仄暗い深海からのヴィランコレクション   作:ターンアウトエンド

11 / 11
前話とセットにしようとしていたお話です。

次回も金曜日に。


第八話

「ふっ!」

 

地を滑るような動き。緩急のついたそれは、時折視界から消える。

間合いを撫でるが、不用意には飛び込んでこない。

仕合って最初に投げられたのを警戒しているのだろう。

 

速い動きに、此方の体勢が整わなくなったタイミングで。

 

「…っ!」

 

 

打撃は気が引けたのか、掴む仕草で距離を詰める彼女。

私の死角から、まばたきの間で手が届く程に。

 

生まれたてとは思えない敏捷性、身体能力。

 

だが、

 

 

 

甘い。

 

「くっ!?」

 

力を抜く事で体勢を変化させる体術。

それは、振り向きと、迎撃、掴んで極める、これを一呼吸で行う。

 

私が迎撃することを予想してたのだろう、極めた腕を抜かれる。

まぁ、抜けやすいように掴みは甘くしていたが。

 

学習能力が凄まじい。

 

先程まで見た父の吸収力はまだ人の範疇だったが、これはもうコンピューターの域だろう。

まるで、毎秒毎にパッチ当てと最適化のアップデートを行っているようなものだ。

 

自身の動きを、人体工学的視点から高効率動作を模索し続ける。

間違えた動作は二度としない、前より今、今より次の動作がより速く、無駄なく。

 

 

 

故に、分かりやすい。

 

「がぁ!?」

 

間合の外で様子を見ていた彼女と距離を詰める。

その位置からだと、逃げ道は二つ、誘導するのは難しくない。

後は来るとわかっていれば、タイミングを合わせるだけ。

そこに速さは関係ない。

 

()()()()()()()()()()()()

 

掴む仕草を見せることで警戒を上に引き上げ、強引に間合いを取ろうとする彼女の、まるで差し出されたように存在する体重の乗った蹴り足に、足先を引っ掛ける。それだけだ。

 

 

 

うわぁ、今顔面からいったなぁ…

 

大丈夫?

 

「だ、だいじょうぶれふ」

 

Mr.アメリカン(オールマイト氏)が訓練しても大丈夫だと自慢された床は、その謳い通り傷ひとつ無い。

 

彼女の鼻も、無事なようだ。

 

私と相対するは、コーカソイド系美女の欧州水姫『ネル』。

 

彼女の身体能力を見てみようと、まずは模擬戦をしてみれば。

パワー、スピード、敏捷性に耐久性。どれも一般的に高い、と言う程度のレベルを遥かに超えていた。

 

人の中では飛び抜けた身体能力を持つ父と比べても、スペック上では数倍の開きがある。

 

下手をすると、オールマイトと同等?

いや、それはないか。私の“勘”もそう言ってる。

しかし、下位互換、それも少し劣る程度のレベルであるのは確かだろう。

 

私が別に確かめたかった事も、大体分かった。

 

 

 

「私は、ご期待に添えたでしょうか?」

 

身だしなみを整えたネルが、やや不安そうに問いかけてきた。

良いとこなしだったもんね。不安にもなるか。

 

 

十分満足の能力だったよ。

思った以上に高かった。

 

「それは良かった、です」

 

 

私相手に、良いところを見せられなかったからか微妙な笑顔で答えてくれた。

 

悪かったね。

でも上司としてはさ、こう、不甲斐ないところを見せられないというか、意地があるわけで・・・

 

 

 

オマエラみみっちいって言うなし。私の能力確認も兼ねていたんだ。自分の個性に負けたらそれは不味いだろうに。

 

 

でもまぁ、これで予想していた個性の()()()に、確証に近いモノを得られた。

 

 

 

前世、漫画としてこの世界(ヒロアカ)を楽しんでいた時から思っていた事があった。それはオールマイトの個性、『ワンフォーオール』についてだ。

 

ワンフォーオールは、継承する度に強くなる肉体強化系の個性の性質を持つ。シンプルに言えばパワーが上がる。

 

オールマイト氏はそれを用いて様々な超常行動を成していた。

 

だが普通に考えれば、いくら超人的な力を手に入れたとはいえ、殴った車が空高く吹っ飛んだり、銃弾並みのスピードで移動するのは無理がある。

 

車は殴れば変形する。が、吹っ飛びはしない。何故なら殴った部分には応力が掛かるが、車両全体には静の慣性力が働いているからだ。

特に現代の車は、クラッシャブル構造をとっていることが多い。この構造は、動的エネルギーをスポイルさせる。

車体が()()のように変形はしても、空高く飛ぶことはまず無い。

そこまでのエネルギーを伝達できない。

 

普通ならば。

 

想定と結果が乖離している。

漫画ならそういうもの、で納得出来たが、自分がその中に生まれ生きているとなるとせめて確認はしたい。

 

ということで今回、ネルを使って地上での移動を実験し、観察をしてみた。

 

この地球上で動くには、どうしても空気の抵抗が入る。それは上下だろうが前後だろうが変わらない。

真上ならともかく、前に進むために後ろに蹴り出して進もうとすれば、空気による抵抗で起きる抗力によって、蹴り足が滑るだろう。

つまりは摩擦が負けるはずなのだ。

 

遅い銃弾で秒速190メートルほどだと言う。

時速換算でおおよそ700キロ、旅客機の翼に立つのと同じ空気の圧力が、踏み込みの瞬間本人に掛かるわけで。前に進める気がしないんだよなぁ。

 

しかし現実は違う。

 

オールマイトも、ネルも。

残像が残るような超スピードでの移動を可能としている。

現実が理屈を凌駕している・・・ならば何処かで補完している筈だと、私は考えた。

 

結果として、私の考えは正しかった様だな。

 

 

ネルは高速機動で地面を蹴る際、滑りを防ぐために微細な念動力(サイコキネシス)を発動させている。

いや、蹴り足だけじゃない、体勢を整える際にも使っている様だ。

 

恐らく車を空高く飛ばす原理も似たようなものだろう。

 

そしてこれはネルが持つ能力、という訳じゃ無い、

 

個性の、本質に関わる部分。

 

 

 

個性とはなんなのか。

 

私たちは個性を本当の意味で理解できているのか?

 

個性を、ただの身体的な能力の延長で考えるのは間違いなのかもしれない。

 

個性が能力を形作っているのではなく、

『能力』が“個性”を形作っているとしたら。

 

 

 

 

 

 

 

 

ネル、そろそろ帰るから片付けしようか。

 

「はい、分かりました」

 

 

これからの方針、方法の模索、情報の収得。

やること、考えることは一杯ある。後に回せることは後に回すしかない。

 

 

 

 

 

 

 

私の“個性”は何をもたらしたいんだ?

 

 

(おまえ)は、何処へ行きたいんだ?

 

 




新たな問題提起。



そして、









さむい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

祠を壊されてしまったTS娘「また、あの祠を壊したんか!?」(作者:葛城)(オリジナル現代/ホラー)

色々あって命を絶ったおじさん、目が覚めたらTS和風美少女霊能力者になっていた!?▼お供は身長2m40cm強、体重240kg、乳がデカくて腰が細くてケツがデカい、ハイパーフィジカルモンスター▼そう、これはホラーである▼今回は、気楽なバイトな話、なお――


総合評価:437/評価:8.07/連載:8話/更新日時:2026年04月24日(金) 23:42 小説情報

超高校級の幸運に内定していた少女は、高度育成高等学校に入学する。(作者:杏仁豆腐)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼ざっくり言うと、超高校級幸運の才能を持つ少女が死んでよう実世界に転生するお話。ダンガンロンパ無印アニメの円盤についてた特典の、短編小説のネタバレを含みます。御注意下さい。▼この先大きなネタバレが含まれます↓↓↓↓↓↓↓↓▼────────────────────────▼超高校級の幸運に内定していた神島美香は、手違いにより希望ヶ峰学園に入学する事が出来なか…


総合評価:2478/評価:8.18/連載:11話/更新日時:2024年08月06日(火) 03:45 小説情報

個性:心を読む程度の能力(作者:波土よるり)(原作:僕のヒーローアカデミア)

※東方Projectの要素が出てきますが、東方を知らなくても特に問題ないと思います。▼ 気が付いたら、個性と呼ばれる超能力のある世界に転生していた。加えて、私の姿や個性が東方Projectの古明地さとりに酷似している。▼ さとりに憑依したのかは知らないけれど、取り敢えず、ヒーローを目指そう。▼ なぜって?▼ ——お金が欲しいから。▼ あの人も良いって言ってく…


総合評価:4884/評価:7.59/完結:14話/更新日時:2018年08月08日(水) 21:49 小説情報

個性使ってヒーローのラブドール作ってみた(作者:マイティP)(原作:僕のヒーローアカデミア)

生まれ持ったチート個性はこのためにあった。▼即ち――エログッズで金を稼ぐために。▼しかし一人の少女を店員として迎え入れてからというもの、彼らはいつの間にか社会を揺るがす大きな騒動に巻き込まれていく羽目になるのだった。


総合評価:10883/評価:8.11/連載:29話/更新日時:2022年03月27日(日) 23:46 小説情報

ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』(作者:piguzam])(原作:魔法少女リリカルなのは )

酒に酔って作った悪ふざけネタ。▼もし読まれるなら寛大なお心で読んで下さい。▼もう一発で済ませる事が許されない状況だと皆様からお叱りを頂いてしまったので……自分のネタが続く範囲での連載作品とさせて頂きます。▼タイトルとあらすじで不快な感じしかしないとメッセージを頂きましたので補足と変更しました。▼不快な思いをされた方々に深く謝罪します。▼申し訳ありませんでした…


総合評価:10943/評価:8.02/連載:46話/更新日時:2021年07月22日(木) 23:21 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>