祝福の歌声~コナン世界でライスは頑張って生きてみるよお姉さま!~ 作:クレナイハルハ
日本ウマ娘トレーニングセンター学園……通称、トレセン学園在学中のウマ娘。
ライスシャワーの失踪は世間を良くも悪くも大きく騒がせた。
中には彼女にたいしてのネットや現地の人たちへのマナーについて非難する者が増え、ライスシャワーへの酷い発言は完全にでは無いが消えていった。
そんな中でも、絶えず彼女に対する誹謗中傷が消えた訳ではなかった。
毎日の様に彼女に対するコメントや意見がニュースで流れる。
そんな事が続き1ヶ月、失踪していたウマ娘。
彼女の生存と帰還が報道された。
記者会見では失踪していた事に対する謝罪、そして理事長による彼女の復帰戦である特別レースの開催が報道された。
そのレースに参加するウマ娘はライスシャワー以外は今のところは発表されていない。
───⏰───
ライスシャワーはグラウンドを走っていた。
一人でずっと、ひたすらに走っていた。頭に思い浮かぶのは記者会見前、この世界に帰ってきた時の事だ。
学園の理事長である秋川やよいに理事長室に呼び出されたライスシャワーは理事長から自身の復帰レースの開催を考えていることを告げられた。
『質問!君の帰還を祝い復帰レースを開催したいと思う。』
『ふ、復帰レース、ですか?ライスの?』
『うむ!』
そんな問に、ライスシャワーは迷った。脳内には今でのあの時の記憶は深く残っている、怖い、逃げたい、そんな思いが心の中で呟かれるなか、ライスシャワーは思い出した。
あの日、別れるのが自身も辛いと語りながらも勇気を持てる歌を、思いを歌ってくれた天使の事を。
壊せ、弱気な君を。たくましい自分になれるさ。そう励ましてくれた。
だから、ライスは頑張らないといけない。
そう思いライスシャワーは理事長の提案に同意した。
このレースに参加するウマ娘は既に決まっている。
ライスシャワー、ハルウララ、メジロマックイーン、ミホノブルボン、ヒシアマゾン、アグネスデジタル、キングヘイロー。
ライスシャワーとの仲の良いウマ娘や、彼女の事を心配していたウマ娘達が集められている。
そんなレースに向けてライスシャワーは、今まで走ってこなかった分の遅れを取り戻す為にこうして練習に取り組んでいた。
だが、一つだけ彼女が乗り越えられていない物があった。それは集団でのレース、正確にはレースの会場にいる人達の非難の声……幻聴だ。
その声に反応し彼女は失速してしまう。
彼女がそれを乗り越え、レースを走ることが出来るのか。
ライスシャワーside
今日の練習はここまでにしよう、そう思いながら寮へと戻る。部屋には同室のゼンノロブロイの姿があった。
「ライスさん、お帰りなさい」
「ただいま、ロブロイちゃん」
そう言って鞄を起き、手荒いやうがいを終える。そしてシャワーを浴びて汗を流した彼女はこの世界に帰ってきたとき持っていたギターの入ったケースをベットの上において、その隣に座りケースに触れる。
天使様………。
この世界に帰ってきたとき、ライスは天使様のくれた指輪を付けた状態で理事長さんの部屋で眠っていたらしい。
あの後、今まで何処にいたのかを聞かされたときライスは何と説明すれば良いのか分からなかった。この世界とは違う世界、それもウマ娘がいなくて、うま?と言う動物がいる世界。
そんなの話して、信じて貰えるか分からなかった。天使様は自身の存在や、別の世界に関連する出来事を話してはいけない、そんな事を言っていない。
だから天使様の事を話してみた、でも信じてくれたのはやよいさんとたづなさんだけ。
話して信じて貰えてライスは思わず本当に信じてくれるのかと二人に聞いた。それに対し二人はウマ娘の、ライスの言うことを信じくれた。
でも天使様や別の世界にいたことを信じてくれなかったウマ娘もいた。
当たり前だと思う、ライスももし別の世界に言っていたなって言われたら信じられないと思うから。
ふと、薬指に嵌めた天使様のくれた指輪に触れる。学校に没収されたりするのかと思ったけど、やよいさんとたづなさんは付けていた方が良いと言って、この指輪は着用することを許可されている。
「ライスさん、ギター弾けたんですか?」
「ライスはまだまだ下手だけど、一応弾けるよ?」
そう言うとロブロイちゃんは弾いて見てください!そうワクワクした様子でお願いされた。ライスシャワーは少し恥ずかしそうにしながらも了承し、ギターを構え深呼吸をした。
ライスが引いたのは、自身に憑依した天使様がライスへ向けて作ってくれた歌。次に最後に歌った祝福の意味を持つ歌。
歌いながらギターを弾くのを終える、するとロブロイちゃんは凄いと褒めてくれた。
も、もっとギターを弾けるように練習しないと。
そう思いながらライスはギターをケースにしまいながら窓から見える空を見つめる。
天使様、ライス頑張るよ。
side out
そうして向かえた復帰レース日、勝負服に着替えたライスシャワーはレース場に入る前に付けていた指輪に触れる。
心臓がドクドクと早く鼓動し、それと同時に冷や汗が流れる。
脳裏に浮かぶトラウマ、幻聴。罵倒の中聞こえてきたのは、天使様の声。大丈夫、大丈夫と自身に言い聞かせ、彼女はレース場へと向かう。
「天使様、みててね……」
───⏰───
会場にレースの開始を知らせるファンファナーレが響き渡り、実況席からの放送が開始される。
『上空には雲1つない青空が広がっています。さぁ、始まって参りました。ライスシャワー復活特別レース、良バ場の発表です』
実況からの放送を聞き流しながらライスシャワーは深呼吸しゲートに入る。自身に落ち着け、大丈夫だと言い聞かせ続ける。それでも、自身に送られる悪意ある視線をライスシャワーは感じていた。
故に体が緊張で、恐怖で固まるなかゲートが開きレースが始まった。自身への鼓舞、そして恐怖に耐える事で集中が途切れ、レースに出遅れ焦りつつも走り出すライスシャワー。
無論、この会場にはライスシャワーに対しての良い思いを思っている人物達も少なくとも存在する。だが、今回の彼女の失踪を通して、後悔をしたもの達もいる。後悔したからこそ、こうしてこの場で彼女を応援することが贖罪になると思って。
この場で彼女を悪く話し、叫ぶ者はいない。
だが、こういった場所でも邪魔をしようとする者や妨害しようとする人たちは少なからず存在するのだ。
レースも終盤、なんとか上位には入り込んだライスシャワー。最後の直線、1番前へと走り出そうと足に力を入れた。
『────』
その時だった、聞こえてしまった。
大声でわざととしか感じられない、彼女への罵倒が、幻聴を引き起こす。
目の前が真っ暗になり、道は見えない。
体を支配するの恐怖心、悲しみ等。強く植え付けられたトラウマ。
『また罵倒される』『逃げなきゃ』
『また不幸になる』『また不幸にしてしまう』
『怖い』『嫌』『悲しい』
そんな思いが走る体の動きを抑制し、走る速度が遅くなっていき次々と他のウマ娘達に追い抜かれて行く。
走る彼女達の距離、頑張れば抜き去ることが出来る距離が、遠くに見える。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
その言葉が浮かび上がり彼女は心の中でそう唱え続ける。
ごめんなさい天使様、やっぱりライスは……
涙が頬を伝う。
走る事を止めよう、彼女が立ち止まろうとした時、何者かが彼女の手を掴んだ。彼女は腕を光引っ張られた事で走り出す。
「───あ」
彼女は、ライスシャワーと瓜二つの姿をしていた。
違いは真っ白な髪、真っ白なドレスに真っ白な薔薇の装飾の付いた帽子。漆黒のライスシャワーと対局の純白の少女。
ライスシャワーの手を引いて走る彼女は、走りながらライスシャワーへと振り向くと、彼女を安堵させるような優しい笑みを浮かべ、口を開いた。
『大丈夫、私の思いが貴方を守るから。ほらライス、行こ?』
その聞こえてきた声、言葉が恐怖に固まっていたライスシャワーの心と体を温かい何かが包み込む。気づけば、幻聴は聞こえなくなっていて会場からは私を応援する声が聞こえた。
「うん、ライス頑張るよ。だから見てて、
そんなライスシャワーに真っ白な少女は走るのを止め、掴んでいた手を離してゴールへと走るようライスシャワーを促す。
ライスシャワーは走り出す、先程までとは何段階も違う走り。先程まで以上の速度で駆け出した。
『おおっと!ここで失速していたライスシャワー驚異の追い上げです!どんどんと加速していく!?自身を抜いていったウマ娘達を一人、二人とどんどん追い抜いていく!!』
ライスシャワーには目の前の景色が先程までの世界よりも光輝いていた。
どんどんと加速して、先頭争いをするメジロマックイーン、ミホノブルボンを外から追い抜き、そのまま3バ身以上の差を着けて差しきり見事1位に輝いた。
そんなライスシャワーの走りに沢山の人たちからの拍手が会場に響き渡るなか、ライスシャワーは深呼吸を繰り返し、顔を上げる。
「やりましたねライスさん!」
「凄いよライスちゃん!最後のビューンって早く走ってたの!」
「ライスさん、見事な走りでしたわ!」
沢山のウマ娘から祝福の言葉を受け取り、彼女は涙を流しながら笑っていた。
「みんな、ありがとう!」
ふと、さっきと同じように後ろを振り返る。だが、そこには見た天使様の姿はなかった。
「天使様、ライスやったよ……」
幻覚だったのか、本物なのか。どちらにしても、もう会えない。その事が悲しくて自身の左手の薬指に着けたダイヤモンドに触れ目を瞑った。
天使様、ありがとう。
でも、もっと話したかったな……。
そんな彼女の思いを他所に、1位を祝福するウイニングライブが始まった。
───⏰───
ウイニングライブも終え、解散したライスシャワーは学園の寮へと向かっていた。そのはずなのだが、何故かライスシャワーは三女神像のある広場へと来ていた。
「なんで?ライスは、確か寮に……」
周囲を見回す、学校の前なのにも関わらず周囲には全くウマ娘が居なかった。
流石におかしい、校舎前がこんなに静かなんて。
そう思っていたライスシャワーの背後からギターを弾く音が聞こえた。振り替えると、三女神像の近くに設置されたベンチの上に彼女はいた。
ライスシャワーと瓜二つの姿をした少女、彼女は足を組みその上に置いたギターを持ちライスシャワーへと微笑んだ。
「ライス、頑張ったね」
「てんし、さま?……」
天使、カノンはライスシャワーの反応にクスリと笑う。
「天使様!」
ライスシャワーはその瞳から涙を流し、カノンへと抱きつく。そこいるのが幻覚や幻ではないことを、カノンに触れた事を感じさせた。
「心配で、来た。これで、会えるのは本当の最後。もうライスは一人でも大丈夫だと分かったから。最後に送る歌、聞いてくれる?」
抱きついてきたライスシャワーを離すと、そう顔を傾げ問うカノンにライスシャワーは頷きベンチの隣に座る。
「ライスに送る最後の歌、『往け』」
カノンはギターを弾く。最初はゆっくりとしたリズムだがだんだんと早くなっていくリズムと歌詞。
「『いけ、 わたしよ 行け!って もう、誰も追いつけない場所まで加速していけ、運命なんて気にしてる暇ないんだって』」
まるで詩ではなく、誰かの独白や思いに近い歌を目蓋を閉じて隣でウマ耳を澄まし聞き入るライス。
「『昔から弱虫のくせに 気づかないふりをしてきたね "大事” だって守りながら いつも 「大丈夫」って笑いながら』「ツラくない」いながら
「変わりたい」と泣いていた」
ライスシャワーは隣から聞こえてくる歌と演奏に胸が温かくなっていくのを感じた。そして思い出すのは今までの記憶。
全てが嫌になって、天使様と一緒になって過ごして沢山の事を知って、沢山勇気を貰った。何度も天使様の歌が、助けてくれた。
今日だって、天使様が手を引いてくれなかったら。
「『わたしよ行け!って、もう誰も追いつけない場所まで!加速していけ運命なんて気にしてる暇ないんだって。いま、わたしの今!って』」
天使様はきっと、ライスの背中を押してくれている。誰も追い付けない場所まで、加速して走れ。そう応援してくれているような歌。
「『そう、あの日の涙からの未来、辿り着いたわ。嗚呼、 まだみてみたいの 嗚呼』」
きっと、天使様は私の今後を、レースを見たいのかな?
「『キミトアスへ 世界は万華鏡』」
そう歌い最後の演奏を終えた天使様はゆっくりとし深呼吸した。ライスシャワーは閉じていた目蓋を開き、瞳から涙を流した。
「ライス、やっぱり天使様ともっと一緒にいたいよ」
「ライス……」
来ている服の袖で涙を拭うライスシャワーに、困った顔をしてライスの頭を撫でるカノン。
ライスシャワーは寂しい、悲しいといった負の状態の時にカノンと共に過ごして心の傷を癒していた。故に、彼女と一緒にいることが当たり前の日々を過ごし、彼女を家族の様に思っていた。
そんな時に知らされた、別れなければならないという事実。それを理解してライス自身も分かった、頑張ると告げた。
でもそれは心からの言葉じゃなかった。
本当は別れたくない、ずっと一緒にいたい。
その思い全てを、これ以上天使様に迷惑がかからないように、そう決意して我慢していた。
決意していた思いが、崩れてしまった。感情のダムが崩れて溜まっていた感情が爆発した。
「ずっと、ずっと一緒にいたいよ。」
そういってカノンをぎゅっと抱き締めるライスシャワー。
「カノンもそう思うけど……」
「お願い、
そうライスシャワーが声を上げた。目の前にいる天使ではなく、普通の言葉として神に祈った。
故に、その祈りを聞いた神は現れた。
空に光が生まれた、眩しいほどの光。でも目に痛くなく、ずっと見ていたいと思えるほどの温かい光。
やがて、光の中から一人の女性が降りてきた。亜麻色の髪に、背中から生えた純白の翼の生えた白いドレスを来た女性。その存在にライスは呆然とし、カノンは驚きの様子で女性を見ていた。
「ふぅ、久しぶりに下界に来たわね。さて──」
女性はライスシャワーとカノンを見ると、カノンへと歩み寄って行く。それに対しカノンはギターをベンチに置いて急いで女性の元へと走り目の前で跪いた。
「て、天使様!?」
そんなカノンの様子に驚きアワアワとしているライスシャワー。
「お久しぶり、エロース様」
「お久しぶり、元気にしてた?カノンちゃん。」
「はい……」
「別にいつも通りの話し方で良いわよ。」
現れたのは以前にカノンが手伝いに向かった際にお世話になった愛の神、エロース。
「さて、天使、ザフキエル様の補佐カノン。」
「ん……」
「貴方に新たに命令を与えるわね。これより………うーんと、そうね!暫く休暇を与えるわ!」
「んッ!?」
「せっかく貴方がギフトを送る程の子が一緒にいたいって言ってるんだし、暫くは一緒に過ごしなさい。私が許可するわ」
「えっと、つまり天使様と一緒にいれるの?」
ライスの疑問に笑顔で答えるエロース、そして突然の休暇を言い渡され驚き固まるカノン。
「そうよ!」
「やったよ天使様!一緒にいられるって!」
「エロース様、なんで……?」
その声に嬉しさのあまりに跪くカノンに後ろから抱き付くライスシャワー。抱き付くライスシャワーを一度見てから再びエロースへと向き直るカノンにエロースはため息を付きながら口を開いた。
「カノン、貴方は全く休暇を取らないからザフちゃんも心配してたのよ。彼女と一緒にこの世界に留まって、休暇を消化してちょうだい」
「……分かった。カノンはライスとこの世界にいる」
そういって嬉しそうに笑いながら抱き付いているライスシャワーの頭を撫でてから、カノンはエロースへと頭を下げた。それを見てヴッ!?と胸を押さえるエロース。
「カノン×ライス……尊い。これを癒しに仕事頑張れるわぁ……それじゃあザフちゃんには私から言っておくからね?」
そういって消えていくエロースを見送りカノンとライスは改めて向き直ると口を開いた。
「これからもよろしくね、天使様!!」
まるで夢の叶った様子で笑うライスに、微笑んでカノンは返し握手する。
「こちらこそ、よろしくライス。」
「そういえば、天使様お家はどうするの?」
「取り敢えず、歌って稼ぐ──」
「それだとライスが週末しか会えないよ!?うぅ、理事長さんに話して頼んでみる!行こ!天使様!」
そういってレースの時とは逆に手を引き走るライスと、ライスに引っ張られ走り出すカノン。仲良く走り出す二人は笑い会いながら学園の中へと歩いていく。
ライスシャワーの左手の薬指に嵌められている指輪。
その指輪に埋め込まれたダイヤモンドに秘められた意味、それは『
これは絆が繋いだ祝福の未来。
青薔薇のウマ娘は白薔薇の天使と共に、日々を過ごしていく。今までの生活で彼女が感じていた不幸の全てを、幸福へと変えて。
テーテーテ♪テーテーテテー♪
テーテーテテーテーテー♪
╲ガコン!!╱
「ライスは、頑張って……走るッ!」
NEW!
〔天使の祝福〕
ライスシャワー
☆☆☆
固有スキル『
【スキル演出】
レース場、ライスを追い抜いていくウマ娘達を見てライスは悲しそうに俯く。
指輪が光り、ライスシャワーに瓜二つの真っ白な少女が現れて彼女の手を引いて走り、連れてライスシャワーも走り出す。
「──あ」
そして少女は優しく笑いかけると、ゴールへと走るよう促す。
『────』
「うん、頑張る、だから見てて!天使様!!」
そういってライスシャワーは走り出す。
ご愛読ありがとうございました
これにて本作は完結と差せていただきます。
本作は色々と会ったものの、こうして完結させられて良かったです。
皆様の感想や評価のおかげで、ここまで書くことが出来ました。
読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。
………ついでですが『白薔薇』の花言葉は『心からの尊敬』『無邪気』『純潔』『相思相愛』『約束を守る』『私はあなたにふさわしい』『あなたの色に染まる』らしいですよ。
短編ifを需要がありますか?
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コナン世界にて
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ウマ娘世界にて
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いらない