劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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ガルパンの影響で紅茶飲み始めた人も居ると思います!!
…居ますよね?
俺ガイルの影響でマックスコーヒー飲み始めた人も居ると思います!!
…居るよね?


かくして、秋の詩は各校へ届けられる。

短く吸った息を飲み込む。

 

…まぁ、そうだろう。ダージリンさんの答えを責めるつもりは無い、俺の申し出はひどく自分勝手なものだ。

 

そもそも他所の学園艦の窮地に聖グロリアーナが手を貸す理由が無い。

 

「それで、話は終わりかしら?マックス」

 

「…そうですね、いきなり不躾な事を言ってすいませんでした」

 

「…そう」

 

少しだけ目を伏せたダージリンさんが再び紅茶を手に…と、思ったら中身がもう空だったのか、ペコに視線を送る。

 

「ペコ、紅茶のおかわりを貰えるかしら?」

 

「ダージリン様!!」

 

だがペコはおかわりのティーポットも手に取らず、ダージリンさんに向けて声をかける。

 

「…なにかしら?」

 

「あ、あの…、本当に大洗に協力は出来ないんですか?今回のやり方はあまりに酷すぎると思います」

 

「そのやり方をしているのが文科省と聞いているわ、そんな中で聖グロリアーナが大洗に協力すれば…どうなるかわかるでしょう?」

 

間違いなく文科省から目をつけられる。聖グロリアーナにとって、大洗に協力する事はデメリットでしかない。

 

格式あるお嬢様学校として名高い聖グロリアーナだ、平凡高校の大洗と違って文科省もおいそれと手出しは出来ないだろうが…それでも、今後なにかしら仕掛けてくる可能性だってある。

 

「私達の勝手な都合で学園艦全体を巻き込む訳にもいかないもの、そうでしょう?」

 

「…それでも、私はひどいと思います」

 

「いや、無理言ってるのはこっちの方だ、ペコが気に病む事じゃない」

 

ダージリンさんの言葉は正しい、なにも聖グロリアーナの生徒全員が戦車道関係者という訳でもない。

 

大洗学園の一般生徒、そして俺の親父やお袋も含めた大洗の学園艦で仕事をしていた人達すら巻き込んだのが文科省だ。

 

事態は聖グロリアーナの戦車道チームが大洗に手を貸した…だけで済まなくなる可能性も十分にあり得る。

 

それは聖グロリアーナ以外の学園艦にも同じ事が言える。例えば俺が今から他所の学園艦に助力を頼んだところで返ってくる返事はダージリンさんと同じだろう。

 

…元々が薄い希望ではあったが、こうして現実に直面してしまうとキツイものがあるな。

 

「ペコ、紅茶のおかわりと…それと彼にも例のお茶を。マックス、あなたも座るといいわ、お茶会を始めましょう」

 

「…失礼します」

 

ダージリンさんに言われて座りはしたものの…どんな感情でお茶を飲めば良いのかもわからず出されたお茶を見つめてしまう。

 

「…まず一口飲むと良いわ、心が落ち着くもの」

 

そんな俺の気持ちを察してくれたのか、ダージリンさんが優しく微笑んでそう促してくれた。

 

「いただきます…」

 

そうなるとさすがにこれ以上紅茶とにらめっこを続ける訳にもいかず、まずは一口。

 

「…美味しいですね」

 

一口飲むと意識もせずに声が出てしまった、これまでのお茶会でいろいろと紅茶を飲ませては貰っていたが、また違った味わいだ。

 

「今日はとっておきのカモミールが手に入りましたので。厳密にはカモミールティーは紅茶というよりハーブティーなんですが、心をリラックスさせる効果があるんですよ」

 

「へぇ…そうなのか」

 

ペコの解説に生返事を返すのはカモミールティーの効果を信用してないというより、単に俺の知識不足が原因だろう。この手の効果はどうしてもプラシーボ効果なイメージが強い。

 

「ちなみにリラックス効果の他に不眠改善、鎮痛、抗炎症作用、風邪の初期症状の緩和、ストレスによる胃潰瘍や過敏性腸症候群にも効果があるとされています」

 

「えぇ…なにそれ万能なの?」

 

アッサムさんの追加説明にもうこれ飲んどけば良いんじゃない?的な万能風邪薬感を感じる。

 

「このカモミールティーに限らず、お茶というのは古来、薬として扱われていたものですから」

 

「私達聖グロリアーナが頻繁にお茶会を開く理由がこれでわかって貰えたかしら」

 

うん、要するに何かしら理由つけて飲みたいんですよね…。場末のスナックかな?…思えばあれも北海道、したっけ北海道はなまらヤバい。

 

「どうでしょう?マックスコーヒーも良いですけど、健康の為にもこういうお茶も良いと思いますよ」

 

ペコが自信満々にオススメしてくる。この子、ちょいちょい俺を紅茶党に勧誘しようとするよね…。いや、別に紅茶が嫌いって訳じゃないんだが。

 

「ふっ、マッ缶なめすぎだな。糖分ってのは脳の働きをよくする神経伝達物質のひとつ「セロトニン」の合成を促すし。そのセロトニンは幸せホルモンって言われるくらいには精神をリラックスさせる働きもあったりするんだぜ」

 

だが、明らかにマッ缶を意識したその発言、此方への挑戦と受けても構わんのだろう?

 

「さらにマックスコーヒーには欠かせない練乳、これにはカルシウム、ビタミンB2、パントテン酸があり、どれもなんか身体に良さそうな成分だろ」

 

そしてマックスコーヒーの主な構成は練乳、砂糖、コーヒー。これが身体に悪い訳がないじゃないか!!

 

「そこだけ聞くとすごく身体に良さそうに聞こえるんですよね…」

 

「実際、良い所だけを言っていますからね。データによるとマックスコーヒー1缶の砂糖の量はおおよそ角砂糖6個分です」

 

「…具体的に数にすると重いですね」

 

「彼がマックスコーヒーを飲むのは幸せホルモンであるセロトニンを求めて…でしょうか?」

 

「ちょっと…人の事勝手に分析して哀れむの止めてくれません?好きだから飲んでるだけですよ」

 

「ふふっ、それでカモミールティーはどう?気に入ったかしら?」

 

「そうですね、まぁ…良いと思います」

 

ズズズッ…と気付けばカップが空になるくらいには飲んでいたらしい。

 

「それは良かったわ。ペコ、おかわりを差し上げて」

 

自分から進んでおかわりを要求できる程厚かましくない俺の気持ちを察してか、ダージリンさんがペコに声をかける。…なんだか上機嫌だな。

 

「じつはこのカモミールはダージリン様の提供なんですよ、本来は特別な日にしか出さない秘蔵物です」

 

おかわりを注ぎながらボソッと小さくペコが教えてくれる。…そういえば、とっておきのカモミールとか言ってたが良いんだろうか?そんな秘蔵品をここで頂いてしまっても。

 

「ちなみに特別な日ってやっぱり試合で勝った日とか?」

 

例えば強豪校に勝った時とか、締め切りに間に合った時、仕事に一区切りついた時、そういう日に飲む特別な1杯。なお、仕事に終わりは無い模様。

 

「いえ…その、OG会の方々が来られた日の、その人達が帰った後です」

 

あっ…(察し)。

 

聖グロリアーナのOG会といえばチャーチル会、マチルダ会、クルセイダー会の3会があり、戦車道のチーム運営にさえあれやこれやと口出ししてくるらしい。

 

なんでもその3つ以外の戦車はなかなか購入させて貰えないとの事、しかし資金提供等をして貰っているスポンサーみたいなものなので無下にも出来ない。

 

「心をリラックスさせるにはカモミールティーが効果的なのよ」

 

…うーん、この説得力。この人も裏で苦労してるんだよなぁ。

 

しかし…言われてみればここに来るまでは聖グロリアーナに協力を申し出る事で頭がいっぱいだったし、断られた時は頭が真っ白にさえなった。

 

それほど余裕が無かったとも言える。しかし、こうして落ち着いてみると違和感はたくさんある。

 

…アッサムさん、あの人なんでまだ大洗の制服着てるの?

 

「大洗の制服、気に入ったんですか?」

 

「…あら、ご存知ないのかしら?大洗学園の制服って結構人気があるのよ、みんな着てみたいんじゃないかしら」

 

なにそれ初耳。まぁ聖グロリアーナはブレザーだし、大洗の制服は王道といえば王道のセーラー服だ。…どの層に向けての王道なのかは知らんけど。

 

「私も機会があれば着てみたいものね、どうかしら?」

 

「どうかしらって…そもそもその機会は」

 

大洗が廃校になれば延々に来ないんですが…。それ抜きにしてもこの人も大洗に潜入するつもりなの?なんならもういっそ転校してくれば良いのに…。

 

「…あ」

 

ドクンと心臓が強く鼓動する。自分でもなんとも馬鹿げた発想だとは思うが、決して不可能ではない。

 

「…良いですねそれ、たぶん…いえ、間違いなく似合いますよ」

 

「嬉しい事を言ってくれるわね、ふふっ…この場合、2つの意味でかしら」

 

俺がそのやり方に気付いた事が彼女にもわかったのだろう、ダージリンさんは柔らかく微笑んだ。

 

『聖グロリアーナとして、大洗学園に協力は出来ない』

 

思えば最初からこの人はヒントを与えてくれていたのに、俺の方がいっぱいいっぱいで気付けなかっただけだった。

 

「それにしたって…少し意地が悪いのでは?」

 

「あら?私はただ聖グロリアーナの力を借りたい…と言ったあなたの問いに答えただけよ」

 

いや…ほんとそういうところですからね?あの時はわりとガチでもう詰んだとまで思ったんですから。

 

「それに、今までずっと連絡の一つもくれなかったもの、意地悪の一つくらいはしたくもなるものでなくて?」

 

「…返す言葉も無いッス」

 

いや…本当にね。

 

「えぇっと…つまりどういう事でしょうか?」

 

いまいち状況を把握しきれていないペコが戸惑いながら訪ねてくるので、はて、どう説明するべきか考える。

 

「マックスが素敵なお茶会を開いてくれるという話よ」

 

「…そういう話なんでしたっけ?」

 

「そういう話よ。そもそも、いつも私達ばかりが招待するのも不公平ではなくて?プラウダとはお互い、交互にお茶を楽しんでるのよ」

 

いや、わりといつも強引に呼ばれてる感はあるんだけど…、だが言われてみれば確かに。貰ってばかりというのも元ぼっちとしてのプライドに関わるというものだ。

 

ぼっちは借りパクされる事はあっても借りを借りっぱなしで終わらせる事はしない。…それを踏まえると、またこの人には大きな借りを作ってしまった事にはなるが。

 

「…そうですね、正直お茶会とかそういう人が集まるパーティー的なノリの主催なんてやった事ありませんが、今回は会のお題目だけははっきりしてますし」

 

「…えーと、それは?」

 

「【大洗学園への転校生の歓迎会】、…この場合新歓コンパじゃなくて転歓コンパになるんですかね?」

 

「そもそもコンパとお茶会は違うものです」

 

いや、歓迎会と飲むってキーワードが組み合わされるとそれはもんコンパみたいなものなのでは?春先の大学生が駅前で鬱陶しいアレである。

 

学園艦として協力が出来なくても、個人として協力が出来るなら。

 

簡単に言ってしまえば、大洗学園に転校し、大洗の生徒として試合に参加するのであれば文科省も文句は言えないだろう。

 

「そもそもコンパと言ってもアレですから、転校生も交えてレクリエーションでちょっと試合してその後お茶会する超健全なやつ」

 

「…なぜかしら?健全を強調されると途端に逆に不健全に感じてしまうんですが」

 

それに関しては超同意、そもそも本当に健全だと言うなら健全なのを売り文句にしないのでは?

 

「大洗学園への、転校生歓迎会…、ダ、ダージリン様、あの…先ほどはすいませんでした。私、何も考えずにダージリン様にあんな態度を」

 

その言葉の意味に気付いたペコが慌ててダージリンさんに頭を下げる。聖グロリアーナが大洗に協力しないと話した時、一番反対していたのが彼女だった。

 

「いいのよペコ、あなたのそのまっすぐな所はとても素敵だと私は思うわ」

 

「…ダージリン様」

 

「ですが今後はこういうやり方も学ぶ必要があるわね。幸いにも身近にマックスのようなお手本も居る事ですし」

 

「いや、人を悪い事する手本みたいに扱うの止めてくれません?」

 

そもそも俺よりもさらに身近に良い手本になる本人が何言ってんですか…。俺よりも早くこのやり方に気付いてた人が。

 

「それでマックス…あなたはどういうお手本を見せてくれるのかしら?」

 

「わ、私!参考にします!!」

 

いや、そんなじっと見られるとかえってやりづらいというか…純真無垢なペコの闇落ちの原因にはなりたくないんですけど?

 

「どうもこうも…そもそも学園って縛りを考えなくていいなら、招待状なんてどこにどれだけ送っても自由でしょ?まぁ、お茶会の会場が北海道なんでちょっと遠くはありますが」

 

聖グロリアーナ女学院。

 

黒森峰女学園。

 

プラウダ高校。

 

サンダース大学付属高校。

 

アンツィオ高校。

 

継続高校。

 

知波単学園。

 

「向こうが大学選抜チーム…大学生のオールスターチームなら、こっちは当然、高校生オールスターチームで組むべきだ」

 

厳密には高校生オールスターといっても大洗が今まで関わった学園艦の中で…という話だが。いや、さすがにたいして関わりの無い学校が来てくれるとも思えないし。

 

「…す、すごいメンバーが集まりそうですね」

 

「まぁ集まってくれればの話だけどな…」

 

結局はそこだ。もちろん転校といってもこれから大洗にずっと居て貰う訳じゃない。あくまで短期転校として、一時的に大洗の生徒になって貰うにすぎない。

 

それでも、わざわざ他所の学園艦の為に北海道まで駆けつけてくれる学校がどれだけあるかって話だが。

 

「あら?今さらその手の心配をする辺り、あなたもまだまだのようね」

 

「…ダージリンさん」

 

「もし大洗学園がこのまま廃校になるのなら、私はあなたを聖グロリアーナに転校させるつもりだったのよ」

 

「いや、転校先は選べませんし、そもそも聖グロリアーナ女子校なのでは?」

 

「…ふふっ、それはどうかしら?」

 

いや、怖いんでその笑顔止めて貰っていいですか?具体的なやり方を一切説明しないのが逆に怖いよぉ…。

 

「それでも私はこのお茶会に参加させて頂きますわ。勝利を友の為に、友人であるみほさん達の窮地に動かない理由はないもの」

 

「…ありがとうございます、頼りにしてますよ」

 

「知ってるわ。この大洗の窮地に、一番に私達聖グロリアーナを頼って来てくれたんですものね」

 

…単純な戦力なら、黒森峰の方がおそらく強いだろう。

 

「そっちは見事にフラれましたけどね」

 

だが、言われてみれば確かに。大洗の窮地で他所の学園艦に協力を頼むに当たり、真っ先に思い浮かんだのはこの人だ。

 

もちろん、隊長として頼りになるのは間違いない。だが、本当にそれだけで俺はこの人を頼ったのか?

 

「なら、次は私がきちんと答えられる告白を用意しておく事ね」

 

「…善処します」

 

…まぁ、今はこれからの試合に集中するのが先だろう。

 

「それで各高校への招待状なのだけど…文科省の目がある以上、少し暗号化した方が良いのではなくて?」

 

「はぁ…?それはアレですか、なんか格言っぽくニュアンスを利かせるやつで?」

 

「あなたは私をなんだと思ってるの?」

 

ほんと、なんだと思ってるんでしょうかね…。

 

 

 

 

 

 

こうしてダージリンさんは一つの詩を綴る。

 

『秋の日の

ヴィオロンのタメ息の

ひたぶるに身にしみて

うら悲し

北の地にて

飲み交わすべし』

 

 

 

 

 

それはきっと…とても熱い紅茶になるだろう。




おまけ【カモミールの花言葉】

「すまん、五十鈴、いきなりで悪いが少し聞きたい事がある」

『比企谷さん?何か問題でもありましたか?』

「いや、問題って程じゃないんだが、カモミールの花言葉がちょっと知りたくてな」

【あぁ、それとマックス、カモミールには素敵な花言葉があるのよ】

とはダージリンさんの言葉だが、結局その花言葉がなんなのか、そういえば聞けてなかった。

いや、なんか聞こうとしても上手く格言ではぐらかすんだよあの人、あんなのもう格言バリアじゃん。

『カモミール、カミツレの花言葉なら前に一度、教えたはずですが?』

「…え“」

『ふふっ、大洗に戻ったらまた華道教室のやり直しですね』

いやぁ…それはちょっと…ね?てか、華道と花言葉ってそこまで関係あるの?

「あー、えと、それでカモミールの花言葉なんだが…」

『そうですね、いくつかありますが…中でもとても素敵で、今の私達にとっても大切な言葉があります』





【逆境に負けない・苦難の中に力がある】
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