劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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まさかのオリキャラ登場。とはいえこれはさすがに許して下さい…。人員的に仕方なかったんです。


どこまでも、ローズヒップは駆け抜ける。

「ちょっと、いきなり来て何言ってるのよ!!」

 

突然のローズヒップの襲来にカチューシャさんが慌てて怒鳴った、俺も状況がいまいち掴めない。

 

どういう事?と訴えるようにダージリンさんを見ると、ダージリンさんは涼しい顔のまま、優雅に紅茶カップを置く。

 

「どういう事かしら、ローズヒップ?」

 

あ、これ分かってないやつだわ…、アッサムさんは頭を抱えているしペコも苦笑いを浮かべている。

 

この場でニコニコなのは元凶であるローズヒップくらいである。なにこの一仕事やりきりましたわー!!って表情。

 

「はい、ダージリン様!マックスさんが私達のチームになると聞いたので、早速クルセイダーをカスタマイズしたんでございますの!!」

 

判断が早い…!てか、早すぎである。この子、戦車戦以外でも行動力の化身なの?

 

「まだマックスさんがクルセイダーに乗ると決まった訳ではありませんよ…、ローズヒップ」

 

アッサムさんがため息をつきつつ、ローズヒップを宥めた。あー…この人も苦労してるんだろなぁ。

 

「え?ですが前回大洗と試合した時は私のクルセイダーに…」

 

「それは前の試合の話です!だいたいあなたは試合に参加した訳ではないでしょう!!」

 

確かに前に大洗と聖グロリアーナで練習試合をした時、俺はクルセイダーに乗る事になった。

 

しかしそれもアッサムさんの言う通り、練習試合を近場で観戦する為に聖グロリアーナが観戦用に用意してくれたものだ。クルセイダーの機動力なら試合会場のあちこちを駆け回るのにも向いている。

 

つまり直接試合に参加した訳ではない。…邪魔はしたけど。

 

「えぇ!?そうなのでございますか、私てっきり操縦手になるかと思って…」

 

だがローズヒップはそんな事考えてもなかったのか…。え?じゃあ何この子、俺が自分の戦車に乗るって思ってすぐに戦車カスタマイズしてきたの?ちょっとそれ可愛くない?

 

「ローズヒップさんが操縦手用のカスタマイズというと…アレですよね?」

 

「えぇ、アレね」

 

「アレですね」

 

「いや、アレってなんですか?」

 

なにそれ気になっちゃうんだけど…、この三人が頭を抱えるとかよっぽどのアレな気がしてならない。

 

「…そうね、確かに今回マックスが乗るのなら、クルセイダーが相応しいのかもしれないわね」

 

「いや、だからアレってなんですか?」

 

「いいんですか?ダージリン様」

 

スルー、まさかの徹底的スルーときた。いや、戦車で川越えとかチャレンジしちゃう奴のカスタマイズとか想像できてしまうけど…。

 

「大洗の町を彼女と走るのは慣れたものでしょう?」

 

「…むしろトラウマがよみがえるまであるんですが?」

 

いや、本当に苦い思い出がよみがえってくるんで、止めてくれませんかね?

 

あんこう音頭とか、あんこう音頭とか。…後、反則に走っちゃった事とかね。

 

「えぇ、だからそれも含めて相応しいと思ったのだけど。違うかしら?」

 

…本当、この人、俺の事よくわかってらっしゃる。そんな風に言われたらどうにも断りきれない。

 

あの練習試合で、砲弾も積んでいない試合観戦用として用意されていたクルセイダー。やれなかった事はいろいろあるし、やらかした事もいろいろある。

 

今回、そのクルセイダーに乗って試合に参加するとなれば…確かに、これ以上に相応しい戦車はないといえるだろう。

 

「えぇっと…つまり、どういう事なんですの?」

 

「マックスがあなたのクルセイダーに乗るという事よ。もちろん、彼がよければの話だけど」

 

ダージリンさんがチラリと俺を見る。答えなんてわかっているだろうに、本当ズルいよなぁ…。

 

「…ローズヒップ、クルセイダーの操縦、任せていいか?」

 

まぁこのまま聖グロリアーナとプラウダ、どっちの戦車に乗るかで揉め続けるとイギリス戦車とロシア戦車、どっちが好きか問題まで発展しそうだったし、ドイツ戦車が好きとか言い出したらそれこそ粛正されかねない。

 

そう考えると、ここでのローズヒップの登場は渡りに船とも言える。乗るしかない、この…ビッグウェーブに!!

 

「やったでございますわー!お任せくださいませ!このローズヒップ、必ずや大洗の町を全力でぶっちぎって差し上げますわよ!!」

 

「いや、ぶっちぎらんで良いから…」

 

なんかすっごい嬉しそうにしてるんだけど、大丈夫かな?…この子が車長の時でさえあの暴走っぷりだったクルセイダーなのに操縦手やらせても。

 

「ふふっ、今回はチェンジとは言わないのね」

 

「もう若干、後悔気味ですけどね…」

 

むしろご指名しちゃってますからね…。てか、本当はわかってて言ってるでしょ?

 

「ローズヒップを上手く乗りこなしなさい、あの子なら必ずあなたの力になるわ」

 

乗りこなす(意味深)。と、いうより、ダージリンさんがここまで言うくらいにローズヒップの実力を認めているという事だろう。

 

…操縦手の腕前を生かすのも車長の実力が試される訳で、これは暗に俺の力を試されているとも言える。

 

うーん、もしかしたら結局、最初から全てこの人の手の平の上だったのでは?ダージリンさんはお釈迦様だった?

 

「ちょっと!何勝手に決めてるのよ、カチューシャは納得してないんだから!!」

 

だってほら、いつの間にかプラウダ側の意見は一切遮断して、俺は聖グロリアーナのクルセイダーに乗る事になってるし…。

 

まぁプラウダ側はローズヒップの登場と、その勢いに完全に不意をつかれた感じにはなったんだろう、ここでカチューシャさんが納得しないのも頷ける。ずいぶんご立腹だ。

 

「残念ねカチューシャ、クルセイダーはもう操縦をローズヒップ用にカスタマイズされているらしいわ」

 

「はぁ?そんなの関係ないわ、別にその子じゃなきゃ操縦出来ないなんて事はないんだし」

 

「………」

 

「…え?そ、そうなの?大丈夫なの…それ?」

 

「えぇ、レギュレーションには問題ありませんのでご心配なく」

 

「…レギュレーション以外には問題ありそうな含み止めてくれません?」

 

そのクルセイダーに乗る人がここに居るんですけどー!ちょっとー!?

 

…とはいえ、今さらクルセイダーに乗らないとか言い出すと話はまた振り出しに戻るだけだし、ここはカチューシャさんを納得させるしかない。

 

さて、どうしたもんかと考えて…この駄々っ子隊長を説得できるのなんてノンナさんくらいなのでは?

 

救援を求めてノンナさんをチラリと見ると、ギラリと返された。チラリじゃギラリにはとても勝てない。

 

え?カチューシャさんの機嫌が悪いの俺のせいなの?もっと他にそのギラリを送る人居ますよ?今涼しげな表情で紅茶飲んでますけどね…。

 

「あ」

 

…そういえば、と一つ思い付く。これならカチューシャさんも納得するだろうか?いや、なんなら西住にも通用し得るかもしれない。

 

「カチューシャさん、ちょっと」

 

「…なによ?」

 

すっかり不機嫌になったカチューシャさんに、俺は思い付いた一つの案を伝える為に近付いた。

 

「そんなニヤニヤした顔でカチューシャに近付いて、何をするつもりですか?」

 

横からものっそいブリザードが唱えられた…ブリザードってかもうザラキである。ブリザード=ザラキはロンダルキア界隈ではもはや常識である。

 

なるほど…これがブリザードのノンナの異名の意味だろう。違うか?まぁ違うだろうな。

 

「ーーー」

 

そして横からクラーラがなんかめっちゃロシア語で話してる。こっちは何を言ってるかわからなくて単純に怖いからたぶんザラキかな?

 

「ーーー」

 

そんなクラーラにノンナさんがロシア語でなにやら答えている、そんなのもうザラキーマじゃん…。

 

「あなた達、ちゃんと日本語で話なさいよ!!」

 

うーん、しかしそんなにニヤついていたんだろうか…、確かに俺がニヤニヤしながらカチューシャさんに近付く絵面はなかなか犯罪的なものがある。

 

「…カチューシャさんに一つ提案があるんですが」

 

とはいえせっかく思い付いた一石二鳥の作戦だ、顔が多少にやけてしまうのも無理はない。…多少はね?

 

「仕方ないわね、聞いてあげるわ」

 

カチューシャさんが方耳をこちらに近付ける。…いや、わざわざ耳打ちする必要はないのでは?

 

「ほ、ほら、早くしなさい!!」

 

「…あまりカチューシャを待たせないように」

 

えー…そういう流れになるのこれ?しかし、ノンナさんとクラーラの行動がよくわからんのだが。

 

「いったい、何を思い付いたんでしょう?」

 

「さぁ?でも安心しなさい、少なくとも反則に関わる事ではないと思うから」

 

グッサリとダージリンさんの言葉が突き刺さる。あいったー…。えぇもう、その節はどうもとしか言えねぇ。

 

「それは全然心配してませんよ、ダージリン様」

 

「えぇ、今の彼ならもう反則を取られるような手段は打たないでしょう」

 

ペコとアッサムさんがフォローを入れてくれる。やだ、そんなにも信用されてるなんて…、ちょっと感激。

 

「そんなすぐにわかってしまう下手な手段、彼が打つわけありませんもの」

 

「やるなら反則スレスレ…ですもんね?」

 

「だそうよ?マックス」

 

「信用して貰えてなによりです…」

 

…ところで、信頼の方はされてるんですかね?公主。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「お腹が空きましたわ!!」

 

「え?あ…そう?」

 

戦場はゴルフ場から市街地へと移り、逃げる大洗・知波単の戦車を追いかける鬼ごっこが続いている。

 

さすがにあの集中砲火を受けてこちらが無傷という事はなく、マチルダが2両、バンカー内で沈められた。

 

だが代わりに突撃してきた知波単の戦車をこちらが撃破した分を考えると、戦況はまだこちらに有利と言える。

 

問題はこの追いかけっこだ。大洗・知波単の戦車は市街のいりくんだ道を、いくつかの小隊に別れて別々に分散していっている。

 

狙いは恐らく、こちらの戦力の分断にあるんだろう。そのやり口は決勝戦の黒森峰戦の時と似ている。具体的にいえばバレー部の八九式がこっちに砲撃で挑発してきてる。スポーツマンシップとは?

 

『黒森峰ならともかく、その手にはのりませんわ』

 

…ここでわざわざ黒森峰の名前を出す必要あったんですかねぇ?まぁ一緒に決勝戦見てたし、言いたい事はいろいろあったんだろうが。

 

そんな訳でこっちは全車であんこうチーム、Ⅳ号フラッグ車の一点狙いだ。今なら相手がわざわざ戦力を分散させてくれている。

 

…足の速いクルセイダーなら、先行してⅣ号の前に回り込む事だってできる。

 

「マックスさん、私、お腹が空きましたの!!」

 

「いや、聞こえてたから…、今試合中でしょ?我慢なさい」

 

それも大事な場面なんだから。だいたい君、試合前に何か食べてなかった?もうお腹減ってきてるとか燃費悪くない?

 

「お言葉ですがマックスさん、お腹が減ると操縦に集中できなくなるんでございましてよ?」

 

そんな何を当たり前な事を言わせるのか?みたいな顔で見られても困るんだが。

 

「いま戦車止めてご飯食べる訳にもいかねぇだろ、もう少し我慢しろ」

 

モグモグタイムが戦車道で許されているのは知っているが、さすがにこの局面で戦列は離れて「ちょっとご飯食べに行きまーす」とか言えない。後で何を言われるかわかったもんじゃないし。

 

「あ、あの、そこにローズヒップさん用のお菓子が置いてありますが」

 

どうしたもんかと思っていると砲手を担当している子が教えてくれる。え?そりゃ居るよ、さすがに俺とローズヒップだけで戦車を動かしている訳じゃないんだし。

 

名前は…まぁ、アレですよ、大人の事情というか。そこはね?ほら、察しよ?

 

とにかく、こんな急増チームの砲手担当になってしまった今試合一番の犠牲者ともいえる砲手子ちゃんだ。はいみんな拍手。

 

クルセイダーMarkⅢは三人乗りだ、操縦をローズヒップ、砲手にこの砲手子ちゃん、車長兼装填手兼通信手が俺である。

 

…いや、ちょっと俺の負担大きくないですか?そりゃ戦車を動かすローズヒップと、砲撃に専任させるべき砲手に他の仕事兼任させるのはアレですけど。

 

クルセイダーって元々は五人乗りの予定だったんだけどなぁ…。いろいろあって最終的に6ポンド砲搭載すると装填手の入るスペースなくなっちゃったのだ。イギリス戦車って…。

 

「お菓子って、お前戦車にそんなの乗せてんのか…」

 

「お紅茶には必須でございますわ!!」

 

「だいたい、操縦してるならどっちにしろ食えないだろ」

 

普段は車長だから問題ないんだろうが今は操縦手なんだし、ちゃんと操縦桿握っててね?本当に頼むから…。

 

「マックスさんが食べさせてくれれば、問題ございませんわ!!」

 

「…えぇ?」

 

見るとローズヒップがお口を大きく開けて「あーん」としている、え?やらなきゃ駄目なの?これ。

 

「えーと…」

 

「わ!わ!あーんなんて…、私初めてみます」

 

助けを求めて砲手子ちゃんを見るとお嬢様学校育ちよろしく、興味津々ドッキドキと言いたげに顔を真っ赤にしている。うーん、この子もこの子で大丈夫かこれ?

 

もちろん、俺はあんまり大丈夫じゃないんで、そこん所よろしくです。

 

ただまぁ、可愛いにも二種類あるとはよく聞くし、ローズヒップの場合どう考えてもそっち方面なんだよなぁ…。

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