劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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いろいろ忙しくて一ヶ月も更新遅れちゃって申し訳ありませんでした、最近マジ忙しい。

そして最終章4話!この小説をここまで読んでくれた皆さんにはわかって貰えるかもしれませんが自分以上にニヤニヤしながら最終章4話を見れる人は居ないのでは?とさえ思えるいろいろなネタ!!

てかあの戦車戦のシーンとか小説で書ける訳ないでしょ!無理!絶対無理!!


ようやく、比企谷 八幡はその問に答えを出す。

「ーーー私達からは以上です」

 

会長は今の大洗の状況、文科省による廃校取り消しの約束の反故を説明する。

 

これば半ば形式的な意味合いが強いだろう。実際、今の大洗の現状なんてこの人達の耳にはとっくに入っているだろうし、ならば俺達がここに来た理由もすでに察しているはずだ。

 

「文科省を説得する上で、西住流家元のお力をお貸し頂けないでしょうか」

 

…本当に、こういう時の会長の胆力ハンパねぇな。西住流を前にしても全く臆する事なく言葉を続けている。

 

え?俺?一言も喋ってませんけど何か?いや、下手に口を挟もうもんなら場の空気乱しちゃうだろうし、ここは【見】に徹するのが得策というものだ。

 

というより、俺が余計な事をしなくてもしほさんなら動いてくれるという確信まである。

 

娘の通う大洗学園の廃校の危機。…それももちろんあるだろうが、それより重要なのはその廃校に戦車道が絡んでいる事だ。

 

古くから続く由緒正しい戦車道の名門、西住流、そしてこの人はまさに【西住流そのもの】とまで言われている。

 

そんな人が、今回の文科省のやり口に何も思う所が無いはずがない。

 

「…来年の戦車道全国大会に大洗学園が出てこなければ、黒森峰が大洗に勝つことが出来なくなるわね」

 

だから、きっかけの一つでもあれば…それこそ、今俺達がここに来た事でこの人も動く理由は十分に出来たのだ。

 

口ではそう言いつつも…いや、たぶんこれも全くの0じゃねぇな、大洗へのリベンジはリベンジでヤル気満々なのがよくわかります。

 

まぁ…自分達に土を付けた相手が今後試合に出てこないとか、ある意味永遠に勝ち逃げされたようなもんですからね。

 

黒森峰に土を付けたといえばプラウダもそうだが、あそこは廃校とは無縁だろうし、この先リベンジの機会なんかいくらでもあるだろう。

 

だがこのまま大洗が廃校となればたった一敗ではあるが、【黒森峰女学園は大洗学園に一度も勝った事が無い】という結果だけが残る。…うーん、これは黒森峰の現副隊長さんがわざわざ俺の所に来るのもわかるなぁ。

 

なんならうちに勝った所って練習試合とはいえ聖グロリアーナくらいになるのか…エキシビションじゃプラウダもそうだが、ダージリンさんがどんだけかよくわかるよね。

 

…すっかりあれこれ考えてしまったが、やはり【西住流】として、この人は【大洗の為に】に動いてくれる。だから…きっと大丈夫だ。

 

…西住流として、大洗の為に?

 

自分でそう結論付けたはずなのに、妙な違和感を感じた。

 

安心できるはずのその結論に感じる。言い様の無い不安感。…何かを見落としている?

 

「一つ、聞きたい事があります」

 

「…なんでしょうか?」

 

「いえ、角谷さんにではありません。比企谷さん、あなたに聞きたい事があります」

 

「…はい」

 

しほさんの鋭い眼光に真っ直ぐ見つめられ、違和感の正体はすぐにわかった。

 

前に西住にも言われた事だ。なんなら癖というより、ここまで来たら呪い染みてまである。

 

「あなたにとって戦車道とはなんですか」

 

やはり俺はどうにも自分という選択肢を外しがちになるらしい。

 

【西住流】として、【比企谷 八幡】個人の為に動く理由なんて、何一つない事を今の今まで気付けなかった。

 

「家元、これは大洗の廃校とは関係が無いのでは?」

 

「文科省の言い分の一つに彼の存在もある以上、無視は出来ません」

 

「我々戦車道連盟の理事長も男性です、彼が戦車道に関わる事になんの問題もないと思いますが」

 

「そういう事を言っているのではありません」

 

フォローに入ろうとしてくれた蝶野教官の言葉をしほさんはばっさりと切り捨てる。

 

「児玉理事長の事ならよく知っています、あの方がなんの覚悟もなく、今の立場まで来れたとは言えないでしょう」

 

…そりゃ男が戦車好きってだけで妙な目で見られて来てましたからね。その上であの人は女性ばかりの戦車道の中を連盟の理事長にまで登り詰めた。

 

…理事長がハゲたの、ストレスが原因って事も考えられるのでは?

 

「児玉理事長にとってそれだけの理由が戦車道にはあるという事です。では比企谷さん、あなたはどうですか?」

 

「…俺は」

 

…言葉が出てこない、当然だ。そんな覚悟なんて持っている訳がない。

 

そもそも、始まりだって生徒会からの強制だ、流された上での行動なんてこの人が一番嫌う事だろう。

 

「あなたにとって戦車道は、それほど好きになれるものですか?」

 

「…っ!」

 

まるで見透かされたようにその言葉は俺の脳に突き刺さる。

 

何度も聞かれ、何度も同じ答えを繰り返し続けた。

 

西住にも、蝶野教官にも、そしてなにより自問自答を続けても、俺の答えは変わらない。

 

戦車道は嫌いだ。

 

ずっと嫌いで、そして、嫌いであり続けなければいけない問題だ。

 

勝手に決め付けて嫌っていた物だ、それを今更手のひら返しなんてできる訳がない。

 

…だったら、どうする?それをしほさんに言うのか?正直に?

 

そんな事をすれば西住流が大洗の為に動く理由は無くなるだろう。…なぁなぁで流されて戦車道をやっている男子の為に動く理由は無い

 

…あるとすれば俺が今後二度と戦車道とは関わらない事か。

 

それなら問題の解決はしないが、消す事くらいはできる。文科省の言い分の一つを潰し、西住流は大洗の為に動く。

 

きっとそれが一番丸く収まるまであるだろうが…それは無い。被害者面して逃げ回るのは止めろと現副隊長…逸見エリカにも言われたばかりだ。

 

…なら、好きだと言えばいいのか?

 

戦車道が好きだと、こんな曖昧な気持ちを抱えたまま?

 

それは本心から、本物の答えと言えるのか?

 

考えろ…戦車道が好きと答えれるような理由、この人を納得させられる程の言い訳を。

 

ていのいい言葉をどれだけ並べ立てて取り繕った所で、きっとこの人には通用しないだろう。

 

…全く、嫌っている理由ならスラスラ出てくるのが本当に俺らしくて嫌になる。

 

「…あ」

 

いや、違う…。たぶん、本当に俺は。

 

「家元、やっぱり俺は…戦車道は嫌いです」

 

戦車道が、嫌いなのだろう。

 

「…そう」

 

しほさんは俺のその答えにそれだけ短く答えた、俺が言葉の続きを言うのを待ってくれるのだろう。

 

「知っての通りだとは思いますが大洗学園の戦車道メンバーは西住以外全員初心者です、戦車を見た事すら無い奴らもいるくらいで」

 

…今更だけど、学園艦のあちこちに戦車が落ちてたんだよね。いや、俺も長いこと住んでて知らなかったんだが。

 

「そんな素人集団が集まって、朝練から戦車道の授業はもちろん、放課後だって練習三昧でした、ぶっちゃけブラック企業みたいなもんですねアレ」

 

「比企谷ちゃん、雇用主を前にそれ言っちゃうんだ」

 

へー、ふーん。みたいな悪い顔してる会長がめっちゃ怖いんだけど!ちょっと、話の腰折らないで!!次の新しい雇用主(生徒会)にはド天然な人を希望したい…。

 

「経験者から見れば付け焼き刃かもしれませんが、素人集団のあいつらが必死に努力して身に付けたその刃は多くの強豪校に届いて大洗学園を優勝させました」

 

前に西に大洗の強さの秘訣を聞かれた時、俺は相手の舐めプと初見殺しの作戦、そして運と答えた。

 

それらは別に間違っていないと思うが、それだってそもそも戦う力がある前提の話だ。

 

高校生の青春真っ只中だというのに、花の女子高生が朝練から始まり、選択授業、放課後の訓練、土日だって返上して戦車に乗ってきた。

 

それをずっと見ていたからこそわかるし、言える事がある。

 

「…んで、その優勝が無意味にされたんです。そんな…その程度の競技、好きになる要素なんて無いでしょ?」

 

努力が必ず報われるとは限らない…とは使い古された言葉ではあるが別に間違っていないと思う。

 

だが、努力そのものが無意味だった…なんて笑い話にもなりはしない。

 

「…だから、俺は戦車道が嫌いですね」

 

結局、どれだけ考えても明確に好きな理由が出てこない辺り、俺が戦車道が嫌いなのは変わっていないのだろう。

 

ただ、嫌う理由が変わったのは確かだ。きっと俺は、許せなかったのだろう。

 

「…上手く答えをはぐらかすものね」

 

…バレましたか。まぁ、俺にとって戦車道とは?という最初の問には何一つ答えてない。

 

「…ですが、このまま大洗の状況が変わらなければ戦車道はその程度の競技と言う事ですか」

 

「えぇ、上の都合で全国大会の勝敗すら揉み消される、そんなの糞競技も良いところじゃないですか?」

 

「…西住流としても、戦車道の格を落とす訳にはいきません、菊代」

 

「はい、奥様」

 

「至急、文科省へ連絡を」

 

「わかりました」

 

…ふぅ、と全身の力が抜けた。これで西住流は大洗の後ろ楯になってくれるだろう。

 

「…協力、感謝します」

 

「そう仕向けたのはあなたでしょう、決して誉められたやり方とは言えませんが」

 

まぁ…そうだろう。なんだったら俺がやった事なんて遠回しな脅しみたいなものだ。

 

大洗の優勝取り消しとか戦車道の試合って意味無いよねー、糞競技だよねーとくれば由緒ある西住流としても黙っている訳にもいかなくなるだろう。

 

「…ですがお見事です、比企谷さん」

 

「…今さっき、誉められたやり方とは言えないって言いませんでした?」

 

「やり方を誉めたつもりはありません、ですが、勝つことこそ西住流、あなたは見事にそれを成し遂げました」

 

「…どもっす」

 

なんだか急に気恥ずかしく感じて、それを隠すように頭を下げる、下げた視線の先にそういえばと置いてあった紙袋を今更ながら見つける。

 

「あー、会長、これ」

 

「ん?あぁ、比企谷ちゃん渡しちゃって」

 

えー…それが嫌だったから一回この人に話を振ったんだけどなぁ。

 

「あの…これ、お土産というか、菓子折りというか」

 

…ワイロというか。いや、そうならない為に先に出さなかったんだけどね。

 

「…これは?」

 

「あー、茨城の名産なんですけど」

 

紙袋を受け取ったしほさんは何故か姉住さんと意味ありげに視線をかわすと。

 

「…そう、干しいもの羊羮ね」

 

「え?知ってるんですか?」

 

え?やだこの人もしかして茨城大好きだったりする?もしくはうちの会長の如く干しいもジャンキーだったり?

 

「…えぇ、さっきね」

 

…気のせいだろうか、一瞬しほさんの表情がとても柔らかいものに変わった気がする。そんなに干しいも羊羮食べたかったの?

 

「奥様、文科省への連絡が取れました」

 

ふと扉を開けて菊代さんが戻ってきた。…そういえば外には西住も居たんだったな…まぁ菊代さんなら大丈夫だろうが。

 

「奥様が来る事を知って慌ててましたよ」

 

「慌てさせておけばいいのよ」

 

いたずらっ子のように笑う菊代さんが可愛いのと、無表情ながらあーこの人も今回の文科省のやり口には思う所があったんだなーとわかるしほさんの声のマジトーン。

 

って、いや待て、今しほさんが部屋から出ちゃったら西住と鉢合わせするんじゃないか?

 

「…私と菊代はこれから文科省へ向かう打ち合わせをします、まほ」

 

「はい、お母様」

 

「…あとをお願いするわ」

 

「…はい」

 

姉住さんが立ち上がったので俺達もそれに続いて立ち上がる、しほさんと菊代さんは部屋に残るのか…打ち合わせと言ってもたいした事はないはずだが。

 

…まぁ、たぶん全部バレてんだろうなこれ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…あ」

 

部屋の外で扉に寄りかかって座っていた西住が俺達が外に出た事に気付いて立ち上がった。

 

「…えーと、その、八幡君」

 

「お、おう」

 

…今更だけど、中でのやり取りって全部西住に聞かれてたんだよな。

 

え?壁越しだからそう簡単には聞こえないだろうって?西住舐めんなよ、戦車道の試合で履帯音とかエンジン音聞き分けて戦車の位置を把握してくる程度の聴力あるからねこの子。…やっぱ、西住流ぱねぇ。

 

いや、今はそんな事よりだ。中でのやり取りが丸聞こえという事はさっきの俺の恥ずかしい口上も全部聞こえてたって事じゃん。…うわっ!恥ずかしい!!

 

何が付け焼き刃ながらその刃は強豪校に届いて…だよ!上手い事言ったつもりかよ…いや、上手い事言ったつもりなんですけどね(ドヤァッ)。

 

そして何より恥ずかしいのはだ。俺が戦車道嫌いな理由が変わっちゃってるのがバレバレだし、しかも理由が恥ずかし案件と来ている。まだ意地を張って嫌いとか言ってた方がマシだった。

 

「あー、その、恥ずかしい所見られたな」

 

「…ううん!すっごく格好良かったよ!!」

 

だがこうして西住に嬉しそうに満面の笑みで微笑まれてしまえば俺も何も言えなくなる。

 

「そーそ、比企谷ちゃんはうちの戦車道チームが大好きみたいだしねぇ」

 

っていうかこの人が現場に居た時点でもう詰みなのでは?

 

「…ふっ、さっきの君を見ても思ったが、やはり大洗は良いチームだな」

 

「お姉ちゃん、うん!!」

 

「だが、来年こそは黒森峰が優勝する、エリカは強いぞ」

 

「わかってる、でも私達も負けないよ」

 

…この二人はほっとくと延々の姉妹百合を続けちゃいそうなので話の腰を折りたくはないんだが。

 

「まだ廃校が回避できたかはわかりませんよ…」

 

西住流という切り札はもはや神のカード的レベルに強力だが、文科省もあっさり折れる程馬鹿じゃない。そもそもここまで強行で廃校を進めてきた文科省が簡単に首を縦に振るとは思えない。

 

「あぁ、だからこそ、その時は私の番だ」

 

決意するように、姉住さんそう呟いた。そう、たぶんまだ何も終わっていない。

 

…むしろ、ようやくスタート地点に立てたのだ。ようやく文科省との交渉まで進める事ができたのだから。

 

「あ、あの!えっとね…八幡君!!」

 

「…ん?」

 

「この後なんだけどね。い、一緒に大洗に帰ったり…とか」

 

…西住と二人切りで一緒に大洗に帰る(熊本→茨城)。いや、いやいや、さすがにそれはまずいのでは?

 

「…比企谷ちゃん、私も居るんだけどなー」

 

「それは(俺の心労的な意味で)まずいのでは?」

 

「どういう意味?」

 

いや、それはもう日頃の行い的な意味だととらえて下さい。

 

「…悪いが西住、まだやる事は残ってんだ」

 

そもそも今から文科省へと向かわなくてはならないのだ、戦車道連盟から西住流邸、そして文科省と今日1日でだいぶ日本横断している。

 

「…うん、そうだよね、ちょっと言ってみただけだから」

 

「珍しいな、西住がそんな冗談いうなんて」

 

「…冗談じゃなかったんだけどなぁ」

 

「ん?」

 

「ううん、頑張ってね、八幡君」

 

「いや、俺の仕事はもうほとんど終わったようなもんだから、頑張る所もないだろ」

 

文科省との交渉のメインは母住さんに任せる事になるだろうから、文科省での俺の仕事はほぼ無いと考えて良いだろう。

 

「そうか、恐らく次の移動はお母様と一緒になると思うが」

 

わー、八幡超頑張んなきゃいけないやつだこれ。

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