ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う   作:タメガイ連盟員

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ちびたXtreme様、佐藤東沙様、ユーグレナ様、誤字報告ありがとうございます。

時間がかかると言いつつ更新です。ゲームは目にきついんですけど、執筆作業はそれほどでもなかったり、長時間はできませんけど。




33.悪夢1

ヴィラン連合の拠点であるバーに来たところで今回の襲撃事件の顛末を見ていこう。ちなみに私はバーの上階にある個室にいる。爆豪くんは変な椅子に拘束されてるのに。わーい、VIP待遇! 見張りはいるけどね。一応『念動力』対策として目隠しをされてる。別に問題ないけどね。

 

 ヴィラン連合・開闢行動隊による雄英高校ヒーロー科1年林間合宿襲撃事件は生徒41名のうち、

意識不明の重体:15名

重軽傷者:12名

行方不明:2名(爆豪勝己、志村常夜)

で、無傷で済んだ者は12名。

プロヒーローも6名のうち、重傷者1名(ピクシーボブ)、行方不明者1名(ラグドール)。

ヴィラン連合はマスキュラー、マスタード、ムーンフィッシュの3名が現行犯逮捕されたものの、他の者は跡形もなく姿を消した。そしてその行方は4月に起きた雄英高校襲撃事件同様、不明のままである。

 

完全敗北

 

そうとしか言い様がない、最悪の結果となってしまったわけだ。まあ、正確にはその一歩手前。最悪は死者が出た場合だ。

当然ながら、翌日の朝刊はこの事件を挙って報じ、『雄英大失態』と言う見出しが躍り、どの紙面も雄英を非難する論調が強い。そりゃそうだ、2度も襲撃を許したとあってはトップ校の名折れだ。しかも逃げられている。“ヴィラン活性化の恐れ”との雄英側の認識はあまりにも甘かった、と言わざるを得ない。そしてヴィラン連合側の戦力見積もりも甘かった。USJ襲撃のときは弔と黒霧、チンピラ多数、それにハイクラス脳無と言う戦力で、最終的に弔と黒霧だけが逃走した。問題は彼らの戦力をこのときを基準にしてしまったことだ。つまりステインが連合に参加していた、そのことの影響がどの程度になるのか予測できていなかったってわけで、その結果がこれ。要するに平和ボケしていたってわけだ。まあ、連合に新規参加したヴィランの中でも特に危険なマスキュラーとムーンフィッシュを逮捕できたのは幸いだったと言える。まあ、荼毘も危ないけど。マスキュラーを潰したのわたしだし。楽しんじゃってまあ。それはともかく、マスタードもだ、最も多くの被害を出してるのはこいつだし。マスタードを倒したのはB組のてつてつくんと拳籐さんで、マスタードに挑んだのはA組への対抗意識からみたいだけど、結果としてはプラスになったわけだ。もっとも、MVPは百だろうけど、百がいなかったら意識不明の重体が死亡になっていたかもしれないし。それにミドル脳無に発信器をつけたことも今後の展開に大きく影響するところだ。これでようやくヴィラン連合の居所が掴めるわけだしね。これは警察の地道な捜査の成果でもあるけど。いや、それにしても百の個性が便利すぎるな。便利だけど使いこなすのが難しいタイプの個性だけど。うーん、パパにとられないといいけど。弔に合わないから大丈夫かな。いや、無個性にしておくだけでも意味はあるから、どうだろう。

 あとあの脳無! よくも百を傷つけやがって! 百を傷つけていいのは私だけだぞ。あとで潰す。

 ともかく、連合としては大成功と言える。問題はこの後。連合の居所がヒーロー側にバレるので、ヒーロー側からの反撃が始まる。これを機にヴィラン連合を一気呵成に殲滅しようと考えるはずだ。であれば、最大戦力が投入されることになる。これを退けられるかどうかだ。まあ、弔達だけじゃ無理だからパパの手を借りるしかないんだけどね。この辺も含めてパパの思惑通りって感じかな。

 

 で、一方の雄英の会議室では内通者がいる、とプレゼントマイクが提起する。うん、いるよ。しかも2人。もっとも、これはスナイプに自身が潔白を証明できるか、と言われ引っ込めてしまったけど。流石に冷静だね。内通者がいるかもしれない、って状態は疑心暗鬼を深め内部から崩れる要因になるんだけど。まあいいか。ついでみたいなものだし。

 校長には何か計画があるみたいだけど、あれか、全寮化。どうだろうねぇ、今後の展開が展開だから通るのかどうか。最悪、警察と文科省の担当者を洗脳すればいいか。

 おかしい、なぜ私の仕事が増えているのか。いや、何割かは私のせいだけどさ。寮生活に参加できないの、ちょっと惜しいかな。

 

 さて、少し時間を進めて、ヒーロー科のみんなが収容されている病院の様子を見てみよう。重体者は未だ意識が戻っていない様子だ。最悪私が起こせばいいか。死んじゃったら困るし。

 そして出久くんの病室では見舞いに来ている切島くんと轟くんから爆豪くんと志村常夜、つまり私を救出に行こうと提案されている。当然、反対意見が出る。

 襲撃中に相澤先生から出されていた戦闘許可は既に解除されている、つまり個性の使用は違法行為になるわけだからこれは当然だ。その上で行動すると言うのなら、それはヴィランと同じだ、と。ちなみに、原作では確か梅雨ちゃんの発言だったと思うけど、梅雨ちゃんは重体組なので意外にも砂藤くんの発言である。既にオールマイトらが動き始めているからプロに任せるべきだ、とも。

 えっ、なんで梅雨ちゃんが重体になってるかって? 吸血鬼姉妹に拷問されて失血状態になってたからだね。トガちゃんだけならそこまでされなかっただろうけど、イヨちゃんまでいたからねぇ。サディストってわけじゃないんだけど、容赦ないからね、彼女。実際には梅雨ちゃんを肉体的に責めて、尋問はお茶子ちゃん、にしたんだけど。ヒーローは自分の痛みはかなり耐えるけど、他人が痛め付けられるのは耐えられないものだからね。あのときのお茶子ちゃん良かったなぁ。うっかり私の居所を言っちゃったところとか。実際には『真実吐き』使ったんだけど。これも便利だよね、尋問にも使えるし、こうやって精神を揺さぶるのにも使えるし。ただ時間がないから責め方がちょっと雑なのはよくなかったかな。ちなみに、梅雨ちゃんは異形型ってこともあるけど、血液型が既存のものと少し異なっているため、輸血のために家族が呼ばれてたりする。流石人間の定義が崩れた、と言われるだけのことはある。

 さて、感情としては理解できるけど、自分達があがっていい舞台ではないことはみんな理解している。まっ、わかっているからと言って止められないのが感情ってものだけど。

 うーん、保須の事件に直接関わっていない切島くんはともかく、轟くんと出久くんはあのときなんで怒られたかわかってるのかね。飯田くんは彼らを止めようとしているから反省しているのはわかるけど。

 轟くんと出久くんはなぁ。気持ちがあればいいって問題じゃないんだよ。どうしても行きたいなら退学届け用意してからにしなよ。仮に私が、その場にいたらそう言っただろう。原作ではうまくいったけど、あそこで誰かが死んでいた恐れもあった。襲撃でどれだけの被害が出たのかわかってないのかねぇ。襲撃したのが連合の全戦力ってわけじゃないって想像できないのかね。

 善意の行動じゃなくてこどものわがまだよねぇ、結局大人が尻拭いするんだから。誰が責任を取ると思っているのやら。校長と相澤先生だね。

 なんと言うか、オールマイトのヒーロー精神教育の悪いところがでてるよね。

「お前もしかして、まだ自分が死なないと思っているんじゃないかね」

 ってTさん弟みたいに言ってやった方がいいんじゃなかろうか。USJで私が死にかけて見せたっていうのに。もう少し死と言うものを真剣に考えて欲しいね。

 まあ、これから先、何があっても、自己責任だからね。

 観客は多い方がいいし、楽しんで欲しいな。

 で、だ。救出……うーん、まあいいか。ともかく、無断行動をとるのは出久くん、轟くん、切島くん、百、飯田くんの5人。飯田くんは反対してたけど、同行することで妥協したようだ。まー、みんな冷静さを失ってるからねぇ。一応変装するぐらいはするみたいだけど。ステインのときはなかったことにしてことを収めたけど、今度は大人が庇ってくれるかどうか。それも含めて自己責任だ。除籍で済むといいね。

 さて、集結したヒーローはオールマイト、エンデヴァー、ベストジーニスト、エッジショット、シンリンカムイ、マウントレディ、ホークスというトップから有望な若手までずらりと豪華メンバーだ。まあ、動かせる人はみんな呼んだって感じかな。あれ、ホークスっていたっけ? 別にいいけど。あと仲間が拐われてるからか、虎も参加している。それにオールマイト絡みであろうグラントリノも。なるほど、ヒーロー側も本気だ。それにしても、オールマイトはパパが連合に関与している可能性は周知してるんだろうか。流石にヒーロー公安には伝えてるだろうけど。で、相澤先生、イレイザーヘッドがいないのは記者会見に出るためだ。朝刊の論調から見ても、面白おかしく雄英を叩くつもりなのだろう。いやはやまったく、マスコミってホントに変わらないね。

 弔はなぜヒーローが非難される? なんて煽ってたけど、そりゃ非難されるよ。学校は学生を守る立場なんだから、被害を出したらそうなる。出久くんも学校側の、悪に屈さない、ってスタンスは示したのに、とか思ったけど、そのせいで被害を出したようにしか見えないからね。うーん、どうにも出久くんは社会的な問題に鈍い感じがするね。まだ高校生だからそんなもんかも知れないけど、ヒーローばっかりじゃなくてもうちょっと世の中のことにも関心を持つようにしないと。

 逆襲作戦は今夜みたいだから、その前に動かないと。

 バーに下りると、連合のメンバーがそれぞれ寛いでいる。

「ん?あいつの見張りはどうした」

「ゴメン、リーダー、スポンサーから呼び出し。明日の夕方には戻れると思う」

「またそれか。まあいい。いい加減、そのスポンサーとやらの顔を見てみたいもんだな」

「そのうち、顔を出すんじゃない? じゃ、いってきます」

 バーを出て、いつものように人の視界や防犯カメラを避けて移動しつつ、死角に入ると同時に『不可知化』で姿を消す。バーから離れて、有料駐車場に停車しているバンの後部座席に『透過』を使って乗り込む。バンの窓ガラスにもスモークが貼られているから外から中は見えないようになっている。『不可知化』を解除して運転手に話しかける。

「こんにちわ、窃野さん」

「うわっ!? ってあんたか。じゃあ、予定通り行きますぜ」

「うん、よろしくね」

「……」

「なにか」

「いや、なんか、雰囲気違くない?」

「そう?」

 イヨちゃんも実は窃野さんと面識があったりする。まあ、送り迎えしてもらってるからね。

「いやまあ、指定の場所まで送るのが仕事なんで、気にしないことにしますわ」

 いい心掛けだ。それなりに裏社会で生きてきただけのことはある。

「じゃあ、到着したら教えてください」

「へい」

 まっ、なんのことはない。今の私の姿は在城イヨのものだ。姿というか、肉体が、だけど。私の、志村常夜の肉体は遠隔操作している状態だ。合宿中は分身の精神を入れて活動させてたけど、それもさっき回収しているから、あの肉体の中身は空っぽってわけだ。コピーの『個性創造』は入ってるけどね。

 にしても、マスキュラーは私が壊して楽しもうと思ってたのに。コピーを回収したから楽しめないわけじゃないけど、生とは感触が違うもんなぁ。なかなか思い通りに行かないもんだ。まっ、もうしばらくの辛抱だ。とは言え、イヨちゃんの肉体を使っている以上、現場に出るのは危険だ。なにしろこの肉体は一般人同然、パパとオールマイトのタイマンなんて場面にいたら命がいくつあっても足りやしない。だから、八斎会に用意させた隠れ家から遠隔操作するしかない。単独だといろいろ不備があるから分身も配置してるけどね。それから今の肉体に入っている個性は『個性創造』のコピーだ。オリジナルだとイヨちゃんが死んじゃうし。コピーでも負担かかるけどね。

 説明するまでもないと思うけど、イヨちゃんのスポンサーは私。彼女のお願いを叶える代わりに肉体を差し出すって契約。まあ、彼女が首を括ったところで話を持ち掛けたから殆ど詐欺みたいなものだけどね。我ながら悪どい限りだ。もちろん、願いは叶える。契約内容は遵守しないとね。この肉体だって後で返すつもりだし。まあ、『巻き戻し』で元通りにしてからにすればいいか。

「着きましたぜ」

「ありがとうございました」

 車から降りて、よくある一軒家に入る。鍵? かけっぱなしだよ、私はなくても入れるし。中にいろいろ置いてるから防犯は必要・実際、学校近くの部屋は“志村常夜”としての生活空間だから、私個人の荷物はみんなこっちにあるんだよね。八斎會を私の支配下にしたのって、個性消失弾の排除が目的のひとつだけど、それ以外にもこう言う不動産を手に入れるのに使えるからなんだよね、他にも色々できるし。

 居間に入って冷房をつけてから、冷蔵庫から飲み物を取り出す。そして1人がけのソファーに座る。さながら映画を見る準備だけど、実際そんなもんだしね。謝罪会見は正直テンプレ通りというか、面白みがないなぁ。正装してる相澤先生の方が面白い。似合わないなぁ。それにしてもあれだ、相澤先生の爆豪くんに関する擁護、『彼の理想の高さに起因する』って意味がよくわからないよなぁ。まあ、あれを擁護するのが難しいんだろうけど。記者からの質問が私が拉致された理由に移っている。当然、USJで重傷を負ったこと、保須市で脳無に攫われかけたことにも言及している。どこからどう見ても前々から私が連合に狙われていたとしか思えないけど、まあ、わかんないよね。根津校長も『理由は不明、調査中』としか答えられない。まあ、記者の方も爆豪くんと違って私の方は拉致された理由を推測できないから深くは突っ込まないようだ。そりゃねぇ、志村常夜はオールマイトの師匠の孫、なんて情報は誰も知らないことだからね。オールマイトも推定、って頭に付いちゃう認識だし。あ、ちなみに志村常夜の体も爆豪くんと一緒にバーに移動している。今は『五感共有』であっちの様子も同時中継で見ているわけだ。にしても爆豪くん、威勢が良いねえ。殺される心配がなさそうだとは言え。こういう感覚は鋭いな。拘束が解かれているから自力で脱出しようとしているし。なんか私に目配せしてるけど、協力しろってことかな。うーん、どうしよっかなぁ。弔も早々にパパに協力を求めているし、おっと、こっち見てる。

「爆豪くんは大切なコマだ。ならもうひとつのコマを使うとするか」

「もうひとつ?」

 弔の発言に爆豪くんも連合もメンバーも頭の上にハテナマークが浮かんでいる。おやおや、もう出番?

「なぁ、クソ妹」

「妹だぁ!?」

「どーもォ、ピザーラ神野店ですー」

 ノックと共に聞き覚えのある声がする。あっ、もう来ちゃった。

「ピザ屋だ! 頼んでないぞ!」

 そして壁をぶち破ってオールマイトを先頭にグラントリノとシンリンカムイ、エッジショットがなだれ込んできた。いやあ、鮮やかな手並みだ。あっさりと連合メンバーが拘束されている。しかも黒霧がダウンしているし、外にはエンデヴァー達が包囲していて逃げ場がない。

「もう逃げられないぞ、ヴィラン連合。我々が来た!」

 こちらにやってきたオールマイトが私と爆豪くんを抱き寄せる。

「怖かったろうに……よく耐えた! ごめんな、もう大丈夫だ、少年少女!」

 爆豪くん、怖くない、ヨユーだ、とか言ってるけど、顔がにやけてるぞ。出久くんが来るのは屈辱に感じるけど、憧れのオールマイトは話が別のようだ。わかりやすいやっちゃ。

 弔も黒霧に脳無を呼ぶように指示するが、脳無も脳無で別働隊に制圧されてしまっているので呼び出せない。決まった座標にないと遠隔では使えないのが『ワープゲート』の弱点か。これぐらいの弱点は仕方ないと思うけど。

 オールマイトが決着を宣言している。弔もまだ始まったばかりだってのにこうもあっさり制圧されちゃあねえ。しかも連合メンバーの素性もほぼ押さえられてるし。ん、イヨちゃんがいないのに気づいたか。気づいたところでどうにもならないけどね。オールマイトがパパの所在を弔に問いただす。

 

「お前が嫌いだ!」

 

 イライラが極限に達したらしい弔が叫ぶ。誰も助けてくれない、ままならない人生だったもんね。

 

「常夜ッ! やれッ!!」

 

 おっと、見物してるつもりだったけど、そういうことなら仕方ないなぁ。

 

「あらあら、困ったお兄様だこと」

 

 言いながら、目隠しを剥ぎ取る。すると、何と言うことでしょう、両目がしっかりとあるではないでしょうか。

 

「……なに?」

 

 突然私から冷たい、あの悪の魔王を思い出させる声が聞こえてきたことにオールマイトとグラントリノがこちらを凝視して固まっている。ダメだよオールマイト、戦闘中の硬直は命取りだって、よく知ってるでしょ? オールマイトの腹部、パパに穴を空けられた場所に両手を当てて、『衝撃波』+『衝撃倍増』×5を発動。

「『巨神の一撃(アトラス・インパクト)』」

 

 最大威力の『衝撃波を受けたオールマイトが、自分達が入ってきた壁の穴を通って吹っ飛んでいく。

 

「うおおおおお!?」

 

「なんだ!? どういうことだ」

 誰もが突然の事態に驚愕している。おっと、パパもワープ個性を使って脳無を送り込んできたか。なんでこんなビジュアルなんだろうか。気持ち悪ーい。

 

「脳無!? 保管場所は制圧しているはず!」

 

「黒霧は昏倒している、こいつじゃねえ! まさか!」

 

「白黒女、てめえ!」

 

 爆豪くんが私に向かって憤っているけど、問い詰める間もなく黒い液体に飲み込まれていく。これって名前なんだっけ? あ、『転送』か。まんまだな。さらに弔達もどんどん飲み込んでいく。私は対象……じゃないみたいだから自力で移動しないとダメか。うん、さすがにグラントリノはパパの出現に気づいたか。

 

「ご老体! なにかご存じなのか!?」

 

「対応が速すぎる、この流れを読んでいやがったのか!? だが、あの子がなぜ!」

 

「年寄りの冷や水ですね、グラントリノ」

 

「ッ!?」

 弔たちの姿が消えたのを確認してから『速着替』でヴィラン活動用の黒のセーラー服に衣装チェンジ。ヴィラン活動用と言うか、“黒外套”の衣装なんだけどね。さらに『人体部位複製』を発動する。両腕にいくつものスリットが現れ、それが開くとそこには眼球が埋まっている。

 

「な、なんだあれは!? あの少女の個性はあんなものではなかったはず!」

 全部で12の眼球が2つずつヒーロー達に向けられる。『目からビーム』と『抹消』を半分ずつにそれぞれ発動。

 

「なっ、個性が!? そんなバカな、イレイザーヘッドは会見場に!」

 

「エッジショットさん、あなた、人の体に穴を空けるのがお好きみたいですね、たまには自分の体に空けてみませんか? 意外と恍惚で病みつきになるかもですよ?」

 

 右腕から放たれたビームがエッジショット、シンリンカイムイ、グラントリノを貫く。うわっ、痛そう。それにしても、これでも膝をつかないなんてさすがプロヒーロー、根性すごいね。

 

「では、皆様、ごきげんよう」

 

苦悶するヒーロー達にカーテシーをしてバーを出る。外ではエンデヴァーとオールマイトがなにやら言い合っている。おっさん同士がなにしてるんだか。

 

「志村少女!」

 

「オールマイト、早く行かないと爆豪くんが連れて行かれちゃいますよ?」

 

 それだけ言い残してパパの元へ急ぐ。まだ連合のみんなには自己紹介してないからね。

 

「!? すまない、エンデヴァー! あとを頼む!!」

 

「おい!? アメリカ男!!」

 

 と言うかなんだ、アメリカ男って。どういうあだ名なのか、エンデヴァー。まあ、残るはミドルクラスの脳無だ。エンデヴァーなら問題なく勝てるだろう。

 途中でオールマイトに追いつかれそうだったからワープで脳無格納庫前まで転移。そこでは、パパが弔に何やら諭しているところだった。

「全ては君のためにある。この子もね」

 

 そこに降り立つ私。なんか良いタイミングっぽいけどたまたまだからね。

「はい。お父様」

 

「お父様!? ちょっと、その子、弔が妹とか言ってたわよね!? いつからこちら側だったの!?」

 当然の疑問を叫ぶマグネ。話してないもんね。

 

「では、改めまして連合の皆様。私は死柄木常夜と申します。こちらの、お父様、オール・フォー・ワンの娘です」

 

「なるほど! どういうこった!」

 

「お兄様はお父様の後継者なのですから、お兄様とお呼びするのは当然では?」

 

「ああ、死柄木が言ってた毒ってそういうことか」

 

「はい。その解釈でよろしいかと。ああ、いつから、と言うと、最初から、ですね。お兄様は最近まで私をご存知でなかったので、そのあたりに齟齬があったかもしれません」

 

 弔も言ってたことだけど、敵を欺くにはまず味方からってわけだ。

 

「やはり来るか」

 

 そうパパが呟く。

 

「全てを返してもらうぞ! オールフォーワン!!」

 

 そしてNo.1ヒーローのエントリーだ。これで役者は揃った。最高の舞台にするからね、お父様、オールマイト。と、その前に邪魔者は退場してもらわないと。もちろん、爆豪くんだ。近くでこそこそ隠れてる出久くんや百はともかく、彼は舞台にいらないし、観客としてもいらない存在だ。だって大人しく観劇しないどころか舞台に乱入しかねない迷惑客だ。まあ、出久くんも似たようなものだけど。彼の場合、周りが止めてくれるからね。じゃ、さっそく。

 

「なんだぁ!?」

 

 

 爆豪くんを『念動力』で上空に飛ばす。ちょうどそこには救出のタイミングを窺っていたホークスがいる。と言うか、そこにホークスがいるから狙って飛ばしたんだけど。ついでに爆豪くんには個性を使って暴れないように体温を下げてある。汗が出ないと使えないからね、あれ。ホークスはそのまま爆豪くんをキャッチ、暴れて抗議する爆豪くんを無視して即座に離脱していく。

 

「ホークス! 爆豪少年を頼む!」

 

「お任せを、って。ちょっとじっとしてて!」

 

 案の定暴れる爆豪くんにホークスも呆れ気味だ。あのままいたらオールマイトの邪魔になるってわかってるのになぜ戻ろうとするかわからない。

 

「……お前かい、常夜」

 

「このまま、好きにはさせません、彼だけは……うっ」

 

「まったく、往生際の悪い。申し訳ございません、お父様、お兄様、まだこの子に抵抗する意思が残っていたようです」

 

 実は志村常夜は操られていて、なんとかそれに抵抗して爆豪くんを逃がした、と言う演技をする。

 

「困った子だ。せっかく弔が見出したコマだと言うのに」

 

「ですけど、彼をこちら側に誘う機会はありますから。まずは、お兄様達をこの場から逃がすことが先決では?」

 

「いいだろう。『個性強制発動』」

 

 パパの手から延びた鎖のようなものの先端が黒霧に刺さり、『ワープゲート』が発動する。これ、単品の個性だよね、単体だと意味がない、個性に作用する個性だから、パパやおじ様のと似たタイプだよね。こういうのって、黎明期にはそこそこいたのかもね。で、だんだん淘汰されて現代ではあまりないレア個性となっている。相澤先生の『抹消』もこのタイプか。

 連合メンバーがワープゲートを通って行く。弔は躊躇しているけど、パパのここは私に任せろ的な言葉で決意したのか姿を消した。途中オールマイトが阻止しようとしたけど、パパがそれを許すはずもない。これでこちら側は私とパパを残すのみ。

 

「だが、今度こそここまでだ」

 

「それはどうかな。お互い手負いだが、僕にはこの子が、娘がいる」

 

「娘だと……!」

 

 オールマイトにしてみれば、私は師匠の孫なのにこんなこと言われたら憤るのも無理はない。

 

「ご挨拶が遅れました、オールマイト、私は死柄木常夜と申します。今日は事態が差し迫っていますので、また後日」

 

「……やはり、操られているのか!?」

 

「あら、バレちゃいました」

 

「言動には気を付けなさい、常夜」

 

「はい、お父様」

 

 

 

 まあ、実際遠隔操作してるからその通りなんだけどね。

 

「志村少女! 負けるな! 意思をしっかりと持つんだ!」

 

 ああ、さっき意識がまだあるようなことして見せたもんね。この人の性格なら呼びかけるよね。じゃあ、応えてあげないと。

 

「……オールマイト、助けて……」

 

あ、パパ笑うのこらえてるな。こっちの罠にズブズブ入っていくんだからおかしくて仕方ないだろう。

 

「ああ!! 任せろ!!」

 

「くっくっくっ、ヒーローはやることが多くて大変そうだな、オールマイト」

 

「だからこそ敗けられないんだ!」

 

 

 「あら、私を忘れてもらっては困りますわ」

 

「忘れちゃいないさ、君も覚悟しろ、死柄木常夜。オールフォーワン、ヴィラン連合共々捕らえる!」

 

「ウフフ。コワイコワイ」

 

 後に『神野の悪夢』と呼ばれる戦い、その最終幕が開けようとしていたのだった。




原作の名台詞を毀損していくスタイル。

はい、梅雨ちゃんを拷問したのは常夜です。梅雨ちゃんが好きな方はごめんなさい。
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