劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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モブで男子キャラを書くとどうしても戸部っちがチラついてしまう辺り、やっぱり良いキャラクターしてますよね、彼。

正直、俺ガイル本編でも葉山と戸部と八幡の三人で仲良く(悪く)なんか単純にワイワイやってる話とか見たいと思っているのは自分だけでしょうか?いや、違うはずだ!!

やはり時代ははやはち…腐腐腐腐腐。


実際の所、男の子はこういうのが好きである。

キャンプのまち、大洗。

 

キャンプと聞くとおよそ多くの者は山を想像するだろうが海に面したここ、大洗町にも有名なキャンプスポットはもちろんあるし、なんならそれを目当てに訪れる観光客も多い。

 

森がメインの大洗キャンプ場、海がメインのサンビーチキャンプ場、湖畔がメインの夕日の郷、と三者三様テーマの分けられたキャンプ場があるので幅広いニーズにも対応できる。

 

オーソドックスに森の中でキャンプをしたいなら大洗へ、広大な海を眺めながらキャンプをしたいなら大洗へ、湖畔で静かにキャンプをしたいなら大洗へ。やだ…この町、ちょっと最強すぎません?

 

そんなキャンパーにとって夢の聖地ともいえるのが大洗だ。これはもう、ゆるゆるしたあのキャンプアニメともコラボして聖地となり、巡礼者がやってくるのでは?

 

え?もうすでに別アニメとコラボしてる?戦車アニメ?なんの繋がりがあれば町と戦車がコラボするんですか?(正論)。

 

と、別に大使として任命された訳でもない大洗観光PRはここまでとしても、キャンプ地と大洗の親和性は十分に伝わったのではないだろうか。

 

「さぁ!張り切っていこー!!」

 

俺の隣で気合いを入れるのは俺なんかよりよっぽど大洗観光大使としてPRに向いてる気がする武部だ。いや、武部ってよりあんこうチームがね…、駅前で【ようこそ!大洗町へ!!】みたいな看板持ってそう。

 

「ここら辺が一番テント組が多いな」

 

「いわゆる人気スポットってやつね」

 

テント組の多くが生活するエリアという事であちこちで貼られたテントで生活してる生徒達が見える。

 

キャンプ場所としても広く、近くにはトイレ施設や水道と一通り必要なものがあるので人気があるのも頷ける。

 

「ほーん…っても、お前らあんこうチームはここは止めたんだな」

 

「私達のはゆかりんのチョイスした場所だからね」

 

そういえばウサギチームのキャンプ場所もここからは少し離れていたがあれも秋山チョイスだった辺り、こういう人気のありそうな場所はあえて避けたのだろうか。

 

まぁ人が多いという事はそれだけ混むという事で、結局はトイレだったり水道施設だったりはどうしても待ち時間が生まれてくる。

 

なんかあれだな、「ここも悪くはないんですが…」のやんわりとした否定から長々と講釈を流す秋山が想像できてしまう。

 

「しかしこう見るとテントで生活してる奴らも結構多いよな…」

 

結構というか、かなり多い。いや、多い分には部屋の足りてないこの仮校舎住まいではありがたいまであるが、みんなそんなにキャンプしたかったの?

 

「…気持ちはわかる、かな」

 

「いや、わざわざ苦労して外で生活せんでも良いだろ」

 

「その苦労も思い出っていうか、だってほら…最後かもしれないじゃない」

 

「…まぁ、そうだな」

 

今の生活はあくまでも転校先が振り分けられるまでの一時的なものだ、そしてその転校先の選択肢は俺達には無い。

 

見知った友人とバラバラの学校に編入される可能性だってある。いや、どちらかというとバラバラになる可能性の方が高いくらいだ。

 

そのカウントダウンはもう始まっているし、なんならこの生活が始まってからしばらく経つ事を考えれば明日にでも転校先が決まる可能性もある。

 

だからこの仮住まいの短い時間はそんな友人達と過ごす最後の時間になる。その時間に、キャンプという普段とは違う生活を選択するのも…まぁ、わからんでもない。

 

そう考えると先ほどのカバチームが夜通し歴史について語っていたのも残された時間を惜しんでの事かもしれない。…いや、違うか、あいつらの場合それとは関係無しでだいたいいつも夜通し歴史について語り明かしてそうだし。

 

「あれ、沙織さん?」

 

「どうしたの?こんな所に」

 

「うん、生徒会から頼まれたんだけどね」

 

だったら、あんこうチームも…きっと。

 

「ほら比企谷」

 

「…ん」

 

呼ばれて見ると武部が少し不機嫌そうに俺の方を振り返って手招きする。

 

「仕事仕事」

 

…手招きされてのこのこと行き着く先が仕事って地獄かな?いや、ここには仕事で来てるんだし、端から見ればポツンと突っ立っていた俺はサボりにはなるんだろうが。

 

「えーと…」

 

武部の手招きに呼ばれては見たものの、先ほど武部と会話をしていた女子生徒も俺の登場に困惑している様子だ。なんかごめんね、俺で。

 

「あぁ、生徒会の人」

 

「違う」

 

「ひっ!!」

 

いや、なんで怯えられたの?いや、いきなり生徒会呼ばわれされれば誰だって多少はイラっとはくるよね?うちの生徒会アレだから。

 

「…違うが、生徒会案件ではある。なんか生活に不備とか無いか?」

 

「えと、そうですね…」

 

戸惑いながらも思い出すように答えてくれる女子生徒に申し訳なく思いつつ、なんなら武部がそのまま対応してれば良くね?と思い至る。

 

その方がこの女子生徒は話しやすいし、俺は仕事しなくて済むし、タカキも頑張ってたし、正にウィンウィンウィンじゃね?なんかもう、タカキに全部頑張って貰うとかそんな形ではどうですかね?

 

そう思い武部の方を見る。

 

「あれ?武部ちゃんじゃん、おっひさー!!」

 

「何?何か用?もしかして遊びに来たの?」

 

何か男子生徒が武部に声をかけている。知り合い…か。いや、そりゃ顔の広い武部だ、男子の知ってる顔もそりゃ居るだろう。

 

「やっぱり不備というと、虫ですかね」

 

「あぁ、そりゃ大問題だな」

 

「夏っていうのもあるんでしょうが、とにかく数が多くて…」

 

「夏は特に湧くからな、あとクリスマス前とか、春先の駅前とかもとにかく鬱陶しい」

 

「夜中だと鳴き声とかもうるさくて…」

 

「あいつらウェイウェイウェイウェイ鳴くからなぁ」

 

「あの…なんの話ですか?」

 

いや、だから虫の話だろ。虫が鳴くのはメスを縄張りに引き寄せる為でもあるので、みんなもウェイウェイゼミには気を付けようね!!

 

「とりあえず戦車借りるか?8両までなら用意できるが」

 

「え?いや、それは大げさなのでは…?」

 

いやほら、ウェイウェイゼミって春先から夏、秋から冬に向けてよく鳴くから早めに対策した方がね…ほぼ一年中鳴いてるんだよなぁ。舐めんな、本物のセミは成虫してからの一夏に全てを賭けてんだぞ。

 

セミの一生といえば長きを地中で過ごし、成虫後は一週間と言われている。一週間で恋人見付けて子孫残すとか婚活のスペシャリストなのでは?

 

「武部ちゃんもしかして暇なの?」

 

「だったらせっかく来たんだし、遊んでかない?」

 

「ごめんね、今日は生徒会の仕事で来たんだ」

 

生徒会と聞いて二人の男子生徒の目の色が変わる、うん、その気持ちわかるよ、基本的に関わりたくないもんね…。

 

「比企谷、こっちも」

 

「あー…そうだな」

 

呼ばれて男子生徒の所へ、いきなり出てきた俺に明らかに戸惑いを見せている二人は俺と武部を交互に見ると。

 

「あー、もしかして生徒会系の人?」

 

「うん、それ系の人」

 

「何系だよ…何?二郎系にインスパイアでもされたの?」

 

うちの会長なら笑顔で「シゴトマシマシナカミコイメカラメ」で注文してくるんだよなぁ…。

 

「二郎…って、誰?」

 

武部がはてなと首を傾げる。いや、二郎が誰かは知らないけど、何か?と聞かれればその道のパイオニアとしては答えねばなるまい。

 

俺はわざとらしく喉を鳴らして調子を確かめる。

 

「こんな言葉を知っていて?ラーメン二郎はラーメンではない、二郎という食べ物だ、と」

 

「あーラーメンね、比企谷本当好きよね…」

 

「話聞いてた?ラーメンじゃないっつったじゃん…」

 

ラーメンというジャンルがその垣根を飛び越えて新たな食べ物を作った名言だよ?これにはダージリンさんもニッコリだね!!

 

「でもラーメンばっかり食べてちゃ駄目だからね、野菜もちゃんと取らないと」

 

「そこは心配いらん、ちゃんとヤサイマシマシだから」

 

器の中に麺、スープ、チャーシュー、これでもかと盛られた野菜、このバランスの良さは正に神バランス。…まぁ多少?アブラでコイメでニンニクだったりはするけどね。多少はね?

 

「それな」

 

「あとニンニクアブラカラメも追加な」

 

「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメは基本セットだろ」

 

さすが二郎系ラーメン、男子高校生にとっては最早共通言語といっても違いない。

 

「いや、何の呪文なのよ…」

 

そりゃ二郎系ラーメンを召還する呪文に決まっている。なんだー話してみると案外話のわかる奴らだなー。若干ウザイけど。

 

「でもそれってラーメンの上に野菜が乗っかってるのよね?ちゃんとバランス良く食べないと…」

 

「その為に天地返しという技があってだな…」

 

「今度はなんか必殺技っぽいの出てきた!?」

 

「それな」

 

「俺はやらないかなー、なんか野菜から先に食いたいっつーか」

 

まぁ天地返しにはメリットもデメリットもあるし、先にさっぱりした野菜(アブラカラメ)で胃袋を慣らしてから麺に挑む気持ちもわかる。

 

「なんか呪文だったり技だったり、男の子ってそういうの好きよね」

 

「いや、そこ特に男の子関係ないし…」

 

あと男の子は基本的に「男の子ってそういうの好きだよね」っていう言葉の響きがなんかちょっと好きなんでドキッとしてしまうのである。…え?俺だけかな?みんなも好きでしょ?

 

「なんか話してたら食いたくなってきたなー、この後食べに行くか?」

 

「だな、おっと…武部ちゃん」

 

「え?何?」

 

「おめでとさん」

 

「応援してんぜ」

 

二人の男子学生はなにやら良い笑顔で親指をグッと立ててサムズアップしてきた。…うーん、ウザイ。

 

「うん、沙織さん…おめでとう」

 

「おめでとう」

 

後ろでさっきまで話をしていた女子生徒も良い笑顔で祝福の言葉をくれる。…心無しかなんかちょっと目元に涙が見えるんだけど?

 

「えーと…なんかよくわかんないんだけど、ありがとう」

 

…何これ?人類補完計画ごっこ?

 

「ねぇ、比企谷…」

 

女子生徒達とも別れて何やら機嫌の良さそうな武部はちょんちょんと俺の服の袖を引っ張ってくる。

 

「私達、どういう風に見られていたのかな?」

 

「…そりゃあれだろ、仲の良い奴と話してたと思ってたらいきなり知らない男にバトンタッチされたんだし、壺でも買わされるとか思われてたんじゃないか?」

 

「そこだけ聞くと完全に詐欺師じゃないの…」

 

いや、実際の所詐欺に近い。例えば俺が一人でやってきたなら生徒会の仕事とはいえ…いや、むしろ生徒会絡みとなれば余計警戒されそうなものだが、そこに知り合いの武部をワンクッション挟む事で相手に警戒心を持たせない事ができる。

 

宗教の勧誘とかでの常套手段だ、久しぶりに友人に呼び出されての世間話をしていたと思ったら「ねぇ…ところであなた、今幸せ?」とか聞かれちゃうやつ。

 

あとはまぁ…他でいうなら、デート商法か。

 

「まぁ美人局に近いものはあるな…」

 

「美人って…やだなー、もう!!」

 

やだもー、と武部は嬉しそうに手をぶんぶんと振っている。ちょっと?つつもたせって読み方知ってる?

 

「女性にホイホイ付いてくと後で彼氏が出てきて痛い目見ちゃうから気を付けろ、ってのはうちの親父もよく言ってたぞ。比企谷家の家訓だな」

 

「比企谷のお父さんになにがあったのよ…」

 

なにかあったんだろなぁ…。比企谷家が今現在平和に…いや、学園艦解体で職に溢れる可能性こそあるが、まぁ平穏に暮らせて何よりだ。

 

「彼氏…、でもそっかー、えへへ…困っちゃったなぁ」

 

さして困ってる様子も見せずに武部はやだもーと照れている。ちなみにやだもーなんて言葉は一言も言っていないんだよなぁ…。やだもー。

 

「いや、マジで変に噂にでもなったら困るだろ…」

 

俺はともかく、交遊関係の広い武部に妙な噂がたつのは避けたい所なんだが…。

 

「…誰が困るの?」

 

だが、武部はそんな俺の気持ちを見透かすかのようにじっと見つめてそう答える。

 

「…誰がって、そりゃ」

 

その先の言葉が出てこず、答えの代わりと言うように武部を見る。それが通じた所で、彼女の返答はわかっているというのに。

 

だから。これはきっと、俺の問題だ。

 

「いやほら、お前も変な噂話が出てきたら…男子にモテなくなるだろうし…」

 

「うーん…それは確かに困っちゃうかも」

 

誤魔化すように視線を落とした俺の言葉に、彼女は少し寂しそうに照れ笑いを浮かべた。

 

「ねぇ、比企谷…そろそろお昼にしない?」

 

「ん?あぁ…まぁ良い時間ではあるな」

 

スマホの時間を見るとちょうど昼時だ、今日は朝から働いていたのでお腹もちょうどすいてきた頃合いでもある。

 

え?朝から今の時間までずっと働いてたの?どんなブラック企業でも中休みの一つくらいは挟むもんでしょうに…。

 

「じ、じゃあここら辺でちょっとお昼休憩にしない?」

 

それはもちろん武部も同じ事で、朝からずっと付き合わせていて正直申し訳ないと思ってしまう。

 

「そうだな…じゃあ一時間後くらいにまたここに集合する感じで、一旦昼休憩にするか」

 

適度な息抜きこそが仕事の長続きのコツである。時間をかけてダラダラ仕事するよりは一度リフレッシュして再度集中した方が仕事の能率はアップするのだ。企業さん方、聞いてる?

 

さーてお昼なに食べよっかなー。さっき話に出てきた手前大本命はやはり二郎系だが、さすがにあれはニンニク臭が強いので却下せざるをえない。

 

となるとやはりサイゼだな。この昼はオシャレにイタリアンレストランと洒落込むぜ!!もし時間が余っても間違い探しで時間潰しも出来るとか最強か?

 

…これなら、人が多いこの場所でも自然と解散して、自然と合流できる流れを上手く作れるだろう。

 

「…はい、ストップ」

 

だが、そんな俺の逃げの一手を逃さないかのように、あるいは最初から予想されていたかのように、武部は俺の手を取った。

 

「…その、お昼なんだけど、比企谷の分も作って来たから」

 

そう言って朝からずっと持っていたバスケットをずぃっと俺の前に差し出してくる。

 

「…へい彼女、一緒にお昼…どう?」

 

そのバスケットの横からチラリと覗き込むかのように顔を出した武部は恥ずかしそうに頬を赤くさせ、そう呟いた。

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