劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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実際、突然の廃校からあの仮住まいの拠点での大洗学園生徒の放置っぷりは文科省は叩かれまくっていいレベルなんですよねぇ…。
一応比企谷八幡の奉仕活動編はそんなに長く書く予定はないですが、一度試合が始まるともう完全に終わりまで一直線なのでここで試合前に書きたい話は全部書ききる予定です。


その部屋からは、お茶の香りがする。

「学校が無くなったんなら朝起きなくても良いんじゃないか…」

 

それな、マジそれ、ほんとそれ。

 

翌日、朝っぱらから【全員しゅうごぅ~】とかいう覇気のないアナウンスにより俺達大洗学園生徒達は、この仮住まいの校舎の校庭に集められた。

 

「出欠は毎日とるんだって」

 

これが昨日会長が言っていた朝出欠をとって全員無事なのを確認する事、なのね…。

 

そう言えば聞こえは良いが毎朝生徒全員を校庭に集めるとかどこの強制労働施設だよ、まだ普通に学校通ってた方がマシだったわ。

 

「なら早く終わらせてくれ…、帰ってもう一度寝直す」

 

「せっかく起きたんですから、もう少しだけ頑張ってみませんか?」

 

「そうよ、麻子起こすの大変だったんだから」

 

あんこうチームで共にキャンプ生活をしている冷泉もこれには逃げられなかったのか、珍しく参加している。…もちろん、不満たらたらの表情ではあるが。

 

まぁ冷泉の言う事には同意する。やるならさっさとやってぱっぱと解散して欲しい、こういう時無駄に長話始めちゃうから校長先生とか社長って嫌われるんだよ。なにあれ、毎回原稿とか書いてんの?

 

しかし、生徒会の三人も壇上に上がっていないのを見ると出欠をとるのは風紀委員の三人だろうか?風紀委員の癖に遅刻とは度しがたい。

 

そう思っているとのろのろとした足取りでそど子さん達、風紀委員がやってきた。…え?あれがあの風紀委員?

 

「顔くらい洗え!そど子!!」

 

…冷泉、お前もな。髪ぼっさぼさだし女子としてどうなのか?溢れる睡眠欲の前には女子力なんて無力なんだろうなぁ。

 

「はいはい、どうせ私はそど子ですよー」

 

冷泉のそんな文句もそど子さんはあっさりと受け流す。いつもならここで言い争いの一つでも起きるのだが…。

 

「出欠をとりまーす、全員いるわね、はいしゅーりょー」

 

のろのろと壇上に上がったそど子さん達は、それだけ言うと大して確認もせずにすぐに降りていく。…風紀委員の姿か?これが。

 

…明日からこれ、出席しなくても良いんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「もう海の上じゃないんだね…」

 

意外に思うかもしれないが、俺達学園艦の生徒にとっては陸地での生活というのはかなり久しぶりになる。中、高と基本的に船上で過ごすのだから。

 

慣れない陸上生活。それは、それまで当たり前だと思っていたものが急に感じなくなる。

 

「波の音も聞こえませんし」

 

…代わりに虫の鳴き声が学園艦に居た頃より二割増しくらいに聞こえますがね。

 

「潮の香りも、あまりしませんね」

 

大洗だって港町ではあるが、さすがに船の上に比べるとそうだろう。…なんなら五十鈴はあまりとは言っているが、俺からすれば全く潮の香りは感じないんだが。

 

「えー、山も良いじゃん、緑がいっぱいあって」

 

海と山。うみんちゅという言葉はあるのにやまんちゅという言葉はあまり聞かない。

 

ウェミダァー!!はあるのにヤァマダー!!はなんかただの山田にしか聞こえない。

 

あと海賊王は格好いいのに山賊王になると急に序盤の雑魚敵感マシマシだし。

 

改めて考えてもちょっと山サイドさん不憫過ぎません?もっとヤマをススメてあげて。

 

「というかお前ら、なんでここに居るんだよ?」

 

まぁ今は海とか山なんてどうでもいい。よく聞く「海と山、遊びに行くならどっちが良い?」とかいう質問に、どっちもごめんと断るのがシティボーイたる俺なのだ。

 

だって海はクラゲに刺されるし、山なら虫に刺されるもんね。街に居れば安心安全、なぜなら人に後ろ指刺されるくらいだし。…ちょっと人避けスプレーとか開発しません?

 

さて、さっきからそんな話を和気あいあいとやっているあんこうチームの連中だが、別に盗み聞きをしていた訳じゃない。

 

「え?別に良いじゃん、暇なんだし」

 

「いや、ここ一応俺の部屋として割り振られたんだが?」

 

「とはいっても、ここも教室ですし」

 

「教室なんだよなぁ…」

 

これはもう生徒会に騙されたのでは?いや、仮住まいが廃校な時点で俺に限らず、各生徒も寝泊まりは他の教室に割り振られてはいるんだろうが。

 

そんな訳でなんか知らんがあんこうチームが来ている。女子を部屋にいれる。そんな字面だけならドキドキ青春ラブコメみたいな展開も現実の前には無力である。

 

だって結局ここ、教室だもんね!昨日の夜なんかも山の中だから虫もうるさくて眠れないし、なんなら寝ながらちょっと泣いちゃうまである。マジで教室で寝泊まりさせるとか文科省訴えても良いレベルだろ。

 

とりあえず苦し紛れに教室の後ろ側には机をざっとバリケード代わりに並べて、ある程度の居住スペースは確保した。とはいえ、布団を敷いて寝るくらいしか使い道はないんだが。

 

「てか、比企谷だけ一人部屋ってなんかズルくない?」

 

「私はみんなと一緒にテントで生活するのもキャンプみたいで楽しいなって思ったけど」

 

「私もです!昨日は久しぶりに野営セットを使えたので嬉しかったですね!!」

 

「ゆかりん、イキイキしてたもんねー」

 

「皆さん、お茶が入りましたよ」

 

五十鈴がいつの間にかお茶の用意をしていたのか、あんこうチームのみんなにマグカップを配っていき。

 

「はい、比企谷さんも」

 

「え?あぁ…悪いな」

 

なんか流れで受け取っちゃったけど、お茶会始めるってこれもう居座る気満々じゃん、おれの部屋(暫定)乗っ取る気なの?

 

たかがお茶会と侮るなかれ。ダージリンさん達聖グロリアーナだったら、こっから二次会三次会で1日過ごすからね、あの人ら。

 

ズズズ…とお茶を一口。こういったお茶会では大抵、紅茶やらコーヒーやらを飲んでいた身として、こういうノーマルなお茶は一周回って新鮮にも思える。

 

五十鈴は華道の家元の娘だが、家柄か茶道も少しかじっているとは聞いている。ふむ…美味い、心が落ち着く。

 

「で、もっかい聞くがなんでここに居るんだよ?」

 

「しっかり飲んでから聞くのね…」

 

そりゃまぁ…出されたからにはね?いや、お茶美味しかったですよ、結構なお手前で。

 

「それはえーと、八幡君が生徒会の仕事を手伝ってるって聞いたから」

 

「私達も何かお手伝い出来ればと、こうして参上しました」

 

「…いや、それはこの部屋を使わせて貰う交換条件みたいなもんだから、お前らは関係ないだろ」

 

別に彼女達あんこうチームを巻き込むつもりはないし、わざわざ手伝って貰う理由はない。

 

「ていうより…さっきも理由を言ったと思うんだけど」

 

「…さっき?なんか言ってたか?」

 

「暇だから」

 

「…暇なんだよなぁ」

 

武部の言葉に嘘はないというか、すんなり納得してしまった自分がいる。

 

次の転校先が決まるまでの間の仮住まい。それがこの校舎での生活な訳だが、要するにそれまで生徒達は待機、言ってみればやることがない。

 

「こんな状況だと、授業も満足に出来ないもんね」

 

「そもそも転校先の授業がどこまで進んでるかも謎だしな、予習のしようもない」

 

「私としては戦車訓練がしたいんですが…」

 

「ですが、街中で戦車砲を撃つ訳にもいきませんし」

 

ここは大洗学園とは違うのだ、むやみやたらに砲撃を撃っていい場所じゃない。…いや、それは大洗学園だってそうなんだが、ここには訓練場所がないのだ。

 

「でも戦車でコンビニに買い出しには行けるし、助かったよね」

 

…サンダースの皆さん、あなた達が必死に届けてくれた戦車は今も有効に使わせて頂いてますよ。買い出し、大事だもんねー。

 

買い出し、戦車でコンビニに買い出しかぁ…。

 

「は、八幡君が震えてる…」

 

「きっと私達が戦車を大事に使っているから、喜んでるのね」

 

「…比企谷殿、受け入れましょう。戦車だって動かさない方が寂しいと思いますから」

 

さすがに戦車でコンビニに買い出しに行った本人に言われれば説得力が違う。まぁ…大事に使って貰えてるのに違いはないんだが。

 

「つまり比企谷を手伝うのは私達が暇だから、…それだと理由にならない?」

 

武部が俺の表情を伺うようにチラッと見てくる、他のあんこうチームも少し不安そうな表情をしていた。

 

…なんかズルくない?そんな顔されたら、そりゃーーー。

 

「まぁ…一理ある、な」

 

暇なのに違いはないしね…、エキシビションマッチ開幕前のゴタゴタが今思えば懐かしい。

 

「一理あるが、結局ここに居ても暇なのは変わらんぞ、たぶん」

 

「えーと、生徒会の仕事を手伝ってるって聞いたんだけど」

 

「奉仕活動、ですよね!!」

 

「改めて聞いても比企谷とは一番遠い言葉よね…」

 

「というより、見返りに一人部屋を貰っている時点で奉仕活動ではないのでは?」

 

おーおー、好き勝手言いなさる。

 

「まぁ奉仕活動ってのはあくまで便宜上で、やることは生徒のお悩み相談がメイン…らしい」

 

「話を聞くと結構大変そうだけど…」

 

「話だけならな。そもそも依頼なんて来ないだろうし、来ても向こうから断ってくるはずだ」

 

これは俺が今回、生徒会のこの話を受けた理由の一つでもある訳だが。

 

「ですが、急に廃校になった事で困っている生徒も多いのではないでしょうか?」

 

「仮にそんな生徒が居たとする。生徒会からここを紹介されたとして、こんな胡散臭い奴に悩みを相談とか、普通しないだろ」

 

「ご自分で言われては…、しかも自信満々で」

 

「そうかな?八幡君、すごく頼りになると思うんだけど…」

 

「でも、確かに知らない人にいきなり悩みを打ち明けるのって勇気がいるかも」

 

「だろ?だからここに居ても依頼なんて来ないし、たぶん暇だぞ」

 

「まぁ、それならそれで…」

 

「こうやって皆さんとお茶をいただけますしね」

 

だったらここでわざわざお茶会を開く意味とは?やっぱり俺の部屋(教室)を侵略するつもりなの?ここ六畳間でもないんだが。

 

そんな侵略!戦車娘達にそう簡単に侵略を許す八幡じゃない。…なにこのソシャゲにありそうなタイトル。

 

これはあれだな、もし次回作またやるならタワーディフェンス系のアプリで勝負かけてみたらどうですかね?え、タイトル?みんなで戦車道…とか?

 

「比企谷さんもお茶のおかわりはいかがですか?マックスコーヒーも持ってきました」

 

「クッキーもありますよ」

 

わぁい!マックスコーヒーだぁ!!クッキーも!!

 

「…そういや冷泉はどこ行った?」

 

クッキーと聞いて真っ先に飛び起きそうな奴だが、寝ているどころか姿も見えない。

 

いや、最初来た時は確かに居たんだが…気付いたら居なくなってるとか、うちの飼い猫のカマクラを思い出す。寂しがっては…うん、ないな。なんなら次会った時には俺の顔も忘れてるまである。

 

「私にもクッキーをくれ」

 

と思ったらガラガラと机を開けて冷泉が這い出て来た。…教室の奥、俺の居住スペースから。

 

「…いや、何してんだお前」

 

「そこに布団があったんだ、私は悪くない」

 

いや、マジでなにしてんのこの子。寝るのに必要不可欠な布団から占拠してくとか侵略としてもガチすぎんだろ…。

 

…え?ほんとに奥の布団で寝ていたの?昨日その布団で泣いてたんだけど…やだ、湿っていたところ、なんか勘違いされてないよね?

 

そこら辺もコミコミで問い詰めてやりたい所だが、それを聞いちゃうと今晩、俺はまた眠れない一夜を過ごしてしまいそうだ。その…いろいろな意味でね。

 

「もし依頼が来たら率先して働いて貰うからな…」

 

「依頼なんて来ないんじゃなかったのか?」

 

恨みがましく言ったつもりだが、冷泉は涼しい表情でクッキーを食べつつ、お茶を飲んでいる。…すげぇなこいつ、まったく反省していない。

 

ちょっと、誰かこの子に天罰与えたげて!具体的に言うと朝絶対に起きなきゃならない状況とか!!

 

「たのもー!!」

 

とかやってると教室のドアが勢い良く開いた。ノック?もちろん無いんだが…。あんこうチームの連中といい、人の部屋(教室)をなんだと思っているのか。

 

「バレー部の皆さん?どうしたんですか?」

 

「今日はカチコミですか?それとも果たし合いでしょうか?」

 

…なんで五十鈴はその二択なの?いや、あまりの勢いの良さに俺も鉄砲玉かとも思ったんだが。

 

「はい!生徒会からここで悩み相談をしていると聞いてやってきました」

 

…やって来ちゃったかー、しかも身内からの相談となると。

 

「…たぶんですが、生徒会は比企谷殿の知り合いを率先してここに紹介するつもりなのではないでしょうか」

 

「そっか…私達なら八幡君にも相談しやすいもんね」

 

要するにそれ、戦車道受講者からの相談はどうせ厄介な事になるだろうからって押し付ける先を探していただけなのでは…。

 

しかし、まさか依頼第一号が一番悩みの無さそうなバレー部連中になるとは…その悩み、根性で解決とかしないの?

 

先ほどの会話のやり取りもあってチラッと冷泉を見る。…あ、こいつ今露骨に目を逸らしやがった。

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