劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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ふと書いてて昔、オモチャの缶詰めが欲しくて銀の天使を集めていた事を思い出しました。
何枚か持っていたのは覚えてるんですが、いったいどこに消えたのか…だいたい五枚集める前に飽きるか諦めるかで集まらないんですよね。


きっとその当たり棒には、様々な意味がある。

「は、八幡君?え?なんでここに八幡君が?」

 

『なんでここに八幡君が?』とか漫画にありそうなタイトルを口にする西住だが、その疑問は至極当然のものだ。

 

久しぶりに地元に帰ったら現地に何故か同級生の男子生徒が居た。…うーん、これはサイコ味の効いたホラー。

 

「…なんでお姉ちゃんと?」

 

ん?いやまぁ、そっちも気にはなるんだろうが、なんか声のトーンがさっきの驚きと違わない?それはそれでサイコ味効いたホラー感がマシマシなんですが…。

 

「いや、まぁ…その、あれな」

 

考えてみればそもそも姉住さんは西住の帰りに合わせて帰省してる訳で、その姉住さんが居るなら西住がまだ地元に着いてないのは当然だったか。

 

しかしなんという鉢合わせ。アイスを買いに来た売店が駅前とはいえ、そんなことある?

 

さて、なんて説明したもんか…。いや、姉住さんとはたまたま、さっき偶然会っただけなんだが。

 

姉といい、妹といい、なんか西住姉妹のエンカウント率高くない?この流れだとアポなんて取らなくても母住さんに会えそうまである。…ラスボスとフィールドエンカウントとか恐ろしいんだが?

 

「みほ、心配しなくてもいい」

 

そんな俺と西住の雰囲気を察したのか、姉住さんが間に入ってくれる。さっすが隊長!頼りになるぅ!!

 

「比企谷はお母様に会いに来ただけだ」

 

しまった!この人戦車道外だとわりとド天然なポンコツ見せるんだった!!

 

「え?えぇえ!?お母さんにって…そ、それってお、お姉ちゃんの事、で?」

 

…なぜここで姉住さんの事で?西住関連だけでなく、そのお姉ちゃん関連にまで西住流に目をつけられてるの?

 

「? いや、どちらかといえばお前の為に、だろう」

 

姉住さんはとりあえずちょっと黙っててくれませんかね…、なんか口を開いてもポンコッツな発言しか出てこない気さえする。何?久しぶりに妹に会えてテンション上がっちゃった?

 

「わ、私の…為?それって…その、そういう事…なのかな?」

 

顔を真っ赤にしていじいじと両手の指を絡ませながら、西住はチラリとこちらを向いた。

 

「西住」

 

「は、はい!?」

 

「…とりあえず落ち着け、今話すから」

 

「あぅ…」

 

…もうここまで来たら隠し事は出来ないというか、これ以上隠そうとしても余計ボロが出るだけだろう。なお、ボロを出すのは俺というよりお隣のお姉ちゃんの方だろうが。

 

「話の前に、私達はアイスを買いに来たんだが、みほも食べるだろう?」

 

「あ、うん!ありがとうお姉ちゃん」

 

…まぁそりゃね、久しぶりに妹に会えたんだし、テンションも上がっちゃうよねー、仕方ない。

 

「今日は暑いからな、体調の方は問題ないか?」

 

「うん、電車だったからクーラーも効いてたし大丈夫だよ」

 

「そうか?それにしては先ほどからずっと顔が赤いのだが…」

 

「そ、そうだね!きっと暑さのせいだと思うから、早くアイス食べよ!!」

 

なお、仕方ないには限度はある模様。本当にこの人…妹が絡むとわりとアレな所あるから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…そんな事があったんだ」

 

そんな訳で三人で並んでベンチに座ってソーダアイスをパクつきながら、現状を西住に話す。

 

戦車道連盟の立ち位置と、文科省を交渉の場に引きずり落とす為に西住流の家元の後ろ楯が必要な事。

 

あと、姉住さんとはさっき偶然会った(ここ大事)事等。

 

ちなみに犬住さんは走り疲れたのか、日陰でまったり中だ。さっきまで西住に久しぶりに会えたのが嬉しくてわんわんおと大はしゃぎだったが。

 

「…でも良かった」

 

「いや、まだなんも解決してないんだが」

 

「そうじゃなくってね…八幡君、最近ずっと思い詰めてたみたいだったから」

 

きっと全部バレバレだったのだろう。久しぶりに会ったあの現副隊長にさえ指摘された被害者面だ。ほぼ毎日顔を合わせていた彼女達なら余計にだろう。

 

「私達も心配で何かしたくて…でも、何かすると八幡君、もっと辛くなりそうで」

 

「…今回はやらかした責任が返ってきただけで、単なる自業自得だったりする。だから…西住達から心配される資格は無いはない」

 

「お友達を心配するのに、資格なんていらないと思うな」

 

そう言って西住は少し寂しそうな表情を見せる。

 

「だって麻子さんの時、八幡君は心配してたよね?」

 

「いや、冷泉だぞ?あいつが率先して仕事しだすとか病気を疑うだろ」

 

「八幡君の麻子さんへの信頼って…」

 

いや、仕事の有能っぷりには信頼置いてますけどね、基本面倒臭がりだからあの娘。

 

「自分は相手を心配するのに、相手が自分を心配するのは許せないか」

 

「…お姉ちゃん」

 

「比企谷、その考えは周りに一方的に気持ちを押し付けているだけだ。それこそ君にとって嫌いな考え方ではないのか?」

 

「…耳が痛いですね」

 

一人で居るぼっちを周りは「寂しい奴」「つまらなそう」「悪い」とレッテルを貼り、時には嘲笑い、時には同情の目を向ける。

 

別に一人でも、いや、ぼっちだからこそ楽しめる事はたくさんあるし、そういう気持ちの押し付けは俺の忌み嫌うものの一つだった。

 

「…ぼっち生活が長かったんで。その…慣れてないんですよ、人に心配される事に」

 

「なら、これから慣れていけば良い。…私だって君を心配していたんだ、それを拒絶されてしまって寂しく思う」

 

「…心配、だったんですか?」

 

「もちろんだ。…なにかおかしいだろうか?」

 

「いえ…ありがとうございます」

 

素直に頭を下げる。自然と長く話していたせいか、溶けかけてきたソーダアイスが見えたので慌ててパクりと食べきる。

 

「…うーん、ハズレかぁ」

 

それは西住も同じだったのか。だが違うのは西住は食べきったアイスの棒をしげしげと眺めながら少し残念そうに呟いていた。

 

「なに?なんかあんのこれ」

 

「えっとね…このアイス、当たりが出たらもう一本貰えるやつだったから」

 

あぁ、あまり考えず買ったんだがその手のタイプか。この手の当たり付きアイスや駄菓子は小学生の頃、重宝したものだ。

 

有名なのは金とか銀の天使が出てくるあれだろう。クエックエッなオモチャの缶詰めが貰えるやつ。クラスで「オモチャの缶詰め当たったぜー」とか大々的に自慢していた奴を思い出す。

 

なお、翌日学校に来たそいつは周りから感想を聞かれ「あー、うん…」みたいな反応だった模様。

 

「まだ食べるのか…」

 

さすがに暑いとはいえ、二本連続でアイスを頂くのも…お腹冷えちゃわない?

 

「ち、違うよ!食べたいとかそんなんじゃなくって…ほら!なんとなく当たったら嬉しいっていうか…」

 

まぁわかるけどね。当たり付きのジュースの自販機とか、別にもう一本出てきても絶対飲みきれないんだけどハズレるとそれはそれでなんか残念な気持ちになるやつ。

 

「八幡君はどうだったの?」

 

「ハズレ…だな」

 

まぁそんなものだ。確か一説によるとアイスの当たり棒の当選確率は2%くらいなもんらしい。なんだ、ソシャゲのピックアップ引き抜くより軽いじゃないか!!…ピックアップとは?出現率アップとは?

 

毎日おはガチャした所でお目当ての星5キャラが出ないというのに。今日ふらっと寄った売店のアイスが当たる…なんて確率、そう起きないものだ。

 

「…当たりだ」

 

マジですか姉住さん。これから毎朝俺のおはガチャ引いてくれません?…なにその文句、新手のプロポーズかなんかかな?

 

「すごい!さすがお姉ちゃん!!」

 

しかし、サクッと当たり引いちゃうとか、やっぱこの人なにか持ってるんだよなぁ。

 

「そういえば昔、小さかった時もお姉ちゃんがアイス当たった事あったよね」

 

「あぁ、あれは確かみほにあげたんだったか」

 

「…覚えてるの?」

 

「もちろんだ、あの後戦車から落ちて、二人で泥だらけになって帰ってお母様に叱られたからな」

 

「そ、そこは忘れてて欲しかったかも…」

 

顔を赤くする西住の反応から、たぶん西住が原因で戦車から落ちたんだろう。昔の西住は相当ヤンチャっ子だったらしい。

 

しかし子供の頃の回想でサラッと戦車が登場する辺り、西住流の英才教育ヤバない?

 

「…そういえば、あの時の当たり棒はもう交換したのか?」

 

「ううん、なんか交換するのが勿体無いなって取っておいたら、機会が無くなっちゃって」

 

「…そうなのか?遠慮しなくてもいいと思うが」

 

「うーん…ほら、なんとなくだけどお守りみたいになるかもって、今もとってあるんだ」

 

わかる。駄菓子の当たりとか、交換するより財布に入れとけば金運とか上がるんじゃね?とか思ってた小学生のあの頃。

 

実際交換したアイスがまた当たる…なんてそうそう無いので、なんとなく交換するのが勿体無いと感じるのだ。

 

あとあれだ、コンビニで店員に当たり棒アイス渡したら、めっちゃ先っぽの方を嫌々つまんでいたのを見てから交換しずらいんだよ。

 

「…お守りか」

 

当たり棒を見つめる姉住さんはボソリと呟く。まぁ戦車道としても、『当たり』という言葉は縁起が良いのかもしれない。

 

敵に砲撃が『当たる』とかね。…相手からの砲撃に『当たる』って可能性もあるんだけど。

 

「比企谷」

 

「はい」

 

「なら、これは君に持っていて欲しい」

 

「…はい?」

 

姉住さんがその当たり棒を俺に差し出してくる。…いや、はい?

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「ん?みほもやはり欲しいのか?前に一度あげたから二本も必要ないかと思ったが」

 

「えと…そうじゃないんだけど、だってそのアイス、お姉ちゃんの…」

 

はい、ばっちり姉住さんが食べた後のアイス棒です。…姉妹なら微笑ましいんだけど、いやいや、これはさすがに。

 

「これからお母様に会うのだろう。なら、お守り代わりにでも持っていて欲しい」

 

「え?むしろ会うのにお守り必要なレベルなの?あの人」

 

しかも娘から渡されるとか、どれだけ恐れられてるんだよあの人。

 

「…私が君にできる事は少ないが、せめてお守りくらい良いだろう。必要ないならそのまま交換して貰えばいい」

 

とは言ってますけどね…。これ交換しちゃったら渡したお守り目の前で売却した感じになっちゃわない?

 

…とりあえずティッシュで丁寧に当たり棒を包む。…最早御神体を扱う感じでマジでお守りめいてるなこれ。

 

この当たり棒をどうするかはとりあえず置いておこう…。不用意に触れちゃいけない聖遺物として。

 

「う、うぅ…、わ、私…もう一本、アイス食べよっかなー」

 

わざとらしく立ち上がると西住は売店のアイスコーナーにふらふらと。

 

「アイスの食べ過ぎは身体に悪いが…一本では足りなかったか?」

 

「うん!今日は暑いし!!…それに次はなんか当たる気がするから」

 

そう言って真剣な表情でアイスコーナーを物色し始める。止めて!これ以上聖遺物増やされたら八幡のフォニックゲインが高まっちゃう!!

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