『私のお城を見つけたら、お宝を探しにおいで』
漆黒の幕が開かれた時が、晩餐会の始まりです。
逆に合ってたら怖い( ̄ω ̄;)
むかしむかし、あるところに。
すうせんねんをいきた、"ふごう"がいたそうです。
その"ふごう"はたくさんのとみとめいせいをほしいがままにしてきたそうです。
"ふごう"はえいえんのねむりにつくまえに、せかいにてがみをかきました。
"わたしのおしろをみつけたら、おたからをさがしにおいで"
◇◇◇
(でも)
(ながいときをいきても、"あい"は、しらなかったのです)
◇◇◇
お空の真上に登ったお日様が、そろそろ帰り支度を始めるころ。
「ねぇ〜もうそろそろ帰ろうよぅ」
「ダメよ!せっかくここまで来たんだもの、おたからを見つけるまでは帰らないわ!」
「えぇ〜」
そんな殺生な、と言わんばかりの嘆息を漏らすのはフェウ。ちょっぴり臆病な男の子。
前をずんずん歩いていくのはリズ。やんちゃな女の子。
フェウとリズは幼なじみだ。
二人はお使いの帰り道、"ぐうぜん"見つけたおとぎ話に出てくる伝説の廃城で、"ふごう"の宝物を探していた。
流石はお城と言うべきか、とにかく広くて大きい。
全部を歩いて回るのには、ちょっぴり骨が折れそうだ。
しかも、お昼過ぎというこの時間帯でも、廊下や部屋の中は真っ暗に限りなく近い。
ギシギシ泣き喚く廊下も相まって、まるでお化け屋敷のよう。
所々崩れている天井から差し込む、お日様の光が辛うじて道標の代わりになっていた。
怖がりなフェウにとっては、今すぐにでも家に帰りたかった。
まぁ、リズが一緒じゃないと来た道でさえ怖くて戻れないのだけれど。
何度目の扉を開いただろう。
部屋の中央に、落下して半壊したであろう、大きなシャンデリアがある広間に出た。
「うわっ!広ーい!!ここなら絶対何かあるよ!」
「うへぇ。もう無理だよ〜疲れたよ〜」
「もう、しょうがないなぁフェウは!あそこの椅子で休んでていいよ!私はもうちょっと探検してくるね!」
言うが早いか、こちらの返答も聞かずにガルクの如く走り去ってしまった。
「ええっ!置いてかないでよ!」
情けない声が広間に木霊する。
後ちょっと〜、と言う呑気な返答が前方から帰ってきた。
どうすることもできないので、とりあえずフェウは手近な椅子に座ろうとして…
『やあ、こんにちは』
頭上から降りかかった声に、轟竜の大咆哮も斯くやという悲鳴をあげた。
◇◇◇
「さてさて〜?おたからはどこかな〜っと」
フェウを放ったらかしにして、広間の奥を探索し始めてから数秒と経たない頃。
フェウの特大の悲鳴が聞こえた。
おそらく、クモの巣にでも引っかかったのだろう。
いつもの事だ。
「全くフェウは。男の子なんだからもうちょっとシャキッとしなさいよね…って、あれは…」
前方の暗闇で、小さな赤い光がキラリと反射した気がする。
お宝だ。やっと見つけた!
リズはそう思った。
思ってしまった。
暗闇の中で何が光を受けて反射するというのだ。
直後。
赤い光が、1つ、2つと増えていく。
眼前だけではなく、左右の壁も。天井も。
幾ら年端も行かない子供とはいえ。
流石にまずいと思った時には、何もかもが遅かった。
◇◇◇
『うわあ、大きな聲だね。さぞ美しい喉を持っているんだろうね』
頭上から声がするのに。
何も見えない。
何も居ない。
頭上に広がるのはただの暗闇だ。
フェウは完全に腰が抜けてしまっていた。
椅子をひっくり返して、拍子に机も蹴飛ばして。
この場所から、逃げ出したいはずなのに。
一歩たりとも動けない。
『おや。だめじゃあないか。ぼくの宝物を蹴散らさないでおくれよ』
ばさり、と。
舞踏会の幕が開かれるように。
巨大な翼の後ろから、血色の胸飾りを蓄えた白銀の兜が現れる。
金色の三股の尻尾で、遥か上空の梁を鷲掴みにして。
巨大な化け物がそこにいた。
『でも、大丈夫。怖がらなくていいよ』
否。其れは。その化け物は、御伽噺の───
『かわりに、君の宝物をもらうから』
───"ふごう"だ。
「いけない、リズ!」
咄嗟に後ろを振り返ると、お城の中に紅い月が浮かんでいた。
いや、違う。あれは。
大蝕龍虫だ。
「だめ、フェウ!逃げて!」
リズの半ば悲鳴のような警告は意味を成さない。
頭上から滴った水滴が、涎だと気づいた時には。
生暖かい龍の舌先がフェウの頭頂部に触れていた。
◇◇◇
『長い時を生きてきたけど、愛ほど分からないものは無いよ』
『ぼくを愛してくれたヒトはみんな、ぼくを置いて居なくなるんだ』
『ぼくは、愛されて無かったんだろうか?ぼくはどうすれば良かったんだろう?』
『そうか』
『ひとつになってしまえば、離れなくても良いじゃないか』
故に喰らう。
◇◇◇
「人語を話す龍擬きも、アイツの他にもまだ居たもんだな」
「それ、ライラの前で言ったらダメですからね!」
轟音。
一拍遅れて、一閃。
周囲の壁ごと窓を突き破った狙撃榴弾が、今まさに少年を飲み込もうとしていた顎の起動を強引に逸らし。
その穴から飛び込んできた人影が、白銀の兜を切り裂きながら少年を抱き抱えて飛び退る。
「え?なん、どう」
死の間際から引っ張りあげられた少年─フェウは咄嗟のことで呂律が回っていない。その光景に記憶の奥底のデジャヴが刺激されるが、そんな暇は無いのだ。
後方から接近する大蝕龍虫を水月で叩き落とすと、手短に伝える。
「君の声が聞こえたから、"霧に隠れた"このお城を見つけることができたんだ!よく頑張ったね。あとは、お姉ちゃん達に任せて!後ろの彼女は君に任せたよ!」
今度はまた違った意味で狼狽えるフェウに笑いかけながら。
闖入者─太刀使いのハンター、カミツレが眼前の新種の"古龍"に向き直る。
「お。何かデジャヴを感じると思ったら、さっきの啖呵はモモの真似だな?」
狙撃榴弾を放ったヘビィボウガン使い─ヒイラギが、先程開けた穴からひらりと入ってくる。
「うぐ、聞かれてましたか」
「肴を確保しておくに越したことはないからな」
「そんなこと言ってると、さっきのことライラに言いますよ!」
「好きにしろ。慣れてる」
「むーっ!」
後ろで"ふごう"が瓦礫の下で伸びてるのになんでこの人たちはこんなに呑気なんだろう。そう思ったフェウは何も間違っていない。
『まったく。邪魔をしないでおくれよ』
直後。
両翼で瓦礫を押し上げ、古龍が立ち上がった。
途端、じゃれあっていた狩人二人の眼光が切り替わる。
「こいつも"共鳴持ち"だな。何体目だよまったく」
ヒイラギが毒づき、ヘビィボウガンを構え直す。
「どちらにせよ新種ですから、注意するに超したことはありませんけどね!」
続いて、カミツレが太刀を納刀。腰に添え抜刀の構えをとった。
「いつも通りに行くぞ。前衛は任せた。援護は任せろ」
「任されました。行きますよ!」
「応ッ!」
さぁ、伯爵様。閉幕の準備は宜しいですか?
……to be continued?
登場人物補足説明
フェウ(男の子)
被害者になりかけた臆病な男の子。
名前の由来はフランス語で火種(feu)、をローマ字読みしたもの。
リズ(女の子)
被害者その2になりかけたやんちゃな女の子。
名前の由来はリズノワールの花言葉、"恋"から。
カミツレ(女性)
かつてとある村を救った英雄は過去の姿。
現在は仲間たちと共に旅をしている、太刀使いのハンター。
ヒイラギ(男性)
ヘビィボウガンを使用するハンター。
各地を調査し旅をしている。現在はカムラの里を拠点としている模様。
"ふごう"(爵銀龍メル・ゼナ)
"共鳴持ち"(人や竜人と共鳴することで、それらが理解できる言語を介して擬似的な会話をすることができるモンスターの総称)の新種の古龍。
・ー・ー・ー・
お読み下さりありがとうございます。
書架の山に埋もれる者、雪華といいます。
お久しぶりです。初めましての方、以後どうぞよろしくお願い致します。
…またやってんなコイツ、と思ったそこのあなた。
その感性は何も間違っておりませんとも。
えぇ。まだ名前とビジュアルしか出てない古龍を、想像を肥大化させて書いてしまいました。いつもの病気です。
だって想像を膨らませてる時が楽しいんだもん。ごめんなさいね。
…因みになんですが。
こちらは今書いてる連載が完結したら書こうと思ってる作品の、プロローグ或いは後日譚的なものになる予定です。なんか見たキャラが出てきたでしょう。そういうことです。
乞うご期待。
リアルが多忙すぎて、いつになるかは私にもわかりませんがね…
(´・ω・`)
では今回はこの辺で。
ありがとうございました。( ´ ▽ ` )ノシ