まどマギの創作意欲がもりもり湧いてきました
ChapterⅣ【道化たちの幕間】
ごうんごうんと唸りを立てながら、闇の中を昇降機が下っていく。
螺旋階段の中央を貫く鉄籠の中に立っているのは、看守めいた姿の少女と、深緑のゴシックロリータに身を包んだ少女の二人。
「それで、そろそろ"アイツ"のドッペルは出てくるワケ?」
沈黙を切り裂いたのは、不機嫌さを隠さないアリナ・グレイの声だった。
「ええ、ええ。依然として気丈に振舞ってはおりますが、やはり憔悴しておられるご様子。あと一押しがあれば、その魂魄は絶望に沈むでございましょう」
「それ、ホントなワケ?」
「勿論。と言いますのも、つい先ほど奴めに対する丁度良き"説得材料"を耳にしたばかりでして……」
「へぇ?」
「まあお楽しみは着いてから、というものです」
そう語る葛葉道麗の風貌は、しかしその大半を覆うヴェールに隠されている。
だが隙間から垣間見える口元は微笑みを湛え、微かに覗く翠色の視線は大胆不敵にアリナを嘗めつけている。明確に喜悦を抱えた人物の表情だ。
ガキン……ザクン……グシャリ……
奇妙な機械の駆動音と、生々しい肉が潰れるような音が反響して耳に届く。
次第に鮮明になっていくその音を聞いて、少女たちは口角を釣り上げた。
「時にグレイ様、一つお尋ねいたしましょう」
「何? 唐突に」
「ただの暇つぶしですとも。イヴの完成に必要なエネルギー……それは果たしていかなる想いから生まれるかと以前お伝えしたことがありましたね」
「人間のエモーショナルな情動……ああ、
八卦という風水やら占いやらの知識を元に、如何に効率よくイヴの育成を行うか。かつて葛葉がマギウスの面々に語った魔術的観点についてアリナは記憶の片隅から知識を引っ張り出す。
「ええ、ええ。人間の根本たる喜怒哀楽、これらをさらに細かく分けるのです。
――恍惚。即ち、美や快楽に溺れる感情。
――期待。即ち、良き未来を望む感情。
――激怒。即ち、自らを害する存在への感情。
――嫌悪。即ち、敵から自分を遠ざける感情。
――驚嘆。即ち、不意へ対応する感情。
――敬愛。即ち、親しき他者へ向けた感情。
――恐怖。即ち、理解及ばぬものへの感情。
――悲嘆。即ち、過去を埋め合わせる感情。
イブという希望の器を真に完成させるには、これら八つの色を持った感情を調和させなければならない。ただ絶望のみを与えてしまえば、その身は一介の魔女に落ちぶれてしまうでしょう」
「それはそうヨネ。イヴはこの世の絶望を平らげるベストアート。オンリーカラーじゃ、『世界全ての幸福』は表現できない」
芸術家として
「柊様はこれらの色を満たす多種多様な噂を作成しております。現在は少し『悲嘆』の色が薄いですが、先日作られた口寄せ神社の噂で補えます。そういう意味では、七海やちよの狼藉は僥倖でもありましたね」
「フーン……でもあれって会いたい人に会えるウワサだヨネ? それって『悲嘆』と関係あるワケ?」
「ええ、ええ。神頼みに縋るほど遭いたい人物とは即ち『喪われた』者のこと。故に来訪者はウワサの術中で既にその『悲嘆』を捧げる――しかしそれで逢う事が叶うのは所詮虚像……それを知った人々は、より一層『悲嘆』を強くするのですよ」
「希望からの絶望……それがエントロピーを覆すエネルギーを生み出す手段」
「あの獣めと手口が同じことは気に入りませんが、原理そのものは有用です。であれば、より我々に実益のある形で利用するのが筋というものですからねぇ」
がごん、と大きく揺れた後、降下が止まる。
『降下中に開けるな』『ショトカ禁止』『自己責任』『上に乗るな馬鹿者』と張り紙のされた柵扉を開き、狭苦しい鉄籠から出ると、そこに広がっていたのは巨大な円形の牢獄だった。
「はい。到着でございます」
入口以外の壁は余すところなく鉄格子で区切られた空間構造はパノプティコンと呼ばれ、部屋の中心からすべての牢獄を監視できる構造である。
しかし牢獄の中央には監視塔ではなく、奇妙な祭壇が存在していた。
飾り置かれた十数個の宝石。色とりどりのそれらの内側には少なからず黒き穢れが満ちている。そしてその穢れが臨界を迎えたものからは魔女に似た異形が現れ――即座に下り落ちたギロチンによって首を刎ねられた。
魔女の現し身を構成していた穢れが霧散し、空間上部へと吸い込まれるように昇っていく様子に、アリナは恍惚とした笑みを浮かべ、葛葉道麗は満足そうに頷いた。
「アハッ、絶望を象る命を無慈悲に絵具に加工する光景……いつ見てもゾクゾクするよね」
「此処の効率は衰えていないようで何より」
ホテルフェントホープ。地下聖堂の直下――即ちイヴの根本と言える場所に備えられたそこは敵対した魔法少女を幽閉し、イヴにエネルギーを供給し続ける悍ましき拷問空間――名を、
『miu sakiri』『yoshino koga』『itami kekino』……住人たちの名前が刻まれた牢獄を、アリナをエスコートするように一つ一つ順番に回る。
石材がむき出しとなった檻の中にあるのは、シャワーやトイレ、簡素なベッドといった最低限の設備。アメニティの類は必要なかった。彼女たちは例外なく、レイトウコという保存チャンバーにてその身体機能を極限まで停止させている。その上で、意識だけは覚醒状態になるように調整されている。
彼女たちはこのウワサと併設する『無限病棟のウワサ』による悪夢で精神を苛み続けさせ、ソウルジェムを穢れさせてドッペルを発動させる。その際に味わう苦痛は途方もないが、ここにいるのは例外なくマギウスの目的を理解せず、個人的な欲望で挑んできた愚か者たち。アリナも葛葉も、その辺りに持ち合わせる慈悲はない。
「うぅ……」
「お願いします……もう逆らいませんから、協力しますから……私のソウルジェムを返してください……」
「クソが……ここから出しやがれ……」
収監された少女たちは一人の例外もなく衰弱し、うわ言を吐き出す程度の気力しか残っていない。
なんて無様なことでしょう。と少女たちの姿を眺めながら葛葉はほくそ笑む。万能感に酔いしれて調子に乗ったガキ共が苦痛に慄く様を見るのは大変胸がすく思いであった。
「いやはや、因果応報とはまさにこの事。身勝手な願いと力にうぬぼれた代償に、こうして畜生にも劣る有様を晒し続ける。実に惨めで愉快で滑稽な結末。そうは思いませんかね――日向華々莉さん?」
『死ね』
独房前に設営されたスピーカーをオンにしてみれば、簡潔に毒舌が返ってきた。
その独房には液体で満たされた円柱が二つ。片方には少女の首が、もう片方には首から下が保管されている。
日向華々莉は特に危険な魔法少女だったため、ウズメの斬首を敢行されてからそのまま冷凍処置を施されている。魔法少女の生命力というべきか、生命維持装置に繋いでやれば首だけでも十分な意思疎通が可能だ。最も他の囚人たちはあの有様のため、ろくに会話など成立しないのだが。
「ええ、ええ。相も変わらずお元気そうで。そうして感情豊かであればこそ、こちらも手間賃をかけて閉じ込めている甲斐があるというものです」
『その割には、大分趣味が混ざってるように見えるけど?』
嘲りに皮肉めいた視線が返される。実に活きが良い。首から下が分けられるという、常人なら発狂して当然の状態でもここまでの胆力を示すとは。あるいは元から半ば正気でないからこそ、自己を保っていられるということか。隣の独房に放り込んだ少女――優木沙々とは大違いである。
華々莉と同じ洗脳魔法の使い手だった沙々は、魔女を使役して風見野市で狼藉の限りを尽くし、魔法少女と聖堂騎士に見咎められ、神浜市に命からがら逃げ延びてきた小悪党である。
神浜市に強力な魔女がいるという噂を知っていた沙々は、逆襲の手駒としてより強力な魔女を調達を目論見る。そこで黒羽根と遭遇し、マギウスの翼を知るや意気揚々に自らを売り込もうとして来た。
曰く、魔女が必要なら自分の催眠の魔法が有用だと宣っていたが、その魔法をマギウスに仕掛ける腹積もりだったことは街中で散々悪態をついていた事からも明らか。案の定ウズメとの面会時に蛮行に及び、後ろに控えていたみふゆの術中に嵌った後に首を刎ねられる始末。必死の形相で逃げ出そうとした身体から首が滑り落ちた瞬間の唖然とした表情は、こうも綺麗に絵になるものかと失笑したものだ。
そういった経緯もあって沙々は幽閉して早々に表情を変えなくなったが、華々莉はとても元気にこちらを睨みつけてくれている。
「好きでやっているように見えますかな? ええ、ええ。虫の飼育は私の趣味ですとも。蟲毒は呪術の基本でございますし、養蜂は単純に利益ですので。……最も、ただ貪るしか能の無い害虫については別ですが」
言葉通り害虫を見るかのような声色で、陰陽師はその腹の裡を語る。
「我らがどれほど焦がれようとも得ることのない力……
嫉妬。切望。嫌悪。憤懣。軽蔑。
どこまで行っても魔術師という存在は「素養のない」人間だ。それは陰陽師である葛葉とて例外ではない。
陰陽寮は日本国内における魔術的なパワーバランスの調停を担う組織として、日本の情勢に関わる魔法少女たちを監視している。
政治家や資産家といった上流階級に属する魔法少女たち、あるいは彼女たちを認知する者たちの中には、自分たちの地位を押し上げるために魔法を使った『工作』を行う者が度々現れる。それを陰陽寮は察知し、人知れず『対処』する。葛葉はその時に動く呪殺屋だ。
齢の近い同性として魔法少女たちに近づき、監視し、密やかに呪を仕掛ける。そうしてソウルジェムを濁らせ、弱ったところを砕く。それが葛葉という、魔法少女という存在を間近で見続けてきた
『うざ。結局はただの嫉妬でしょ。嫌がらせしか能の無い、魔法少女に
「――――勘違いなされているようですが」
冷ややかな声がしたと同時に、脳髄に直接酸をかけられたような苦痛による悲鳴が牢獄に木霊する。
淡々と呪詛を流し込みながら、葛葉は言葉を続ける。
「マギウスが進める大儀礼は益あるもの。魔女化の破却が能うとは、我ら陰陽寮の悲願たる世の平定に近づくという事。その祭儀を司る名誉に預かれるとなれば、私は喜んでお仕えいたしますとも」
インキュベーターの権能を簒奪して造られた自動浄化システム。即ち、世界そのものに影響を及ぼせる巨大な魔法式。
これを使わぬ手はないと、神浜の調査に遣わされ、事の次第を知った葛葉はマギウスに政治的な後ろ盾を与えると嘯き恭順したのである。
――そして、ゆくゆくはその実権を掌握するつもりだった。これほどの代物を持ち帰ることが叶えば、
とはいえ、得意の呪詛で灯花たちを縛ったり、あるいはイヴを強引に接収したりするような、いつもの手段を講じる訳にはいかなかった。三人が健在であることがシステムの絶対条件である以上、下手に手を打って崩れようものなら目も当てられない。
故に計画はシステムの完成後。魔法少女としての寿命を克服したとして、その性質までは覆せない。年齢を積み重ねて魔力の衰えた時期につけ入れるチャンスがある。懸念事項たる御晒樹堂の剣士も、『取引条件』で黙らせられる。
「大して、あなた方は己の欲望を満たすことしか考えぬ、浅ましく卑しき獣どもの家畜。ならばせめて、こうして世を変え得る偉業の一端としてその絶望を捧げさせてもらった方が価値があるというもの。いやはや、信城さまも素晴らしい手土産を持ってきてくれましたねぇ」
「そういえばあのサイボーグ、コレをどっかの街で奪ったとか言っていたケド、何か知ってるワケ?」
「ええ、端的に申し上げますとそもそも『あすなろ市』なる街にて魔法少女狩りを行う者たちがいたそうでして。その被害者の中に信城さまの……というよりビクトリーグループの魔法少女がいましてね。報復作戦による鹵獲品だそうです」
「フーン……その街の魔法少女たちはどうなったワケ?」
「幸いにも死傷者や魔女化は逃れられたようですが、その後については知りませぬ。超上級魔女に匹敵する事案が発生したとも聞きましたが……粛清機関が介入した時には全て事が終わっておりました」
「あっそ……ま、アリナ的にはアナタ達が過去何をやらかしてても、役に立ってるならそれでいいワケ」
それっきり興味を失ったとばかりにアリナは華々莉に視線を戻した。
「で、日向カガリのドッペルはいつ出るワケ?」
「この程度の痛めつけでは根を上げませんからねぇ。そこは大したものと褒めておきましょう」
華々莉にひとしきり苦痛を与えた葛葉は、そういえばと再び笑みを浮かべる。
「先ほど、蜂たちが集めてくれた蜜に興味深いものがありまして――日向茉莉。確か、あなたの双子の妹でしたねぇ?」
「…………ッ!!」
「へぇ」
尋常ならぬ殺意にアリナが口角を釣り上げ、葛葉は内心でほくそ笑んだ。
かかった。一向に心折れる気配のないこの少女をどう手折るかを、葛葉は赴く度に試していた。
あてつけ気味にご執心だった鈴音の現状を教えたこともあったが、ウズメに引っ付く有様を嘲笑うばかり。どうやら惨めな有様であることに変わりは無いと無理やり自分を慰めているらしい。では誰が彼女の急所足り得るか。美琴椿か、天乃鈴音か。否、復讐から遠ざけた日向茉莉だ。
「健気にもあなたを探しに参られていましたよ。御友人も手を貸されているようで、いやはや美しき姉妹愛ですこと。しかし……どうやら彼女たちもウワサを頼ろうとしているご様子でして。さて、さて。これはマギウスの翼として見過ごすわけにはいきますまいて」
「双子で作るアートってのも、良い感じがするヨネ? ピーヒョロはウズメとみふゆがアンガーだけど……関係ない魔法少女なら、文句を言われる筋合いも無いワケ」
「……彼女を収監した時に何を言われたのか、忘れたのですか? まあ私めとしては、さほど止める理由もありませんがね」
『マツリに、何するつもり……!!』
瞳が揺れる。気丈に振舞ってはいるが、これまでの責め苦で憔悴は着実に積み重なっている。そこへ唯一の弱みを突く。
「おや、おや……一度は捨て去った癖に、この期に及んで未練がましく縋りつくのですかな? ええ、ええ。そうですよねぇ。己の復讐に要らぬと切り捨てたということは、つまり付き合わせたくないほど大事な存在だったという事の裏返し。ですがこれも因果。自分より大切なものに矛先が向かうのが、悪逆の報いというもの。あなたが弄んだ天乃鈴音のように、彼女の手にかかった少女たちのように……おや、何をそんな顔で睨みつける。彼女を先に捨てたのは、他ならぬあなたでしょう?」
「……っ、ぁ、ぁぁぁあああ!!」
責め立て続け、駄目押しとばかりに注いだ呪言に、とうとう華々莉の感情が振り切れる。
怒りが、悲しみが、ソウルジェムを濁らせる。
「これが日向カガリのドッペル……クレイジーなパステルのフェアリーテイル……あぁ、サイッコー!」
アリナの狂笑が木霊する中、立ちのぼった穢れが凝縮して絵本の姿をしたドッペルが顕れる。
本来であればその衝動のままに暴れ回るが、ここはドッペルを屠るスリバチ処刑台。周囲より影めいて黒い手が幾つも飛び出し、ドッペルを拘束する。そしてその身体を処刑台へと持ち上げ、振り落とされたギロチンの刃がドッペルを両断した。
「アハッ、ドッペルが苦痛で潰れる音……ここでしか聞けない命の破滅……インスピレーションが湧いてくるヨネ」
「ご満足いただけましたかな?」
「フー…………で、そのカガリの妹たち? って口寄せ神社のウワサに行こうとしてるんだヨネ。あれ七海やちよのためのウワサじゃないワケ?」
「それがまあ奇遇なことに。こちらの情報は件の環いろはに貼り付けた蜜告蜂から得たものでして。つまり彼女たちと共同でやって来るおつもりで」
「フーン。どれくらい来るワケ?」
「併せて八人ほどかと」
「……ウズメにも報告したんだヨネ? それ、カラーズの仕事じゃないワケ?」
「静観するおつもりのようですよ。まあ、ウワサの性質上それでも問題がないのかもしれませぬが……」
茉莉たちはインキュベーターが誘導してやってきているが、自分たちに繋がる何かを確信してきたわけでもない。脅威度として見れば低い部類といえる。
ただし、七海やちよを嵌めるためのウワサに大挙して押し寄せてくるのは少々気がかりだ。あの人数であれば、おそらくは外部から警戒する人員を割くだろう。聞いた限りでは八人がかり……ウワサのみで対処させるには若干荷が勝つと、アリナはベテラン達の戦力を見積もって判断する。
自分が前線に立つ場合はこうしたバランスを度外視する傾向にあるが、こうした机上での議論では極めて冷静な判断を下せるのがアリナ・グレイという魔法少女。マギウスとして灯花やねむと肩を並べるに足る、卓越した頭脳の持ち主なのだ。
「アイツ、リスクヘッジが強すぎるワケ。灯花もねむもウズメにはイエスマンだし、このままだとプログレスがディレイしたままなんだケド」
「あの方の最優先はマギウスの安全。隙を見せぬ立ち回りを徹底しておられます故にねぇ。それに我々が目下相手するべきは魔術結社のネズミ共、というのは私めも同意見ですので。しかしこちらもそろそろ大詰め、鶴喰さまと潜入の段取りを進めております」
直接的な脅威という観点では魔法少女だが、潜在的な脅威、つまり自動浄化システムそのものへの危険性は魔術結社が大きく勝る。彼らは奇跡を研究し、暴き、そして
故にまずは彼らを神浜の地から根絶し、様子見を決める所外勢力への示威行為とするのがカラーズの最優先目標。
「まあそれはそれとして……少し遊ばせてもらいましょうかねぇ。ウワサに手を出すならば正当防衛の範疇、でございましょう?」
「フーン……あのウワサ、アナタが出るワケ?」
「ええ、ええ。水名神社の霊脈は我が陣地。大勢で参拝なされるとあれば、こちらも相応の出迎えを用意するのが礼儀。片手間の手慰みではありますが、我が手練手管、披露してみましょうぞ」
「七海やちよがここに来るなら、みふゆと並べてデッサンするのも悪くないワケ!」
と、好き勝手言いながらアリナは踵を返した。
「おや、お帰りですかな?」
「インスピレーションをキャンバスにぶつけたくてしょうがないんですケド」
「そうですか、では私めも」
悠々と歩きながら葛葉も後を追う。
退出する間際、ああ、そうそう。と彼女は牢獄へ振り向いた。
「ご心配なさらず。私とて非道外道の類は目覚めが悪い。少々化かしてはみせますが、此処にあなたの後輩が入って来る予定はしばらく御座いませんよ」
それでは、それでは。
吊り上がる口元を袖で隠しながら、道化も牢獄を後にした。
そうして規則正しい屠殺音のみとなった空間で、少女は弱弱しい声を発した。
「……マツリ。どうして」
○葛葉
レポ時空なら「キョーキョキョキョ」って言う。
アリナとの関係は互いにビジネスパートナー。雑談ぐらいはする。
○日向華々莉
ひどいことしたので、ひどいことされてる。
まどドラに出るのを望まれている。
○スリバチ処刑台のウワサ
本作オリジナルのウワサ。アニメ出の『無限病棟のウワサ』と組み合わせて悪夢を見せて出てきたドッペルをすり潰す慈悲もへったくれもない屠殺機構。アリナはよくここに来る。
○感情の内訳
キモチの内容から。詳細やウワサの関係は捏造の考察。
原作の内容自体はプルチックの感情の輪と八卦図の掛け合わせだろう。