「……ふぅ……」
というわけで、あの後も追っ手を撒くためにしばらく逃げ回っていた僕はひとまず距離を稼ぐために高速バスで北に向かうことにした。一応、これまでの取材成果を収めたボイスレコーダーは先輩に郵送しておいたから、何かあっても大丈夫だろう。
それより、流石に丸一日、街中を移動し続けるのは疲れたけど、どこに行っても彼らがいた理由がわからない。GPSや発信機の類は見当たらなかったし、怪しい人物もいない……個人的にはしきりに手を当てていたあの眼鏡が怪しい、気がする。まぁ、僕の気のせいかもしれないけど。
ともあれ、怪しげな乗客もいないし、ようやく一息つけたわけで、サービスエリアに着くまでひと眠り──
「うわっ!?──ぐえっ!」
なんて言ってたら爆発音と衝撃がして体が浮く感覚。どうやらバスが何かしらの攻撃で浮き上がってひっくり返ったらしい。あー、シートベルトしててよかったー。
とかのんきなことを言ってる場合じゃない!なんとか
「……少しやりすぎたか?」
何だ、あの紫の奴!?声からすると少年のどちらかだろうけど、どこから出てきた?……とりあえず、見つかる前に逃げるしかない。目標は前方のトンネル、距離はせいぜい50m。まぁ、ダメでも運転手さんは助かるか。よし、行くぞ!
「──っ!そこか!」
ま、そりゃ見つかるよね。ともかく、注意はこっちに引けた。さて、あとは運を天に任せるだけだ。
『
「カリバーの!まだ殺すな!」
「チッ……了解した」
げ、後ろからもう一人の声も聞こえてきた。あの音からするとバイクかなんかに乗ってるっぽいな。くそっ、追いつかれ──
「なんだアレは?」
「……出たか──レッドマン!」
走る僕の目の前、トンネルの中からゆっくりと歩いて出てくるレッドマンの姿に後ろの二人の動きが止まったようだ。ともかく、今のうちに走るしかない。
「下手に動くな!……奴は強いぞ」
「分かってる!デュアッ!」
何はともあれ、レッドマンの脇を死に物狂いで走り抜けてトンネルに辿り着いた僕が振り返ると、紫の鎧?の少年Cと赤い装甲を纏ったらしい少年Aに対していつもの構えをするレッドマンの後姿が見えた。
「レッドファイト!」
走り去る記者を無視してレッドファイトを宣言するレッドマンに対して並び立つ紫と金の戦士──仮面ライダーカリバー、ジャオウドラゴンと赤と銀の鎧──セブンスーツVer7.2を着た八幡ことセブンはそれぞれ
「先に行くぞ!」
「勝手に動くな!」
最初に動いたのはセブンだった。取り出したスローイングナイフを投擲しつつレッドマンへ向けて突撃する。
「レッドナイフ!」
「うおっ、とぉ!」
だが、その攻撃を転がって回避したレッドマンの投擲したレッドナイフをバックステップで避けるセブンだったが、地面に刺さったレッドナイフが爆発したことで一瞬、動きが止まった。
「させるか!」
『月闇居合!読後一閃!』
その隙を見逃さず走り出そうとするレッドマンだが、その動きはカリバーの暗黒剣月闇による闇の斬撃と四体の竜とジャオウドラゴン型のエネルギー──月闇居合によって遮られる。レッドマンが大きく横っ飛びして回避したことで最初と同じ睨みあいの構図になるが、両陣営はお互いに手を出せないようだった。
「セブンの、これで奴の実力が分かったか?」
「ああ、確かに一人じゃ手こずりそうだな」
「連携するぞ。奴の注意を引けるか?」
「任せとけ!」
もう一度、隣に並び立った二人は一瞬、視線を交錯させて頷くと、またもやセブンが先に飛び出す。だが、先ほどとは違う点が二つある。一つはセブンがまっすぐに突撃していること、そして、もう一つは──
『ジャオウ必殺読破!』
「行け!セブンの!」
『ジャオウ必殺撃!』
背後に立つカリバーが召喚したジャオウドラゴンを操る──ジャオウ必殺撃で援護していることである。なんとか初撃を回避したレッドマンだが、なおも動き続けるドラゴンはレッドマンへと執拗に攻撃を繰り返す。
「チッ、よく避ける──だが!」
強力なドラゴンの攻撃を回避せざるを得ないレッドマンは徐々に追い詰められていく。そして、決定的な瞬間が来た。
「捕まえたぜ!」
ドラゴンの動きに紛れて接近していたセブンが後ろからレッドマンを羽交い絞めにして動きを止めた。振りほどこうともがくレッドマンだが、その行動が命取りであった。
「止めだ!」
『You are over.』
カリバーの操るジャオウドラゴンが正面から身動きの取れないレッドマンへと襲い掛かる──はずだった。
「トォーッ!」
「なっ──」
「飛んだ……だと?」
攻撃の当たる直前、凄まじい勢いで真上へ向かってジャンプしたレッドマンは攻撃を回避する。ジャオウドラゴンが地面に命中して爆発する中、驚愕するセブンを空中で振り落としたレッドマンはそのまま二人と距離を取って着地する。
「くそっ、何だあの馬鹿力は!?」
「なるほど、サイズが縮もうともパワーはそのまま、ということか」
「なら、今度は一気に──」
「待て!奴が動くぞ!」
仕掛ける、と続けるつもりだったセブンだったが、急にレッドマンが走り出したことでカリバーの発した警告で遮られた。そして──
「分身!」
「はぁっ?!」
「なんだとっ!?」
その場にいたレッドマン以外の人間が驚愕するが、無理もない。レッドマンが走りながらジャンプすると、宣言通りにレッドマンが二人に分身していたからである。
「レッドパンチ!」
「ぐおっ!」
「レッドキック!」
「ぐえっ!」
カリバーに向かったレッドマン──レッドマンAとする──は最小限の動きでレッドパンチを繰り出すと、セブンに向かったレッドマン──レッドマンBとする──は勢いを乗せた強烈な飛び蹴り──レッドキックを放ち、両者を引き離す。
「チッ、こんな技まで──」
「イヤッ!」
「ぐうっ!あったとは──」
「トォーッ!」
「があっ!」
カリバーに組み付いたレッドマンAは連続して投げ飛ばして着実にダメージを蓄積させていく。対するカリバーも状況を分析しつつ立ち回ろうとするが、手も足も出なかった。
「カリバー!」
「トォーッ!」
「ぐえっ!この──があっ!あぐっ!あぎゃっ!」
カリバーの心配をしつつ助けに向かおうとしたセブンだったが、その前にレッドマンBにこちらも投げ倒されてスペシウムソードを取り落とす。何とか立ち上がろうとしたセブンだが、マウントポジションを取ったレッドマンBは容赦なく連打を浴びせかける。
「ぎいっ!──いい加減にしろっ!」
連打に耐えかねたセブンはスローイングナイフでレッドマンBの胴体を切りつけると、重心のぶれたタイミングを見計らってレッドマンBを振り落とす。そのまま転がって距離を取ると、立ち上がりながら手元のスローイングナイフを投げつけ、カリバーを投げ続けるレッドマンAを妨害した。
「すまん、助かった!」
「気にすんな!それより、ここからどうする?!」
何とかそれぞれの対峙するレッドマンから距離を取った二人だが、直接的な援護のしにくい距離にいるため、目の前の相手を自力で何とかするしかない状態であった。
「何とか耐えろ!次は俺が助ける!」
『必殺リード!ジャオウドラゴン!』
「「レッドナイフ!」」
状況を打開するべく一度閉じたジャオウドラゴンワンダーライドブックを暗黒剣月闇にリードさせるカリバーだが、レッドマンたちはレッドナイフを構えてそれぞれの敵に向かっていく。
「言ってくれるぜ……くそっ、任せたからな!」
「ああ、任せておけ……!」
『月闇必殺撃!』
突撃するレッドマンBに対して両手にスローイングナイフを構えるセブン。一方、カリバーは肩の装甲から出現させた四体の金色の竜をレッドマンAに対して突撃させる。襲い掛かる金の竜、だが、レッドマンAはその全てをレッドナイフで切り払っていく。
「チッ、だが、こちらはどうだっ!!」
『習得一閃!』
吶喊するレッドマンAに対してカリバーは暗黒剣月闇に纏った闇をジャオウドラゴン型のエネルギーにして放つ──月闇必殺撃を叩きこむ。必殺の一撃が今度こそレッドマンAに命中し爆発を起こす。一方、セブンの戦いに視線を移せば、そちらも決着は目前だった。
「ふっ!たあっ!」
連続して投擲されるスローイングナイフを切り払うレッドマンBだが、この攻撃はあくまで布石であった。投擲と同時に走り出したセブンは落ちていたスペシウムソードを飛び込みながら回収する。
「うおおおぉっーー!!」
投擲のおかげで稼いだ一瞬の時間を使って飛び込んだ勢いのまま前転、立ち上がったセブンはスペシウムソードを横薙ぎに振るうと、吶喊するレッドマンBと交差した。そして──
「──がっ……」
短い断末魔の声を上げてセブンが地面に倒れ伏す。スペシウムソードが届くより早くレッドマンBのレッドナイフがセブンの首を切断していたのだった。そして、切断されたセブンの肉体は爆発を起こした。
「セブンの!」
「レッドナイフ!」
「──しまっ……」
視線を逸らしたのは一瞬だった。だが、その隙が命取りとなった。投擲したレッドナイフの爆発でカリバーの攻撃を減衰させ、そのまま走りこんできたレッドマンAがすれ違いざまにカリバーを切り裂く。気づいた時にはすでに遅く、両断されたカリバーは驚愕したままその場に倒れ伏し爆発を起こした。
「……」
二人のレッドマンの姿が重なり、元の一人に戻ると二つの死体を確認してから右手を高く掲げて空を見上げる。そして、そのままどこかへと歩き去って行くのだった。
ここからはいつも通り、今回の調査結果だ。これまでも散々な目に遭ったけど、今回は特に酷い。なんせ、僕自身が直接殺されかけたからだ。まぁ、僕のミスといえばミスだし、先輩にも小言を言われてしまった。
ともかく、レッドマンの戦いが終わったところを確認した僕は高速警察に連絡を入れたり、気絶していたバスの運転手さんを救出したりと後処理が大変だった。おまけに、検査入院までさせられて面倒なことこの上なかった。
ただ、運転手さんが事故の直前の記憶がなかったため、今回の事件はバス会社の整備不良か運転手の不注意とかそんな感じになりそうだったのが心苦しい。まぁ、証拠が消えてるから真実を話しても納得させられそうにないので、運がなかったとあきらめてもらおう。
さて、その後の調査で分かったこととしてはあの日出会った少年Cは少年Bだったということだ。というのも、あの日、他に行方不明になった比企谷少年はいないことと、少年Bの口座が動かなくなったことから僕と先輩はそう判断した。
そして、あれから数日で日本国内にいた比企谷八幡は全員行方不明になった。こちらは十中八九、レッドマンの仕業だろう。どうやって数日で済ませたのかはわからないが、もしかしたら先の戦いで見せた分身以外にも特殊な能力を持っているのかもしれない。
さて、ここからは僕の妄想といってもいい分析の話だ。まず、今回の取材で少年たちが発した<転生者狩り>という言葉だ。漢字については確証はないが、おそらく、狩る、で正解な気がする。
というのも、これまでのレッドマンの標的だ。僕が知る限り、レッドマンがこれまで標的としてきた相手は一件を除いて今回の少年たちのように何らかの特別な力を持った少年だった。つまり、僕の会っていない人間を含めたこれまでの被害者たちが転生者でレッドマンがその転生者狩りなのではないだろうか?
そして、彼らを狩る理由が彼ら自身の怠惰や暴走、といった身から出た錆なのではないか、というのが僕の見解である!
……まぁ、結局、どれも状況証拠に過ぎないわけで、転生の意味も狩る理由も実際のところは全て不明、要は先に言った通り、僕の妄想にしか過ぎないということだ。
ともかく、今回の取材で分かったことはここまで。取材対象もいなくなったため、今回の取材は以上で終了とする。
なお、今回の取材はネタになりそうなものも無かったため、完全に骨折り損のくたびれ儲けだったことを追記しておく。