劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
あとアールグレイ先輩とか…うん、出てきたら確実に大学選抜チームのキャラ食いかねないですね(笑)
「社会人を破ったチーム!?」
戦車道新聞の一面を飾るのは【大学選抜、社会人チームを撃破!まるで下克上!!】の記事。
「無理ですよそんなのぉ~!!」
「無理は承知だよん」
とりあえずの嘆きスタートな河嶋さんを会長が宥めている。
戦車道チームの各車長とあんこうチームメンバーはそのまま作戦会議へと仮生徒会室の奥にある旧校長室へと集まった。
「やっぱり大学生って強いんですね…」
「そりゃ私達よりずっと経験豊富だもんね、いいなぁ…きっとモテモテよ!!」
「この場合…モテるかどうかはたいした問題ではないのでは?」
「そもそも経験なら社会人チームの方が上じゃないのか?」
まだ武部は戦車道がモテる説を諦めていなかった事に驚きつつ…、冷泉の言う通り、単純な経験だけで言えば社会人チームの方が上だろう。
「大学側は強化チーム、つまり大学生の中でも選抜された、言うなれば大学選抜チームですからね、各大学の優れた選手が集まっているのでしょう」
「なにそれズルい!!」
いや、ほんとそれな…。たかだか高校生の一チーム潰すのに大学生総出でかかるって、年上として恥ずかしくないの?
いや、このマッチングを組んだのはあのメガネ役人なんだけどね。…西住流の家元に睨まれながら苦し紛れで口から出たとはいえ、しっかりこちらにとって最大限の不利な条件ときた。
つーか、【優勝校としての実力を認める条件が大学生の選抜チームに勝つ】ってなんだよ?これからは高校生戦車道全国大会の優勝校は大学の選抜されたチームに勝たないと優勝取り消しなの?
「ほーん…じゃあ秋山、ここに載ってる三人も有名な選手なのか?」
新聞の一覧には顔写真入りで選手が紹介されている。
【ルミ選手】【アズミ選手】【メグミ選手】とミミミ三姉妹…いや、姉妹じゃないか。とりあえず三人揃ってミミミ四天王とでも言うか。
「もちろんです、その三人は各々中隊長として、バミューダ三姉妹として有名ですから」
「え?やっぱ姉妹なの?てかバミューダって…バミューダトライアングル的な?」
「いえ、あくまでファンが付けた名称ですけど、三人揃ってのコンビネーションプレイがバミューダアタックというものですから」
「大学生のネーミングセンスじゃねぇ…」
…とはいえ、三人揃うとヤバい事になるのは間違いなさそうとかどこの黒い三連星だよ、もういっそジェットでストリームな三姉妹に改名した方が良いんじゃねぇの?
あぁ…うん、良い年こいたおっさん三人組の必殺技がジェットなストリームアタックだもんね。それ考えたら女子大生がバミューダアタックってネーミング付けても良いと思うよ。
「ちなみにメグミ選手はサンダース出身ですよ、私も当時の試合は見てました」
「あぁ、大学生だもんな。必然的に各高校のOGになるのか」
つまりケイさんやアリサ、ナオミの知り合いかもしれないのか。
「…なんか弱点とか聞けねぇかな?」
「真っ先に出る発想がそれなんだ!?」
「冗談だ、そもそもケイさんがそういうの教えてくれるとは思えないからな」
「教えて貰えるなら貰う気満々に聞こえるが」
いや、相手の弱点を調べるとか試合前の偵察の範疇だし、別にアンフェアでも無い気がするが。
「じゃあ他の二人も知ってる学校か?」
「ルミ選手は継続高校ですね」
「継続かぁ…」
あのミカさんにも後輩時代ってあったのかね…、なんか先輩の小言の全てをカンテレとあの言動でかわしてそうではあるが。
「そしてアズミ選手はなんとあのBC自由学園です!!」
「…どこのだよ?」
全く知らん学校が出てきた。いや、トーナメント表にも名前はあったので全国大会に出場してたのは知ってるけど…。
確か一回戦でダージリンさんの聖グロリアーナと当たって負けてたところだ。
「BC自由学園を知らないんですか!?この学校は歴史が深くてですね…」
「いや、長くなりそうだし解説はいいんだが…」
そんなご存知無い!?と言いたげにぐいぐいこられても困るんだが…。
「プラウダ高校や聖グロリアーナ、黒森峰の選手ではないのだな」
ふむ、とカエサルが当然の疑問を口にする。
「そもそも今の大学生って事は黒森峰が9連覇の真っ最中は高校生だったんだろ、学校の強さよりも選手個人の強さに注目されてんのかもな」
そもそも黒森峰は姉住さんが入学する前から連覇を続けていた訳で、時代は正に黒森峰の一強時代。
つまり、大学に選抜された選手は学校の強さよりも個人の実力で選ばれた選りすぐりの選手…という事だろう。
「まっ…そんだけの選手を集めるのにどれだけの手間と金がかかってるのかは知らんけど」
「レースでもお金のある所はタイヤもガソリンも使い放題だからね」
「許すマジ課金製!いったいいくら注ぎ込んだんだにゃー!!」
そもそもが今回の試合相手に指名できるくらいだ、文科省が後ろ楯にでもなっているのだろう。
大学選抜チームとはそれだけヤバいチーム、という事だ。廃校撤回の対戦相手がここと言われた時、西住と秋山が素直に浮かれる事ができなかった理由もそこだろう。
「…八幡君、あのね」
「…ん?どうした西住」
「えっと…その、…向こうの隊長の事なんだけど、わざと見ないふりしてたりしない?」
「いや…まぁ」
そりゃ…うん、新聞の一面にでかでかと載ってるからね。見ないふりをしろってのも無理な話だ。
大学選抜チーム隊長【島田 愛里寿】。
その写真に載っているのはいつぞやのボコミュージアムで出会ったボコ好きの少女。
そして恐らく、そこでの一件で相当俺に恨みを持っているであろう、少女だ。
「これ、間違いじゃないのか?」
「私も驚いちゃたけど、うん…間違いないと思う」
…なんでこの子が大学選抜チームの隊長に?そもそも年齢的に無理だよね?
「わ、可愛い子!…だけど、この子が大学生の隊長なの?」
「プラウダの隊長みたいなものか?」
「天才少女と言われてるらしいな…なんでも飛び級したとか」
飛び級て…ちよちゃん以外にも出来る子居たんですね。つーか中学、高校をすっ飛ばして大学生ってちょっとやりすぎなのでは?
あと、プラウダの隊長さんこと、地吹雪のカチューシャさんは実年齢が高校三年生なので【みたいなもの】扱いは止めたげてよぉ…。
「みぽりんと比企谷、この子の知り合いなの?」
「うん、ボコミュージアムで一緒にボコのショーを見たんだ」
「まぁ、三人でボコさんのショーをですか?」
ちょっと五十鈴さん、然り気無く他に観客が居なかったと決めつけないでね?いや、まぁ…居なかったけど。
「いや、俺は…まぁ見たか、一回は」
「八幡君はね!ボコになったの!!」
「…え?えぇっと…西住殿、それはどういう?」
「八幡君はボコになったの!!」
「えーと…なるほど?」
フンッ!と両手をぐっと握って力説する西住にはさすがに普段の西住至上主義な秋山もたじろぐらしい。
「可哀想に…比企谷先輩、ついにおかしくなっちゃったんですね」
「はいそこ哀れまない。むしろおかしくなってるの西住だからね?現在進行形で…」
このままでは大事な試合を前に脳がボコで汚染されかねない。なんか「やってやる♪やってやーる♪」とか口ずさみながら敵陣に突撃する西住が思い浮かんでしまった。
「…つまり一緒にボコのショーを見ただけだ。知り合い…てか、知り合いでもないな」
「…八幡君」
ふと西住の視線が気になった。あの後の一件について、彼女は何も知らないはずだ。
「…なんだよ?」
「そうだよね!一緒にボコのショーを見たならもう知り合いじゃなくて、立派なボコ仲間だもんね!!」
「…あーうん、そうね、あとこの子対戦相手だからね」
仲間判定がゆるゆるすぎて感染力がへたなウイルスよりも強力なのでは?ボコ怖いなぁ…。
「島田流、家元の娘と書いてありますね」
「つまり、この試合は西住流対島田流の対決でもあるんだなぁ」
日本戦車道の最大流派ともいえる西住流と双璧をなす、もう一つの流派【島田流】。
本来なら大学戦車道連盟の理事長の名前が【島田 千代】だった時点で気付くべきだったのだろう。
大学戦車道連盟の理事長が島田流なら、その連盟が主軸となっている大学選抜チームも島田流の系譜である事は考えついたはずだ。
いや、飛び級した娘が隊長やってるとか、気付けというのが無理な話なんだけどね。
「世間的には、ですけどね」
そもそも大洗の戦車道は隊長こそ西住だが、戦いかたは西住流とはまるで違う。それを一緒くたにして西住流VS島田流と名付けるのはいかがなものか?せめてダークライさんくらい参戦させてあげて欲しいものだ。
だが、西住が西住流家元の娘である事は間違いない。そこで大学側が今回の試合を拒んだら島田流は西住流から逃げた。と邪推に考える連中も出てくるだろう。
日本を代表する二大流派だ。…流派間の仲が悪いかどうかは知らないが、決定的な優劣をつけるのはどちらも避けたい所だろう。
…本当、あのメガネ役人は嫌らしい手をとってくる。
「相手は何両出してくるんですか?」
バレー部、磯辺が一番大事な事を聞いてくれる。戦いにおいて数とは分かりやすく、そして圧倒的な優劣の差だ。戦いは数だよ、と偉い人も言っている。
戦車道全国大会の決勝戦。黒森峰との戦力差は8両VS20両、なんとも馬鹿馬鹿しい戦力差だが、大洗はなんとかそれを突破し、優勝した。
「…30両」
ついに戦力差が4倍近くになったんですが、それは?
【試合の規則、形態等については主催者たるものが定める権限を有する。】
この試合を行う時、誓約書を作るにあたって文科省のメガネ役人がガンとして譲らなかった項目がここにある。
メガネ役人曰く…「男子生徒を特例で参加させるのです、こういう項目は必要でしょう?」との事だが、実際は自分の都合の良い試合形式にしたいのがバレバレだ。
…バレバレだが、俺という存在が試合に出る事を認めて貰う以上、確かに必要な項目ではある、ここもまた嫌らしいところだ。
そして決められたのが試合参加可能戦車の上限30両、メガネ役人が言うには大学側の試合に合わせた…らしい。
どんなに頑張っても戦車が8両しかない大洗にとっては参加可能戦車の上限なんてあってないようなものだと知っているだろうに。
「もう駄目だぁ~!西住からも勝つのは無理だと言ってくれ!!」
…うん、気持ちはわかるんだけどね。河嶋さん、それやっちゃうと今までの全部が無駄になっちゃうからね?
「確かに…今の状況では勝てません」
動揺しまくっている河嶋さんと違い、西住は落ち着いた様子で資料を見る。良かった…ボコボコしてた頭はすっかり戦車道脳へとシフトチェンジしてくれたようだ。
「ですが、この条件を取り付けるのも大変だったはずです。…ね?」
「…まぁ、たいした事じゃない」
西住がチラリと俺を見る。まぁ…西住家に行って家元と直接交渉するとか、正直寿命が少し縮まったまであるが。
俺が適当つけて誤魔化すと西住は少しだけ微笑んで戦車道メンバーを見渡す。
「普通は無理でも、戦車に通れない道はありません。戦車は火砕流の中だって進むんです」
…進めるの?だって火砕流って…あの火砕流だよ?
いや、まぁ…砲弾の直撃浮けても平気へっちゃらな謎カーボンもあるからね。戦車は火砕流の中も進める。いいね?
「困難な道ですが、勝てる手を考えましょう」
「はい!」
「わかりました!!」
いや…違うな。他の誰でもない、西住が。彼女が言うなら、本当に火砕流の中だって進めるかもしれない。か。
「それに、今回の試合は八幡君も居るから…ね?」
「さすがに火砕流の中に突撃するのはちょっと遠慮願いたいが…」
今さらだけど、試合に参加するって事は西住の下で戦うんだよな…。この子、平気な顔してわりと無茶な指示飛ばすんだよね。
「そ、それはさすがにものの例えというかね…えと、うぅ…」
「いや、まぁわかってる、勝てる手…だろ」
「うん!!」
「正直戦力差はクソだが、やる事は全国大会と一緒だ。相手のフラッグ車さえ潰せば勝てるならやりようはいくらでもある」
結局、相手の車両が何両だとしてもやる事は全国大会と変わらない訳で、フラッグ車をなんとか潰す事を考えれば良い。
「おぉ、さすが比企谷殿!頼りになります!!」
「ふむ、狡いやり方をさせたら右に出る者は居ないな」
「それ絶対誉めてねぇだろ…」
「でも、なんだかイケる気がしました!!」
…いや、そこはまだ全然ノープランだったんだが。うん、さすがに言い出せねぇな。
試合前になんとか相手フラッグ車を確実に潰せる方法を考えてーーー。
「会長!!」
「ん、どうしたの小山?」
会議室…になっている旧校長室に慌てて小山さんが入ってきた。そういえば途中で居なくなっていたが、なんかあったのか?
「大変です!今文科省から連絡があったんですが…」
小山さんの慌てようから緊急事態なのは察するが。…また文科省か、あそこが絡むと録な事が起きないのは目に見えている。
「大学選抜チームとの試合形式ですが…殲滅戦ルールで行う、との事です!!」
…本当に、碌な事が起きない。