劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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その為に、比企谷 八幡は大洗学園被服科を訪ねる。

これは大洗学園に限った話では無いが学園艦には数多くの学科が存在する。

 

俺や戦車道メンバーも含め、多くの生徒は普通科に所属しているが学園艦は海上を行き来する船だ、それを一般生徒だけでは運航出来ないのが当然だろう。

 

そこで割り振られている学科はーーー。

 

船舶科。

 

農業科。

 

水産科。

 

商業科。

 

栄養科。

 

情報科。

 

被服科。

 

他所の学園艦にはこれ以外にも学科はあるのかもしれないが、メイン所を並べるとここら辺だろう。

 

船舶科は学園艦の運航全般に関わる科目でなんでもそこの生徒達は8時間三交代制で学園艦運航に携わるとか、しかももちろん学生という立場なので授業もしっかりと受けなければならない。うーん…とんでもブラック。

 

一応、学費は免除されているが…まぁ、割には合わない。授業受つつ、8時間学園艦を動かしての生活とか、あの人達いつ寝てるの?

 

そして農業科と水産科、栄養科の生徒達は海上生活において必要不可欠な【食】を担当している。

 

場合によっては何日も港を離れる生活をしている訳で、そうなると学園艦に住むおよそ三万人の食糧の確保が必要になってくる。

 

もちろん港に着ければそこである程度の食糧は確保できるが、どうしても日持ちはしないので、農業科や水産科の食糧提供は必須レベルだ。

 

そして栄養科、海上生活では崩しがちになるだろう栄養バランスの管理が重要なのは其麦わら海賊団のコックが証明してくれている。

 

しかし、今俺にとって必要なのはそれら食を支える学科でもなければ、当然船舶科でもない。そもそもここ、陸の上だし。

 

「被服科の生徒は…ここか?」

 

生徒会から貰った資料は旧校舎の生徒達が寝泊まりしている空き教室のリストだ。奉仕活動を条件に一人部屋も頂いた俺とは違い、基本的に生徒達は数人での相部屋か、外でのテント生活を余儀なくされている。

 

被服科。学園艦の運航に携わる船舶科や食に関わる学科に比べてどうにも地味なイメージがあるが、大洗学園の衣食住の衣を担当する学科だ。

 

およそオシャレには疎い俺だが、その担当いる?と聞かれれば…まぁ、必要無いとは言えない学科ではある。

 

そもそも港に着くのが不定期なのだ。最悪、天気が悪いと何日も同じ服を着る可能性だってある。

 

というか学園艦がそもそも季節感が無い、戦車道全国大会の準決勝でプラウダと戦った時のように雪の降る地域への移動だってある。

 

そこで被服科の登場だ。夏物、冬物なんでもござれ、春夏秋冬、オールシーズンに対応可と学園艦内の衣服の多くはここで生産されている。

 

まぁ武部ぐらいオシャレに気を使うやつからするとどうしても被りがあるらしいが…俺はあまり気にしない。

 

そもそも陸に上がって見てみてもユニでクロなブランド着てるやつとかごまんといるし、その理屈ならユニでクロブランド着てるやつ全員被りになるの?…恐ろしくてもう外歩けねぇよ。

 

「………」

 

目当ての教室に着いたと思うのでとりあえずノックをしてみる…が、特に返事が返って来ない。

 

留守か…、あまり時間が無いのでこんな所でタイムロスはしたくないんだが。

 

ダメ元でもう一回ノックをかます…が、やはり返事が無い。ただのしかばねさんでも「へんじがない、ただのしかばねのようだ」と返事してくれるのに。

 

…仕方ない、出直すかと引き返そうとしたらガラガラと空き教室のドアが開いた。

 

「…何?」

 

長身で長い髪をポニーテールで纏めた女子生徒がいかにも不機嫌そうにこちらを見ていた。

 

「…あぁ、いや」

 

これ、完全にヤンキーじゃん、「顔は止めな、ボディにしときなよ、ボディに」とかいかにも言い出しそうな系のヤンキー女子。

 

慌てて生徒会の資料を見る。え?被服科の生徒でいいんだよね?ヤンキー科じゃなくて?なんだよヤンキー科って、めっちゃ母校に帰りそう。

 

「被服科の生徒…であってる、よな?」

 

「…そうだけど、何?」

 

女子生徒は益々不機嫌そうにこちらを見てくる、やっべーよ、腹パンを予測してお腹にジャンプでも仕込んどいた方が良かったか…。え?サンデー?今のサンデーじゃペラペラで防御力的に…ね。

 

とはいえ、ここでジャンプを腹に仕込みに戻る訳にもいかない。予想とは違ったが被服科の生徒である事に間違いは無いようだ、ここはタイムロスにならなかった事を素直に喜ぶべきだろう。

 

「…被服科の生徒に頼みたい事がある」

 

「無理。そもそももう学校も無いんだから、学科とか関係なくない?」

 

おぉ…バッサリ。ヤンキー流会話術なのそれ?…そもそも普通科以外の生徒とそこまで関わった事は無かったが、こうまではっきりと断られるとはちょっと想定外だ。

 

船舶科も農業科も、間違いなくブラック科目ではあるだろうが、それでもそこに所属している以上、好きだから…という理由が強いと思っていた。

 

船を動かすのが好きだから、農業をするのが好きだから、あるいは将来の為、という事とあるだろう。じゃなければあんなブラック環境、すぐにバックレるはずだ。誰だってそーする、俺ならそーする。

 

なら、被服科の生徒ならもっとわかりやすく、服を作るのが好きだったり、将来そういう進歩を見据えている事もあるだろう。

 

「悪いけど私バイトあるから、もうそんな暇ないの」

 

「…バイトしてんのか?」

 

あぁ、確かにそれもこの退屈な仮校舎住まい生活の有意義な時間の使い方ではあるんだろう。

 

「…転校先で必ず被服科に入れるとは限らないでしょ、そうしたら学費も必要だし」

 

何この子超真面目、見た目ヤンキーなのに学費の為にバイトしちゃう系女子だったりするのか。

 

実際、船舶科は学費免除とは聞くが他の科目もなにかしら特典はあるのだろう、このポニーテールの女子のように、それらが必要な生徒も居るという事だ。

 

…文科省はそこん所、ちゃんと考えてんのか?

 

だが、その言葉を聞けて安心した。俺の目的と、彼女の行動理由は矛盾しない、むしろ最適解にもなりえる。

 

「なら、話くらいは聞いても損は無いはずだ、話だけならタダだろ?」

 

「それ、詐欺師の常套句にしか聞こえないんだけど?」

 

いやいや、ほんと話だけだからさ。さきっちょだけ、さきっちょだけだから、ね?

 

「…まぁ良いけどね、話くらいなら」

 

かかった。…じゃなくて、ほら、別に高い絵画買わせたりしないからね。

 

「で、何?私らに用って事は何か作って欲しい服でもあるの?」

 

「あぁ、それも大至急でだ、悪いけどあまり時間がなくてな…」

 

こういうなるはやの短納期な依頼は正直、クライアントとしては最低な部類にはなるだろうが、とにかく時間が無いのも事実だ。

 

「ふーん…で、どんなの?」

 

「…どんなのって?」

 

「いや、衣装デザインのイラストとか、そういうのあるでしょ?」

 

…そういうのあるんですか?まぁファッションには疎いんで、基本的に八幡には小町という専属デザイナーがついてるので、そういうのあんまり意識した事無かった。

 

「あぁ…いや、そういうのじゃねぇんだ、欲しいのは制服だ、もちろん大洗のな」

 

もちろん、被服科の生徒が制作する服は私服だけじゃない、そもそも大洗学園の被服科だ、大洗の制服は当然担当している。

 

「は?馬鹿にしてんの?学校無くなるから、記念に欲しいとか、そんなのに付き合ってる暇無いんだけど」

 

…まぁ、普通はそう思うだろう。廃校になる学校、せめて、自分が通っていた学校の制服くらいは残したい。そんなセンチメンタルでグラフティな感情を持つ生徒も中には居るのかもしれない。

 

だが、もちろん俺は違う。なにより、これは前へ進む為の戦いだ。

 

…いや、これ考えたダージリンさんマジ鬼畜にして悪役令嬢!!レベル99!!裏ボス!!!

 

「あー…それはだな、必要なのは男子の制服じゃなくて、ごにょごにょ…」

 

「は?なに?聞こえないんだけど」

 

「…必要なのは女子の制服なんだわ、悪いが大量に」

 

「…バカじゃないの?」

 

怖ッ…今日一怖ぁ…。思わずボディに拳が飛んできそうでお腹ガードしちゃいそうになっちゃう。

 

「いや待て、もちろん俺が使うんじゃなくてだな…転校生が来んだよ、それ用な」

 

…っべーよ、思わず間違って着るじゃなくて使うって言っちゃったくらい動揺してるよ、マジ動揺してるだけだからね?どう使うとか八幡しっらなーい。

 

「転校生って…んなの来る訳無いでしょ、学校、もう無いんだから」

 

「来る」

 

「………」

 

ふとポニーテールの女子生徒は不意でもつかれたかのようにボーッとこちらを見つめていた。

 

「…なんだよ?」

 

「な、なんでも…。ていうか、まだ全然ちゃんとした理由、聞いてないんだけど」

 

まぁ…確かに。言われてみれば今の状況っていきなりやってきた男子生徒が女子の制服を大量に注文しただけだしな。…字面だけ見るとただの変態じゃねぇか。

 

「…まだ一般生徒には秘密の段階だから、口外はしないでくれると助かるんだが」

 

「無駄にベラベラとお喋りをするつもりは無いんだけど」

 

まぁ、彼女には、そして彼女達には話しても良いだろう。俺達とは違う形で、これから彼女達の戦いが始まるのだから。

 

大洗の廃校問題の撤回がかかった試合と、各高校の生徒が転校生という形でその試合に来る、その為に必要な女子の制服、という訳だ。…まぁ、俺の事は別に伏せといていいだろうが。

 

「悪いがクソ短納期な上に予算もこれっぽっちも無い、依頼しに来た奴が言うのもなんだが、仕事としちゃ最低な部類だ」

 

「ほんとにね、このリストに書かれてる全員の制服を、この期間で作れっての?しかも作業場所だった学校も無いんだけど?」

 

渡した資料を眺めながらポニーテールの女子生徒は不機嫌そうだ。その気持ち…よくわかる。生徒会と一緒に活動してたらマジそうなるから。

 

しかし、各高校に必要な制服の数はもちろん、サイズもそれぞれしっかりとリストに記載している辺り、ダージリンさん、どんだけ下準備をしていたのか…あの人なんかもうループ8回くらいはしてるレベルのスペックしてない?

 

…ところでプラウダなんだけど、カチューシャさんの制服のサイズ、あれで良かったんだろうか?絶対ノンナさんの申請だろ。

 

「…必要なら生徒会案件として処理して貰って構わないが、間に合わなそうなら早めに言ってくれ、最悪業者に手配やらなんやらするにも準備がーーー」

 

「は?私らなめてんの?」

 

え?ここに来て睨むの?やっぱ怖ぁ…。

 

「間に合う間に合わないの話じゃなくて、間に合わせるから、今からでも何人か声かけて作業始めるし」

 

「…助かる」

 

大洗学園艦の住人、およそ三万人の衣を担当し続けた彼女達だからこそ言える、自信がそこにはあるように思えた。

 

「あぁ、ちょい待ち…あんた、もしかして比企谷って奴?」

 

「…え?あ、まぁ…そうだけど」

 

そうだけど、さっきも言ったが俺に被服科の知り合いは居ない、なんなら他のどの学科の知り合いも居ないまであるが。

 

そもそも普通科も戦車道メンバー以外の知り合いなんてたいして居ないんだが、このポニーテールの女子生徒とは間違いなく初対面のはずだ。

 

「そう、さっき生徒会って言ってたし、やっぱあんたがそうなんだ」

 

そう言うとポニーテールの女子生徒は教室の奥からなにやら袋を持ってきた。

 

「…はいこれ」

 

「いや、なにこれ?」

 

袋の中に手を突っ込んで中を取り出してみると。

 

「…これ」

 

「生徒会に頼まれてたから、本当は北海道に送るつもりだったけど、本人が居るなら直接渡せばいいし、サイズも調整できるから」

 

袋の中身はパンツァージャケットだ。

 

彼女達大洗のメンバーが試合で着ていた戦車に乗る為の、大洗学園のパンツァージャケット。

 

ただ一つ、大きな違いをあげるとすれば彼女達はスカートだが、これにはズボンが入っている。…いや、まぁそこは当然なんだが。

 

つまり、これはーーー。

 

「男子用のパンツァージャケット、になるのか?」

 

「私ら被服科が最後の仕事だと思って気合い入れて作ったんだから、まぁ…最後の仕事はまた別になったんだけど」

 

…生徒会。あの人達、これを被服科に依頼していたのか、あー…もう、本当にやってくれる。

 

「…いや、それだって最後の仕事にはならねぇよ」

 

「……そ」

 

「あぁ、だってそもそもの話、仕事に終わりなんてものは無いからな、やってもやってもまた新しい仕事が増えていく、それが仕事ってもんだろ」

 

「そのパンツァージャケット、返してくんない?」

 

ヤダ、絶対ヤダ。

 

「…だから、ま、来年うちの妹が高校に上がるんだわ」

 

「…?」

 

「そん時はまた最高の制服、仕立ててくれ」

 

「…いいよ」

 

最高の制服を着た最高の小町、こんなのもう…最高の暴力かよ、ヤベェな、それだけでもうモチベーションマックスなんだけど。

 

「…ふーん、あんた妹居るんだ、私の弟も来年高校に上がるから同じ歳になるね」

 

「…あ?」

 

小町と同じ歳の男子?なにそれ虫なの?間違いなく悪い虫だ。ヤベェ、小町に虫除けスプレー持たせないと…。

 

「…あ?なに?なんか文句あんの?」

 

…怖ぁ、初対面なのに今日1日で怖ぁ記録をどんだけ更新し続けているのか、このポニーテール女子生徒さんは。

 

しっかし姉住さんと良い、このポニーテール女子生徒といい、世の中シスコン、ブラコン率ちょっと多くない…?軽く引くんですが。




ずーっと虎視眈々と狙っていた特別ゲスト!まさかまさかの八幡と小町ちゃん以外の俺ガイルキャラが彼女になるとは…。
いや、まぁあくまでメインはガルパン時空なのでレギュラーの予定はありませんが。
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