劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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遅れましたがガルパン10周年おめでとうございます!!…え?もう10年も前なの?嘘でしょ…。
10周年企画も素晴らしいもの盛りだくさん!…そろそろ最終章の続報とかあっても良いんですよ?


その為に、澤 梓はある流派を名乗る。

「いやいや、私が副隊長って、もーなんの冗談ですかー」

 

ひとしきり驚いてみせた澤は冷静になったのか、またまたーとでも言いたげに曖昧な笑顔を見せてくる。

 

「だいたい副隊長ならもう河嶋先輩が居るじゃないですか。駄目ですよ、あぁいう人ですけど忘れたりなんてしたら酷いじゃないですか」

 

「お前のその言い方のがよっぽど酷いけどな…」

 

なんだよあぁいう人って、まぁあぁいう人なんだけど…。いや、あの人も最近じゃ西住の居ない時に指揮を頑張ってる時あるからね?

 

「だから次期って言ったろ、来年だとあの人卒業してるだろ」

 

「…卒業、してるんですかね?」

 

「してると良いんだけどなぁ」

 

いや、別に河嶋さんを追い出したいとかそんな話じゃないんだが、卒業してなかったらあの人留年だし。

 

そもそも留年した人って部活動やらの競技に参加していいのかね?それなら戦車道に限らず、スポーツ全般で学校は強い選手は延々卒業させないのが安泰なのでは?

 

「そんな訳で河嶋さんに変わる新しい副隊長は必要になるだろ」

 

「だったら秋山先輩で良いじゃないですか、西住隊長のサポートをするなら秋山先輩が一番だと思います」

 

確かに秋山なら戦車知識も戦術知識も申し分ないし、腹心として西住をサポートする事もできるだろう。その忠犬っぷりは他チームの澤にも知れ渡っているという事か。

 

「秋山はあんこうチームの装填手だぞ、隊長、副隊長を同じ戦車に乗せてどうすんだよ…」

 

この場合、あんこうチームⅣ号が撃破されたら大洗は隊長と副隊長を同時に失う事になる、そうならない為にも隊長機と副隊長機は別々に分けるのがセオリーだ。

 

他所の学校を見ればサンダースだって、アンツィオやプラウダ、黒森峰もそうしている、まぁ当たり前だな。

 

…ん?となると聖グロリアーナの副隊長って誰になるんだ?こう考えるとアッサムさんは違うとは思うが…。

 

エキシビションで一緒に戦ったのにまだ見ぬ幻のシックスメンが居るんだろうか?その人は何マニアなんだろう…。

 

「そ、それならエルヴィン先輩とか、磯辺先輩…とか」

 

まだ諦めていないのか、澤は思いついた人達を呟くように述べている。

 

「そうだな、エルヴィンの戦車知識は悪くない、磯辺もバレー部のキャプテンやってる分、指揮能力は高いだろう」

 

エルヴィンの戦車知識は若干ドイツ戦車に片寄っている感はあるし、磯辺の知識はバレーに大幅に片寄ってはいるけど。なんだよ、バレーに片寄ってるって。

 

「ですよね?そうですよね!!」

 

「っても、二人共西住と同学年だしな…」

 

「…それ、何が駄目なんですか?年下の私なんかよりよっぽど良いと思うんですけど」

 

まぁ普通はそうだろう、年功序列の点でいっても先輩を差し置いていきなり副隊長就任は立場的にもやりずらいものはある。

 

「まぁ聞け、仮にエルヴィンか磯辺、どっちかが来年の副隊長になったとする」

 

「はい」

 

「となるとだ、再来年は隊長経験の全く無い澤が隊長就任だ、二階級特進だぞ?おめっとさん」

 

「ーーー」

 

あ、絶句してる…。そりゃマジもんの二階級特進だし、殉職的な意味でも。

 

そんな澤に言葉を続けるのはさすがに心苦しいものがあるが、本当に恐ろしいのはこれからだ。

 

「もちろんその時は西住も卒業してるからな、隊長の仕事とか、ノウハウ引き継ぎを教えれる奴も居ない訳だ」

 

これも他の学校を例に出すならサンダースはアリサ、アンツィオならペパロニとカルパッチョ、黒森峰は逸なんとかさんと副隊長は基本的に2年生が就任している理由でもある。

 

これは2年の内に副隊長として経験を積んでおいて、三年で隊長になっても問題がないようにの下地作りの為だ。

 

唯一プラウダは三年生のノンナさんが副隊長ではあるが、それでもカチューシャさんだって後進の育成は考えているだろう。

 

要するに来年西住の下で副隊長として学ぶか、再来年、西住も居ない状況でのいきなり隊長就任の二択である。

 

「ーーー」

 

あ、泣きそうになってる…やだ、なんか俺が泣かしたみたいな雰囲気みたいになってない?

 

「えと…じゃああんこうチームの皆さんも、他のチームの2年生の人達だって?」

 

「まぁ大洗って元々2年が多いチームだしな…、今居る主力はごっそり抜ける形にはなるか」

 

そもそも大洗の戦車道は今年再開し、メンバーが集まったばかりなので自然とそうなったともいえる。

 

「比企谷先輩…、先輩は留年の予定とか、ありませんか?」

 

「ねぇよ…てか、それこそ西住に聞けよ」

 

「そんな!西住隊長が留年とか可哀想じゃないですか!!」

 

「俺だって可哀想なんだよなぁ…」

 

だいたい試合にも出ない俺が残ってもどうしようもないというか…戦力的に何もプラスにならないんだが。

 

「そこは…えと、私達ウサギさんチームで面倒見ますから、安心して下さい。私達、うさぎ小屋のうさぎの面倒だってちゃんと見てますから」

 

「扱い方がウサギと同じ宣言されて全く安心出来ないんだが?」

 

年下女子達に飼われるとか、それなんてラノベ?オンエア版とオンエア出来ない版に別れてアニメ作られそう。

 

「そんな訳だ。どう考えても後進育成の為にも今の一年から副隊長を選ぶ事になる、大抜擢だぞ?もっと喜んだらどうだ?」

 

「いきなりそんな事言われても、それに一年生でも私以外に…」

 

と、そこまで言って澤の動きがピタリと止まる、うーん、これはもしかして気付いちゃった?

 

大洗チームにも一年生は何人かいるが、その中で隊長候補になれそうな車長というと…。

 

「あの…これ、消去法で選ばれただけなんじゃ?」

 

「………」

 

「ひ、比企谷先輩?あの…露骨に顔を背けるの止めません?せんぱーい?」

 

「安心しろ、世の中出世する理由なんてだいたい消去法だから、人員不足の小さな会社とかだと元の正社員数が少ないから、自然と今残っている人員が上に上がる事になる」

 

上司が抜けた役職空にする訳にもいかないからね、そうなるとそこにまた誰か生け贄に捧げる必要が出てくる訳で。

 

「何一つ安心する所がないんですけど!?…嫌な事聞いちゃったなぁ」

 

「…不満か?」

 

「不満というより…不安というか」

 

「例え消去法でも選ばれた事に違いはない、西住が推薦してるんだ、そこは喜んで良いと思うぞ」

 

そもそも消去法云々はたまたまそういう状況なだけであって、西住がそれを基準に考えているとも思えないし。

 

「西住隊長が…私を、えへへ」

 

あ、すっげぇ嬉しそう…。西住の奴も大概人たらしな所あるからなぁ、こりゃ秋山もうかうかしてたら右腕の座を奪われかねないのでは?

 

「じゃあ比企谷先輩も私を副隊長に推薦してくれてるんですね」

 

「まぁ…消去法でな」

 

「そこは普通、素直に頷く所じゃないんですか!?」

 

「いやほら、来年有能な新入生が入ってきたりしたら状況は変わるし」

 

「本当にこの人は…、はぁ」

 

呆れたため息をつかれる。だが、それ以上澤が何も言って来ない理由はわかっている。

 

結局、今までのやり取り、会話の全てが絵空事にすぎない、それを彼女もわかっているのだろう。

 

廃校となった大洗学園に来年はない。だからこれは全て、意味の無い会話だ、ありもしない未来について語る事こそ、無意識な物はないだろう。

 

「ま、大洗は廃校になったんだけどな…」

 

「…はい」

 

だからこの話はおしまいだ、大洗学園の先を考える必要はない。

 

「それでも、お前は戦車道全国大会優勝校の次期副隊長候補だ。戦車道を続けるなら、そこは自信を持っていい…と、思う」

 

話してる中、少しだけ火の勢いが弱くなってきた焚き火に燃やせそうな木をくべる、ぱちぱちと火は新たに燃え広がっていく。

 

「…先輩は続けるんですか?戦車道」

 

その燃え広がる火を見つめながら、澤はボソリと呟いた。

 

「いや、続ける前に元々やってた訳でもないだろ、この場合は」

 

転校先の学校に戦車道の授業がある無しに関わらず、元々大洗がアレなだけで普通、男が戦車道に関わる事は無い。

 

…いや、大洗でだって間違っていたのだ、そんな紛い物のまま戦車道を続けるか?と聞かれれば答えはすでに出ている。

 

「先輩ならそう言うと思ってました、困ったなぁ…」

 

「…何が?」

 

「私達が戦車道を続ける理由、西住隊長が私達に教えてくれた事を無駄にしたくないなって」

 

「あぁ…まぁ、良いんじゃないか」

 

西住の下で戦車道を学んだ事。その時間こそ、今年からの僅かな時間であったとしても澤は大切にしたいと言ってくれている。

 

「はい!西住流は私達がきちんと受け継いでいきたいと思います!!」

 

「あれを西住流っていうのはちょっと違うけどな…」

 

「でも、私達の戦車道は西住隊長が教えたくれたんですけど」

 

そりゃ西住流の娘が教えたんだから西住流には違いないんだろうが、西住の戦い方は実際の西住流とはだいぶ違うし。

 

「だいたい西住流の本家本元のやり方は黒森峰の戦術だ、他所で勝手に名乗ったら訴えられるぞ」

 

「訴えられるんですか!?」

 

いや、実際に西住のかーちゃんが訴えてくるかは知らんけど、別に西住流の門下生って訳じゃないんだから好き勝手に名乗る訳にもいかんだろう、月謝とか払ってないし。

 

「えーと…じゃあみほ流、とか?」

 

「みほ流…、あぁ、そりゃ良いかもな」

 

聞いて自然と笑みがこぼれる。何が良いって、本人が聞いたら顔を真っ赤にさせて恥ずかしがる姿が目に浮かぶような所がね。

 

それでも、それが西住がここ、大洗で彼女達に教えた戦車道だ。だったら、それをみほ流と呼ぶ事は間違っちゃいない。

 

「澤が有名な選手になったら、【みほ流】の名前が戦車道界隈に広く知れ渡る事になるな」

 

「有名な選手になれるかはわかりませんけど…良いですね、それ」

 

「あぁ、良いな」

 

何が良いって、西住が恥ずかしがって身悶えしそうな所が良いね。いや、別に変な想像してませんよ?えぇ、もちろんしてませんから。

 

「はい、【比企谷みほ流】の名前が有名になるくらいには頑張ります!!」

 

「…いや待て、ちょっと待て、つーかかなり待て」

 

「はい?」

 

はい?じゃないがな、今明らかに変なの混じってたよね?

 

「…比企谷はどっから出てきた?」

 

「どこからって…もう、何言ってるんですか」

 

呆れたような声を出して、澤は俺に目を向ける。

 

「比企谷先輩。先輩だって、私達にいろいろと教えてくれたじゃないですか」

 

「それもう全部忘れていいから、とりあえず比企谷流止めない?」

 

だいたいなんだよ比企谷流って、そんな流派名乗った覚えもないんだけど?そりゃ西住のみほ流もそうなんだが。

 

「えー!なんでですかー!?」

 

俺が恥ずかしがって身悶えするからに決まってんだろ、想像するだけで酷い絵面だ、誰得だよそれ。

 

「そもそも合体させる必要が無いだろうが…」

 

つーか、それ以上に【比企谷みほ流】は無い。何が無いって西住流を名乗るだけなら西住流本家本元さんに訴えられるくらいで済むだろうが、比企谷みほ流とか名乗った日には西住流本家本元さんは確実に戦車でなだれ込んで来るだろう。…もちろん俺の所に。

 

あのかーちゃんを筆頭にまほさんとか菊代さんとか、戦車大隊組んでやって来そう、やだ…西住流超怖い。

 

「だから困ってるんですよ、ちょっと言いにくいなーって」

 

「人の命がかかっている事を言いにくい、の一言で済ますの止めてくんない?」

 

「えーと…あ!じゃあ西企谷流とか、比企住流なんかはどうですか?」

 

「どうですか?って、なにその自信満々な顔からくる糞みたいなネーミング、だから比企谷流止めろ」

 

「え?嫌ですけど…」

 

何?この子の悪意が全く感じられない純粋な瞳から繰り出してくる悪意しか感じられない言葉は。

 

「だって、これなら比企谷先輩が戦車道止めちゃっても、先輩が私達と戦車道をやっていたってわかるじゃないですか?」

 

「………」

 

澤が、いや、この場合は一年生チームの誰かでも。この先有名な選手となって比企谷流を名乗る。

 

それはきっと、戦車道から遠退いた俺の耳にも聞こえてくる事があるんだろうか。…確実に身悶えするんだが。

 

「…じゃあ俺が戦車道続けるって言ったら?」

 

「そりゃもちろん外しますよ、言いにくいし…あんまり格好よくないかなぁって」

 

正直すぎる…。なんでだよ、字面だけ見たら超格好良いだろ比企谷流、絶対名乗って欲しくはないんだけど。

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