劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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そういえば一年生チームの大野さん、戦車の話をすると男友達が引いちゃうって言ってましたが、原作にて女子校の大洗に男友達とは…?
まぁ宇津木ちゃんも彼氏居たみたいですしね、つまりは武部さんにも希望がある!!


心機一転、一年生達は自給自足を決意する。

【お兄ちゃんへ、邪魔なので処分してね☆】

 

「………」

 

そんな手紙と共に送られてきた段ボール箱を自室兼奉仕部(仮)となった教室にようやく運び終える。

 

こういった荷物が実家から届く生徒は少なくない。突然の廃校と仮の廃校住まいだ、家族の方も心配して仕送りを送ってくる事もあるだろう。

 

…仕送り?いや、小町が送ってくれた物ならそれはなんであれ仕送りに違いない、なんなら「プレゼントは私だよ!お兄ちゃん!!」と中に小町が入っている可能性だって充分考えられる。

 

いや、ないか、なんなら邪魔って書いてあるし。我が家で邪魔と聞いて考えられるのは親父くらいなものだ。

 

段ボール箱を開けたらうちの親父が体育座りしてスタンバイしてる…みたいな絵面が浮かぶ。このまま蓋を開けずに返却した方が良いのかしら…?

 

「あー…」

 

ガムテープをビリビリとひっぺがすとパッと目に入ってきたのは実家で部屋に置いていた戦車関連のグッズだ。そういうバタバタしてて忘れていたが小町がまとめてくれていたのか。

 

危ない危ない、危うく学園艦解体と同時にこの数々のお宝グッズも消えてしまう所だった、さすが小町!お兄ちゃんの事わかってるぅ!!

 

え?邪魔?処分?そんな手紙来てたの?白ヤギさんだが黒ヤギさんだかが読まずに食べちゃったんじゃない?

 

「おぉ!このプラモは10式戦車、防衛省装備研究本部モデルではありませんか!!」

 

「知っているのか!秋山!!」

 

「知っているもなにもこのモデルの実物は静岡県富士学校に展示してある物だけ、そんな激レア品がなぜここに!?」

 

至高の逸品には、それに相応しい持ち主が必要でございます、これは買うっきゃない!!

 

「他にもあれも!あぁ、ここにあるのだって!!」

 

「わかるか?秋山」

 

「わかりますよ!白、いいですよねぇ…」

 

「良い…」

 

最早多くを語る必要は無いだろう、俺と秋山は互いにうんうんと頷き合う。ダイヤより、絵画よりも美しい夢の逸品がここにはある。

 

「いや、先輩方なんの話をしてるんですか…?」

 

「おっじゃまっしまーす!!」

 

秋山とのやり取りに夢中で気付かなかったがぞろぞろと教室に入ってきたのはウサギチームの一年共だ。

 

「これ、何ですか?」

 

山郷が段ボールの中を覗き込んで聞いてくる、他の一年達も興味深かそうに箱を覗いていた。

 

「小町が送って来てくれた戦車グッズだ」

 

「はぁ…これでここでも戦車グッズを眺める事ができるとは、さすがは小町殿ですね」

 

「だろ、もっと誉めてくれ」

 

「なんで比企谷先輩が偉そうなんだろ…」

 

「私は戦車グッズを両親に預けているので羨ましいです」

 

さすが小町、すなわちさすこま。きっと疎開先で寂しい思いをしているだろう兄を気遣っての配慮なんだろう。

 

「きっと置く場所が無かったんじゃないかな?」

 

「たぶんそうじゃない?手紙にも邪魔って書いてあるし」

 

「比企谷先輩、目付きだけじゃなくて本当に目が悪くなったんじゃ…」

 

「可哀想…」

 

「ちょっとみんな!比企谷先輩に聞こえちゃうじゃない!!」

 

もう聞こえてるんだよなぁ…。

 

「てかお前ら、何の用だよ…」

 

「あ、あの…私達、相談があって来たんです」

 

「おおよそ予想はしてたけどな、依頼か…」

 

「はい、困っていたようだったので私がお連れしました!!」

 

「秋山がか?」

 

「はい!あの…ご迷惑だったでしょうか?」

 

まぁ迷惑じゃないといえば嘘にはなる、別にここは大々的に依頼を募集している場所でもない、仕事が無いならそれに越した事はない。

 

だが、それより少し気になったのはそういえば秋山は軍人気質なのか、基本的には同級生にも敬語なのだが、年下のこいつら相手にもそうなのだろうか?

 

「まぁバレー部の早朝ランニングも一段落して多少暇にはなったしな、そんで…何かあったのか?」

 

早朝ランニングの方は参加人数が減ってきて、少し落ち着いてきた。だが、それは悪い傾向ではなく、単に生徒達で気晴らしが出来たからだろう。

 

現に前よりも校庭に出てスポーツなりなんやらで身体を動かしている生徒は増えたのだ。…おかげでバレー部はまた練習場所を求めてさまよっていたりするが。

 

後、冷泉が夜のうちに一通り前準備をしてたりする。相変わらず朝は爆睡してランニングには参加しないがあいつなりに出来る事をしているのだろう。

 

「えと…私達、学校から出て。テントで生活しようとしてるんですが」

 

「え?お前らが?」

 

ゆとり教育全盛期みたいな一年共が自らテント生活をチョイスする…だと?

 

「止めとけ止めとけ、生徒会だって暇じゃないんだから。わざわざ二三日で戻ってくる奴等の為に部屋の入れ替えとか面々になるだろ」

 

「一人部屋でぬくぬくしてる人に言われたくないんですが…」

 

「てか、比企谷先輩だけ一人部屋ってなんかズルくない?」

 

「ズルい!!」

 

「ズルいんで私達にこの部屋使わせて下さい!!」

 

「テント生活はどうなったんだよ…」

 

また部屋を侵略されかけてる…。ただでさえあんこうチームがちょくちょくお茶会開いて侵略されてるというのに。

 

「もう!昨日みんなで話合って決めたでしょ?私達も誰かに頼らず、自分達でできる事をしようって」

 

「…ほう、そりゃ立派だな」

 

「えへへ、もっと誉めて下さい!!」

 

阪口がわかりやすく前に出てくる、頭なんかちょっと下げて「ほら?撫でるなら今ですよー?」とでも言わんばかりだ。

 

「はい、それでどうすればいいか、秋山先輩に相談して…」

 

「秋山先輩から、ここを紹介されたんです」

 

「舌の根も乾かぬうちに宣言撤廃しなければ立派だったんだがなぁ」

 

誰かに頼らず…とはいうが、思いっきり秋山に相談持ち掛けてここに来ている訳だが?

 

「だってテントの設置とか、よくわからないし」

 

「食べる物の確保も必要だよね」

 

「…テントはまだわかるが、食べ物なら支給なりコンビニなりあるだろ」

 

当然だが、さすがにこんな仮住まいながら食べ物ぐらいは支給される。それで足りないならコンビニにでも行けば良い。

 

最初は俺もどうかと思ったが、実際戦車があればコンビニに行くのもずいぶん楽でありがたく、俺も戦車メンバーの買い出しにはちょくちょく便乗させて貰っている。…利便性には勝てなかったよ。

 

…そういえば前にコンビニ言った時、風紀委員の三人がコンビニ前にルノーを停めてて、その上でアイスを買い食いしていたのを思い出した。…いよいようちの風紀委員はヤバいのでは?

 

「せっかくやるんだったら、なるべく自給自足の生活をしようって決めたんです」

 

「…なんでまた?」

 

某アイドルグループにでも憧れたの?あの人達、アイドルっていうかもう農家だよ?…いや、農家でもないけど。

 

「リスペクトです!!」

 

「え?やっぱりあのアイドルグループの?対抗してNADESIKOみたいな名前で活動すんの?」

 

なんかめっちゃゆるっとしたキャンプしそうなアイドルグループ名だし、あとサッカー超上手そう。

 

「いや、なんの話ですか?」

 

「比企谷先輩、知らないんですかぁ?茨城には縄文人の住んでいた遺跡が沢山あるんですよぉ」

 

「あー、そういやなんかあるなぁ…」

 

案外茨城では縄文時代の物と思われる土器やら遺跡やらが多く発掘されている。そう考えたらうちのカバチーム、歴女達にも縄文時代担当が必要なのでは?それだ!!

 

「だから、私達も縄文時代の人に習って自給自足しようってなりました」

 

「…そうはならんやろ」

 

「ま、まぁ、自分達でできる事をしようって考えは立派だと思いますから」

 

秋山が苦笑いを浮かべながらフォローをしてくれる。まぁ本人達がヤル気なら俺がどうこう言うつもりは無いが。

 

「それにしたって自給自足でテント生活するって話なら俺にできる事なんて何も無いぞ、自慢じゃないがそれが嫌だからこうして仕事してる訳だからな」

 

「本当に自慢にならない…」

 

「そこはご心配なく!キャンプなら不肖私秋山 優花里、多少ですが心得があります!!」

 

ビシッと敬礼を決め込む秋山。いやいや、不肖なんてとんでもない。

 

「という訳で比企谷殿!ウサギさんチームの皆さんにも教えながら、えぇと…その、ご一緒にキャンプなんて…どうでしょう?」

 

「いや、一年にキャンプのいろはを教えるって話なら秋山だけで良いんじゃねぇの?」

 

サバイバル知識なら俺よりずっと適任だし。なんなら俺に適任が無さすぎる。

 

「あ、えぇと…その」

 

「うわー、この人本気で言ってるよ…」

 

「なんなら私達の依頼も押し付けようとしてない?」

 

「こういう先輩にはならないようにしなきゃ…」

 

ウサギチームの連中のひそひそ話がえらい辛辣である…特に澤のいつもの「ちょっとみんな!!」すらない。

 

「こうなったら私達でなんとかしよう!!」

 

「うん!!」

 

「よーし!それなら私に任せて!!」

 

「出来るの?桂里奈ちゃん」

 

「大丈夫!これを聞けば比企谷先輩もきっとキャンプしたくなるはずだよ!!」

 

ひそひそ話は大声での作戦会議へと変わり、阪口がずぃっと自信満々に前に出てきた。

 

「よーし、やったるぞー!比企谷先輩!!」

 

「ほい、阪口」

 

「あのアニメのキャンプ!楽しそうでしたよ!きっとキャンプって楽しいですよ!!」

 

うーん…このド直球、俺も甘く見られたものだ。

 

「そうやってアニメの影響受けちゃうからオタクは無駄にギター始めたり釣竿買ったりスーパーカブに乗っちゃったり、麻雀とか登山したり競馬とかもして、あげくに戦車に興味持ったりするんだよなぁ…」

 

言い変えればオタクとは究極の多趣味とも言えるのでは?広く浅くならリア充にだって負けはしない。

 

「ていうか最後の何?」

 

「さぁ…」

 

「ていうか、それって全部比企谷先輩の体験談なんじゃ…」

 

はて、なんの事だか。とりあえず戦車が出てくる女子高生のアニメ?そりゃ誰もが爆死しを予想しますよね。

 

「で、でも…ほら!キャンプで外で食べるご飯とか、きっと美味しいよ!!」

 

「わざわざ外で食べる理由が無い。暑いし、虫もわくだろ」

 

「えーと、キャンプしながら飲むマックスコーヒーとか、いつもよりずっと美味しくなるかもしれないし…」

 

「違うな、マックスコーヒーはいつ、どこで飲んでも美味いからマックスコーヒーなんだよ」

 

「うっうっうっ、ダメだったぁ…」

 

「桂里奈ちゃんは頑張ったよ!!」

 

「うん、ダメなのは比企谷先輩の方だから…」

 

ひどい言われようだ…。

 

「………」

 

「紗希?どうしたの?」

 

「………」

 

「これ?これがどうかしたしたの?」

 

丸山が持っているのはDVDのパッケージである、というかあれ、小町が送ってくれた段ボールの中に入ってたやつだ。

 

「なにこれ、映画?」

 

「【1941】?変な名前…」

 

「1941!名作映画じゃないですか!!」

 

「知ってるんですかぁ?秋山先輩」

 

「これはね、作中にM3も登場するんだよ」

 

まぁM3といってもシャーマンを流用したものらしいが。

 

「え?本当ですか!!」

 

「なにそれ見たい!!」

 

「いや、それ俺のDVDなんだが…」

 

「えー…ケチ」

 

「見せてくれたって良いじゃないですかー!!」

 

「そうだそうだー!!」

 

「………」

 

ぶーぶーと一年共がブーイングしながら抗議してくる。いや、丸山は一人だけブーイングしてないけど、なんならじっと見つめられる方がどちらかといえば居心地が悪い。

 

「…では、比企谷殿も一緒に、キャンプで見れば良いのでは?」

 

「いや、それこそわざわざキャンプして映画とか見る必要もないだろ…」

 

テントの中で映画見るの?それこそキャンプの必要が無いのでは?

 

「可愛い後輩の為に、では理由になりませんか?」

 

「………」

 

まぁ、それなりの理由にはなる…のか。

 

「みんな、比企谷殿もOKだって」

 

「本当ですか!秋山先輩!!」

 

「さすが秋山先輩~」

 

「ありがとうございます!秋山先輩!!」

 

「キャンプ初日の記念にみんなで見ようね」

 

なんか…年下相手だから当たり前なんだけど、こうして敬語じゃない秋山も見るのはなんだか新鮮な気分ではある。

 

てか、一年共誰一人俺にお礼言ってないのでは?そのDVDの持ち主が誰なのか忘れちゃってる?

 

「そういや映画見るなら一年達にもっと相応しいもんもあるぞ」

 

「あぁ、サハラ戦車隊ですか?」

 

「いや、馬鹿が戦車でやって来たりする映画なんだが…」

 

「…せっかくのキャンプで見る映画ではないのでは?」

 

「…だよなぁ」

 

ネタにしか聞こえないタイトルとは程遠い、わりとキツいお話だったりする。気になる人は是非見ておくと良い、オススメはオススメなので。

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