ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う   作:タメガイ連盟員

47 / 47
ちびたXtreme様、さとりの怪様、あいすいろ様、踏文 二三様、草鹿午午25色様

誤字報告ありがとうございます。


31.林間合宿2

 合宿2日目。早速楽しい楽しい個性伸ばしが始まっている。

 

 改めて、合宿は全員の強化と仮免の取得を目的としている。繰り返しになるけど、仮免の取得は例年なら2年時の6月の試験に合わせるところだ。実際ヒーロー科の先輩である3年の通形先輩、2年の不和先輩も6月に仮免を取得している。6月がダメでも9月にも仮免試験はあるのだけど、そちらも落ちた生徒はだいたい退学しているようだ。2年2学期以降のカリキュラム、仮免取得が前提になってるらしいから、そこでダメならヒーローにはなれないと言う残酷な現実だ。まあ、仮免試験より前に脱落する人も少なくないみたいだけど。その意味でも今年の1年生は粒ぞろいと言ったところか。

 

 で、1年生が仮免を取得しようとすると、当然9月の試験になる。6月のはもう終わってるからね。つまり残る時間はひと月足らず、例年より9ヶ月も早く取得させようと言うのだから、いかに雄英生であろうと無茶は避けられない。その無茶がこの合宿ってわけだ。死ぬほどきついが死なないように、とは相澤先生の言だけど、それぐらいしないと間に合わないのだろう。まあ、相澤先生は日常的にこういう物言いをする人だけど。

 

 で、個性伸ばしと言っても何をどうするのか、と言うと例えば筋繊維は酷使することで壊れるけど強く太くなるように個性も使えば使うほど強くなるし、使わなければ衰えていく。であるならば、個性に関わっている部位に負荷をかけまくる、と言うのが個性伸ばしになるわけだ。本来は肉体の成長に合わせるものらしいけど、そこを無視してもいいのかね。前世でも高校生のスポーツ選手の練習過剰とか言われてた気がするけど。まあ、仮免の取得はヴィラン連合の襲撃対策でもあるけど。

 

 それぞれに個性伸ばしのための課題が与えられている。A組B組合わせて40人もの人数を指導できるのか、と思うけどそこは、と言うか、だからこそプッシー・キャッツが指導役として選ばれたわけだ。外界から切り離されていて、かつ宿泊施設がある土地を所有しているから、ってのもあるけど、特にラグドールの『サーチ』の存在が大きいだろう。目で見た相手の居場所、弱点などの情報を知ることができる、ってかなり便利だ。雄英のみならず、ヒーロー科がある学校からお誘い受けてそうだよね。なんならパパにも狙われている。

 

 まあ、パパのことだから、『ワン・フォー・オール』の継承者は出久くんだって当たりをつけていて、『サーチ』に彼が登録されている状態で個性を奪い、それをマスターピースに移植する、って流れを狙ってやってる気がする。いくら『サーチ』が便利でも対象を登録する、って前提条件があるわけだしね。

 

 さて、わたしがどんな課題を与えられているか、と言うと。

 

「あたまいたい」

 

 わたしの眼前にはいくつかのトランプピラミッド。しかも10段。なんだこれ。いや、わたしの課題だよ。

 

 えー、説明しますと、わたしの場合パワーはもう十分なので、精密動作を鍛えるってことらしい。なので『念動力』を使ってトランプピラミッドを作る、と言うのが課題。この個性で使う体の部位ってどこよ。たぶん脳みそだ。期末試験のときもそうだったけど、使いすぎるとこうして頭痛に見舞われることになる。脳みそは筋肉細胞と違って破壊されたら再生しなくない? したっけ? わかんないな。どのみち寿命があるけど。それとトランプピラミッドを作るって課題の関係上、わたしだけ合宿所内でやっている。屋外だと風で飛ばされたりするしね。そうでもなくても微妙に外の振動が伝わってきてるんだけど。

 

 実際問題として、これ、意味ないんだよねぇ。この合宿が終わったらわたしは休学になっちゃうから。休学と言っても復学することはないから実質退学だけど。それでもきちんと課題を出すあたり手抜きをしない人だね、相澤先生。彼にしてみれば、わたしの合宿参加は無駄ってわけじゃないんだよね。合宿もヒーロー科の単位に含まれているから参加しないと実は進級できなくなるのだ。必修かよ。で、復学の可能性は0じゃないから、ちゃんと単位を取らせようって考えなんだろうね。

 

 たまに様子を見に来るぐらいで、基本的にわたしは1人でこうしている。普段から優等生で通ってるからね、こういうときに効いてくるわけだ。なので多少さぼってても問題はない。いや、実際問題として頭痛に苦しめられているから休憩を挟まないといけないんだけど。こういうのって温めるのと冷やすのどっちがいいんだろうか。とりあえず冷やすか?

 

「志村?」

 

 そんなわけで、ハンカチを水で冷やして額に乗せて休んでいると切島くんが現れた。トイレか?

 

「……なんかボロボロですね」

 

「俺の個性伸ばし、『硬化』している状態で殴られまくるだからな。あと筋トレ」

 

「……理屈はわかりますけど、それを実際にやらせるところが相澤先生らしいと言うか」

 

「まあなぁ」

 

 切島くんの『硬化』、拳銃弾ぐらいなら弾けるし、刃物も通らないからなかなか強力な個性だと思う。攻撃手段が近接オンリーなのが難点と言えば難点だけど、そこはこれから格闘技能とかを鍛えていけばいいわけだし。今の切島くん……に限らないけど、つい数ヶ月前まで素人でしかなかったわけだしね。それを準プロにしようって言うんだから。これ以上はさっきの繰り返しになっちゃうな。

 

 切島くんの個性伸ばし、殴られると言っても殴る方も大変だ。なので専ら似たような個性持ちのB組、てつてつくんと殴り合っているとか。ちなみに、てつてつ君の漢字表記をわたしは覚えていない。自分の名前を書くとき大変だろうなぁ、彼。何を思って命名したのやら、彼の両親は。そりゃまあ、個性にひっかけた名前になってるのはわかるけどさ、限度ってものがない? そういえば、パパの本名ってなんだろう。名字が死柄木なのはわかってるけど。『オール・フォー・ワン』にかかってるはずだから……全一とか? 双子の弟であるおじ様も与一だし。

 

「どうかしましたか」

 

 なんて考えていると、切島くんがこちらを見つめている。戻らなくていいのだろうか。

 

「……その、昨日もだけど、元気そうだから、前に聞いた話がなんか、その、な」

 

 言いずらそうにする切島くん。まあ、実際影響が出るのはまだ先だから今はなんともない。だけど、そうだなぁ、口だけじゃ説得力ないもんなぁ。

 

「じゃあ、確かめてみます?」

 

「え?」

 

 体操服の裾を掴んで捲り上げる。ついでにブラも。

 

「ちょ、ちょっ、なにして……っ!?」

 

 慌てて目を逸らそうとする切島くん。だけど、見ちゃうわけで。

 

 病み衰えた体と、手術痕が。

 

「……」

 

 わたしの体に視線が固まったまま絶句する切島くん。いやフリーズしている、と言うべきか?

 

「まあ、そういうことです」

 

 体操服を元に戻……ブラを戻すの面倒だな。

 

「……」

 

 まだ固まってるな。

 

 実際は痩せ細ってないんだよね。幻術だ。でもわたしが本当に病気なのか疑われてるんじゃしょうがないよね。まあ、ちょっと考えればこんな状態で合宿参加するはずないって気づけるはずだけど、あまりの衝撃にそこまで頭が回らないだろう。

 

 切島くんも細かいこと気にしなければこんなの目にしなくて済んだだろうに、いちいち間が悪いね。おかげで面白いものが見られたわけだけど。

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫、って、いや、お前の方こそ、大丈夫なのかよ」

 

「前に話しましたよね。あと1年生きられないって」

 

「……」

 

「合宿の最終日にはみんなに話すつもりです。だから、それまでは」

 

 ぎこちなく頷く切島くん。うーん、でもこのままだと合宿に支障をきたしそうだから、ここでのやりとりは忘れさせておこうかな?

 

「でも、なんて言えばいいんだろうなぁ」

 

 明日、襲撃があるから合宿はそこで終わっちゃうので言う機会はないのだけど。でもこういうの考えるのは面白いな、特にみんなの反応を想像しながらだと。いや、そこで言っちゃうと帰りの空気が完全にお通夜ムードになっちゃうか。困ったなぁ。

 

 

 

 その後は特筆することもなく、今日の訓練は終了。前日と違って夕食は自分達で作れとのお達しである。世話をするのは今日だけ、と昨日言っていた通りである。みんな前日に続いて疲労困憊だけど、飯田くんなんかは炊き出しは救助活動の一環だ、などとポジティブに解釈してやる気になっている。飯田くん、物事をポジティブに解釈するのはいいんだけど、そろそろその思考はやばいんじゃないかって気がしてきた。詐欺に引っかからないといいけど。

 

 メニューは定番のカレーライスだ。さすがに材料と道具は用意されている。火起こしも自力でやらないといけないけど、その点A組は爆豪くんと轟くんがいるので難なく点火。2人がいなくても百がチャッカマンなりマッチなりを創造できるんだけど。

 

 うーん、やっぱりこういうことしてると終わらせちゃうの惜しく感じちゃうなー。でも予定を崩すわけにもいかないし。予定通りの展開にした方が面白いし。うん、普通に高校生活送るよりそっちの方が面白そうだ。まあ、日常と趣味じゃ楽しみの方向性が違うのはそうなんだけど。

 

 片付けと入浴が終わり、あと就寝時間まで自由時間。まあ、その前に今度はB組女子の入浴を覗こうとした淫獣を始末したところだ。と言うか、他の男子はなにやってたんだ。見張ってろよ。ついでにプッシーキャッツの虎さんに締めてもらっているんだけど……

 

 いや、いい加減逮捕しろよあいつは。覗きは重犯罪ではないけど、こういう軽犯罪の積み重ねが重犯罪へ繋がっていくんだから軽視してはならない。雄英のヒーロー科から性犯罪者を出すなんて襲撃並の醜聞だから表沙汰にしたくないのはわかるけどさ、それは違うだろって。現状除籍することで外に出しちゃうとヴィラン連合に襲われるかもしれないからできないのもわかるけどさぁ。やっぱり入学試験に面接入れた方が良いよ、雄英。そんなだから内通者もスルーしちゃうんだよ。

 

 さて、疲労困憊と言いつつ昨日よりは余裕がある。淫獣撃退のお礼ってことでB組の女子陣がお菓子などを携えてA組女子部屋にやってきた。

 

「あれ、角取さんはいないんですか?」

 

「先生から指摘事項があるってんで呼ばれてる」

 

「そうでしたか」

 

 前にも言ったかと思うけど、B組の角取ポニーちゃんとは仲良しなのだ。ポニーちゃんは日本アニメが好きで、それが高じてヒーローの本場、アメリカからわざわざ雄英に入学している。で、わたしはレトロアニメ、つまり超常時代以前のアニメに詳しいことから交流があったりする。詳しいと言うか、リアタイしてたからね、私が。

 

 昔のアニメや漫画に限らず、ドラマに映画、小説も超常黎明期の混乱で散逸してしまった作品が少なくない。有名作品は発行部数が多いから無事だったものをかき集めて復刊されたりしてるんだけどね。海賊とか忍者とか死神とか。おかげで私が死んだあとに完結した作品の結末を知ることもできたけど、できなかったものもある。まあ、概要だけはわかるんだけど、それは意味ないよね。やはり超常黎明期は悪い時代。日本に秩序を取り戻したオールマイト、超グッジョブである。お礼に曇らせてあげるからね。

 

 さて、全員ではないものの、A組B組の女子が集まったということで女子会をやろうと三奈ちゃんが言い出す。合同授業も2学期からだし、普段の授業が忙しいから同じヒーロー科でも交流する機会は乏しいので、こういう状況は珍しい。

 

 女子会未経験の百なんかは随分わくわくしているけど、実際何やるんだろうね、女子会。当然わたしも参加したことないし。透ちゃんが女子会と言えば恋バナ! と言い出すと三奈ちゃんがそれに乗っかっていく。あー、なんか修学旅行のテンションだなぁ。ヒーロー科って修学旅行ないし。反応はそれぞれ。百なんかは結婚前にそんな! などと言ってるし。前から思ってたけど、百のこの辺の観念、割と古めかしいな。上流階級の家ってみんなそうなんだろうか。そんなわけで話題は恋バナに決まったのだが。

 

「う、嘘でしょ、誰も付き合ってる人いないの!?」

 

 ご覧の通りである。まあ、当然と言えば当然。中学のときは受験勉強で忙しく、入学したら月曜から土曜まで授業や演習に追い立てられ、おまけに宿題まである。この辺は相澤先生が最初に言った通り、放課後にマックに行けると思うな、が脅しではなくただの事実を述べていることがわかる。

 

「えっ!?」

 

 何よ、響香ちゃん、こっちを見て。わたしも別に付き合ってる人はいないぞ。

 

「付き合ってないの!? その距離感で!?」

 

「……? 私と百は親友だけど、それって付き合ってるとは言わないでしょ?」

 

 その通り、と言いたげに百も首肯する。付き合ってると思われてたんだろうか。

 

「もしかして、わたし達、交際してると思われてる?」

 

「いや、だって、ねぇ……」

 

 まあ、端から見ればそう見えるか? 今だって寄り添うように座っているし。

 

「そうなんだー」

 

 なぜか安堵している様子の透ちゃん。どうした。

 

「そういう感じだって思ってたけど、違うんだ」

 

 これは拳籐さん。そうよ、違うのよ。今の時代、同性愛は別に普通って扱いだけど、だからと言って堂々と公表している人も別に多くはない。異形系と同じで都会じゃ普通って程度でしかない。わたしは他人に認められていることがそんなに重要だとは思わないけど。好きなら好き、それでいいじゃん。ま、自分と違うものがいると不安で仕方ないんだろう。まこと、人間の迫害性は度しがたい。

 

「じゃ、じゃあさ、片思いでも好きな人は!?」

 

 これにはお茶子ちゃんがびくりと反応している。ああ、そういや出久くんを意識し出した頃だっけね。確か、青山くんに指摘されたんだっけ。しかし試験中に言うことかね。結果的にそれで試験を突破できたんだから何がなんだか。

 

 当然そんなお茶子ちゃんの反応に三奈ちゃんや透ちゃんが食いつく。けどお茶子ちゃんも意識しているって程度で、はっきりとした恋愛感情があるかわからない、って状態だからいまいち煮え切らない返事しかできない。最終的に三奈ちゃんも引いたけど、それはそれとして恋バナでキュンキュンしたいと話題を続行させる気だ。そこでクラスの男子なら誰と付き合いたいか、と話を振るけどこちらもみんないまいちピンと来ない様子。

 

「一応聞くけど、仮定としてね? 常夜は誰が良さそう!?」

 

 なぜわたしに振るのか。男には興味ないけど、強いて言うなら。

 

「口田くん?」

 

「おっ、なんか意外」

 

「口田くんって、物静かだし、なんか優しそうだなーって。まあ、彼女より動物の方に構いそうですけど」

 

 まあ、わたしが騒がしいのを好んでいないってのもあるけどね。それで言うと障子くんも悪くないかな、寡黙な仕事人って感じだし。

 

「ああ、それはあるかも。でもなんか許しちゃいそう」

 

 動物が相手だからね。そこも彼の人徳だろう。口田くん、原作でも活躍する場面が少なくて地味な印象だけど、現実に接するとなかなかなものだと感じる。派手な活躍ばかりがヒーローじゃない。動物、しかも虫まで操れる個性が弱いはずがないのだ。

 

 その後も恋バナは続くも、三奈ちゃんが期待するような展開にはならず、だらだらと時間が過ぎていく。

 

「ところで、三奈ちゃん、このあと補習でしたよね」

 

「思い出させないでよ! 胸がキュッってなった!」

 

「それが求めていたものでは?」

 

「そういうことじゃなーい!」

 

「常夜ってたまに意地悪だよね」

 

 そんなわけで2日目の夜は更けていく。

 

 

 


 

 

 

 横浜、神野区。その片隅にあるバー。看板はあるものの、営業をしている様子はない。当然だ、この店はヴィラン連合の拠点なのだから。

 

「改めて確認しておくか」

 

 体中継ぎ接ぎだらけの痩身の青年が2枚の写真をテーブルに滑らせる。

 

 今回の襲撃部隊――開闢行動隊のリーダーに指名された荼毘である。

 

「目標はこの2人、爆豪勝己と志村常夜の拉致だ」

 

「他のヒーローやガキは?」

 

 筋肉質の男、マスキュラーが尋ねる。

 

「生死は問わない。ついでに拉致しても構わない、だそうだ」

 

「待て、荼毘。生殺与奪は全てステインの仰る主張に沿うか否か、そうだろ!?」

 

「……ああ、そうだな」

 

 爬虫類の特徴が身体に現れている異形系の青年、スピナーが荼毘を遮る。面倒そうに頭を掻く荼毘。

 

「ステインの主張がどうあれ、俺達に殺されるようならそれまでだろ? あぁ、疼くなぁ、おい、決行はまだなのか」

 

「明日の夜だって言われてるでしょ? もう少し我慢しなさいな」

 

 サングラスの男がマスキュラーをたしなめる。しかし、その仕草はどこか女性的だ。

 

 集まった者は11人。

 

 荼毘、マスキュラーはいずれも両手の指では数え切れないほどの殺人容疑がかけられている。彼ら以外にも

 

 脱獄死刑囚・ムーンフィッシュ

 

 強盗致死傷、殺人など40犯以上のマグネ

 

 同じく殺人容疑がかかっている少女ヴィランコンビ・吸血鬼姉妹(ヴァンピレス・シスターズ)

 

 殺人容疑こそないものの多数の強盗・窃盗容疑のあるMr.コンプレス、トゥワイス

 

 犯罪容疑は不明なものの、闇ブローカーから推されたマスタード

 

 元は一般人であったがステインの思想に感化されヴィラン連合にたどり着いたスピナー

 

 いずれもこのヒーロー飽和社会においてヒーローや警察の手から逃れ続けているヴィランの精鋭ばかりだ。4月に行われた雄英高校への襲撃において、集められたチンピラはまるで役に立たなかった反省から、今度は手練れを集めた少数精鋭による奇襲だ。

 

「現地への移動と撤収は黒霧がやってくれる」

 

 バーカウンターでグラスを磨いている黒霧が一同に会釈する。

 

「便利な個性もあるもんだな!」

「役に立たないだろそんなの!」

 

 1人で正反対のことを言うトゥワイスを尻目に、荼毘が現地の地図を広げる。地図には襲撃当日の人の配置、その予想が書き込まれている。

 

「明日の夜、肝試しをするそうだ。そこを襲う」

 

「肝試しね、はんっ。となると向こうはバラけるってことか」

 

 ヒーロー側の不用心さを鼻で笑うマスタード。

 

「そうなるな。ターゲットがどこにいるかはくじ引きだろう、臨機応変に、だ」

 

「それにしても、こんな情報どこから手に入れた? 向こうもこっちのことを警戒してるはずだから、甲羅に籠った亀みたいなもんだろうに」

 

「雄英には毒を送り込んであります」

 

 Mr.コンプレスの疑問に黒霧が答える。

 

「毒ねぇ……内通者ってわけか。仮にその内通者が殺されちゃっても構わないのかな?」

 

「ええ。これで死ぬようなら用なし、とのことですので」

 

 そんなやりとりがされている中で、吸血鬼姉妹の片割れ、トガヒミコは自分用に提供されたサポートアイテムが可愛くないと文句をつけていた。裏のデザイナー・開発者が設計したもので、ヒミコの個性に合わせてはいるものの、相手に伝えられた情報が個性と体形だけであったために、彼女には不似合いなゴツいものになってしまったのであった。もちろん、情報を制限したのはその設計者が逮捕されてこちらの情報がヒーロー側に掴まれることを防ぐためだ。裏社会ではよくある措置なのだが、それはヒミコには関係のない話である。

 

「イヨちゃんも何か言ってください」

 

「明日じゃもう変更できないから、今回は諦めようよ」

 

「マグ姉、イヨちゃんが冷たいです。ヨヨヨ」

 

「あらあら。お友達は大切にしなきゃ、ね?」

 

「……絶望的に似合ってないと思うよ、私も」

 

「でしょ?」

 

「てか、それ重くないの?」

 

「持ってみます?」

 

「あれ、意外と軽い」

 

 吸血鬼姉妹が呑気におしゃべりしているのをよそに荼毘は話を続ける。

 

 既に全員に配布された資料には現地にいるプロヒーロー6人と雄英生41人のプロフィールと個性が記されている。この中でも厄介なのは当然ながらプロヒーロー達だ。特に個性を封じることができるイレイザーヘッドをどう抑えるかが重要になってくるだろう。

 

 そのイレイザーヘッドとブラドキングは合宿所にいると予想されており、これには荼毘とトゥワイスが対処することになる。最も多くの人間が固まっている場所にはマスタード、彼の個性『ガス』は広範囲に毒ガスを散布できるためだ。それ以外は単独、或いはペアを組んで肝試しのために複数グループに分かれた生徒たちを襲撃する手はずになっている。さらに脳無が1体貸し出されることになっている。

 

「今回は狼煙だ。まずは思い知らせろ、奴らの平穏が俺達の掌の上だと言うことを」

 

 この場にヴィラン連合のリーダーである死柄木弔はいない。が、別室で店内に設置されているカメラから彼らの様子を観察している。

 

 襲撃があった、と言う事実だけでも社会を揺るがすには十分なのだが、以前に常夜が指摘した通り、ヴィラン連合の勝利が求められている。そうしなければ連合の悪名を高められず、死柄木弔が恐怖の象徴になることができない。

 

 同時に開闢行動隊のメンバーのお手並み拝見、と言う面もある。個性や前歴はある程度把握しているが、実際の実力は現場でなければわからない。先のチンピラ達とは違い、使い捨てていいような者達ではない。もっとも望ましい結果はターゲットを確保し、全員が帰還する完全勝利。

 

 荼毘の言う通り、これは社会を崩すための狼煙だ。

 

 成功すれば、さらに多くのヴィランが連合に集うだろう。それどころか、社会に不満を抱く者も続く。

 

 そうだ、このクソ溜めじみた社会をぶち壊してやろう。

 

 平和の象徴を地に伏せさせてやろう。

 

 己が築いてきた全てが崩れ去るのを見せてやろう。

 

 そして、その瓦礫の上に。

 

 そこまで考えて、弔は頭を振る。いずれたどり着く場所だが、今はまだだ。

 

 しかし逸る気は収まらない。

 

「ああ、だんだん、楽しみになってきたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、ショータイムのはじまりはじまりぃ」

 

「楽しみにしているよ、弔、常夜」




切島くん、ラッキースケベ。

個人的にヴィラン連合の中だとトゥワイスが一番書きにくいと思ってます。この言い方でいいのか……?
ついで、ヒミコ、荼毘って感じです。

一番書きやすいのはドクターです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

『雪女』のヒーローアカデミア(作者:鯖ジャム)(原作:僕のヒーローアカデミア)

私の名前は雪柳氷雨(ゆきやなぎひさめ)。▼個性は『雪女』。▼この個性、氷や雪を自在に操れて……身体が女性のそれになってしまうという、ちょっと変わったものなんです。▼ええ、そうです元男ですよ。がっかりさせてしまいましたか? ▼……え? むしろいい? そ、そうですか……。▼……まぁでも、そういうことなら。▼私がいっぱしのヒーローになるまでの、波乱に満ちた軌跡を見…


総合評価:20088/評価:8.81/連載:69話/更新日時:2025年05月24日(土) 18:00 小説情報

ステイン妹のヒーローアカデミア(作者:苗字ちゃん)(原作:僕のヒーローアカデミア)

 ステインの妹に転生したので過酷な人生を歩みながらも、兄の罪を背負ってヒーローを目指して生きていく少女の物語。▼ ※転生者ですが転生要素はあまりないです。▼ ※赤黒血染の過去を捏造しています。▼ ※11話更新後、タイトルを変更いたしました。▼▼支援イラスト頂きました。▼皆様ありがとうございます!大感謝!▼【挿絵表示】▼・素知らぬ猫様(22.4.9)▼【挿絵表…


総合評価:10359/評価:8.9/連載:22話/更新日時:2023年12月07日(木) 05:00 小説情報

いや、人ん家の前で何やってんの?(作者:ライムミント)(原作:僕のヒーローアカデミア)

いや、本当に家の前で何やってんの?よそでやってくれない?▼オールマイトと緑谷君の秘密を偶然知ってしまった、そんな主人公のお話。▼そして時にはハジけ、時には真面目に、時にはスケベして頑張っていく、そんなお話。▼


総合評価:29434/評価:8.54/連載:75話/更新日時:2026年01月01日(木) 00:00 小説情報

正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる(作者:黒岩)(原作:ONE PIECE)

変な果物食べて、見知った正体不明の妖怪になりました。色々あって絶望したけどメンヘラ龍のお供として彼と愉快な仲間たちと楽しくやっていこうと思います。▼※晒し禁止


総合評価:46801/評価:8.97/連載:176話/更新日時:2025年08月12日(火) 18:00 小説情報

【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!(作者:そとみち)(原作:僕のヒーローアカデミア)

何だこのタイトル(真顔)▼峰田と同じ中学出身のオリ主がヒロアカの世界で下ネタをぶちかますお話。▼なおオリ主はプリケツドスケベ美少女スタイルの男子とする。▼【挿絵表示】▼【挿絵表示】▼※峰田が強化されています▼※峰田の性癖が捻じ曲げられています▼※峰田がまともなこと言うようになってます▼※砂藤がA組不在です▼※ギャグ寄りです▼※たまにシリアスもあります▼※勢い…


総合評価:38003/評価:9.12/完結:177話/更新日時:2023年12月14日(木) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>