劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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ぱっぱらぱっぱ、ぱっぱらぱぱぱぱ、ぱっぱらぱっぱ、ぱっぱらぱぱぱぱ。

「悪いなのび◯、この戦車三人乗りなんだ」


突然だが、比企谷 八幡はサッポロラーメンが食べたいと言い出す。

いきなりサッポロラーメンが食べたいといいだして、思い立ったらすぐ行動するのがうちの家族なんだ。

 

さっそくジャンボジェットで北海道へ。週末の夕方だよ。

 

秋風は寒かったけど、あついあついバターラーメンのうまかったこと!!あのうまさはとても言葉ではあらわせないね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうだ、北海道へ行こう」

 

「というより、もう着いてますが」

 

俺の唐突な語りにもきっちりと突っ込みを入れてくれたのはアッサムさんだ。彼女の言葉の通り、北海道へ到着した。

 

大洗学園の本隊からは別行動を取らせて貰っていた俺はかなり遅れての現地入りとなったが、さすが聖グロリアーナ、ランカストリアンでひとっ飛びだ。…ほんと、申し訳ないです。

 

とはいえ、時間的にそろそろ夕食時、だが今回の場合はむしろそれが良かったとさえ言える。

 

「いや、こんな形で北海道に来るなんて思わなかったんで、おかげで夢が一つ叶いそうです」

 

「夢…ですか?何か北海道に特別な思い入れでもあるんですか?」

 

「あっつあつのバターラーメンの自慢話をよく聞かされてましたから」

 

「…はぁ?誰にですか」

 

そりゃ髪の毛が特徴的な彼に決まっている。自慢話の時には専用BGMまで引っ提げてくるあのプレゼン能力に、北海道でバターラーメンを食べたいと思わないのび君は居ないだろう。君、どこでも行けるドア持ってたよね?

 

「バターラーメン!そういうのもあるんですの!!」

 

ラーメンと聞いてどこからかスピードスターの如く現れたのはローズヒップだ。現れたというか、まぁ…同じくランカストリアンに搭乗してたからね。

 

「マックスさん、私も!私もご一緒いたしますわ!!」

 

「ローズヒップ、あなたはまだやることが残っているでしょう…」

 

「そうでしたわ!ですが…バター…コーン…ラーメン…」

 

うーん…わかる。味噌ラーメンにバターが溶けていき、濃厚になったスープとシャキシャキなコーンを一緒に頂く、そんな贅沢があっても良いのか?いや…良い。

 

うわ言のようにぶつぶつと呟くローズヒップには悪いが、聖グロリアーナは各高校との連携の中心だ、試合に向けての打ち合わせやらなんやらでやることはまだまだ多いのだろう。

 

ダージリンさんやペコがここに居ないのもそのせいである。ちなみにそれらのやるべきことを全て丸投げしてバターラーメン食べる気満々な奴が居るらしい。

 

…そういえばローズヒップとはラーメンを食べる約束をしてたな。あの時はまた今度と適当に誤魔化したが、結局、エキシビションマッチが終わった後は廃校問題もあり、その約束もうやむやになったままだ。

 

五十鈴としたラーメン屋巡りといい、ローズヒップといい、みんなそんなにラーメンが食いたいのかね…。そりゃ食べたいよね!だってラーメンは究極にして至高なんだし!!

 

「ではマックスさん、私達はまだやることが残っているのでここで、試合会場はわかりますね?」

 

「アッサムさんのデータがありますから、こっからなら歩いて行ける所ですし」

 

さすがデータ主義とダージリンさんに言われるだけはある、試合会場の細かいデータをまとめてくれたのだ。

 

「しかし、本当に手伝わなくてもいいんですか?」

 

「えぇ、文科省の目もありますから、むしろ今後は私達聖グロリアーナだけで話を進めるのが得策かと」

 

まぁ、これ以上俺が他所の学園艦で何かしようとしてれば目立つだろうしな、ただでさえ文科省にとって叩けば埃が出る対象なんだからここは大人しく甘えよう。

 

「まぁ、おかげでダージリンは忙しいでしょうけど、本当はここにも見送りに来るつもりだったんでしょうが」

 

さすがに中心人物であるダージリンさんが抜けるのはキツかったようで、本人だいぶ拗ねてた、なんなら体感的に格言五割増しくらいで。

 

「しかも、オレンジペコも巻き添えにしてましたからね…」

 

「あの人マジ大人気ねぇ…」

 

「? ダージリン様程の大人のレディの方、私は知りませんの?」

 

はてな、と首を傾げるローズヒップ。…うん、君はそのままの純真無垢なままで居て欲しいと願う。

 

「では、これ以上ダージリンが拗ねる前に私達も帰りますよ、ローズヒップ」

 

「はいですのアッサム様!…ですが、バターラーメン」

 

元気いっぱいな返事の後、未練たらたらに口走りながらローズヒップもランカストリアンに戻っていく。

 

「…仕方ねぇな」

 

今度会ったら、あついあついバターラーメンについてたっぷり話をしてやろう、もちろん【比企谷 八幡が自慢話をしている時に流れる曲】をぱっぱらぱっぱと専用BGM付きでね!!

 

いや、まぁ…どのみち試合の時にはまたここに来る事になるからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

 

「広っ…」

 

夕食時とは言うが、せっかく近くまで来た事だし、夕食前に事前偵察も兼ねて試合会場を見に来てみたのが間違いだったか。

 

アッサムさんから受け取った試合会場のデータを見るが今回の試合会場は戦車道全国大会の時と比べても広い。

 

平原はもちろん、森、高台、山岳地、中でも異質なのは潰れた遊園地跡だろうか。とにかく多種多様なフィールドが用意されている。

 

会場を決めたのは大学選抜側らしいが…これもプロリーグの試合仕様となっているのか?

 

さすがにこれ全部を回りきるのも不可能だし、今日の所は大人しく帰っとくか、そもそもが夕食時だし、こんな時間になってまで働く奴なんて居ないよね?

 

「…あ!」

 

「…ん?」

 

「八幡君!!」

 

…居たよ働き者が、地図を広げて試合会場を詮索していた西住は俺を見つけるとてくてくと駆け寄って来た。

 

「えと…その、おかえりなさい」

 

「あー…まぁその、ただいま?」

 

…なにこの会話、夫婦じゃないんだから。いや、うちの両親なんか共働きで二人共帰ってくるの遅いから、なんかもうどっちが先に帰ったかでマウント取り合うまであるんだが。

 

「…用事はもう良いの?」

 

「…今さっき戦力外通告を貰って栄転させられてきたところだ」

 

「そ、そうなんだ、よくわからないけど…うん、大丈夫そうならいいかな」

 

「何が?戦力外通告くらったところ?」

 

「えぇっと…八幡君が帰って来たって事は、進展はあったんだと思ったんだけど」

 

「…まぁ、一応の一段落はついたといえるな」

 

「…良かった」

 

ほっと西住が一息つく。隊長の視点から見れば今回の俺の行動は不確定要素すぎて厄介でしか無いだろうに、彼女はそれ以上、何も聞くつもりは無いらしい。

 

もちろんありがたくはある。聖グロリアーナが動いてくれているとはいえ、試合開始までは時間もあまり無い。最悪間に合わない可能性だってある。

 

要するにまだ作戦ですらない段階だ。そんな絵に描いた餅レベルの話をして、戦力として組み込めとなればそっちの方がよほど破綻してしまうだろう。

 

ただ、やはりそんな彼女を前にして、俺の行動はどうしても不誠実に感じてしまうのだ。

 

「あー…西住は残業か?」

 

「ううん、試合会場の下見をちょっとね」

 

西住さん、首を横に振ってっけどそれを残業って言うんですよ?自覚が無いなら結構ヤバい段階ですからね。

 

「…なら、さっさと終わらせるか」

 

「いいの?八幡君今帰ってきたばかりだし、疲れてると思うんだけど」

 

「知らんのか、仕事ってのは家に帰ってからが本番だったりするんだぞ?」

 

いやほら、家に仕事持って帰ればそもそも残業なんて無いからね。うーん…この思考は結構ヤバい段階ですねぇ。

 

「家に帰ってから…。えへへ、家、そっか…」

 

「…なんだよ?」

 

なんだか急に西住がぽけーと呆け始めたので俺の仕事への解説によって社会に絶望したんじゃないかと心配になってくる。

 

「う、ううん!なんでもないよ!…八幡君、お家が大好きだもんね」

 

「あぁ好きだね、好きすぎて一生家から出ないまである」

 

「…うーん、そこはちゃんと出た方が良い気がするんだけどなぁ」

 

むしろ実家が学園艦内にあるおかげでこの試合に勝てないとお家に一生帰れないんだが?比企谷 八幡の負けられない理由がまた一つ出来てしまったな…。

 

「あっ!そういえばさっき会長とも会ったんだけど…」

 

「…あの人も居るのか」

 

「そんな嫌そうな顔しなくても…それにたぶんもう帰ったと思うんだけど」

 

いや、嫌そうな顔っていうか…帰ってきてそうそうにエンカウントしたくはない相手ではある、逃げようにもまわりこんでくるだろうし。

 

聖グロリアーナの協力と各高校への連携の話はあの人を通す必要はあるが、なるべく西住の前でその話は避けたいというのもある。

 

「それで、この試合…辞退するって選択肢もあるって聞いてきたんだけど」

 

「…あの人何か悪いもんでも食ったの?」

 

一足先に北海道に到着してただろうし…牡蠣にでも当たっちゃた?

 

「たぶん、会長なりに気を使ってくれたんだと思う。…厳しい戦いになると思うから」

 

「…今さらだな、なんなら楽な戦いなんてなかったまである」

 

「…そうだね、うん。八幡君だって諦めてないもんね」

 

「むしろここまで来て辞退なんかしてみろ。戦車道連盟は当然だが、西住の母ちゃんに何されるかわかったもんじゃないぞ、主に俺が」

 

「あはは、そこなんだ…」

 

いや、西住邸から文科省までの大立ち回りをやっておきながら「ごめん、やっぱ無理」とか、大洗を支援する為に動いてくれた西住流への最悪の裏切りになるだろうし…。

 

「八幡君、私のお母さんをなんだと思ってるの?いくらお母さんでもそんな………うーん」

 

「おい、そこで言い淀むな、マジ不安になるから…」

 

君こそ自分の母ちゃんなんだと思ってるの?あの人、あれはあれで娘さんの事めっちゃ気にしてると思うよ。

 

「それに…退いたら、道は無くなるから」

 

「みぽりーん!!」

 

「…ん?」

 

向こうから手を振りながら歩いてくるのは…武部達あんこうチームの奴らか?

 

「私は最後まで…みんなで一緒に戦いたいなって」

 

そんなあんこうチームを見つめながら、西住は決意を固めたかのように呟いた。

 

「…そうか」

 

「うん、みんなと一生懸命、落ち着いて、いつも通りに」

 

「みぽりん、こっちは終わったよー!って比企谷!帰ってたの!?」

 

「今帰ってきた所なんだよ」

 

「もー!帰ってくるなら帰ってくるで連絡の一つでも寄越しなさいよ」

 

「お前は俺のかーちゃんかよ…」

 

何?夕飯片付かないの?今から外でバターラーメン食べるつもりなんだけど。…これ、言ったらますます怒りそうだな。

 

「西住殿、遊園地エリアの探索、完了いたしました。こちらに重点箇所をまとめてみました」

 

「森側も一通りは、優花里さんのようにポイントをまとめれれば良かったんですけど…」

 

「ううん、充分だよ、みんなありがとう」

 

「…というか、なんで私が高台担当なんだ、疲れるんだが」

 

「そりゃあ麻子は視力良いんだから、高い所からならいろいろ見れてお得じゃん」

 

「…比企谷さん、疲れたんだが?」

 

「いや、なんでこっち見て恨めしそうな目してんの?今は夜なんだし、自分で歩け」

 

「まるで朝ならおぶっても構わない…と聞こえるのですが」

 

…なんだかんだ冷泉をおんぶするシチュエーションが多かったせいか自然と夜とか限定しちゃってたよ。…いや、おぶりませんよ?

 

「八幡君はさっき残業って言ってたけど…今日はみんなが手伝ってくれたから」

 

「なるほどな…」

 

それも結局あんこうチーム総出で残業してるだけなのでは?と言いたくならん事もない。

 

ただ、西住にとってはあんこうチームみんなでこうやって何かをする。きっとそれ自体が大切な時間なのだろう。

 

…だから、まぁ。せっかくだから俺からも一つ、提案しても良いのではないか。

 

理由も告げない、作戦に組み込めるかも怪しいギリギリの作戦、その為の単独行動を彼女達は受け入れてくれた。そんな彼女達の為に、不誠実な俺が出来る事。

 

「あー…その。お前ら、夜飯ってなんか食べたのか?」

 

「夕食ですか?いえ、まだですが」

 

「そういえばもうそんな時間なんですね…私もお腹がすいてきました」

 

「ごめんねみんな、こんな時間まで付き合わせちゃって」

 

「みぽりんが謝る事じゃないよ、私達も何かしたかったし」

 

「…そうか、まだ飯は食ってないんだな」

 

うーん…これはもう逃げ場ないですねぇ。いや、自分から言っといてなんだが、こういう時、やはり覚悟の一つでも必要になってくるものだ。

 

「えーと…比企谷さん、どうしたのでしょう?」

 

「なにやら珍しく目が真剣ですね」

 

「相変わらず腐ってはいるが…」

 

そこ、冷泉うるさい。腐っている真剣な目ってなんだよ、ちょうど中和されて標準になれんの?

 

「ば、バターラーメン。…今から食べに行くんだが、なんだったら…その、一緒に…どうだ?」

 

「「「「「………」」」」」

 

あんこうチームの面々が驚いたように顔を見合わせているのを見て、ますます恥ずかしくなってきた。外が暗いのがありがたい、おかげで顔をよく見られずにすむ。

 

「ひ、比企谷殿からご飯に誘われました!!」

 

はいそこ秋山、大声で再確認しない!余計恥ずかしくなっちゃうでしょ。

 

「…まったく、あれだけ溜めておいて、何を言い出すかと思ったら」

 

「もっと普通に誘いなさいよ…もー」

 

いや、男子高校生が女子五人を飯に誘うって、並大抵の覚悟が無いと無理だからね?…てか、よくよく考えたらなんだこれ?そんなシチュエーションある!?

 

「…まぁ嫌なら別にいいんだが」

 

「そんな事ないよ、バターラーメン…とっても楽しみ」

 

「良いですね、せっかく北海道に来たんですから」

 

「しかし…なぜバターラーメンに限定するんだ?」

 

「そりゃ比企谷がラーメン好きだからでしょ、うーん…この時間にバター入りのラーメンとか、なんだかカロリーヤバそう…」

 

「安心しろ武部、バターはラーメンのスープに溶ける、つまり実質バターのカロリーは存在しないという事だ」

 

「それもそうね!!」

 

…いや、言っといてなんだけどそうはならんと思う。料理得意なんだし、それくらいわかってそうなくせにカロリーという現実から目を背けてるな…。

 

「…楽しみだな」

 

「だろ、味噌スープに濃厚バターが溶けて絡み合い、シャキシャキコーンがそれを彩る、もちろん麺にもそのスープが絡み付くとくれば楽しみ以外なにがあるって話だよな」

 

「え?えーと…ラーメンが楽しみなのはそうなんだけど、八幡君がご飯に誘ってくれたから、かな」

 

「…まぁ、今回はバターラーメンだからな、俺としても自信を持って奨める事も出来る」

 

今回に限らず…人をご飯に誘う。というものがそもそも苦手なのだ。

 

不味ければ相手に気を使わせてしまうし、値段も相手が払う金額をついつい考えてしまう。

 

そんな相手の顔色を伺いながら食べる飯なんて、食べた気がしないに決まっている。

 

だから相手をご飯に誘う時は予め下調べでその店に行くのが一番だ。…いや、一回言ったならしばらくは行かなくてよくない?なら誰か誘ってわざわざもう一回行く必要も無いよね?

 

「八幡君のバターラーメンへの信頼がすごい…」

 

そりゃそうだ、バターラーメンのうまさはスネちゃまが自慢話で煽ってくる程だし。そもそもラーメンが究極の食べ物なのだから。

 

だから、きっと、今日はこの一言で締め括られるのだろう。

 

あついあついバターラーメンのうまかったこと!!あのうまさはとても言葉ではあらわせないね!

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