レッドQ ~赤いアイツを追え!~   作:雁野 命

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第5話 転生者狩り
第5話:前編


いきなりだけど、午前中でも8月の東京は死ぬほど暑い。この時期、普段の僕なら取材と称してどこぞの避暑地にでも行っているところだが、今年はそういう訳にもいかず、慣れないおしゃれをしてまで待ち合わせのためにお台場まで来ているのだった。

 

「すいません、待ちましたか?」

 

そう、僕が待っていたのは彼女──以前、取材でお世話になった高咲さんだ。それと、後ろにいるのが──っと、演技演技。

 

「いえ──いや、大丈夫だよ。それより、その子が?」

 

「はい!──さ、璃奈(りな)ちゃん」

 

「……私、天王寺(てんのうじ)璃奈……よろしく……」

 

「今日はよろしく、()()()()()

 

うぅ……このタイプの子に馴れ馴れしい感じで申し訳ないが、これも彼女のためなので我慢してもらうしかない。

 

「それじゃ、私はもう行くけど、()()()()ね、璃奈ちゃん!」

 

無言で頷く天王寺さんにエールを送りつつ去って行く高咲さん。さて、一応、小声でフォローを入れておくか。

 

「……馴れ馴れしくてゴメンね、天王寺さん……」

 

「……大丈夫……これも、()()だから……」

 

小声で答えてくれる彼女だが、重ね重ね本当に申し訳ない。いや、考えた時はいい作戦だと思ったんだけどなぁ……ともかく、この状況を説明するには数日前にさかのぼる必要がある。

 


 

『もしもし、記者さんですか?』

 

「はい、先日ぶりです。その後、何か変わったことはありませんか?」

 

きっかけは以前の事件に関する追加調査のために高咲さんに電話したことだった。というのも、ドッペルゲンガー事件を受けて新たな視点でこれまでの事件を洗いなおす必要があったからだ。

 

『はい、私はもう大丈夫です……ただ、ちょっと問題があって……』

 

「問題、というと、また何かの呪いですか?」

 

むむ、ここでまさかの新情報か?しかし、呪いはちょっとなぁ……

 

『いえ、実は、同好会の一年生の璃奈ちゃんって子の話なんですけど』

 

「ああ、以前、高咲さんから()()された方ですね?それで、何があったんですか?」

 

そう、高咲さんの取材(授業)でみっちり教え込まれた一人だったんでよーく覚えている。

 

『あ、あはは……それで、その子の周りでここ最近、事故がすごく多いんです。記者さんの方で何かわかりませんか?』

 

「そうですね……何か共通点、もしくは、細かい日付などのデータはありますか?」

 

ふむ、事故、か。ともかく、もう少しヒントか情報が欲しい。流石に、未成年の関係者の情報は僕じゃ探せないからなぁ……

 

『えっと、警察の人の話だと、被害者は男性が多い以外は時間も場所もバラバラだ、って言ってました』

 

「なるほど。それじゃ、その方と被害者との面識はありましたか?」

 

警察も動いてるのか……まぁ、大丈夫だと思うけど、その子が疑われてるなら、ちょっと心配だな。

 

『いえ、璃奈ちゃんも知らないみたいで、警察の人は一応、確認したかっただけみたいですけど……これで何かわかりますか?』

 

ふむ、本当に一応確認しただけみたいだな。でも、この件については少し気になる……仕方ない、一番早い手で行こう。

 

「……高咲さん、危険かもしれませんが、この事件を最速で解決する方法があります。それは──」

 


 

そう、僕が囮になることである。といっても、被害者が男性という以外は条件が不明なので、僕が彼氏役としてデートもどきをしておびき寄せる、という単純なものだ。

 

まぁ、一応、知り合いの刑事さんとその相棒さんが影から見守っているらしいし、僕自身の準備もしているが、どちらかというと情報収集的な側面が強い。というわけで、今はチームラボボーダレスを回っているところだ。

 

「て──璃奈ちゃんはこういうの好きなの?」

 

「うん。璃奈ちゃんボード『わくわく』」

 

スケッチブック?……ああ、そういえば、表情出すのが苦手なんだっけか。

 

「記──お兄さんは、どう?」

 

「ぼ──俺もこの世界に没頭できる空間は好きだな」

 

どちらも演技はたどたどしいが仕方がない。とはいえ、元々、僕はこういう景色も好きだし、なんなら写真の一枚でも取りたい気はする。

 

「璃奈ちゃん、写真撮ろうか?小さい奴だから、そんなにいいカメラじゃないけど」

 

「いいの?璃奈ちゃんボード『キラキラ』」

 

「もちろん。それじゃ、どこで撮る?」

 

「じゃあ──」

 

うん、何事も楽しいのが一番だ……まぁ、結局、テンションの上がった天王寺さんに合わせてかなりの枚数を撮ることになったけど、リフレッシュできたなら問題ない。そんなこんなでチームラボを満喫した僕らは昼食のためにヴィーナスフォートへ向かった。

 

「……デジタルアート楽しかった。璃奈ちゃんボード『うっとり』」

 

「それはよかった。このあとのランチだけど──」

 

「おい、お前!いい加減にしろ!」

 

おや?誰だこのおじさん。横目で天王寺さんを見るけど、知り合いではないようだ。

 

「誰だあんた?悪いけど、俺たちはこれからランチに──」

 

「うるさい!黙って見てれば璃奈ちゃんに馴れ馴れしくしやがって!」

 

天王寺さんも怯えてるし、これは、明らかにアレだな。

 

「もしかして、璃奈ちゃんのストーカーか?」

 

「ちがう!こっそり見守ってるだけだ!」

 

「どうしようもないな……」

 

そういうのをストーカーと言うんだが……ともかく、これで犯人確保で万事解決、だと楽なんだけどなぁ。

 

「このモブ、イケメンだと思っていい気になりやがって!」

 

誉めてんのかけなしてんのかよく分からない奴……ん?なんだあのバックルみたいなの?

 

『バースト!』

 

「変身!」

 

『レイドライズ!ダイナマイティングライオン!』

 

「まさか、こいつも……?」

 

「お前も吹っ飛ばしてやる!」

 

変身した、ってことは転生者なのか?ダイナマイティングライオン?が名前か?何にせよ、こいつが犯人で確定っぽいけど、今は天王寺さんが優先だ。

 

「……合図したら天王寺さんはあっちに走って……」

 

「……記者さんは?……」

 

天王寺さんの表情は分かりにくいけど、怯えているのは分かる。僕だって怖くない訳じゃないが、少しぐらい安心させないと。

 

「……大丈夫、この手の事件には慣れてるからね……」

 

「お前!なにコソコソ笑ってんだ!」

 

何とか笑顔を作ったかいもあって天王寺さんは落ち着いてくれたみたいだ。よし、第一段階はオッケー。行くぞ、3、2、1──くらえ、防犯ベル!

 

「走って!」

 

「うおっ!?待て!この野郎!」

 

僕の合図で全力で走る天王寺さんと真逆の方向に走る僕。で、防犯ベルを投げられたライオンは予想通り僕に狙いを定める。さて、間に合うか……?

 

「逃がすかぁ!」

 

ライオンの左腕のガトリングから放たれた弾丸を飛び込んで躱した僕。ツイてる、というわけではないようだ。

 

「そらそら!踊れ踊れぇ!」

 

うおっ!?っと、どうやらこいつは直接僕を殺すというより、いたぶって遊んでいるようだ。まぁ、それならそれで好都合。どうせ刑事さんが応援を──

 

「大丈夫か、新聞記者!」

 

「フリーライターです!って、なんでこっちに来てるんですか!?」

 

なんで天王寺さんを任せた刑事さんがこっちに!?あ、そういえば、相棒さんもいたんだっけかー、じゃなくて!刑事さんまでやられたらヤバイ!

 

「あぁ!?何だお前、そこのイケメンの仲間か!?」

 

「警察だ!武器を捨てて投降しろ!」

 

「け、警察だと!?」

 

よし、刑事さんの銃と肩書にビビってライオンの動きが止まった!警察すごい!でも、刑事さん銃持ち出して大丈夫!?

 

「う、うるさい!警察がなんだ!この力でふ、吹っ飛ばしてやる!」

 

「チッ、死んでくれるなよ!」

 

刑事さんに向けてガトリングを向けたライオンだけど、それより早く刑事さんが二度発砲し、左肩に命中する。

 

「うぎゃっ!?──って、あんまり痛くない?」

 

「クソッ、硬い……!?」

 

ですよねー。ともかく、こういう時に狙うとすれば目かベルト、だけど──

 

「次はこっちの番だ!吹っ飛べ!」

 

「うおおっ……!」

 

「ぐうっ……!」

 

ダイナマイトを投げられた僕らは直撃しなかったものの、爆発で数mほど吹き飛ばされる。めちゃくちゃ痛いけど、破片とかないだけマシってところか。

 

「ヒャハハハ!全部吹っ飛ばしてやるぜ!!死ねぇ!」

 

「待って!」

 

「っ!?天王寺さん!?」

 

「あの馬鹿、目を離したな……!?」

 

僕らに止めを刺そうとしていたライオンの前に逃がしたはずの天王寺さんが立ちはだかっていた。クソッ!完全にミスった!どうする……?

 

「私はどうなってもいいから、この人たちは──」

 

「──そんな必要はない」

 

「「「「!?」」」」

 

その場の全員がライオンの向こう側から聞こえる声に目を向けると、妙な青年がこちらに向かって歩いてきた。何者なんだ?

 

「お前は何だ!」

 

「俺か?俺は、死神だ」

 

『エターナル!』

 

「変身……!」

 

青年が変身した!?けど、ライオンよりも怪物感は薄い?あとは、エターナル、が名前か?

 

「さぁ、地獄を楽しみな……!」

 

「エターナルがなんだ!俺がやってやる!」

 

「遊んでやるよ、ネコ野郎!」

 

無造作に突っ込んでったエターナルがナイフ一本でライオンを翻弄している。とりあえず、動く方の手で写真ぐらいは撮っておこう。

 

「記者さん、大丈夫……!?」

 

「ええ、まぁ、何とか。刑事さんは?」

 

「馬鹿にするな、鍛え方が、違うんだよ……!」

 

この人も無茶をして。大体、僕より近くで爆発してるんだから、痛いに決まってるだろうに。まぁ、僕も痛いけど、笑顔を見せるぐらいはなんともない。

 

「だが、なんだアイツは……!?」

 

「少なくとも、敵じゃない、と思いますよ」

 

さて、向こうは何とかなりそうだけど……

 

「このっ!ぐえっ!?」

 

『ユニコーン!マキシマムドライブ!』

 

「そら、よっ!」

 

「ぐあああっっ!」

 

なんか、無駄な動きが多い、というか、遊んでないか?

 

「う、おおおぉっっ!!」

 

「おっと、そんなもんに当たるかよ!」

 

『アクセル!マキシマムドライブ!』

 

クソッ、だから言わんこっちゃない!破れかぶれのライオンのダイナマイトがこっちに向かってきた!しかも、エターナルは気付いてない。行けるか……!?

 

「天王寺さん、伏せて!刑事さん、迎撃!」

 

「任せろ!」

 

まぁ、これでダメなら──いや、何とかする!伏せた天王寺さんに不燃シートを被った僕が覆いかぶさり、刑事さんが空中のダイナマイトを撃ち抜く。そして、爆発の前に投げていたもう一枚の不燃シートを刑事さんが広げて身を隠す。直後、爆発が起きた。

 

「「ぐっ……!」」

 

「んっ……!」

 

「おや?」

 

「ああっ!?間違って瑠奈ちゃんに!?」

 

ヤバ……熱くないけど爆風怖い。でも、何とか耐えられたし、刑事さんも無事っぽい……というか、どっちも周りが見えてないんかい!クソッ、めちゃくちゃ腹立ってきた。くらえ、ペイントボール!

 

「このっ!周りをよく見ろっ!」

 

「うぎゃっ!め、目がっ!?」

 

「へぇ、やるじゃん」

 

ざまぁみろ!ペイントボールだって視界は奪えるんだよ!というか、お前にも文句はある!

 

「遊んでないでさっさと倒せ!カッコつけてるつもりか、このボンクラ!!」

 

「俺かよ?……しゃあねぇなぁ」

 

『エターナル!マキシマムドライブ!』

 

「目が──」

 

「さぁ、地獄を楽しみな……!」

 

「うげあああぁっ!!」

 

断末魔とともに爆発するライオン。というか、そのセリフはさっき聞いたぞ。

 

「天王寺さん、立てるかい?」

 

「うん。記者さんが、庇ってくれたから……」

 

「助かったぞ、新聞記者」

 

「だから、フリーライターで……まぁ、なんでもいいです」

 

さて、なんとか全員無事で切り抜けたけど……こっからどうしたものか。というか、エターナルがこっちに来てるんですが?

 

「大丈夫だったか?」

 

「──ああ、おかげさまで爆発から身を守らなきゃならない程度には無事だったよ」

 

「……無事で何よりだ」

 

天王寺さんに向かうエターナルの進路上に立ちふさがって嫌味を言う僕。ちょっと嫌そうな声だけど、あんなことされたら誰だってそうする。少なくとも、僕はそうだ。

 

「それより、どうしてすぐに倒さなかった?君の力なら──」

 

「それは後だ。俺は警察の者だが、話を聞けるか?」

 

「ふむ、長居は無用か……」

 

『アクセル!マキシマムドライブ!』

 

「待てっ!?」

 

僕の小言と刑事さんの追求が嫌になったのか、エターナルは目にもとまらぬ速さでその場を走り去っていった。しかし、速いな!?……ん?というか、それで来て倒してくれれば危険な目に合わずに済んだのでは?

 

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