家族になろうよと迫る幼馴染から逃れられない件   作:紅乃 晴@小説アカ

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お父さんによる試練。そんなん知らないですけど

 

さて。この世界に転生を果たした俺だが、その素質にはいくつかのハードルがあったわけで。

 

とある研究所でデザインベイビーとして不法に生み出された俺は、苛烈な投薬や洗脳を施される……こともなく、施設ごと廃棄されたのだ。ダイナミック育児放棄をくらい、保管庫の食料も切れかけた頃になって、情報を掴んだ管理局に保護されることになったわけだ。

 

他にも何体かの素体は確認されたらしいが自我を持ち、個人として活動している個体は俺だけだったらしい。下手すると何も考えないまま食事もせずに餓死していたパターンを味わっていたかと思うとゾッとする。

 

そんなわけで管理局に保護され、紆余曲折あって俺の保護責任者となった魔導士いわく、どうやら魔力適正があったようで魔導士にならないかと進路相談を受けた。

 

そこで俺は気がつく。ここが魔法少女リリカルなのはの世界であるということに。ただ、保護してくれた恩人におんぶに抱っこは気が引けたこともあって、俺は魔導士になるべく誘いを受けたのだ。決してなのフェイな尊さを側で味わいたかったとかいう邪な気持ちはない。ないったらない。

 

しばらくしてから魔力の適正テストが行われ、俺の体内にはリンカーコアがあることが確定した。そのとき担当してくれた医師のような研究員が首をしきりに傾げていたが、その理由は俺が訓練学校に入り、訓練用デバイスを渡されてからすぐにわかったのだった。

 

 

 

 

 

そんな遠い過去を思い返して現実逃避をしても事態は改善しない。捲れ上がった地面の影に隠れていたが、どこで見つかったのか、飛来した「矢」という名の暴力で俺が隠れていた場所は木っ端微塵に吹き飛ばされたのである。

 

ただいま、ヴォルケンリッター烈火の将であるシグナムとガチ交戦中です。なしてこうなった??

 

影から飛び出すと矢継ぎ早にシュツルムファルケン(短チャージ仕様)がバスバス飛んでくる。それを飛んで、走って、防いで避けまくる。すると、最後に妙に力の入った一撃の爆風に煽られた隙を狙って、瞬間移動のように目の前に現れたシグナムが息を鋭く吐きながらレヴァンティンを構えていた。

 

「弝ッ!!!!」

 

小さく、短く、それでいて鋭い声と共に袈裟斬りに振り下ろされた切っ先へ愛機の短槍をぴたりと当てて軌道をずらす。ずらされて目標を外した一撃は、ガァンっと凄まじい音を立てて俺の隣にあった瓦礫の岩を粉々に粉砕した。ひぇ、あんなもんモロに受けたらミンチよりひでぇ事になるぞ。

 

 

「ちょっとは手心とかないわけ!?」

「あったら貴様に勝てるはずがないだろう!!」

 

 

俺の返答に!被せて!言ってくるんじゃあない!

 

振り上げられた一撃をさらに二対の短槍で逸らす。鉄と鉄が擦り合う音が無人の訓練場に響き渡った。

 

なんで俺がシグナムとガチでやり合ってるのかというと、ほんの数刻前まで時間を遡ることになる。

 

いつも通りはやての補佐の仕事をしていた俺は、隙あらば婚姻届にハンコを押させようとしてくるはやての策を掻い潜りながら、なんとか午前の業務を終わらせることができた。

 

あの人、俺の名前のハンコで処理する書類の中にしれっと婚姻届の紙を紛れさせてくるんだもの。それに気づいて指摘すると、今度は全く関係のない書類に偽造してくるんだぜ。ハンコを押すところだけ妙な違和感があったのでめくると二重構造になっていて、俺がハンコを押す=婚姻届にハンコを押しただけですがになっちまう代物だった。

 

悪びれる様子もなくニコニコとしているはやてに疲れ切ってると、彼女に昼からはちょっとシグナムの訓練に付き合ってあげてや、と指令を受けたのだ。はやての精神攻撃に少々疲れていたので体を思いっきり動かしたい気分だったので俺は二つ返事で快諾。

 

ルンルンと訓練場に向かうとそこには一人の騎士が立っていた。

 

oh、シリアスムード=デスネ。

 

 

「どうしたんだ?シグナム?」

 

 

殺気が普段のそれとは比較にならん具合だけど一応聞いてみる。するとシグナムは本当にいい笑顔で俺を見ていた。

 

 

「ん?いや、どうしても確認しておきたいことがあってな」

 

「確認?こんな訓練所でな……」

 

 

ビイィイン、と俺の立ってる場所の後ろに何かが突き刺さった。振り返ると壁に矢がめり込んでいるのが見える。矢の尾が突き刺さった衝撃で上下にブンブンと揺れているのを見て、これがシグナムが放ったものだと理解するのに時間は掛からなかった。

 

 

「いや、なに。単純なことだ」

 

 

弓形状のレヴァンティンを剣の姿へと戻しながら、シグナムは鞘から刃を抜き放った。その目は明らかにやばい。殺す気満々だった。それだけは確実だった。

 

 

「タカト、お前の腕は信頼している。だからこそあえて確認させてもらう。その腕で主はやてを守れるかということを……!!」

 

 

で、冒頭に戻ります。

 

とりあえず何が何だかわからないまま距離をとったらシュツルムファルケン(短チャージ仕様)がバスバス飛んできて訓練所の地面が大変なことになりました。近くで訓練の準備をしていた局員はさっさと訓練所を後にしました。この薄情者がっ!!

 

そういうと、「娘を取られる父と、娘を取ろうとする旦那の喧嘩に巻き込まれたくないので」と真剣な眼差しで言われました。相手は誰かって?シグナムとのアップに付き合わされていたフェイトさんですけど!!

 

 

【主タカト、撤退を!彼女は本気です!】

 

 

蛇腹剣モードになって鞭のように襲い掛かってくるシグナムのレヴァンティン。その包囲網と変幻自在さは一級品で、我がデバイスに宿るリインフォースも撤退をお薦めしてます。けど冷静に考えてください。

 

 

「撤退させてもらえると思う?」

 

【無理ですね!!】

 

 

でしょうね!!シグナムさん本当にマジでやりにきてる!!真正面から切り結んでたと思うと瞬時に背後に回って蛇腹剣の鞭による横格ムーブ決めてくるほど本気です。無様にしゃがんで避けなかったら壁に吹き飛ばされて叩きつけられていました。

 

と、姿勢を崩してまで回避に専念した俺の頭上にシグナムが剣モードとなったレヴァンティンを唐竹割のように構えて迫ってきていた。おま、まさか、この至近距離で……。

 

 

「紫電一閃……!!」

 

 

紫色とオレンジの炎を巻き上げる一閃が頭上から振り下ろされた。

 

爆煙と衝撃、流石に完全には回避できず、俺は地面を何度か転がって受け身を取った。ちなみにシグナムが紫電一閃を振り下ろした先は小さなクレーターができております。

 

 

「あっぶね!?殺す気か!?」

 

「本気じゃなきゃ意味がないだろう!!」

 

 

堂々と言い放ってレヴァンティンを再度構える彼女に、俺も自身の二対の短槍であるデバイスを構えて応戦の意を示した。

 

ゲイジャルグとゲイボー。それが俺の持つ2本の短槍のマスコットネームだ。正式名はレイテルパラッシュ。全部俺の主張ネーミングである。

 

このデバイスは、俺が訓練生の時代に独自に作ったデバイスが基になっている。通常構造のデバイスは俺には扱えない。それは俺の魔力気質に大きく影響していた。

 

俺の魔力は常人の2倍以上の〝濃さ〟を有していたのだ。簡単にいうと、通常の魔道士が水割りのお酒で、俺の魔力はロックということ。

 

で、炭酸水割りか普通の水割りで慣れたデバイスが、俺のロックの魔力を飲めばどうなるか。答えは暴発するでした。

 

座学で得た知識を使った魔力スフィアを形成しようとした瞬間、訓練用のデバイスが音を立てて爆発四散したのだ。調査の結果、魔力が濃すぎて通常の変換機器では対処不能ということだったらしい。

 

で、最初は落ちこぼれの烙印を押されたんだが、使えねぇものに執着しても仕方ねぇ!なら自分で作るわ!

 

そう言って出来たのがレイテルパラッシュだった。自前で作ったデバイスの何がすごいかって、俺のデバイスには「逆カートリッジシステム」が搭載されているのだ。

 

まぁ原作知識と技術班を巻き込んで作った結果なのだが、これは濃すぎる魔力量を水割りするシステムなのだ。余剰分の魔力の濃さをうっすい魔力で中和して使うのだが、これがなかなか難しく、実用化するまでに時間がすごくかかった。

 

最初は魔力を薄めすぎてろくにエネルギーが取れなかったりと散々だったが、技術班や弛まぬ努力を続けた結果、闇の書時点では魔力の濃さをある程度中和し、質量の重い技を繰り出すことができるようになっていたのだ。

 

さすがは管理局、奴らの技術は世界一ィイ!!

 

 

「逃がさんっ!!」

 

 

あっぶね、ふざけてたらレヴァンティンの切っ先が顔の横を掠めた。ハラハラと髪の毛の先端が舞い落ちる。現実逃避を続けてたら顔がレヴァンティンの鞘になるところだった。

 

 

「お前っ!まじで!!良い加減にしろよっ!?」

 

「スウェーとダッキングで斬撃を至近距離で避ける貴様には言われたくないな!?」

 

 

シグナムとは闇の書以来の仲であるのである程度の接近戦になると互いの考えてる手札が丸わかりなので武器を使って防ぐまでもなく、上体をずらしてヘッドスリップをすればなんとか捌けるのだ。

 

ちなみに、シグナム相手にゼロ距離で斬撃を躱しまくるとか人間じゃない…。って見てたフェイトがボソリと呟いていた。

 

振り下ろしたレヴァンティンの一閃を避けると、手を掴んでそのまま逆向きに持った短槍の石突でシグナムの体を吹き飛ばす。

 

 

「やるではないか、タカト!ならこの一撃を受けてみるがいい!!」

 

 

口の端から血を溢れさせ、それを拳の裏で拭ったシグナムはレヴァンティンを納刀して抜刀術の構えをとった。抜刀と紫電一閃を織り交ぜるつもりだ。目に見える魔力が闘気のようにシグナムからゆらめいて起き上がっている。

 

 

「めんどうだ、さっさと終わらせて俺ははやての仕事の手伝いに戻る!!」

 

 

対する俺も魔力を安定化させるカートリッジを複数回打ち込んで、大技の体勢に入る。向こうは居合からの一閃、こちらはその一閃を掻い潜って放つ一撃を狙う。

 

睨み合う。脳内では何度も彼女との戦いがイメージされるが決定打に欠ける。それを何度か繰り返していると、近くにある瓦礫の一部が崩れた音が聞こえた。

 

それが合図だった。

 

 

「受けてみろ!!紫電……一閃ッ!!!!」

 

「貫け、ゲイジャルグっ!!」

 

 

シグナムが踏み込み、神速の一撃を放つタイミング。その僅かなタイミングで見える隙に、俺は二対の短槍の一つであるゲイジャルグを投擲した。タイミングをずらされつつもシグナムはなんとか立て直そうとする。

 

だが、それは悪手だった。

 

もう一つのゲイボーを構えた俺が、彼女の頭上に飛び込んでいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?この訓練所は誰が直すんや?ん?」

 

「す、すいません」

 

 

シグナムが主人に怒られるチワワのようになってる!?(→当面訓練所使用禁止を言い渡されました。)

 

 

 

 

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