劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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ぶっちゃけ実家から出ても八幡ならなんだかんだ一人暮らし出来そうですよね、持ち前の専業主夫希望スキルもありますし(笑)


こうして、比企谷 八幡の奉仕活動が始まる。

【住めば都】

 

その言葉の由来は平安時代に都から田舎へと左遷された者がその田舎の居心地の良さから生まれた言葉…らしい。もちろん諸説あり。

 

この『諸説あります』って言葉超便利、とりあえず説明事の語尾に付け加えときたい言葉ナンバー1まである。

 

「都ねぇ…」

 

大洗学園から退艦した生徒は各々が次の転校先が決まるまでの間、一時的な待機場所へと移動する事になった。

 

もちろん生徒数が多いので、例えば小町達中等部の生徒は親元に戻ったりしているし、俺達高等部の生徒もバラバラに待機場所が割り振られている。

 

戦車道受講者が全員同じ待機場所なのは…まぁ、生徒会がいつものように何か仕組んだのだろう。

 

しかしこの待機場所、見るからにオンボロというか…元は廃校になった学校らしい。おそらくだが学園艦が主流になった事でこういう陸にある学校が割りを喰ったのだろう。

 

…学園艦が廃校になった俺達が学園艦のせいで廃校になった学校で過ごす事になるとか、なかなかシャレが効いている。

 

「転校の振り分けが完了するまで、ひとまずここで待機となりまーす」

 

「クラス別に教室が割り振られている、速やかに移動しろ」

 

校舎の前でメガホンを手に声をあげて生徒を誘導しているのは小山さんと河嶋さんだ。…正直意外だな。

 

「…なんだ比企谷、何か言いたい事がありそうだな」

 

「いや、まぁ…」

 

小山さんはともかく、河嶋さんは学園廃校をもっと引きずっているのかと思った。全国大会の時からあの人の大洗学園への思いは充分に見てきたのだから。

 

「桃ちゃんなら大丈夫よ、比企谷君」

 

「こういう状況だからな、我々がしっかりしないと」

 

「…そっすか」

 

決して吹っ切れた、という訳ではないだろうが、学園艦が無くなってもこの人達は大洗の生徒会なんだろう。

 

「だいたい貴様は人の心配よりまず自分の心配をしたらどうだ?」

 

「…はぁ、何がですか?」

 

そりゃ心配事なんて山ほどあるが…本当に山ほどあって笑えない、特に将来とか本気で考えると死にたくなる。…ならない?

 

そもそも将来の事考えてるのに死にたくなるとか矛盾にも程があるんだよなぁ…。

 

「私達は転校先が決まるまで、しばらくはここで住む事になるのよ?」

 

「それは聞いてますけど…」

 

転校先は文科省が決めるらしいので一時的な待機場所といってもいつまでここに居る事になるのかもわからない。大丈夫?俺達来年三年だよ?受験生なんだけど。

 

「比企谷君、当面のここでの住む場所は決まってるの?」

 

「…実家に帰って良いですか?」

 

「お前はその実家が学園艦だっただろ…」

 

…なんてこった。僕にはもう帰れる場所が無いんだ、こんなに悲しい事はない。こんなの…今すぐにでもララァに会いに行っちゃうじゃん。

 

「てか、そういうのって普通生徒会が手配してくれるもんじゃないですか?」

 

「もちろん部屋は割り振ってはいるが…まさかお前、一人部屋を貰えるものだと思っているのか?」

 

「え?むしろ違うんですか?」

 

「生徒数を考えるとどうしても何人かで部屋を共有する事になるから、他の誰かと数人での相部屋にはなっちゃうかな」

 

「うわぁ…」

 

「露骨に顔をしかめるんじゃない、生徒に対して部屋が足りないんだから仕方ないだろう」

 

いや、そらゃ露骨にしかめもする、比企谷 八幡が実家から出て一人暮らしをするってだけでも解釈違いなのにその上ルームシェア?そりゃ新刊も落ちるわ。

 

「一応希望者には外でテントでの生活も了承してるんだけど…」

 

「あー…そういえば秋山が張り切ってテント道具一式用意してましたね」

 

…学園艦から持ってきていたのがやけに大荷物だとは思ったがこの為だったのか、相変わらずサバイバル能力が高い。

 

「たぶん後で申請書を持ってくるんじゃないかしら?あんこうチームのみんなとで住むと思うんだけど」

 

「まぁ、そうでしょうね」

 

「まさか比企谷、お前もそこに混ざると言うつもりじゃないだろうな?」

 

「…いや、さすがに無いですよ」

 

ゆるゆるしたキャンプに男を混ぜてはいけない(戒め)。あと最近では釣りとか登山等、そこら辺のアウトドアにも混ぜちゃいけない。男はどこに行けば良いんだ…?

 

まぁそれ関連は抜きに、普通にダメでしょ…。

 

「ならいい、ただでさえ今は風紀委員の連中がたるんでいるからな」

 

「…風紀委員、そど子さん達ですか?」

 

「学園艦があんな事になったから、仕方ないといえば仕方ないんだけどね、どうも元気が無いみたい」

 

…あの風紀の鬼だったそど子さんがね、今なら風紀も乱し放題という訳か。…いや、別に乱しませんからね?ただの確認だから、確認、大事。

 

「それで比企谷君、あなたもテントで生活するなら今からでも申請書を渡すんだけど」

 

「戦車道メンバーの何人かもそうするようだしな」

 

…ちょっとあいつらたくましすぎない?秋山に限らずどいつもこいつもサバイバル適性高すぎんだろ。

 

対してサバイバル能力ゼロ、現代っ子の申し子たる俺がテント生活とか…俺はつらい、耐えられない。になるのが目に見えている。

 

せめて屋根の下で雨風も凌げて冷暖房完備の設備を要求したい、…そもそもこの木造校舎に冷暖房あるのかなぁ、8月も終わりとはいえまだ暑いんだよなぁ。

 

「お困りのようだね、比企谷ちゃん」

 

「会長、なんです急に…」

 

話は聞かせて貰った!とでも言うように颯爽登場した会長、いや、実際困ってはいたんだがこの人が絡んでくると目に見えてろくなことにならない気がする…。

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

会長に連れられて来たのはこの木造校舎の中でも比較的離れた所にある部屋だった。

 

どうやらここも教室だったようだが、他の教室と比べても一際使われていた気配はない。

 

「ここも以前は教室だったんだけど、だんだんと生徒数が減っていってから使ってなかったみたいなんだよねぇ」

 

「はぁ…」

 

まぁ離れた所にある教室だ、生徒数が減って教室を潰してくとなれば一番に使われなくなる所だろう。

 

「比企谷ちゃん、この部屋…使いたくない?」

 

「…部屋はもう残ってないと聞きましたけど」

 

「生徒会の活動の一環として使うって事なら、この部屋、比企谷ちゃんの好きに使っていいよ」

 

「なるほど…それなら一般生徒からも苦情はでませんね」

 

「さすがは会長!!良かったな比企谷、一人部屋なんて贅沢できるのはお前くらいだぞ」

 

いや、【生徒会の活動の一環】とかいうフレーズだけで嫌な予感しかしないんですが?

 

「…で、条件はなんです?」

 

「話が早くて良いねぇ。そん代わり…比企谷ちゃんにはここで奉仕活動をして貰おっかな」

 

「…なんですかそれ、ボランティア活動みたいな?」

 

「というよりお悩み相談だね。ほら、いきなり学園艦が無くなっちゃってみんな不安だから」

 

「もちろん生徒会でも出来る限りの事はするつもりだけど…さすがに生徒の数が多くなってくると厳しいですもんね」

 

「なるほど、そこで比企谷にも手伝わせる訳ですか」

 

要するに生徒会の手が回らない仕事を丸投げしようって魂胆なのだろう。

 

「ま、基本的には生徒会に送られて来たお悩み相談メールへの返信とかね、比企谷ちゃん、そういうの得意でしょ?」

 

そんな得意分野、主張した事ありませんが?そもそもあれだって生徒会の横暴によるものである。

 

「で、比企谷ちゃんはこの話、どうするの?受ける?」

 

「受けないなら当然、相部屋かテント生活になるだろうな」

 

「………」

 

ぼっち…あぁまぁ、元ぼっち相手に一人部屋を人質にして脅しかけてくるとか生徒会のする事じゃねぇ。

 

…と思ってたけどそういやこの人達、西住にも脅しかけてたしな。大洗の生徒会はこれが平常運転なのである。ヤクザにも程がある。

 

「…まぁ、出来る範囲の事なら」

 

とはいえここで断った所で今後の当てもない、誰だかわからないルームメイトとの気まずい相部屋生活を送るのもごめんである。

 

いや、マジで相部屋になる予定だった奴等は俺に感謝して欲しい。俺という尊い犠牲を噛み締めてルームシェアに臨むべきまである。

 

「ま、そんな深く考えなくていいからさ、部活動みたいなもんと思って気楽にやればいいよ」

 

奉仕の部活動とかそれもう何部だよ、そんなにポンポン部活動スタートさせるんならさっさとバレー部復活させてやれよ。

 

「…そもそも生徒の為のお悩み相談とか、学園艦ももう無いのに生徒会が生徒の為にそこまでやるもんでもないでしょうに」

 

「比企谷!貴様ッ!!」

 

河嶋さんが食って掛かるが、俺だってこの疑問は当然だ。

 

大洗学園は廃校になり、なんならこの人達だってもう生徒会では無いとも言える。

 

ここに住むのだってしょせんは次の転校先が決まるまでの間の仮住まいだ。結局はバラバラになる生徒にそこまでやる義理は無いだろう。

 

「…不満そうだね」

 

河嶋さんをなだめつつ、会長は真っ直ぐに俺を見る。

 

「そりゃ、基本的に仕事に対しては不満気に行うのが俺のスタンスなんで」

 

「あまり一緒に仕事したくはないスタンスね…」

 

ですよねー。俺もそう思うんで出来れば今後一生仕事とかせずに済みたいです。ほら、一緒に仕事する奴に迷惑かけたくないし…。

 

「そうだね…」

 

と、会長が言いかけた時だった、窓の外からチラッと一瞬だけ見えたそれはすぐに大洗の街上空を飛び回る。

 

「会長!サンダースのスーパーギャラクシーです!!」

 

「ケイ達か、戦車を届けに来てくれたんだな」

 

生徒会が連絡を入れてくれたのか、サンダースに預けていた戦車を持ってきてくれたんだろう。

 

昨日の今日で早速届けに来てくれるとはさすがサンダース、アマゾンお急ぎ便もびっくりのスピード配達だ。

 

急いで窓に向かう、ふと見れば他の戦車道メンバー達はすでに校舎から出てスーパーギャラクシーを追いかけていた。

 

「…いや、どうすんですかあれ?」

 

…大洗の市街地の中にはスーパーギャラクシーを停めれるだけの滑走路がない、この木造校舎の運動場ではさすがに小さすぎる。

 

戦車を届けに来てくれたのはいいが、スーパーギャラクシーは大洗上空を旋回し続けるだけだ。

 

『はいアンジー、預かっていた戦車を届けに来たわよ』

 

スーパーギャラクシー、ケイさんから通信が入る。…いつの間にか河嶋さんが無線機を持っていたのだ。…え?いつ用意したのそれ?

 

「あぁ、こっちでも確認したよ」

 

だが会長も特に何の疑問も持たずに無線機でケイさんと連絡を取り始めたのでたぶん俺がおかしいのだろう。きっと河嶋さんは最初から無線機を持ち歩いていたのだ。…持ち歩いていたかなぁ?

 

『それで、どうしよっか?』

 

まぁそんな些細な事より今は戦車だ、スーパーギャラクシーを停める所がないと戦車を受け取れない。

 

「そこら辺に置いて貰えればいいよ」

 

…いや、だからその置くスペースというか、スーパーギャラクシーを停める場所が無いのでは?

 

『OK!投下するわよ!!』

 

ん~なるほど!確かに大型輸送機が戦車を投下するのはそう珍しいもんじゃないしね!!

 

…ただ、街中に戦車を投下するのは珍しいのでは?

 

徐々に低空飛行になったスーパーギャラクシーはそのままハッチを開き、パラシュートを付けた大洗の戦車が次々と投下される。

 

…大洗の道路にだけどね。道路交通法さんが黙っていないと思わなくもないが、スーパーギャラクシーは空の上だしここはノーカンって事で。いいね?

 

『確かに届けたわよ』

 

「サンキューケイ、助かったよ」

 

『これくらい良いわよ。アンジー?』

 

「…ん?」

 

『また何かあったらいつでも呼んでね、必ず駆けつけるから』

 

「そりゃありがたいね…、そん時はよろしく頼むよ」

 

『オフコース!それじゃあまたね!大洗のみんな!!』

 

嵐のようにやって来たスーパーギャラクシーは嵐のように去っていく。ケイさんのその言葉を残して

 

…またね、か。

 

「…比企谷ちゃん、さっきの話の続きだけどね」

 

無線機を置き、窓を眺めながら会長は呟くように答えた。

 

「…こんな場所だが、なるべくは学園艦と変わらず生活を続けたいからね」

 

「…そうですか」

 

「かーしま、朝は必ず出欠をとって、全員無事なのを確認する事!!」

 

「はっ!!」

 

「全員ちゃんと居る事を確認しないとね」

 

「…なんで今二回言ったの?」

 

しかも二回目、完全に俺の方向いてたよね?絶対逃げると思ってるよね?

 

いや、まぁ実際逃げたいんですけどね。一刻も早く小町に会いたい。お兄ちゃん、どうやらヤクザから物件借りちゃったみたいなもんだから。

 

…そんな風に茶化さなくてもわかってる。生徒会の話を受けた理由は単に一人部屋が欲しかっただけじゃない。

 

単純な話、何かしていた方がずっと気が紛れるからだ。問題は更なる別の問題で上書きしてしまえばいい。

 

仕事という理由付けはその最強の言い訳とも言えるだろう。今を全力で生きる社畜さんには余計な事を考える余裕もないのだから。

 

会長がこの話を持ってきたのは、そんな俺の気持ちを察してか、それともただ単に生徒会の仕事を減らしたいだけなのか。…まぁ後者だよね。

 

「あぁ、それと比企谷ちゃん」

 

「…はい?」

 

「仕事が欲しくなったらいつでも言ってね。…待ってっから」

 

「………」

 

いや、依頼が来るならともかく、さすがに自分から率先して仕事を貰いに行くとか、ちょっと無いんだが…。

 

…この人とも比較的長い付き合いにはなったが、まだまだ八幡検定に合格は出せそうにないな、うん。…うん。

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