劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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ガルパン最終章4話まで残す所あと数日!!
もちろん公開から数日はネタバレコメントは禁止でお願いします。

…ん?あれ?3話やってたのいつだったっけ?


意外にも、比企谷 八幡は手段を選ぶ。

「…そんな訳で今ちょっと西住の家にお邪魔してるんですが」

 

『比企谷君、私達は今その西住さんのお宅に伺う為の約束を取り付けていたのよ?』

 

はい、おっしゃる通りで…。

 

電話越しから蝶野教官の圧が伝わってくる。…いろいろと根回しして貰ってる間に勝手に本丸にご到着してしまった訳だし、連絡くらい入れようと報告してる訳だが。

 

『んー、比企谷ちゃんはアレだね、一人にさせとくと何するかわかんない所あるから』

 

「なんですかそれ、それを言うなら去年とかほとんど単独行動でしたが?」

 

『何するかわかんない所あったなぁ…』

 

扱い方が危険人物のそれじゃねぇか。別に騒ぎとかもめ事を起こした事なんてないんだけど?なんせもめる相手が居なかったんで。

 

しかし…なんだろうか?戦車道やってから単独行動してる度に何かしらの事態に遭遇している気がするんだが。犬も歩けば棒に当たるし、ぼっちも一人になれば問題にぶち当たる。

 

『ま、今は西住ちゃんが一緒に居るなら問題ないか。いやー、まさか実家に一緒に帰るなんてね』

 

この人わざとやってる。絶対やってる。

 

「…さっきも言いましたけどお姉さんも居ますよ」

 

『まさか姉妹連れて一緒に実家に帰るなんてねぇ』

 

おや、これはもうどう見繕っても詰んでるのでは?

 

「会長、西住はーーー」

 

『わかってるわかってる。…西住ちゃんの事は任せたよ』

 

少し乱暴に会長は俺の言葉を切る。何を言いたいのかはなんとなく察しているんだろう。

 

『ま、私達は駅前の売店でアイス食べて待ってるから』

 

あぁ、会長達今あそこの売店に居るのか。ほとんど入れ違いみたいになってんだな。

 

『角谷会長、すごいのよ?さっきからアイスの当たりを連続で引き続けてるんだから』

 

止めたげてぇ!当たり棒欲しくて頑張ってアイス食べてた娘だってここには居るんですから!!

 

…本当、こういう時の会長は確率バグってんな。大洗がお金が無くて廃校なら、この人に宝くじでも買って貰うのが一番なのでは?

 

「会長、大丈夫だったの?」

 

会長や蝶野教官との電話を切ると西住が少し心配したような表情を見せる。

 

「むしろあの人が大丈夫じゃない場面を見てみたいまである」

 

「あはは…大丈夫そうだね」

 

俺の適当な返答に安心したのか、西住は改めて自分の部屋を見直した。

 

母住さんに俺がもう西住の家に居る事がバレるのもアレなので、菊代さんの紹介で西住の部屋に通された訳だが。

 

「なんだか不思議、懐かしいけど…何も変わってない」

 

沢山ある包帯ぐるぐる巻きの熊のキャラクター、ボコのぬいぐるみ。おそらくだが大洗には持っていけなかった分だろうか。

 

少しの戦車関連のアイテム、壁にかけられた黒森峰の頃の西住の制服。

 

…机にある西住姉妹の小さな頃の写真。

 

別に西住の部屋に入るのは初めてでもないはずだが、やはり気持ち的にはどうにも落ち着かない。

 

いや、うん。実家の部屋は初めてだけどね。意識しないようにはしてるんだが、しないようにしてるだけで出来るとは言ってないんだよなぁ…。

 

「…みほ、書類は?」

 

「え?うん…これだけど」

 

姉住さんに言われて西住が転校手続きの書類を取り出す、それを受け取った姉住さんはしげしげと書類を眺めると。

 

「少し待っていろ、比企谷、君もな」

 

「…はい?」

 

それだけ言うと俺の返事は聞かずに書類を持って部屋を出て行ってしまった。…え?こうなると西住と二人きりなんですが?

 

「えーと、は、八幡君、とりあえず座って、ね?」

 

「お、おう」

 

…え?今までずっと立っていたのかって?そりゃここで遠慮無しに座れる程神経図太くありませんから。

 

そもそもシチュエーションがね。西住の実家の部屋に、母親に内緒で二人きりとか…字面だけ書くと完全アウト。

 

「…えぇっと」

 

西住もそれがわかっているのだろう、先ほどからどうにも動きがぎこちない。

 

「…そういや、ボコのグッズはここにもあるんだな」

 

「!?、うん!そうなの!!この子なんてとくにお気に入りでね、本当は大洗にも持って行きたかったんだけどさすがに大きくて」

 

ベッドに置かれたひときわ大きなボコのぬいぐるみの頭を撫でながら西住は嬉しそうに話し出した。

 

「こっちの子は熊本限定なんだよ!ほら、ボコってクマだから熊本でも代表的っていうか」

 

「いや、熊本でクマのキャラクターといえばくまもーーー」

 

「ボコだよ」

 

「…いや、でもほら、居るだろ?真っ黒なクマのゆるキャラでくまもーーー」

 

「ボコだよ、ね?」

 

「…はい」

 

千葉県にチーバくん、大洗にあらいっぺが居るように、熊本で有名なクマのキャラクターといえばボコ。ジョーシキジョーシキ。ただの洗脳なんだよなぁ…。

 

まぁ、普段の調子に戻ったのならなによりだ。…いや、普段の調子じゃねぇなこれ。西住ってボコの事になると早口になるよね。

 

「八幡君」

 

「ん?」

 

西住はお気に入りらしい大きめのボコのぬいぐるみを持ち上げるとひょいと自分の膝元へ。

 

「…八幡君はお母さんを説得する為にここに来たんだよね?」

 

そのままいじいじとボコのぬいぐるみを撫でたり、手を掴んで動かしたりしつつ、やがて意を決したようにこちらを見つめた。

 

「…まぁ、そうだな。文科省と話し合うにしても西住流の協力は必要不可欠だ」

 

だから、その為にここに来た。

 

「だったら…私も手伝う、一緒にお母さんを説得しよう!!」

 

…知ってた。西住なら、彼女ならきっとそう言うだろう。

 

事情を知れば大洗の為に立ち上がるのが西住だ、彼女が隣に居てくれればなにより心強いだろう。

 

だから、俺は。

 

「いや、いい。今回西住は待機しててくれ」

 

きっぱり、彼女の助けを断る事にする。

 

「…え?えぇえ!?」

 

当の本人も断られるとは思ってなかったのか、驚きの声をあげる。…ちょっと、母住さんに聞こえちゃうだろ。

 

「な、なんでなの?」

 

「そりゃ…まぁ、西住がここに居たのは偶然だし」

 

そもそもが西住の実家帰りと俺達の西住家訪問は偶然重なっただけで、元々西住の存分は考慮していなかった。

 

だから会長も俺に任せると言ったのだ、あの人の真意は知らないし、なんなら知ったこっちゃない。

 

任せると言ったなら、西住の事は任せて貰う。

 

「…私、そんなに役に立たないかな?」

 

あ、やべ…そこまで落ち込まれると罪悪感がハンパないんだが。

 

「…いや、そういう話じゃなくてだな、そもそも西住はまだ母ちゃんとなんの決着もついてないだろ」

 

「それは…、うん」

 

去年の黒森峰の一件で西住は一度戦車道から離れた。

 

その時母親とどんなやり取りがあったのかはわからない。…だが姉住さんとでさえ、久しぶりに会った時はあの様子だ。

 

だったら母親との確執の方は…、西住が実家に帰る事を伝えていない事がなによりの証拠だろう。

 

「なら、説得より先にその問題に決着を付けるのが筋だ。だが、それは今回のついでで解決して良い話じゃない」

 

むしろそれは西住流に大洗の後ろ楯になって貰うより難しい問題なのかもしれない。

 

「で、でも…」

 

「いや、違うな…単純に俺が嫌なんだよ」

 

「…八幡君が?」

 

「大洗の廃校を全面に押し出せばあの人だって何かしらアクションは起こしてくれるかもしれない。だが、もしその場に西住が居れば、“和解せざるを得ない”状況さえ作れてしまう」

 

西住にお願いされればしほさんは大洗の為に動く、だけではなく娘の為に動く事にもなる。

 

しかし娘の為に動くには、今のわだかまりを中途半端のままお互いに飲み込んで、和解せざるおえないだろう。

 

「…正直、たぶんそれが一番効率が良いし、楽ではある」

 

西住の親子問題と西住流が大洗の後ろ楯になる理由。その2つは上手くやればお互いがお互いに納得させる言い訳を作れる。

 

西住親子が和解すれば西住流が大洗の後ろ楯になる理由になるし、西住流が大洗の後ろ楯になる事は親子問題を和解する理由にもなる。

 

問題は解決しないが、問題をうやむやにして解消するくらいは出来るだろう。

 

「だけどそういうやり方は…まぁ、あれだ、手段を選べるうちはしたくないんだよ」

 

「手段を選べなくなったらするんだ…」

 

ノーコメントで。

 

「だから、母ちゃんとの決着はこんな形じゃなくて、西住が自分で決めた時にすれば良い」

 

「あ…でも私、転校手続きの書類があるからお母さんには会わないと」

 

うぐっ…。そういや転校手続きの書類には親の判とサインがいるんだったか。

 

「あー…。判子はどっかで【西住】って名字のやつ買えば良いし、サインなんかそれこそ適当に誤魔化せるだろ」

 

別に印鑑証明や筆跡鑑定をする訳でもないんだから。

 

「…手段を選んでない八幡君が怖い…」

 

いや、俺だって自分用に【比企谷】の判子持ってるし…。なかなか無いんだよなぁ、【比企谷】の判子。

 

「…どうした?何かあったのか」

 

コンコンとノックされて姉住さんが戻ってきた、だいぶ時間がかかっていたが、どこに行っていたのやら。

 

「…いや、そっちこそ何かあったんですか?」

 

だがそれ以上に気がかりだったのは姉住さんの格好だ、先ほどの犬の散歩スタイルが一変、着物姿に変わっている。

 

「えと、それってもしかして部屋着ですか?」

 

とはいえ似合ってないかと聞かれれば着物姿が超似合っている。さすが西住流、由緒正しい武芸の出だ。

 

「…これはお客様を出迎える正装だとでも思って貰えれば良い、つまり君達だ」

 

「…って事は」

 

「あぁ、お母様の準備は出来た」

 

…要するに、ここからは西住流として迎えてくれるという事だろう。この着物姿はこの人なりの意思表示なのか。

 

ここから先、この人は味方ではない。もちろん敵でもないが頼れない事に違いはない。

 

「あぁ、それとみほ、これを」

 

ゴクリと思わず唾を飲んだ俺の隣で姉住さんは先ほど預かって持っていった書類を西住に返した。

 

「お姉ちゃん…これ」

 

その書類にはしほさんの名前が書かれ、判子ががっつり押されている。…母住さんがやった訳じゃないよねこれ。

 

「…手段を選ばない人って怖いなぁ」

 

「八幡君がそれを言うんだ!?」

 

いや、むしろ親の実印無断で拝借してる時点でやってる事は俺の提案よりよほど悪質なのでは?このシスコンさん。

 

「蝶野教官と角谷もすでに到着している、後は君だけだ」

 

「…わかりました」

 

姉住さんに促されて立ち上がる、ふと後ろから心配する西住の声が聞こえてきた。

 

「…八幡君、本当に大丈夫なの?」

 

「別に魔王に会いに行こうって訳じゃないんだから、そこまで心配する程じゃないだろ」

 

「…そう、だね」

 

「ちょっと、今の間はなに?あと声のトーンの落ち具合」

 

冗談で言ったつもりなのに余計に心配になってきた。姉住さんもそうだけど娘達からどれだけ恐れられてるんだよ母住さん。

 

だけど…まぁ、なんとかなる…はず。

 

「入った時から思ってたんだが…部屋、思ったより綺麗だな」

 

「…八幡君、私の部屋が汚いって思ってたの?」

 

突然の俺の言葉に西住が少しムッと頬を膨らませる。まぁ…ボコ関連のグッズは多いとは思ってましたよ。なお、部屋のボコグッズは思ってた以上だったが。

 

「いや、そうじゃなくてだな…、西住はずっと部屋に帰ってなかったのに、埃とか全然無いんだよ」

 

「…あ、うん。そう言われればそうかも」

 

ずっと誰も使ってなくて、誰も入らない部屋だとしても埃は自然とどこからか落ちてくる。…あれ、本当になんでかね?

 

「…誰かがちゃんと定期的に掃除してくれてたんだろ。っても、まほさんは学校ある」

 

「…菊代さんがやってくれてるのかもしれないよ」

 

「そうかもしれないし、違うかもしれない。…たぶん大丈夫だろ」

 

西住の言う通り、菊代さんが掃除をしているかもしれない。それだって自主的にか、言われてかはわからない。

 

たが、どちらにせよ家を出ていった娘の部屋を綺麗に残しているんだよ、あの人は。

 

姉住さんの後をついて歩く。広い屋敷とはいえ、さすがに魔王城程のスケールではない。

 

お目当ての部屋の前で姉住さんは立ち止まる。ふと視線を背後に向けると心配そうに遠くからこちらを見る西住が居た。

 

…不安なのはわかるけど、さっきも言ったが西住をこの先に連れていくつもりはない。さて、どうしたもんか。

 

「………」

 

だが姉住さんはちょいちょいと西住を手招きするので西住は恐る恐るこちらに近付いてきた。

 

「…襖越しで悪いが、ここに居るといい」

 

そっと優しく、小さな声で西住に耳打ちをする。

 

「…良いの?お姉ちゃん」

 

驚く西住に姉住さんはイタズラをするように人差し指を立ててしっーとジェスチャーを送る。

 

いや、もう…本当にさっきの書類の件といい、妹にはダダ甘ですねあなた。

 

「…いくぞ」

 

そしてそのダダ甘さをほんとちょっとでもいいから俺にも分けてくんないかなぁ…。西住流モードマジ怖いんですけど。

 

「はい」

 

だが、姉住さんの西住流モードにビビっていてはこの先、この部屋に入る資格すらない。其ハンター漫画のトランプを武器にしそうな顔のやつに「まだ早い♡」とか言われるだろう。

 

「お母様、大洗学園から最後のお客様を連れてきました」

 

「わかりました、入りなさい」

 

母住さん…しほさんの言葉を待って姉住さんが襖を開ける。

 

部屋にはすでに蝶野教官と会長が正座で座っていた。俺も用意されている座布団に正座する。

 

相対するように向こう側では中央にしほさん、その左右を姉住さんと菊代さんが座る。

 

「………」

 

ふと、しほさんの視線は俺…というより。俺よりも後ろ、襖の先に向けられた。…気がする。

 

「お母様」

 

「…いえ、なんでもないわ」

 

だがそれも一瞬の事でしほさんの鋭い眼光はこちらへと向けられる。

 

「では、話を聞きましょう」

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