SCP:IRON.SAGA. 作:野生のムジナは語彙力がない
今回の報告書は、喫茶店(酒場)でカロルに好感度アイテム『ヘアピン』を渡した時、何故かカロルが「ドレス!? 閣下、これはどういう……?」と驚いて嬉しそうにしているのを見て……もしもこの現象がSCPだったら? という感じの報告書となっております。
(全指揮官様がツッコミを入れたカロルの迷言)
SCPナンバーとメタタイトルから分かるように、タイトルの元ネタはSCP–066『エリックだけのおもちゃ』から来てはいますが、元ネタと性質が全然違うので引用はしません。オリジナルです。(が、初期のSCPらしい不思議で不気味なアイテムなので、未読の方は是非見に行って見てください)もっと上手いメタタイトルはあっただろうか…?
アイテム番号:SCP–066–IS
『カロルだけのドレス』
オブジェクトクラス:Euclid
特別収容プロトコル:
SCP–066–ISはその性質上、収容は不可能です。しかし、SCP–066–ISによる改変現象は局所的かつ、さらに発生条件が特殊であるため、委員会や人類にとってさほど驚異的ではありません。
ただし現象の発生が衆目に晒された際には、カバーストーリー『手品の練習』もしくは『キュア・カロル(プリ█ュア)の実装』 もしくは『魔法少女カロル(ま█マギ)の実装』 もしくは『ジブ█ール・カロルの実装』が適用されます。←普通に『シンデレラ』じゃダメなんですか?
説明:
SCP–066–ISは委員会出身者たちから『指揮官』という呼び名で親しまれているベース████司令官と、『カロル』という名で知られるヨーロッパ系・帝国騎士の少女との間で発生する、ごく小規模な現実改変現象です。異常性は『指揮官』が『カロル』に対してヘアピンを提供した際に発生します。
『指揮官』が差し出したヘアピンを『カロル』が受け取ると、瞬間的に現実改変が発生し『カロル』の衣服が広義の意味でドレスと呼ばれる装束へと置換されます。
置換されて出現したドレスは、主に『カロル』の出身国であるグレートブリテン帝国ではポピュラーなアフタヌーンドレスとイブニングドレスが多く、次いでカクテル、パーティ、エプロン、ロリータなど多種多様です。
出現するドレスは完全にランダムです。
稀にグレートブリテン帝国とは関連性のない極東のチャイナドレス、チマチョゴリ、チュゼールのサリーなどといった広義の意味でドレスと呼ばれる民族衣装が出現し、ごく稀にウェディングドレスや日ノ丸の白無垢などといった婚儀の際に花嫁が着用するドレスが出現します。
しかし、これは一時的なもので、日付が変わるか『カロル』がヘアピンを手放すと、着用していたドレスは消失し、代わりにSCP–066–ISが発生する以前に着用していた衣服が再出現します。
それ以降、同じヘアピンを使ってSCP–066–ISが発生することはありません。指揮官から再度同じヘアピンの受け渡しが行われた際も同様です。
また、GPSや小型カメラを用いた、ドレスに置換されている間の衣服および消失したドレスの追跡は、全て信号途絶や機材の不具合という結果に終わっています。
SCP–066–ISによる現実改変のメカニズムは未だ不明です。
委員会が事態を把握するまで、既に██回以上ものSCP–066–ISが発生していたと推測されます。SCP–066–IS発生後に『指揮官』及び『カロル』に対して行われたインタビューの結果、衣服がドレスへと置換された現象について、両名は軽く驚きつつも大して気に留めた様子はなく、ただ当然のことのように受け入れていることが分かりました。
補遺I:
委員会は当初、『指揮官』が提供するヘアピンに異常性があると仮定して、ヘアピンの分析と製造元の調査を行いました。
結果:ヘアピンは何の異常性も有していませんでした。
製造元である帝国系企業に関しても同様です。
補遺Ⅱ:
次に、委員会は『指揮官』及び『カロル』のどちらか、もしくは双方が何らか作用によって認識災害を発生させていると仮定しました。調査の為に機動部隊ゼータ『マインドセキュリティ』から対認識災害のエキスパートであるエージェント、シスター・ノエルを派遣し、実験に同席させました。
結果:シスター・ノエルは認識災害の兆候を確認することができませんでした。
補遺Ⅲ:
次に、委員会はSCP–066–ISが現実改変によるものではないかと仮定し、カント計測器を用いてヒューム値の変動を調査しました。
結果:ヒューム値の変動を観測しました。
『カロル』がヘアピンを受け取った瞬間、対象の周囲の現実性が僅かに下降し、局所的な現実改変が発生しました。
実験記録:
補遺Ⅲによって判明した結果を受け、委員会出身の研究員立ち合いのもと、いくつかの実験が行われました。結果、『指揮官』が『カロル』以外の人物に対してヘアピンを渡した際にSCP–066–ISは発生せず、また『カロル』は『指揮官』以外の人物からヘアピンを渡されてもSCP–066–ISは発生しないことが判明しました。
[コメント]
・まじで、どういうことなん……?
・指揮官様は不思議な力を持っているお方だから、それがカロルに対して反応を示したからとか?
・そうですね。それにカロルさんに関しても出自の時点で怪しいところ(良い意味で)があるから……
・何にせよ憶測の域を出ない、実験を継続しよう
補遺Ⅳ:実験5『SRAを用いた反応調査』
現実の正常性を保つ目的で開発されたスクラントン現実錨(Scranton Reality Anchor)を用いてSCP–066–ISによる現実改変を無効化させ、反応の調査を行います。
結果:[データ削除済み]
SCP–066–ISに関する全ての実験は、O5–█の命令により今後、その一切が禁じられます。
観察記録:SCP–066–IS
以下はSCP–066–IS発生時の観察記録です。
観察は喫茶店バビロンの2階に存在するプライベートルームにて行われました。また、時刻は21時(日付が変わる3時間ほど前)でした。
[書き起こし開始……]
<カロル>:「閣下、本日はお誘い頂きありがとうございます」
両者は無人のカウンター席に横並びとなり、お酒を嗜んでいる。カロルが指揮官に視線を向けて小さく礼を述べると、指揮官は懐からSCP–066–IS発生のトリガーとなるヘアピンを取り出した
<指揮官>:(ん、今日はお疲れ様。それじゃあ、はいこれ)
<カロル>:「いつもありがとうございます。それでは……」
カロルは小さく頭を下げ、指揮官からヘアピンを受け取った。直後、SCP–066–ISが発生し、カロルの騎士装束がきらびやかな黒のイブニングドレスへと置換される。
<カロル>:「わぁ! なんて素敵なドレス……まるでヴィクトリア様のような、私とは比べ物にならない高貴な身分のお方が着てもおかしくないような綺麗さです! うーん、見習い騎士の私には重すぎてちょっと似合わないような……」
<指揮官>:(いや、そんなことないよ。凄く似合ってる)
<カロル>:「そう……ですか? あ、ありがとうございます。他ならぬ閣下からの賛辞、身に余る光栄と言いますか……えへへ」
<カロル>:「ですが、この露出の多さはちょっと恥ずかしいといいますか……胸元はまだいいとして、背中が開きすぎなので、騎士といたしましては、無防備な背中を晒してしまうような感じがして、なんだかむず痒くて……」
<指揮官>:(でも、それって夜用のドレスなんでしょ? 舞踏会や晩餐会で着るやつ。カロルもいつかそういうところにゲストとしてお呼ばれする事もあるかもしれないから、今のうちに着慣れておかないと)
<カロル>:「そ、そんなことは……でも、舞踏会に慣れ……うん……そうですね。何事も慣れって大切ですよね!」
<指揮官>:(……? カロル、どうかした?)
<カロル>:「い、いえ……なんでもありません!」
<指揮官>:(そう? まあでも、不思議だよね。なんでヘアピンを渡しただけで服がドレスに変化するんだろ? 自分はてっきり、カロルが魔法か何かを使っているのだとばかり思ってたよ……)
<カロル>:「それはこちらの台詞といいますか……委員会の人たちに言われるまで、てっきり私も、閣下が何かしらの魔法を使っているとばかり思っていました」
<指揮官>:(それか、カロルが変な夢でも見てたりなんて……)
<カロル>:「失礼な! 私はそこまで夢見がちではありません。ま、まあ……こういうお姫様が着るようなドレスを、一生に一度でもいいから着てみたいなとは前々から思ってはいましたが」
<指揮官>:(分かるよ。ヴィクトリア様はブリテンの女の子、みんなの憧れだもんね)
<指揮官>:(でも、せっかくの綺麗なドレスなのに、ヘアピンを置いたり日付が変わってしまうと消えちゃうってのは少し勿体無いよね。こうなってくるともう、ただのヘアピンになっちゃうし……)
<カロル>:「いえ、そんなことは……この種類のヘアピンは私のお気に入りですし、いえ、それ以前に閣下が私めなどに恵んで下さるものなら、どのような形のものであっても嬉しいのです」
<カロル>:「それに……一夜限りのドレスというのも、それはそれで趣があるといいますか、えっと……例えるのでしたら、そう……シンデレラみたいな感じで」
<指揮官>:(なるほど。長い人生の中でたった一瞬だけ、他の誰にも負けない眩い輝きを放つ……そういう儚い感じがまた良いってことだね? 分かるよ、その気持ち)
<カロル>:「はい、そうなんです!」
<カロル>:「それでですね……私が騎士ではなくなったこの一瞬だけは、せめて本物のお姫様にしか出来ないような体験をしてみたいなって思ったりして……」
<指揮官>:(それじゃあ、やってみる?)
<指揮官>:(……と、簡単に言ってはみたものの、もう遅い時間だし今から日付が変わる前に出来ることなんて殆ど残ってないだろうから、また今度にでも……)
<カロル>:「いえ……実はひとつだけ、やってみたいことがありまして……ですが、それには閣下のお力添えが必要でして……」
<指揮官>:(いいよ。自分に出来ることなら、何でも言ってみて?)
そこでカロルは髪にヘアピンをつけ、それからカウンター席から立ち上がると、左手を自身の胸元に当て、指揮官へと手を差し出した。それから指揮官に向かって、何かを申し出るような様子で口を開いた。
<カロル>:「では、わ……私と踊って頂けませんか?」
<指揮官>:(……なるほど、そう来たか)
<カロル>:「はい。幸いにも、ここには閣下と私以外に誰もいませんし、他の人の迷惑にはなりません。それに、先ほど閣下も申した通り、このドレスといい舞踏会といい、今のうちに色々と慣れておく方がよろしいかと思いまして……」
<カロル>:「だめ……でしょうか?」
<指揮官>:(いやいや、君と踊れるなんて身に余る光栄だよ。でも、こっちは今ちゃんとした服着てないから、失礼なんじゃないかなって思って、いや……この場合ではせっかくの申し出を断る方が失礼か)
<カロル>:「あ……ありがとうございます!」
指揮官は立ち上がり、カロルの手を取って向き合った。その時、どこからどもなく舞踏会で演奏されるクラシック音楽が響き渡る。後に、室外からモニタリングしていたイシュメール博士ら委員会出身者たちが、両名に気を利かせてレコードをかけたことが判明する。
<カロル>:「あれ……音楽が……?」
<指揮官>:(あはは……これはもう逃げられないかな。ところで、カロルってこういったことに経験とかあるの?)
<カロル>:「いえ……舞踏会の経験はないですが、実は影ながらこっそり練習しているのです! なので、閣下のことをリードしてあげられたらなと……あはは、先ほどの申し出の時といい、これでは閣下の方がお姫様みたいですね」
<指揮官>:(なら、誘ってくれた騎士様の名誉の為にも、せめて無様なところは見せないよう全力でそれに応えないとね。練習の成果、試してみて?)
[書き起こし終了]
SCP用語解説
ヒューム値とは
ある範囲における現実性の強度や量を示す値です。通常を『1』として簡単に説明すると、これがもし1よりも高かったり低かったりした場合には、その範囲で物理法則などがねじ曲がったりして、いろいろな『あり得ない出来事』が起こってしまう。
現実改変は周囲のヒューム値が変動することで発生する現象です(簡単に説明すると)。ヒューム値の値が大きければ大きいほど、小さければ小さいほど強力な現実改変が発生し、それこそ何もない空間に物質を生成したり、消滅させたり……
いわゆる、なんでもありな能力です。
単位は『Hm』で示されます。
また『scp読者ノート』によると、報告書の中で出てきたスクラントン現実錨は『ヒューム値を2Hmで固定することで、現実歪曲・現実改変を防ぐ』とのことです。
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また、ネタ提供もお待ちしております。
(アイサガ内で起こったどんな不可解な現象も、全てscpっぽく説明して収容してみせます)