たまに、細かい設定も世界線も捨てて深く考えずに小説を書きたくなる時がある。

小説の感想欄にザルドとアルフィアとベルの触れ合いを探してた的な事が書いてあったから単発で1つ書いてみたくなった次第。

細かい設定は各自妄想でもしといてくれ。


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何も起こらなかった

「ねぇ、お義母さん?」

 

 

「・・・どうした?」

 

 

川底が見えるほどに澄んだ小川に2人の大人と子供が釣り糸を垂らしてさんさんと照りつける光の下で時間を過ごしていた。

 

 

「どうして僕達は釣り・・・だっけ?それをしているの?」

 

 

「つまらないのならやめても構わん。言い出したのはザルドだ。奴が言い出したのだ。」

 

 

「ううん、大丈夫。」

 

 

じっとしているのが苦手な子供に気を使ったアルフィアが離脱を促すも、ベルはくぁ…と小さくあくびを1つしながら寝ぼけまなこで半目になりながらうつらうつらと釣竿を握っている。

 

 

「たまには魚も食わせてやらないと健康に悪いだろう。」

 

 

そう返したのはベルの向かいで同じく釣り糸を垂らしていたザルド。本人からすると手掴みでもよかったのだが、あいにくと同席者が悪かった。

 

 

「ほぅ、【陸の王者(ベヒーモス)】までを喰らい、【暴喰】とまで言われた貴様が健康に気を使うとはな。狒々爺(ゼウス)辺りが聞いたら笑い転げそうだ。」

 

 

「ぬかせ、俺は団員の中でも食べることに関しては1番うるさい自信がある。」

 

 

「ここに来てから色々と狂わされた気分だな。」

 

 

「全くの同感だ。つい最近まで生きるか死ぬかを繰り返してきたとは思えないな。」

 

 

ボケーッと半分意識を夢の中に置いてきたベルを見合って半分呆れ顔で語り合う。

 

 

「それにしてもこの魔道具(マジックアイテム)どこで手に入れた?露商店では見たことない品だが。」

 

 

「自分の眷属の【万能者(ペルセウス)】に作ってもらったとあの男神が言っていた。」

 

 

「よりにもよってヘルメスの所とは、難儀なものだな。」

 

 

「全くだ。」

 

 

いくら時間を潰そうと、獲物がかかるかは結局運だより。ベルに関しては完全に夢の中に入ってしまった。そんな中でも釣竿を離さないのは血筋ゆえと言うべきなのか。

 

 

「なぁアルフィア。」

 

 

「なんだ。」

 

 

「お前は今の生活を想像できたか?アルフィア。」

 

 

「愚問だな。一線を退いた我々でさえオラリオから離れる選択肢などなかったのだ。誰がこの展開を予測できた?」

 

 

「はははは・・・そうだな。あぁ、その通りだ。大伸と呼ばれていたゼウスとヘラでさえ頭を抱える程だからな。それほどまでにこの子供が規格外ってだけだ。」

 

 

2人共それぞれの理由で冒険者として半ば引退しており、これからの人生としてベルの面倒を少しだけ見てくれないかと頼まれたのだった。

彼らのファミリアや他のファミリアの実力を加味しても、2人が駆り出されるほどの大惨事が起こることは滅多に無い。

 

 

「全く、そのせいで()()などという年老いた考えが増えたのは些か心外ではあるがな。」

 

 

「良いじゃないか。それほどまでに平和な証だろう。それこそお前が望んだ()()ではないのか?」

 

 

「【オラリオ】には行かせない。それが我々の総意だ。」

 

 

「・・・そうだな。」

 

 

太陽は頭の真上まで登って来ている。時間的にも昼飯時に当たる。釣れた獲物は5、6匹。

 

 

「さてと、そろそろ戻るか。」

 

 

3人分の釣竿と魚の入った容器(バケツ)を持つ。

 

 

「ほらベル、そろそろ戻るぞ。」

 

 

アルフィアにおぶられながら自分の家へと帰って行った。

 

 

・・・

 

 

「よぉお前ら。元気そうじゃねぇか。」

 

 

「エレボスか。今度は何の用だ。唯一の眷属(ヴィトー)を葬った報いと言うなら受けんぞ。」

 

 

昼飯を食べた3人の元を訪れたのは神エレボスだった。彼の眷属だったヴィトー含め、裏で暗躍していた奴らはとある事件で消滅した。

 

 

「ヴィトーの事は確かに悲しかったが、それはあいつが決めた道だ。親である俺からどうこうするつもりは無いさ。」

 

 

「どうしてこうも神はきな臭い奴が多いのか・・・」

 

 

「おいおい、酷い言われようだな。なぁに、用件はすぐに済む。そこにいる子を一目合わせてくれればすぐに立ち去るさ。」

 

 

貼り付けたような笑顔を向けるエレボスとベルの間に立ち塞がるように身を入れるアルフィア。

 

 

「おいおい、そう警戒しないでくれ。さすがの俺も傷ついちまうぜ?」

 

 

「抜かせ。最近狒々爺の好々爺がベルに色々と吹き込んでいる。この前、二三度『魔法』で吹き飛ばしたところだ。」

 

 

「ほんとによく送還されなかったな・・・」

 

 

「そういうことだ。すまないが帰ってくれるか。」

 

 

「手厳しいな。なにも話がしたいとまでは言わない。一目見るだけでいいんだ。」

 

 

「そもそもなぜ貴様がここを知っている?」

 

 

「そりゃぁ俺の神友であるヘルメスから・・・」

 

 

「よしわかった、アイツには躾が必要らしい。」

 

 

顔色ひとつ変えずに、オラリオに乗り込もうとするアルフィアをエレボスが割って入る。

 

 

「それはさすがにヘルメスが死んじゃうだろ・・・」

 

 

「なに、安心しろ。ヘルメスの次はエレボス貴様だ。」

 

 

「それは勘弁願いたいな。」

 

 

「・・・まぁいい。また後日押しかけられても困る。見るだけという条件なら構わん。」

 

 

そう言うと、アルフィアは背負っていたベルを椅子に下ろす。

 

 

「ふーん、結構可愛い顔してるじゃん。」

 

 

「これでもベルは男だ。本人にそんなことを言えば途端に頬を膨らませて拗ねてしまう。」

 

 

「へー・・・よし、目的は果たしたし俺は帰るわ。」

 

 

数秒ベルを眺めた後、すぐに立ち上がりそそくさと彼は出ていった。

 

 

「神っていうのはどうしてこういう輩が多いのか・・・」

 

 

「ただいま。」

 

 

ギィーっと扉が開いてザルドが帰ってくる。

 

 

「どうした?珍しく早いな。」

 

 

「別に構わんだろう、収穫としては十分だ。何より・・・」

 

 

ザルドがドアの向こうに目を向ける。閉ざされて向こう側は見えないが、そちら側に何かがあるのだ。

 

 

「いい加減入ってこい。久々の再会だ、早く安心させてやれ。」

 

 

扉の向こうの人に話しかけると、扉が再び開き2人の男女が入ってくる。

 

 

「「ただいま。」」

 

 

椅子に座っていたベルが跳ね起き、2人の元に駆けつけていく。

 

 

「おかえり!お父さん!お母さん!」

 

 

 


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