劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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そういえば原作のまほお姉ちゃんはなんであのタイミングで実家に居たのかな?って考えたら西住流の実家って黒森峰の中にある可能性もあるかぁ…と書いてて思ったんですが全力で忘れる事にしました。


ふとした瞬間、西住 まほはその言葉を口にする。

「うーん…」

 

スマホに文字を打ち込んで完成された文面を眺め、消していく。

 

もう一度文字を入力。…いや、ナイナイとまた消去と。

 

「比企谷君はさっきから何をやってるの?」

 

先ほどから何度も続けていたその作業に蝶野教官が気にかけるのも仕方ないとは思うがここはそっとして欲しい。思春期男子にはいろいろと思うところがあるのだ。

 

「いやほら、今から西住の実家に行く訳ですよね…」

 

「あーそういえば西住ちゃん、今実家に帰ってるんだっけ?」

 

「あらそうなの、みほさん、ご実家に帰られたのね」

 

二人して実家実家と連呼しないで欲しい、なんか「実家に帰らせていただきます」されたみたいじゃん。いや、実家に帰ってるんだけど。

 

ちなみに俺の実家は学園艦内なので大洗学園解体の際にはまとめて取り潰しが決定されるだろう。おまけ感覚で苦労してローンを払って来たマイホームを取り潰される親父の心境やいかに?

 

「って事は今ちょうど実家に居るかもしれませんし、一応連絡くらいした方がいいかと」

 

じゃないと西住からすれば唐突に俺が実家に来た感じだし、ばったり鉢合わせなんかすれば変な空気になりそうではある。

 

「ならさっさと送っちゃえばいいじゃん」

 

「いや、なんて送るんですこれ?」

 

西住家を訪れる理由は文科省が進めるプロリーグ設立の邪魔。設立委員会の委員長へと推薦を受けている西住流家元、西住 しほさんを説得してこちらの味方に付ける為だ。

 

大洗学園廃校を阻止する為ではあるが、この事はまだ一般生徒はもちろん、戦車道関係者にも教えていない、生徒会と俺が独自で動いている事だ。

 

そもそも実現できるかも難しい話に、変に期待を持たせてぬか喜びをさせる訳にはいかない。

 

そんなのは最初の一回、全国大会優勝からの一連の流れでもう沢山だ。

 

「ご両親にご挨拶に伺います、とか?」

 

「言い方ぁ…」

 

いや、伺いますけどね、ご挨拶に。ただそんな文面のメッセージ突然送られた西住からすれば恐怖しかないでしょ?

 

「そもそも西住がもう実家から帰ってるなら無駄に心配させるだけになりますし、まだ着いてなくても不安にはさせるでしょうし」

 

「過保護だねぇ…」

 

「青春してるのね!いいじゃないの!!」

 

アオハルかよ、いや、親元のご実家に挨拶に行く青春ラブコメって…あぁ、結構あるよね。

 

「じゃあそんな比企谷君に私からアドバイスを送るわ」

 

「なんですか?」

 

「メッセージなんてバーッと書いてザッと送っちゃえばいいのよ!!」

 

「雑ぅ…」

 

是非とも今後の【茨城県横断お悩み相談メール】の回答はこの人に一任したい。人生の先輩として悩める後輩の悩みはバーッとザックリ、ガガーっと解決してくれるだろう。

 

「…そういえば蝶野教官はモテるんでしたっけ?」

 

「撃破率は120%よ!!」

 

「…モテるんですよね?」

 

「120%よ!!」

 

何この人、戸愚呂(弟)なの?ビルくらいなら3分で10式戦車使って更地にしちゃいそうだし、実質戸愚呂(弟)。

 

「ところで比企谷君、みほさんもそうだけど…お姉さんの方はいいのかしら?」

 

なんか話をはぐらかされた感が強いんですが…。お姉さんの方?あぁ、姉住さんの事か。

 

確かにあの人も西住流なんだし、今回の一件とは無関係の話ではないんだが。

 

「いや、あの人黒森峰に居るんですし、連絡した所でどうにもならないでしょう」

 

もう夏休みはとっくに終わっている。大洗学園は廃校問題で学園艦から追い出されたので半ば夏休みの延長的にはなっているが他所の学園艦はとっくに新学期を迎えているだろう。

 

「ふふっ、連絡する手段がない、とは言わないのね?」

 

…しまった、なんか上手く誘導された気がする。

 

「…まぁ、いろいろありましたから」

 

「比企谷ちゃん、ここ最近じゃ一気に知り合いが増えたんじゃない?」

 

「そーですね、最近になってようやくスマホってゲーム機じゃないなって事くらい気付けましたよ」

 

みんなは知ってたかい?スマホって目覚まし機能付いた動画再生ゲーム機じゃないんだって!おまけで他の人と電話やメッセージのやり取りができる機能があるんだよ!!

 

いや、それでも実際、電話やメッセージのやり取りの方がおまけ感があるのが今のスマホの凄い所なんだが。

 

「しかもアドレスの大半は女の子のだしね」

 

「あぁ、それは撃破されちゃうわね。撃破率でいうなら120%はあるかしら」

 

「それもうただの死刑宣告なのでは…?」

 

あと、この人の20%上乗せのこだわりはなんなのだろうか…。ただわかる、いいよね…120%って語感。

 

「じゃあそんな比企谷君に私からアドバイスを送るわ」

 

「またですか…」

 

まぁ、一応聞くだけ聞いときますけどね…。ガィーンッでズババーンなアドバイス(笑)ってやつを。

 

「それはあなたがこれまでの戦車道を通じて得た大切な繋がりよ。大事になさい、その繋がりはきっとあなたを、あなた達を助けてくれるわ」

 

「…はい」

 

ーーーとはいえ、やはりこの人は人生の先輩なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…暑い」

 

そしてまさかの放置、放置スタートである。少女は放置すれば強くなるって動画合間の糞CMが言ってたけど少年は放置された所で強くもなれないんだが。

 

『西住流家元との面談の約束を取り付けるからちょっと待ってね』とは蝶野教官の言葉。まぁこれに関しては戦車道連盟の本部から直接ここに来た流れな訳で、そもそもアポイントを取っていないこちらが悪い。

 

大洗の代表として会長も蝶野教官に付き添い、そうなると俺だが、もちろんやることもなく、こうして放置少年をやっている。

 

せっかくの熊本なのだが、土地勘なんてあるはずもない。迷子になるのもあれなので近くの公園のベンチに座り、ただ会長達からの報告を待つばかりだ。

 

「…暑い」

 

ただ、まぁ…暑いよね。夏だし、一応日陰にベンチがあったのは助かったが暑いもんは暑い。

 

「わんっ!!」

 

これだけ暑いというのに、目の前では一匹の犬が元気に走り回っている、もう本当に爆走。

 

「わんっ!わんわん!!」

 

…ん?あれ?あの犬、めっちゃ長いリードに繋がれてるし、首輪はしてるんだが…飼い主は?

 

そのまま眺めていると犬は俺を見つけてか、そのまままっすぐにこちらへ向かうと目の前できちんとお座りをしてくれた。

 

「へっへっへっ…」

 

『ほら、頭を撫でるなら今ですぜ旦那!!』とでも言いたげな瞳で見つめられ、こうしてスタンバイされてはこちらも撫でねば無作法というもの…。

 

「おーよしよし、飼い主どうした?」

 

ごろごろわんわんと頭を撫でると犬は気持ち良さそう目を細める。ふっ、良いハンターってのは不思議と動物に好かれるものなのさ!…人にはあんまり好かれて来なかったけど。

 

だいぶ人懐っこい犬だがリードがあるとはいえ自由にしすぎではないか?もし道路に出てトラックとか来ちゃったら八幡、異世界転生しちゃうんだが?

 

「こら、あまり遠くには行くなと言ったはずだ」

 

とか思っているとすぐに飼い主がやってきた。…はて?

 

「…比企谷か」

 

「あぁ…えと、どうも?」

 

なんと姉住さんである。私服で手にリードを持つ犬の散歩してますスタイルの姉住さんがそこに居た。

 

「…そうか、君を見つけたから普段よりはしゃいでしまったのかもな」

 

俺の姿を見た姉住さんは犬に近付くとその頭を軽く撫でる。

 

さすが姉住さん、犬の散歩スタイルでさえ絵になるくらいには格好いい。ただし、その手には犬用のおやつ骨クッキー持ってるけど。

 

「いや、そのわんちゃんとは初対面なんですが?」

 

そういえば前に西住が実家で犬を飼っている。という話は聞いていたが、まさかこのお犬様がそうだったとは。

 

「きっとみほの匂いでもしたんだろう」

 

…いや、さすがにそれはどうかと。妹さん、そんなに匂い残してますか?

 

「せっかく会ったんだ、少し話をしよう。隣、良いだろうか?」

 

「まぁ、ベンチは公共の物ですからね」

 

「相変わらずだな、君も」

 

姉住さんは俺の隣に腰かけるとごそごそと犬用のおやつクッキーを取り出す。

 

「へっへっへっ…わんっ!」

 

すると匂いに釣られたのか、西住流お犬様はするすると姉住さんの所へ。なんか西住流で飼ってるとは思えない愛嬌があるな、こいつ。

 

「…驚かないんですね、俺がここに居る事」

 

「エリカが君の所へ向かったのだろう?なら、西住の家に来る事もあるだろう」

 

「へぇへぇ、そうですか。夜中に他所様の学校に夜襲かけない常識くらいは教えといて欲しかったですけどね」

 

…なんかあの現副隊長さんのおかげみたいに聞こえるのがシャクなのでついつい軽口で返してしまう。

 

「その様子なら、エリカは上手くやってくれたようだな」

 

あー聞こえない聞こえないっと。なんで姉住さん、ちょっとほっこりした表情になってるんですかね?

 

「てか、俺は普通に驚いたんですが、なんでここに居るんです?学校は?」

 

さっさと話題を変えるべく当然の疑問を問いかける。さっきも言ったが他所の学園艦では普通に新学期が始まってる頃合いなんですが?

 

「みほから家に帰る必要がある、と連絡を貰った」

 

「あぁ、転校手続きの書類に親の判子いりますからね」

 

…てか、そもそもの話だが西住は親元には連絡は入れたんだろうか?たぶん入れてないんだろうなぁ…、あの親子関係だいぶ拗れてるし。

 

「だから私も一度家に帰る事にした」

 

「わかる、超わかる」

 

妹が帰ってくるなら、兄として…いや、この人の場合姉なんだけど。学校なんて知るかって会いに帰っちゃうよね!!…まったくこのシスコンさんめ。

 

「だが、大洗の廃校が回避されれば転校手続きの書類も必要なくなるな」

 

「作っといて損は無いでしょ、現状じゃ状況は何も変わってませんし」

 

戦車道連盟は敵とは言えないが、表だって動けない事を考えるとまだ味方として動いては貰えない。

 

「状況なら変わっている、君がここに居る事だろう」

 

「…それは買いかぶりですよ」

 

「一人の伏兵が戦況を覆す事はそう珍しい事じゃない、君だってそのつもりでここに来たのだろう」

 

「まぁ、やれるだけの事はやってみますよ」

 

しかし、相変わらず例えが戦車脳だなこの人…、まぁ一周回ってわかりやすいまであるけど。

 

「…転校、か」

 

「…?」

 

ふと、姉住さんの横顔が憂いを帯びた物に見えた気がした、西住流お犬様…いや、なんかもう面倒臭いし犬住さんでいいや。その犬住さんの頭を優しく撫でるその仕草には寂しさも見える。

 

「もしそうなれば…みほは、黒森峰に戻って来るのだろうか」

 

「………」

 

ふと呟いたその一言の意味に気付いた姉住さんはすぐに気付いたようにこちらを振り向いた。

 

「…すまない、失言だった」

 

…まぁ、それだと大洗の廃校はむしろ都合が良いとまで聞こえるんだろうが。

 

「別に失言でもなんでもないでしょ。妹と同じ学校で、戦車道をまた一緒にやりたいって、それだけの話なんですから」

 

「だが、これではまるで大洗の廃校を願っているようではないか…」

 

「そう簡単に割りきれるもんじゃないでしょ、俺だって小町が天秤に乗っかったら余裕で小町選んじゃいますし」

 

「…そうだな、君はそういう人だったな」

 

あなたもね…。まぁ、なんだかんだ言って結局、お互い妹超可愛い!!って結論付くんだよね…だって小町だよ?いや、むしろB小町といえば完璧で究極のアイドルだかんね!!

 

「そういえばエリカが前に君をこう言っていたな…、シス…シスコン?というやつだろうか?」

 

それ、むしろ遠回しにあなたにも言ってるんじゃないかなぁ…。

 

「まっ、小町だって大洗の受験を望んでますし、戦車道やりたいみたいですから、大洗の廃校が回避されれば俺は両得ですけどね」

 

「…むぅ、さすがにそれはちょっとズルいな」

 

ちょっと拗ねた表情でズルいとか言っちゃう姉住さんの表情は年相応…いや、むしろそれよりも幼くさえ見えてドキリとさせられる。

 

「だが、それで良い。君がここに来たという事はお母様に用があるのだろう」

 

「文科省を相手にするにはどうしても西住流の後ろ楯が必要ですからね」

 

まぁそれくらい、察しはついてるだろう。

 

「娘の私が言うのもなんだが…お母様は手強いぞ」

 

「知ってますよ」

 

なんなら身に染みてるまである。あの人との対面はどれも身の縮む思いだった。

 

「すまない、私にも何か出来る事があればいいが…立場上そうもいかないだろう」

 

この人も西住流だ、家元であるしほさんの意見を無視して勝手に動く事は出来ないだろう。

 

「あー…じゃあ一つだけ、いいですか?」

 

「あぁ、私にできる事ならなんでも聞こう」

 

その手の発言は『ん?今なんでも』ハンターがやってくるから気を付けてね。

 

「…アイスとか売ってるとこ、知りません?」

 

いや、いい加減さすがに暑いんですよ、だんだん日陰もなくなって来てるし。

 

「わんっ!わんわん!!」

 

しかしほんっと、犬住さん元気に走り回ってんなぁ…。え?犬住さんの名前聞かないのかって?何言ってんの、犬住さんは犬住さんだよ(断言)。

 

「…そうだな、ここからなら駅の売店が一番近いだろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「お姉ちゃん…と、え?えぇえ!?は、八幡君!?」

 

「みほ」

 

「…あー、うん、ども?」

 

…ごめんね、なんかゴタゴタしててすっかり忘れてたけど、本当ごめん。

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