の宇宙会戦はだらだらと弾の打ち合いに終わった。

 

この三つの事例は宇宙で戦闘をどのようにして展開するかという当時の人類の壮大な実験的な意味合いが含まれていたと考えられる。西暦に換算して2039年の宇宙戦闘は、こうしてだらだらとしたものに終わったが、このデータをもとに、宇宙戦ドクトリンはさらなる発展を遂げることになる。

2040年になると両軍は単艦や宇宙作戦機による通商破壊戦へと移行した。だらだらと続く会戦を続けるくらいなら相手の戦力をできる限り消耗させようという魂胆である。この一連の戦闘で宇宙艦艇や作戦機をどう動かすべきか、どのように間合いを取るべきか、どんな航法で肉薄すればよいのか、だんだんと把握していき、積み重ね、形にしていった。

 

そして戦争開始、すなわち地上が焼け野原になってから3年、ついに今に見られる本格的な会戦が生起したのはこの年になってからである。連合航空宇宙軍残党が火星の衛星フォボスの合州国軍基地を襲撃するため進発、合州国がそれを迎え撃つ形で勃発した。

 

残存の核弾頭すら持ち込んだこの会戦では、対地兵装をすべて対艦兵装に換装し、火力で圧倒する北方連合航空宇宙軍と速やかに通商破壊部隊を排除するために機関を改装し、速度で圧倒した合州国宇宙軍の集大成とも呼べる戦闘であった。

 

この戦闘の結果は合州国軍の勝利であった。フォボスの裏手に回してあった部隊がスイングハイ航法で連合航空宇宙軍に接近、そちらにも気を配ることを強いらせ、そのうちに攻勢に転じ、見事撃退せしめたのである。

 

しかし合州国軍も大勝利であるとはいいがたいほどの損害を負った。核弾頭と大火力による圧倒的な攻勢は無視できぬほどのダメージを与え、軍全体として到底数年間は活動を自粛せねばならないほどの損害を受けたのである。宇宙で核兵器が初めて使用された事例でもあったのだ。

 

それから数年間は同じような会戦が続くものの、最終的な結果としては両軍ともども食料や酸素が尽きて全滅の憂き目にあい、ただそこに積み重ねた殺戮のデータが残されるのみとなったのである。このデータは2166年に地球統合政府の月面及び火星開拓隊が回収し、後々に地球軍や黒旗軍でさらなる発展を見ることになる。

 

以上が13日戦争における宇宙戦線及びそこで展開された戦闘の顚末である。初期の戦闘であるゆえに今からしてみれば洗練されておらず、試行錯誤が目立つ粗削りな戦闘であったが、ここから人類史における宇宙戦の歴史、そして現在まで続く宇宙戦闘ドクトリンとそれに基づいた艦船設計の源流がありありと見えてくるのである。

 

この粗削りの宇宙戦闘から、我々自由惑星同盟宇宙軍のルーツを広く知られることが出来たら、これに勝る嬉しいことはないと私は思う。

 

自由惑星同盟士官学校4回生 ムッチャ・デッチアゲッタ候補生

 




深夜テンションで仕上げた。後悔はしていない。


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