劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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毎年書いてる気がするいつか書いてみたいバレンタインの話…もう温めすぎてチョコ溶けちゃってるから湯せんしてまた作り直さなきゃ(笑)


これが、アッサム流潜入偵察術だったりする。

大洗の港にもっとも多く停泊する船は何か?と聞かれれば大洗学園艦と答えるのが当然だ。

 

これは別に大洗に限った話ではなく、各学園艦には母校ならぬ母港がある、大洗学園ならばもちろん、大洗港が母港なので必然的に大洗港にはよく停泊する事になる。

 

だが、大洗学園艦は廃校…はまだ決定ではないが、今は文科省の管理下、長らく大洗の港に船を停める事は無い。

 

そうなると次におそらく有名なのはこのサントアンヌ…じゃなかった、さんふらわあフェリーだろう。

 

大洗の命運を懸けた大学選抜チームとの試合。その会場はなぜか北海道だが学園艦を失った今の大洗学園にはまず足が無い。

 

そこに戦車があるじゃろ?とでも言うものなら例え戦車でも陸路で北海道へ向かうとか、急行系カードもぶっとび系カードも使わずに地道にサイコロ降って北海道目指せと言ってるようなもんだ。

 

下手すれば試合に間に合わず不戦敗。つーかそもそもそこまで行ける燃料費が無い。

 

そこでさんふらわの登場だ、陸路が駄目なら海路、さんふらわあなら普段から大洗と北海道を行き来している。

 

大洗メンバーを乗せ、戦車も積んださんふらわあは大洗港から出港する、目指すは北の地、北海道。

 

北海道は試される大地。それゆえアイヌの金塊を巡ってゴールデンでカムイ的な争いも起きるし、なんならなまらめんこいギャルだっているらしい。

 

それは学園存続の為の試合へと向かう大洗学園も例外ではない、試される大地…試しすぎだろ。

 

さんふらわあの出港を大洗港から見送った俺はさて、どうしたもんかと暇をもてあました。聖グロリアーナから迎えが来るらしいがそれらしい連絡はまだ無い。

 

試合に向かう戦車道メンバーに向け、激励をしに集まっていた大洗の一般生徒達や大洗の町の人達もポツポツと帰り支度をしている。

 

もちろん彼ら彼女らはこの試合が大洗の廃校撤回をかけたものだとは知らない、生徒会は全国大会優勝記念による、最後の記念試合とだけ知らせた。

 

あの会長らしい。思えば全国大会の時なんかも戦車道メンバーにさえ、負ければ廃校の主旨はギリギリまで伝えなかった。

 

たぶん、正解なんだろう。大洗の一般生徒や大洗の町の人達がこの事実を知ればこの船出の際の激励もまた違った形になっていただろう。

 

期待が膨らみ、希望が混じり、そしてそこには重圧が生まれる。

 

応援なんてしょせんプラスな事ばかりじゃない、なんならされた方はプレッシャーが確実に生まれるし、マイナスの側面だって必ずある。

 

そもそも実際に試合をするのは彼女達だ、どんなに応援をした所で、何も出来ない事は今までの俺が一番よくわかっている。

 

「優勝記念…最後の試合かぁ」

 

「なんか急な試合だよね?」

 

「ギリギリで相手側の都合がついたんだって」

 

適当にしゃがみこんで聖グロリアーナからのアクションを待っていると、帰ろうとしている大洗生徒達の会話が聞こえてきた。

 

「でも…なんか変じゃないかな?戦車道全国大会の時だって、実は廃校がかかってたって聞いたし、今回も何かあるのかも?」

 

「まぁ…あの生徒会だから」

 

はい、あの生徒会ですからね…。もう日頃からいろいろとやらかしまくってるからね、そりゃ感付かれもする。

 

「でも…ま、その生徒会だから、最後まで好きにやらせようよ、私らは帰って来た時の為に何か旨いもんでも用意してやろうか」

 

「うん、私…水産科の友達に声かけてみる!!」

 

「あ、じゃあ私は農業科に、なんか学園艦を降りる前に食材はたっぷり下ろしたから、まだ備蓄があるって」

 

そんな会話をしながら、彼女達は俺の前を通り過ぎていく。

 

「………」

 

戦車道全国大会。カメチームの38(t)は大洗一般生徒の義援金によりヘッツァー改造キットを購入した事でヘッツァー仕様へ、Ⅳ号もシュルツェンを装着したH型へ改造された。

 

…応援なんてプラスの側面ばかりじゃない。ただ、それをマイナスでしか無いと決めつけるものでもないのかもしれない。

 

「…大洗の生徒もなかなかたくましいものですね」

 

「アッサムさ…アッサムさん?」

 

「…なぜ二回言い直すのです?」

 

ふと俺に向かって歩いて来た彼女を見て…うん、アッサムさんかと思ったけどたぶん違うなこの人、なんか頭に二本の木の枝をハチマキで固定して引っ付けてるし。

 

「…いえ、私は…そうね、セイロンと、そう呼んで貰えないかしら?」

 

「あ、はい、セイロンさん」

 

良かった…俺の知るアッサムさんはデータマニアではあるが聖グロリアーナでも貴重なツッコミ役でこんな八つ墓スタイルを決める人ではない。

 

…はいそこ、お嬢様学校でツッコミ役が必要な疑問は置いておくこと。

 

「…あっさり了承されると、それはそれで複雑なのですけど」

 

「…で、なんですか?その格好」

 

「この大洗の制服ですか?ふふっ、潜入偵察はなにも大洗学園の専売特許という訳ではありませんよ」

 

…いや、その八つ墓スタイルの事を言ってるんですけどね、得意気にクルリと一回転する優雅さも全部台無しにする二本の木の枝とハチマキが強すぎる。

 

「今の私は大洗学園のセイロン…と、そう呼んで下さいな」

 

「大洗学園に紅茶の襲名制度はありませんけどね」

 

まぁ自分をカエサルだとかエルヴィンだとか名乗ってる奴もいるし、セイロンが大して目立たないのが悲しいなぁ。

 

「ちなみに設定はあなたの同級生とかはどうでしょうか?」

 

「もう設定って言っちゃってるじゃん…。そもそもセイロンさんは三年生でしょうに」

 

「あら?大洗学園のセイロンはあなたの同級生、それでいいじゃありませんか。それとも、私は同じ歳には見えないと?」

 

「いや、そんな事はまったくないんですが」

 

なんならこの人、身長的に小さめなので年下と言われても納得してしまう。

 

「マックスとはたまたま家が近所で小さい頃から一緒に遊んだ幼なじみみたいなもの…えぇ、ではこれでいきましょうか」

 

「ちょっと…俺に存在しない記憶植え付けるの止めてくれません?」

 

突如八幡の脳内に溢れ出した、存在しない記憶ーーー!!

 

「私、設定からしっかりと入るタイプなので」

 

「セイロンみたいな幼なじみが居たら俺の学園生活はさぞ華やかだったでしょうがね…」

 

「そ、そうかしら…」

 

もじもじとしおらしく、彼女はハチマキをほどいて八つ墓スタイルを止める。…はっ!そうだ、この人セイロンじゃなくてアッサムさんじゃん!!

 

危ない危ない、危うくセイロンと小さい頃に遊んだ存在しない記憶まで溢れ出てくるまであった。潜入能力…恐るべし。

 

でも幼い頃に遊んだセイロンもしっかり頭にハチマキで木の枝二本固定してんだよなぁ…、ちょっと八つ墓スタイルが強すぎる。

 

「てか、大洗の制服なんて持ってたんですね」

 

「各高校の制服を抑える事は潜入偵察の基本ですから、大洗もそうではないのですか?」

 

いやぁ…こっちは半ば趣味というか、半ば所か八割は秋山の趣味なのでは?と。

 

「各高校の制服と先ほどの擬装、これでも私、見つかった事はないんですよ?」

 

「ザルすぎる…」

 

なんなの?他所の学園の生徒全員ゲノム兵かなんかなの?「気のせいか…」の一言で全て解決するの?

 

「…ん?というか、そもそも今って俺を迎えに来ただけだから別に変装する必要なんて無かったのでは?」

 

「いえ、それは…ちょっと着てみたかったんです」

 

…秋山もそうだけど、女子ってやっぱり他所の学校の制服に興味があったりするもんなんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

聖グロリアーナへの移動は彼女達の保有する爆撃機を魔改造した旅客機、ランカストリアンによって速いものだ、たぶんサラマンダーよりもずっと速い。

 

サンダースのスーパーギャラクシーもそうだけど、お金のある学園艦ってこういう事普通に出来ちゃうからね…。

 

空路で戦車と北海道とか、貧乏な大洗にとって発想すら出来ない悲しさ。

 

アッサムさんに案内されて通されのは前回、エキシビションマッチの打ち合わせでも使われた紅茶の園。

 

…しかし聖グロリアーナに来たのはこれが初めてという訳ではないが、今回は前回とは訳が違う。

 

「待っていたわ、マックス」

 

「ダージリンさん…」

 

ダージリンさんはその紅茶の園で俺を待ってくれていた、傍らにはペコも居る。

 

「お茶会の準備は済んでいてよ、それとも…ここに来るまでにまたマックスコーヒーでも飲んでいたのかしら?」

 

「…まさか、こう見えてマッ缶も飲まずに駆け付けたんですよ」

 

「ふふっ、あなたがマックスコーヒーも飲まずに来るなんて…よほど私達のお茶会が楽しみだったのかしら」

 

いや、お茶会で飲むって確定してるのにマッ缶腹に入れるのは利尿作用的にね…。てか、この人俺が四六時中マッ缶飲んでるって思ってない?

 

「それとも、例の相談がよほど大切な事なのかしら?」

 

「………」

 

核心をつこうとする一言、ここまで来たら腹の探り合いは最早時間の無駄ともいえるだろう。

 

「…大洗学園は廃校撤回の為の試合が決定しました、場所は北海道、相手は大学強化チームです」

 

「そう」

 

「大学強化チームといえば、島田流家元の娘さんが隊長を勤めてますね」

 

ダージリンさんの表情を見るとこの情報は知っていたのか、アッサムさんの情報収集能力もさすがだ、あんな変装なのに。

 

「試合形式は殲滅戦、このままじゃ大洗は8両で30両の相手と戦う事になります」

 

「は、8両対30両で殲滅戦ですか!?」

 

ペコの驚き具合からもこの試合形式がどれほど異常なのかはよくわかる。いや、そもそも試合の体裁すら成り立たない戦力差だ。

 

「そこでダージリンさんにお願いがあります」

 

「…何かしら?」

 

「…聖グロリアーナの力を貸して下さい。大洗には戦車も人も足りない、正直…このままじゃ勝ち目が無い」

 

深々と頭を下げる、なんなら土下座だってしても良いが…土下座なんてものは見方を変えれば腰が低いだけの脅迫みたいなものだ、この人を相手にそれはしたくなかった。

 

「…マックスさん」

 

だから、今の俺にはこれしか無い。頭を下げ、ただ懇願する。恥もプライドもとっくに捨てた俺だが、この願いには嘘も偽りも無い。

 

「…頭を上げなさい、マックス」

 

「………」

 

ダージリンさんに声をかけられ、恐る恐る頭を上げる。不安そうな表情のペコ、チラリとダージリンさんの様子を伺うアッサムさん。

 

そして、彼女は手に持っていたティーカップを静かに置いた。

 

「残念ながらこれは大洗学園の問題よ、聖グロリアーナとして、あなたに協力できる事はないわ」

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