劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
・前作、【やはり俺の戦車道は間違っている。】の続編となりますので、登場人物の関係性等、八幡の心情等は前作の続きなのでこういってはなんですが八幡もぼっちとはいえません、捻くれてはいますけど。
・3分ちょっとでわかる【やはり俺の戦車道は間違っている。】等はありませんので、しっかり前作を見てから読んで貰えると嬉しいです。
・【やはり俺の戦車道は間違っている。】の番外編ではこのエキシビションマッチへ至る経緯のお話もあるので、本編と合わせてそこも読んで貰えると嬉しいです。
・前作と作品を分けた最大の違いとして、この作品では男性である八幡が試合に出ます、苦手な人は読むのをお控え下さい。
・とはいえ、八幡が無双する話にはならないのでそういう展開が好きな人にも向かないと思います。
・試合は基本的に八幡視点なので詳しく試合全般の流れを知る為にも劇場版ガールズ&パンツァーを見る事をオススメします。
・ヒロインは未定です。
かなり多くなってしまいましたが、以上の事がOKという人へ、前作と変わらず最後までお付き合いして貰えると嬉しいです。
夏休み、と聞けば学生ならば誰もが心弾み、ウキウキとはしゃぐものだろう。
友人の多い者は当然友人と多くを過ごすだろうし、友人が少ない者にとっても億劫な学校へ通う事なく、一人を存分に謳歌するには絶好の機会となる。
夏休みはリア充にもぼっちにも、等しく平等に降り注いでくれる。あぁ!夏休み最高!!
だが、それも夏休み終了一週間前となればただのカウントダウンでしかない。
カレンダーを見れば迫りくる9月1日に怯え、机を見れば重なっている宿題に怯え、「何も見たくねぇ…」と世界から目を閉じる事になるのだ。
だが、例え目を閉じた所で時間の進みは止まらない。8月32日なんて終わらない夏休みは存在しないし、そもそも終わらない夏休みなんてものは大人にとっては単なる解雇処分でしかない。
得てして物事にはなんにでも終わりはくる。だから、その終わりへ向けて少しでも派手に盛り上げようとする生徒会の意向は理解できる。
…だからって、何も夏休み終了一週間前にわざわざエキシビションマッチの日程をぶっ込まなくても良かっただろうに。【休み】の文字が見えてないのかなー?
【第63回戦車道全国高校生大会、大洗学園優勝記念エキシビションマッチ】
『茶柱が立ったわ』
「ダージリン様からですわ!!」
「いや、言わんでもわかる…」
ローズヒップが嬉しそうに声を上げるが、開口一番無線でそんな報告をしてくる人の心当たりは一人しかいない。
「いきなりなんの報告ですか?」
茶柱、あぁあれね?きっと鬼を滅する的なお茶の呼吸を使う新たな柱が誕生したのだろう。
じゃなけりゃ、この場面でその報告はどう考えてもティータイムにしか聞こえない。ははは、さすがの聖グロリアーナでも、この状況でまさかねー。
『ご存じないかしら?イギリスでは茶柱が立つと素敵な訪問者が現れる…ということわざがあるのよ』
「はぁ、素敵な訪問者ですか…ところでダージリンさん、今の状況、わかってます?」
『えぇ、見事に分断されたわね』
飲んどる場合かー!!わかってて紅茶キメてんですか、そうですか…。
「とりあえずそっち、どんな状況ですか?」
『私達はゴルフ場のバンカーの中、周りをみほさん達大洗、知波単の本隊が囲んでるわ』
「…それもう、普通に絶体絶命なのでは?」
『エキシビションとはいえ、油断しすぎですよ』
横からアッサムさんの声が聞こえてくる。いや、ほんとそれ、でもまさかアッサムさんも一緒に紅茶飲んでないよね?
試合もまだ序盤も序盤だというのに、いきなりダージリンさんの乗るフラッグ車のチャーチルが分断された上で、敵本隊に囲まれているところからのスタートだ。マジでどうしてこうなった?
こんな序盤でいきなり試合終了とかなんなら観客席からブーイングとか来そうですよ?大洗さん、そこんとこ理解してる?
『それで、素敵な訪問者はいつ来てくれるのかしら?』
「あー…まぁ、そっすね…っと!」
グラリと車体が大きく揺れる。どうやら近くに着弾したようだ、危ねぇ…。
俺の乗る【クルセイダーMk.Ⅲ】は速度こそ速いが、その分装甲はがっつり犠牲にしている。直撃を受ければ普通に死ねる。
「そこんところ、どうなんです?カチューシャさん」
『決まってるでしょ!こんな防衛陣形、さっさと突破してやるんだから!!』
カチューシャさんの号令と共にプラウダ高校の一斉砲撃が発射される。先ほどから続く砲撃戦で綺麗に整えられていたゴルフ場のグリーンが今では見る影もない。整備する人は泣いていいと思う。
『迂回すれば良かったんですよ』
「迂回すれば良かったんじゃないですか?」
『し、仕方ないでしょ!すぐに突破できると思ったんだから!!』
俺とノンナさんが同時に無線で答えてしまった。実際、向こうの目的はこっちの足止め、時間稼ぎにあるんだろう。
まぁカチューシャさんの言う事もわからんでもないが、確かに数の上ではこちらが圧倒的に有利ではある。
だというのに攻めあぐねている辺り、向こうの防衛陣形がしっかり高台にある事に加え、やはりポルシェティーガーがなかなかの曲者だ。
向こうは大洗からはポルシェティーガー、ルノーに加え知波単から九七式中戦車チハが2両確認できる、指揮はおそらく自動車部のナカジマさんだろうか。
「マックスさん!早くダージリン様の元へ駆けつけますわよ!かっ飛ばして向こうへと抜けてさしあげますわ!!」
「いや、落ち着けよ…」
どうどうと、今にも暴走しそうなローズヒップをなだめつつ、どうしたもんかと考えてみる。じゃないとこいつ、マジであの防衛陣形に突っ込んで行きそうだし。
ダージリンさんの乗るフラッグ車、チャーチルは現在、3両のマチルダと共に大洗、知波単の本隊に囲まれ集中砲火の真っ最中。
こっちはこっちで大洗、知波単の別動隊が俺も居るプラウダ部隊の足止めに徹底している。
うーん…これ普通にマズイのでは?ダージリンさんもゴルフ場のバンカーを使って上手く攻撃を凌いではいるんだろうが、逆を言えばそこから抜け出すのも難しいといえる。
「カチューシャさん、とりあえず足の早いクルセイダー隊だけ迂回しても?」
『なによ?私達プラウダの力を侮っているの?』
「いや、プラウダの力なら別に俺達が居なくても普通にここ突破できるでしょ」
『当然よ!なんならあなた達より先にダージリンの所に着いてあげるわ!!』
「それならそれで、完全に挟み撃ちにできますし」
『なら勝負よ、絶対ハチューシャより先にここを突破してダージリンの所に行ってあげるんだから!!』
『では比企谷さん、お気を付けて』
小さな暴君から無事にOKサインを貰った事だし、操縦席に乗るローズヒップに声をかけた。
ローズヒップは本来車長なんだが、なんかごめんね?変な目の腐った奴が乗っ取っちゃって。あ、どうも僕です。
「てな訳で俺達は迂回だ、急げるか?」
「余裕ですわ!リミッターを外しますわよ!!」
だが、当の本人はノリノリで操縦してくれているし、なんなら俺の言う事なんか聞かないまである。…車長の意味とは?
具体的に言うなら先ほどからこのクルセイダー、一切停車していないのだ。なんなのこの娘?止まると死んじゃう系女子なの?ちょっと酔っちゃうんだけど…。
「外すな外すな、それ外しちゃうとすぐ故障しちゃうだろ…」
クルセイダーといえばエンジンの故障が多いので速度制限がかけられている事で有名である。まぁ普通なら試合一本くらいならそれでももってくれるんだろうが。
だがそれはあくまでも普通の場合で、ここでいうローズヒップのリミッターがガチリミッターにしか聞こえない。理由?いや、ローズヒップだし…。
確かに急いでフラッグ車の所へ向かいたいが、こんな試合序盤でエンジンがぶっ壊れるのはさすがに避けたい。
「ゴルフ場の林を抜ける、木が多くて走りにくいだろうが操縦は任せた」
「任されましたわー!バニラ、クランベリー、しっかりついてくるのですよ!!」
『了解です!スピードなら私も負けませんわ!!』
『久しぶりに試合でローズヒップさんの爆走が見られて感激ですの!!』
聖グロリアーナのクルセイダー隊ってみんなこうなの?ワイルドでスピード出しすぎでしょ…。
俺の乗るのも合わせて、4両のクルセイダーが防衛陣形を無視して迂回ルートへ進む。
俺達がダージリンさんの救援に着くのが先か、プラウダが防衛陣形を突破するのが先か。
…もしくは、ダージリンさんのフラッグ車が撃破されるのが先か、かなり微妙な所だな。
『マックス、いいかしら?』
「ダージリンさん?今迂回してそっちに向かってますけど」
『そう、こちらは勝手にスコーンが割れたのだけど』
「…はい?」
あらやだ、この人達紅茶飲むだけじゃ飽きたらずお茶菓子まで用意しだしたの?確かに紅茶にも合うよねスコーン。ゴリラがパッケージにいる細長いスナック菓子だっけ?
『えと、知波単学園の方々が私達に突撃してきたので、この混乱に乗じて上手くここを抜け出せるかと』
無線越しでも俺がはてなとなっているのが伝わったのか、ペコが捕捉説明をいれてくれた。なるほど、そういう事ね。
「…なんで?」
ますますはてなとなった。え?あの包囲している圧倒的優位な状況でわざわざ突撃してきたの?
『私のデータによれば…それが知波単学園だから、かと』
それデータ取る意味ないんじゃないかなぁ…。
「てか、西住は止めなかったんですか?」
そんな無茶な指示を西住が出すとは思えないし、完全に知波単組の独断先行だろうか?そんな命令無視する連中には見えなかったんだが。
『みほさんもだいぶ慌ててたみたいね、可愛かったわ』
うーん、その光景が目に浮かぶ。そりゃ可愛いは可愛いんだろうが…じゃなくて、しっかり知波単連中を止めれなかった辺り西住らしい。
『こちらカチューシャ。ハチューシャ、プラウダは防衛陣形をちゃんと突破してやったわよ!!』
「…早いですね」
続けてカチューシャさんから報告、うーん…思ってたよりずっとすんなり突破してしまって、わざわざかっこつけて迂回した俺達が馬鹿みたいである。
『どう!これがプラウダの実力なのよ!!』
『相手のチハが1両、こちらに向けて突撃してきたのが幸運でしたね』
『ノンナ!余計な事言わなくていいの!!』
「…なんで?」
相手防衛陣形敷いてたんでしょ?なんでそっから出てわざわざ突撃してきたの?
先ほどのチャーチルに向けての突撃といい、突撃って感染するんだろうか…、そういえばローズヒップも試合始まってから隙あれば爆走しようとしてるし…。
プラウダが防衛陣形を突破するのが先か、俺達がダージリンさんの所へ駆けつけるのが先か。それともダージリンさんのフラッグ車が撃破されるのが先か。
答えは知波単の連中が突撃してくるのが先でした…と、こんなん読めるか!?
『とにかく、これで勝負は私達の勝ちね?』
「いや、案外そうでもないですよ?」
「見えましたわー!!」
ローズヒップが叫ぶ。俺達もちょうど林を抜け、目の前にカメチームのヘッツァーとカバチームのⅢ突を捉える事が出来た。
わりと無茶な行軍ではあったが、そこは聖グロリアーナが誇るクルセイダー隊、ただのスピード狂集団ではない。…スピード狂には違いないんだよなぁ。
「っし、とりあえず前2両を露払いしとくぞ」
ヘッツァーもⅢ突も固定砲塔。となれば側面をついた今なら反撃の心配もなく撃ち放題と、ここを狙わない手はない。
「どっちを狙いますの?」
「は?んなのヘッツァーに決まってんだろ?」
「決まってるんですの!?」
決まってるのです。理由?生徒会だから、むしろ他に何があると言うのかね?
俺達クルセイダー隊の砲撃を受けた2両がその場から撤退を始める、固定砲塔はこういう時弱いのだ。
「追いますの!!」
「ローズヒップ、待て」
「はいですの!!」
慌てて2両を追いかけようとするローズヒップに待ったをかける、本当にこの子せわしないよね…、とりあえず追いかけたくなるのか。
まぁそれでも指示を言えばすぐに答えてくれる。うーん…この親戚で飼ってる懐いてる犬感、後で骨っこ代わりにラーメンでも奢ってあげたくなっちゃう。
確かに生徒会をここで仕留める(あらゆる意味で)絶好の機会ではあるので、そうしたいのはやまやまだが…。
『こちらチャーチル、前進するわ、挟撃体勢に入っていだだける?』
『任せなさい!カチューシャ達が来たからにはもうおしまいよ、全車両でフラッグ車を狙いなさい!!』
まぁそんな訳で、今度はこちら側が包囲する番だ。ダージリンさんのチャーチルとカチューシャさんが率いるプラウダ部隊が相手フラッグ車を捉えたとなれば、当然俺にもその姿が見えている。
相も変わらず、この砲撃飛び交う戦場のど真ん中で、彼女は自身の搭乗戦車であるⅣ号戦車から半身を乗り出し戦場を駆けている。
大洗・知波単チームの隊長車であり、フラッグ車だ。ここは当然西住を狙う。
「このゴルフ場で西住を仕留める」
え?こんな序盤でいきなり試合終了は盛り上がりにかけるって?むしろ戦場を大洗市内に広げないこの配慮に感謝して欲しいくらいなんだが。
プラウダ、そして俺達クルセイダーとバンカーから脱出したチャーチルとマチルダも一斉に西住のⅣ号に砲撃を放った。
『ちょっと!ミホーシャ達、山を降りてくじゃない!!』
『さすがみほさん、切り替えが早いわね』
…まぁそうくるよねー、西住達からすればこのままここで戦うのは圧倒的に不利だし、そうなると戦場を市街戦に移すしかない。
それにしたって、よく西住も全く躊躇なく街中を戦場にする事を選択するよね…。あれかな?戦場道ファイト国際条約第7条とかに【大洗がリングだ!!】って書いてあるのかな?
そんな訳でついに始まりました劇場版!最後までお付き合いしていただけると嬉しいです!!