20XX年、第3次世界大戦の危機を防いだ1隻のハンターキラーが退役した。しかし、目が覚めた時、彼女は1960年代の全く異なる歴史をたどった世界にいた。

この作品は映画「ハンターキラー」と艦これのクロスオーバー作品となっております。

1 / 1
皆様どうもSM-2です。
別作品の投稿が滞っていますが、お許しください。
実は、映画「ハンターキラー」を見た時から、ちまちまと書いていた作品なのです。
久しぶりに執筆中小説をザーと見ていたらこれを見つけて投稿しようと思った次第。
では本編どうぞ。


HunterKiller~「Arkansas」After Stoty~

20XX年10月。アメリカ、ピュージェット・サウンド海軍工廠で1隻のハンターキラーはその生涯に幕を閉じようとしていた。

彼女の名前はSSN-800「アーカンソー」。バージニア級攻撃型原子力潜水艦の26番艦であった。彼女は数々の厳しい任務を乗り越え、アメリカの、しいては世界の危機を救った艦であった。

だがそんな彼女も時代の波には逆らえず、今日このピュージェット・サウンド海軍工廠で解体されるのであった。

その彼女の艦橋(セイル)には一人の女性が座っていた。金髪でショートヘア。整った顔立ちに目は何処か凛々しさを感じるブルーの目。美人といっていい彼女は灰色のウェットスーツの上に紺色のアメリカ海軍の作業服を着ていた。

彼女は「アーカンソー」。このSSN-800「アーカンソー」の魂―艦魂であった。彼女の姿は人間の目には見えないため、こうしてセイルの上に登っていても怒られることはない。

 

「今日で、私も解体ね・・・・・・」

 

何処か寂しさを感じさせる声でアーカンソーはそうつぶやいた。そっと目を閉じて、自分が就役してからの長い生涯を思い出す。

 

「そういえば・・・・・グラス艦長はご存命かしらね」

 

グラス艦長――ジョー・グラス。アーカンソーの艦長だった男で、ロシアでのクーデターが起きた際、第3次世界大戦を阻止すべく、ともにロシアに潜入しサカリン大統領を救出した人物であり、アーカンソーが最も信頼していた艦長であった。もう90歳を超えているが、グラスは故郷で元気に暮らしている。

 

「・・・・」

 

セイルから再び下の方を見渡すと、ミサイルハッチの扉が外され原子炉も取り出されていた。

20XX年10月某日、SSN-800「アーカンソー」はピュージェット・サウンド海軍工廠にて解体された。・・・・はずだった。

――――――――

19XX年、朝鮮戦争が終わった直後、アメリカの西海岸沖合で、貨物船が相次いで行方不明となる事件が発生した。生き残った乗員はみな口々に「女性や魚のような姿をした化け物にやられた」とうわごとのように呟くばかりであった。

米政府が頭を悩ませているうちに被害は拡大し、次第に大西洋や太平洋でも被害が報告されるようになった。世界の各国政府は連合軍を編成し、謎の武装勢力に対して攻撃を行った。当初、その圧倒的ともいえる物量から、作戦は簡単だと楽観視されていたが待っていたのは、空母や戦艦など多数の艦艇が撃沈され数十万もの将兵が死傷する現実だった。

この作戦で、世界各国は主力を失い反攻どころか自国の防衛すらままならなくなり、シーレーンは分断され制海権は謎の武装勢力に奪われた。誰が読んだかいつしか、謎の武装勢力のことを、深海に棲む艦―「深海棲艦」と呼ぶようになった。

沿岸部を艦砲射撃で破壊され多数の犠牲者がでて、人類の命運はもはや風前の灯火かと思われた時、日本の近海で、謎の機械を操り深海棲艦と戦う少女、「艦娘」が発見される。

艦娘は第2次大戦や深海棲艦との戦争で沈んだ軍艦の魂が具現化したものであった。日本はすぐさま、米国と共同で艦娘の解析を行い、沈んだ軍艦の魂に実体を与え、深海棲艦と戦えるような術を与える建造技術を確立し、深海棲艦への反撃が始まったのだった。

――――――――

そんな深海棲艦との戦争がはじまり10年。日本国国防海軍横須賀鎮守府。

 

「提督。およびですか?」

 

純白の軍服に身を包んだ20代後半らしき若い男に、これまた若い女性がそう尋ねていた。

男は島岡(しまおか)友樹(ともき)。日本国国防海軍横須賀鎮守府の提督で階級は中将。深海棲艦との戦いで数々の手柄をあげ、29歳で中将という異例の速さで昇進した有能な指揮官である。

女性の方は能代。阿賀野型軽巡洋艦2番艦「能代」の艦娘である。島岡の秘書艦で、数々の作戦に参加してきたベテランでもある。

島岡は、能代が入ってくると、一枚の紙を渡す。

 

「すまないけど、工廠にいって明石にこれを渡してきてくれないか?」

 

能代は受け取った紙をみると、どうやらそれは艦娘の建造を指示する書類だった。

 

「わかりました。大型建造ですか?」

「うん。頼んだよ」

 

能代の問いに島岡はコクリと頷く。能代は敬礼すると執務室を去ろうとした。その時、島岡は思い出したように能代を呼びとめた。

 

「ああ、そういえばサラトガはどうだい?」

「サラトガさんですか?仲よくしているようですが・・・・・」

 

サラトガ。1ヶ月ほど前に横須賀に応援として派遣されてきたアメリカの空母艦娘である。第2次大戦中、かなりの数の日本艦艇がこのサラトガに沈められたため、派遣されてきたときはサラトガに沈められた艦娘との間で何か問題が起こるのではと心配していたのだ。

 

「そうか、ならいい。今後も仲良くするように」

「はい。それでは」

 

能代は部屋から出て、工廠にむかった。

島岡の執務室のある司令棟から工廠までは歩いて5分ほどだ。能代は工廠の入口である重厚な鉄のドアをあけて、中にはいる。

 

「あれ?能代さん。どうしたんですか?」

 

ピンク色の髪をした女性が、能代にそう尋ねた。彼女の名前は「明石」。工作艦「明石」の艦娘で、横須賀鎮守府の工廠の管理をしている艦娘である。

 

「これ、提督からです」

 

能代は手に持っていた書類を、明石に手渡す。明石は、書類を一読した後こう言った。

 

「分かりました、建造ですね。しかし大型建造だなんてずいぶん資材を使うんですね」

 

明石は書類を読みながら、工廠に設置された一際大きな機械に向かうと、何やら入力を始めた。書類に書かれた通りの数の資材を投入しているのだ。

 

「よし。資材の入力完了。じゃあ、建造始めますね」

「ええ」

 

明石が赤いボタンを押すと、工廠内が騒がしくなる。機械が動き始めたのだ。この機械にはハッチがついており、建造が完了した後にハッチを開けると、中のスペースに艦娘が現れているのだ。

明石は機械が正常に動き始めたことを確認すると、建造に要する時間を表記する表示板に視線を移した。

 

「へ?」

 

そんな間抜けな声をもらし、明石は固まった。能代も明石の異変に気がついたらしく、明石に駆け寄る。

 

「どうしたんですか?」

「あ、あれ・・・・」

 

明石の指差した方を見ると、能代も驚愕の表情を浮かべた。

 

「え!10時間!?」

 

そう、表示板には10時間と表示されていた。いや、実際にはタイマーのように数が減っているから9時間59分何秒とかなのだが細かいことは気にしてはいけない。

建造時間は艦の大きさや装備など様々な物で変わるが、大型艦や新しい艦ほど建造時間が長い。だが、一番建造に時間のかかる大和型でも建造に要する時間は8時間ほどである。10時間越えの艦娘とは一体どんなものなのか二人には想像もつかなかった。

 

「と、とりあえず提督に連絡してきます」

「お願い」

 

能代は慌てて島岡のところに走っていった。4分ほどすると能代は島岡を連れて帰ってきた。全力で走ったらしく、2人とも息絶え絶えになっていた。

 

「で・・・・・10時間越えの建造時間って本当?」

「はい。こちらに」

 

島岡は表示板を見た後、明石に尋ねる。

 

「故障とかじゃないんだよね?」

「昨日点検したばかりですよ。故障なわけありません」

 

明石の返答を聞いて、島岡は腕を組んでじっと考えた。

 

「うーん・・・・・高速建造材を使おう・・・・」

「え、10も使いますけどいいんですか?」

 

明石は、島岡にそう聞いた。大型建造というのは資材を大量消費するものだからである。

 

「いいよ。高速建造材には在庫があるし。至急取りかかってくれ」

「分かりました」

 

明石は機械についている、操作盤に駆け寄ると「高速建造」と書かれたレバーを引いた。すると、機械の中からバーナーのような音が聞こえ、表示板の数字はみるみる減っていった。

そして数が0になった瞬間、ブザーが鳴る。明石は急いで、建造された艦娘を確認するべく、ハッチを開けて中を確認する。

中には灰色のウェットスーツの上に紺色のアメリカ海軍の作業服を着ている、金髪ショートヘアの女性がいた。

 

「彼女は誰なんでしょう?」

 

能代がそういうと島岡はびっくりした。

 

「え?彼女を見たことがないのかい?」

「ええ、艦魂の時にも見た覚えはありません・・・・・」

「私もないですね・・・・」

 

艦娘は先に説明した通り、軍艦の魂である艦魂に実態を与えたものである。艦魂は通常、人の目には見えないが同じ艦魂同士では艦娘の状態でなくとも話せるし姿も見えるのだ。

そのため建造などで艦娘ができても、その鎮守府や泊地に所属する艦娘経由で、建造された艦娘がなんの軍艦の魂だったかわかるのだ。

だが能代も明石も知らない艦娘の存在は島岡の頭を混乱させた。

 

「外国の艦娘ではないでしょうか?」

「うーん。確かに来ている服は米軍のやつっぽいしなぁ・・・・」

 

顎に手を当てて、この艦娘の正体を探ろうと、頭を働かせる。

 

「来ている服からして潜水艦では・・・・?」

「とりあえず、いつも通り彼女を医務室に運びますね・・・・・」

 

島岡は一旦、彼女の正体を探ることをやめて、明石にこの艦娘を医務室に運ぶよう命じた。

すぐさまストレッチャーに乗せられ、医務室に運ばれる途中、彼女は何度も寝言をつぶやいていた。

 

「・・・・・うぅぅぅん・・・・グラス・・・・艦長ぉ・・・・・・・」

 

そう、彼女はピュージェット・サウンド海軍工廠で解体されたはずのバージニア級攻撃型原子力潜水艦26番艦SSN-800「アーカンソー」であった。

――――――――

ツンと鼻につくような消毒液のにおいと温かくふわふわとしたベッドの感触でアーカンソーは目を覚ました。

 

「ん・・・・・・。Where am I(ここはどこ)・・・・・?」

 

アーカンソーは目を覚ました。最初はボーっとしていた意識も段々とはっきりしてきた。そして、意識がはっきりとしてくると同時に、アーカンソーは困惑した。

 

――え、私は確かにあの時解体されたはず・・・・・・。なんでここにいるの?ココはどこ?

 

必死に思考を働かせているうちに、ガチャリと部屋のドアが開き、ピンク色の髪をした日本人らしき若い女性が入ってきた。

 

「あっ、目を覚ましたんですね」

 

にっこりとほほ笑みながら、女性はそうアーカンソーに話しかけてきた。

 

「もしかして、貴方・・・・・艦魂?」

「うーん。まぁそうですね。「明石」です。よろしくお願いいたします」

 

明石と名乗った女性はお辞儀をする。アーカンソーは同じ艦魂に会えたことで少しホッとすると同時に、聞き覚えのない艦名に少し疑問を持つ。

 

――「あかし」?日本の新しい護衛艦かしら・・・・?

 

アーカンソーは目の前の女性の正体をそう理解すると、明石にこう聞いた。

 

「ココはどこなの・・・・?」

「ここは、日本海軍横須賀鎮守府の医務室です」

 

アーカンソーの問いに明石はそう答えた。

 

――日本?確かに私は第7艦隊に所属していたこともあって日本にも何度か言ってるけど・・・・私はアメリカで解体されたはず。なんで日本に?

 

再びアーカンソーが思考を働かせていると、明石の回答に何か引っかかるものを感じた。暫く考えた後、アーカンソーはその違和感の正体に気がつく。

 

――ん?日本()()?横須賀()()()?海上自衛隊や横須賀基地ではなく・・・・・?

 

アーカンソーが混乱していると、明石が話しかけてきた。

 

「ところで、貴方は誰ですか?」

 

そういえば自己紹介をしていなかったと思い、アーカンソーは自己紹介を始めた。

 

「私はUnited States Navy(合衆国海軍)所属、バージニア級攻撃型原子力潜水艦26番艦、SSN-800『アーカンソー』よ。Nice to meet you(よろしくね)

 

アーカンソーはにこっと微笑みながら、明石に右手を差し出す。だが一方の明石はポカーンとしている。

 

「?どうかしたの?」

「あ、あの?バージニア級ってなんですか?そもそも原子力潜水艦って・・・・・?」

 

その明石の問いにアーカンソーも間抜けな顔でポカーンとしてしまう。

 

「・・・・あなた、艦魂よね・・・?」

「はい」

 

バージニア級どころか彼女は原子力潜水艦のげの字も知らない様子であった。

 

「貴女、いつ建造されたの?」

 

もしかしたら進水したばかりの艦魂だと思って、アーカンソーは明石にそう聞いた。

 

「艦として建造されたのは1938年6月29日です。艦娘として建造されたのは1954年6月22日です」

「へ?・・・・・・ちょっと待って二つ聞きたいことがあるんだけど・・・・」

 

アーカンソーはそういうと、明石は首をかしげた。

 

「何ですか?」

「一つ目、今は何年?」

 

アーカンソーが慎重にそう尋ねると、明石はにこやかに答える。艦娘というのは自分が沈んだ後から建造されるまでの記憶はないため、いつも新しい艦娘が建造されると、その艦が沈んだ後の歴史等を教えるのが決まりであったためだ。

 

「1961年ですよ」

「ええ!!!・・・・・・Really(本当)?」

 

明石の答えにアーカンソーはそう尋ね返した。

 

「本当ですよ?」

 

アーカンソーはじっと慎重に明石の顔を見るが、だましている様子はなかった。なぜ、2000年代に解体された自分が1961年の世界にいるのか皆目見当もつかなかったが、アーカンソーはその問題を一旦、保留にして二つ目に質問をした。

 

「じゃあ、2つ目ね・・・・・・・艦娘って一体なに?」

「それは、私から説明してもいいのですが・・・・・・・提督に来てもらってからの方がいいと思いますよ。ちょっと読んできますね」

 

明石はそういうと、質問に答えることなく部屋から出ていく。アーカンソーは引きとめようとしたが、結局引きとめることは敵わず、明石は何処かに向かってしまった。

 

――提督・・・・・・・Admiral?海軍大将のこと・・・・・・?でもそれって人間よね。人間には私たち艦魂の姿は見えないはずでは・・・・・?

 

アーカンソーはあーでもないこうでもないと混乱の一途をたどっていた。暫くすると、再びガチャリとドアが開き、明石が入ってきた。

どことも分からない場所で一人ぼっちでいることに、少し不安でいたアーカンソーは明石の姿を見てホッとした。

だが次の瞬間、アーカンソーはぎょっとする。

 

「やぁ・・・・・目が覚めたようだね?」

 

明石の後ろから部屋に入ってきた純白の軍服の若い日本人男性がアーカンソーに向かってそう声をかけてきたからだ。

アーカンソーはもしかしたら近くにいる人かもしれないと辺りをキョロキョロ見渡すが、この部屋でベットにいるのは彼女だけであった。

そんな彼女の姿を見て、若い男はけらけらと笑う。

 

「君だよ、君。えーと、アーカンソーさん・・・・・・だっけ。僕は島岡友樹。階級は中将。この横須賀鎮守府の提督をやらせてもらっている」

「横須賀鎮守府・・・・・?横須賀基地ではなく?」

 

アーカンソーがそう尋ねると、島岡は、その整った顔に驚愕の表情を浮かべる。

 

「なぜ、深海棲艦との大戦が始まる前のココの呼称を知っているんだい?確かにここはアメリカ海軍横須賀基地と呼ばれていたが・・・・・・」

「よばれて()()・・・・?」

 

アーカンソーがいぶかし気な顔をしてそう聞き返す。

 

「ああ・・・・・・・」

 

島岡は真剣な面持ちで、ゆっくりとそれでいてはっきりとした声で、話始めた。

太平洋戦争後、朝鮮戦争が起こり、戦争特需で焼け野原だった日本が一気に復興したこと。

その後、深海棲艦と呼ばれる怪異が発生し、多数の民間船舶が沈められ、その後反撃のために出撃した連合軍が壊滅、多数の艦艇が撃沈され制海権を失ったこと。

そして日本の近海で艦娘と呼ばれる存在が見つかり人類の反抗が始まったこと。

深海棲艦との闘いすべてを、「アーカンソー」に話したのだ。

 

「・・・・・・・」

 

アーカンソーはすべてを聞き終えた後も黙ったままだった。

それもそうだろう、朝鮮戦争まではアーカンソーは建造された世界と全く同じ歴史だ。だが深海棲艦という怪異の手によって人類滅亡の危機になったなど、ハリウッドのSF映画でも見たことがなかった。

何より過去に来てしまったということが大きかった1961年ということは原子力潜水艦はあっても、彼女の姉妹であるバージニア級はない。自分の知らない歴史を歩んだ世界で、右も左もわからないような異国の地で一人になってしまったのだから、そのショックは計り知れなかった。

アーカンソーが黙っていると、島岡が再び口を開いた。

 

「・・・・ところで君はいったい何者なんだ?記録を調べてみたがバージニア級という艦船はおろかアーカンソーという船は見つからなかった。君はいったい何者なんだい・・・・・」

「・・・・・・」

 

アーカンソーは自分の正体を言うべきか言わないべきか悩んだ。そしてしばらく悩んだ末、自分の正体を明かすことにした。

下手に隠しても、いつかはぼろが出るかもしれないと考えたからだ。それにアーカンソーには最後の切り札があった。艦娘として自分が建造されたのなら、彼女はその切り札を使うことができる。

 

「私はUnited States Navy(アメリカ合衆国海軍)所属、SSN-800『アーカンソー』。バージニア級攻撃型原子力潜水艦の26番艦としてニューポート・ニューズ造船所で20XX年に進水したわ。ロシアのムルマンスクに潜入し時のロシア大統領も救出し、第3次世界大戦を防いだの。よろしくね」

 

アーカンソーはにっこりと笑ってそういった。島岡と明石はポカンとしている。そんな二人の様子を見て、アーカンソーは「無理もない」と苦笑いをした。

 

「あー・・・・・1つ1つ確認させてくれ」

「ええ、いいわよ」

 

島岡の言葉に、アーカンソーはうなずいた。

 

「まず一つ目だ。君は何年に進水したといった?」

「20XX年よ」

「つまり・・・・・君は未来から来たというのかい?」

 

島岡は恐る恐るといった感じでアーカンソーに確認するようにそう尋ねた。

 

「ええ、認めたくはなかったけれど。先ほどからの話を聞く限り、私は過去。しかも私の知らない歴史を歩んだ世界に来てしまったようね・・・・・」

「何だって?私の知らない世界・・・・・?」

 

島岡が再びそう尋ねるように言うと、アーカンソーはコクリと頷いた。

 

「ええ。少なくとも私は深海棲艦なんて知らないわ」

 

そして、ゆっくりと語り始めた。

朝鮮戦争の後、アメリカはベトナム戦争に参加し敗北したこと。ソ連が崩壊し東西冷戦が終結したこと。テロとの戦いが始まったこと。ロシアでクーデターが起きて第3次世界大戦の危機に直面したこと。

自分の知る歴史を事細かに話したのだ。

全てを話し終えた後、島岡は信じられないといった表情だった。

 

「・・・とても信じられないな・・・。君の言っていることは嘘ではないんだろうが・・・、なにしろ深海棲艦がおらず核戦争(第3次世界大戦)の憂き目にあったなど・・・」

「私からしたら、深海棲艦とか言う、ハリウッドのSF映画に出てくるようなモンスターと戦ってる方が信じられないわよ」

 

アーカンソーはいまだに信じられないといった様子で島岡にそういった。

 

「ともかく、君は60年後の未来で建造され、90年後に解体された。そういう事だね」

「信じがたいけれど、貴方たちが嘘を言っていないならね」

 

島岡は、頭を抱えた。

深海棲艦との戦争の前、アメリカでは原子力エネルギーを使った潜水艦や航空母艦の研究が行われており、それらは既存の艦船とは隔絶した性能を持つという話を聞いたことがあった。それより半世紀以上未来の技術で作られた潜水艦だ。どれだけの性能があるかわからない。もしかしたら、彼女一人で既存の艦娘や艦船を、すべて撃沈できるかもしれない。そうでなくても、彼女を敵に回せば、少なくない被害が出るであろう。

 

――ともかく、彼女を敵に回すことは得策じゃない。

 

島岡は、そう判断した。

 

「君の処遇に関しては、上層部と検討させてもらう。それまでの衣食住と身の安全は保障しよう」

「わかったわ。でも、これからいう条件だけは譲れないわ」

 

アーカンソーはとても真剣な顔で島岡をじっと見る。

 

「な、なんだい?」

「私の持つ技術の開示を求めないこと、私の意思に反する行動を強いないこと。もしこれらが守られなかった場合・・・・」

「場合・・・・?」

「ここを含め、首都圏は核の炎に包まれることになるわ」

 

これがアーカンソーの切り札であった。

実際、アーカンソーは2030年代より核弾頭搭載のトマホーク巡航ミサイルを搭載していた*1。その弾頭は水素爆弾であるため、首都圏に落とせば、ここ横須賀も放射能による被害を受けることは間違いなかった。

アーカンソーの脅しに、島岡は生唾を呑み込む。

 

「わ、わかった。肝に銘じておくよ」

「ならよかったわ。お互いいい関係を築いていきましょう?」

 

島岡の返答に満足したアーカンソーは、にっこりと笑って右手を出す。島岡は彼女の手を握ると頷いた。

 

「そうだね。僕もそうしたいよ」

 

――――――――――

世界の危機を救ったある原子力潜水艦は、また別の世界で人類を救うために戦うことになるのであった。

*1
これは対中国戦における核飽和攻撃戦術が関係している。2020年代中期より、中国における弾道ミサイル迎撃システムはかなり高精度なものとなっていた。そのため従来の大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルでは防がれてしまう可能性があった。そこで、核弾頭搭載トマホークや空中発射型巡航ミサイルによる飽和攻撃を実施し、敵の対応能力をそぐ目的があった。そのため、アーカンソーは自身の持つ12発の巡航ミサイルのうち4発を核ミサイルとしていた




いかがでしたでしょうか。
「ハンターキラー」の公開は2019年4月ですから一昨年ですね。かなり旬を過ぎた作品ですけど、出さずにはいられなかった・・・・。
しかし、一昨年「ハンターキラー」を見たときは、今こんなことになるなんて予想だにしていなかったですねぇ・・・・
最近は寒暖差も激しいですから、お体に気を付けてお過ごしください。
ではまた、さようならぁ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。