薄暗い洞窟の中を、一人で歩く者がいる。
深めの編笠のせいで、顔の上半分は見えない。ファンタジーな世界観のSAOにいる者にしては少し珍しく和装だ。左腰に差してある刀が、それに拍車をかけている。
洞窟の奥へ奥へと歩みを進める。しばらく、草履の音だけが洞窟に響いていた。
かなり歩いただろうか、急に足を止める。微かにだが、少し先のほうから話し声が聞こえる。
(ここか)
システムウィンドウから、《索敵》スキルを発動させる。すると、カーソルが見えた。オレンジ色のカーソルだ。それを確認してから、歩いて話し声のした方へ向かう。
そこは、とても大きな部屋だった。これくらいの広さがあれば、ボスモンスターがいそうなものだが、いたのは数人のプレイヤーだった。そして、その輪の中心に、黒いフード付きボロポンチョを着た背の大きな男がいる。突然の訪問者に、彼らは少し驚いているようだ。
(見つけた……!)
そう思った瞬間、右手は腰の刀に伸びていた。そして、プレイヤー達に向かって突っ込む。
プレイヤー達は、突然の襲撃に慌てて構えるが間に合わない。一人が抜き打ちを真正面から食らう。それだけで、HPゲージが二分の一持っていかれている。さらに、そこからの袈裟斬りで残りの二分の一も無くなった。パリンという破砕音と共に、斬られたプレイヤーは粉々になって消えた。
再び構える。すぐに、別のプレイヤーが反撃してくる。しかし、それを難なくあしらい、また一人屠った。
(この下っ端どもを斬るのが、目的では無い)
さらに、横からまた別のプレイヤーの剣撃が襲ってくる。身を捩ってそれを躱す。身体には当たらなかったが、編笠に命中した。編笠の耐久度は一瞬で全損し、パリンと音を立てて消え去る。今まで隠れていた顔の上半分が明らかになった。
「ハハハッ、なるほどな」
ボロポンチョの男は、見えたその顔に見覚えがあった。
《
「……」
さっきまで編笠を着けていた男、タクは、何も言わず、
(たとえ、何があってもコイツだけは殺す)
ギルドの仲間を全員殺された復讐への執念が、タクをここまで突き動かしていた。
「お前らは下がれ。俺が殺る」
「シュウッ!」
声を発して、
戦闘は長く続いた。個々の技というよりは、集中力と精神力の勝負の体を成していた。一手でも間違えば、それは死を意味する。
ここでタクの脚がもつれた。この機を逃すわけも無く、
絶望に染まるタクの顔が見られる。
……はずだった。
タクは、笑っていた。この時を待っていたというふうに。ここで
頭上から振り下ろされる刀身が、
……はずだった。
グサッ
タクの背中から前胸、ちょうど現実では心臓に当たる位置を、衝撃が通り抜けた。
後ろには、
(何……が……あっ……て……も、
パリン
最後まで足掻くも、システムには、逆らえなかった。タクは死んだ。
「……ナゼ、殺した」
「あのままじゃリーダー死んでたじゃないっスか」
カラカラと笑いながら、部下は答えた。
「Damn you !」
パリン
怒りのままに部下を殺した。獲物であるはずだったプレイヤーに負けたことと、部下に獲物を横取りされたということへの怒りだ。
「shit!」
怒りが収まらず、このままフィールドに
『ゲームはクリアされました』
二〇二四年十一月七日、十四時五十五分。SAOはクリアされた。これにより、全プレイヤーは強制ログアウトされる。
「shit!!!」
タクが討たれたのは、十四時四十五分。ゲームクリア十分前のことだった。
はじめまして。僕は810ポッポと申します。(野獣じゃなくて鳩)
まずH.S.Fにお誘いいただきありがとうございました。
そして、最後の最後まで投稿できず、すみませんでした。
代表作
カズとリサ
https://syosetu.org/novel/264408/