劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
「む~…」
装填手にカルパッチョ、通信手にアリサを加えた比企谷を見て頬を膨らませる少女。
「不満そうですね」
「当たり前よ!なんでまだプラウダが誰も選ばれてないのよ!!」
ノンナに言われて面白くなさそうに答えたのはプラウダ高校の隊長、カチューシャだ。
「普通なら真っ先にプラウダに声をかけるべきだわ、まったく…ハチューシャも見る目が無いわね」
「元々定員オーバーのアンツィオ高校とシャーマン戦車に詳しいサンダース、妥当な判断だと思いますが」
「それくらいわかってるわよ!!」
ノンナに言われるまでもなく、カチューシャにも彼の判断は理解できる。だが、理解は出来たとして、気持ちが納得するかはまた別である。
「…わかってるのよ。む~!!」
「ーーー(ノンナさん!これはもしかして!?)」
そんなカチューシャの複雑な表情を見逃さない。いや、見逃すはずもない。クラーラがロシア語でノンナに声をかけた。
「ーーー(はい、クラーラ。選ばれなくやきもきしているカチューシャ、これが焼きもちです)」
「ーーー(これが日本の焼きもち、カチューシャ様のこんな姿が見られるなんて!焼きもち…素晴らしい!!)」
「ちょっと!二人共日本語で話なさいって言ってるでしょ!ノンナ、クラーラはなんて?ハラショーくらいは聞こえたけど、何が良いのよ?」
カチューシャだって頑張ってロシア語の勉強は続けている、わずかに聞き取れたハラショーの意味くらいは知っている。
「はい、クラーラは焼きもちは素晴らしい、と言っています」
「焼き餅?餅なんてどこで食べたのよ?」
「ーーー(今美味しく頂いている所です♪)」
「なんか上機嫌ね…。そんなに気に入ったなら帰ったらきりたんぽ鍋でもご馳走してあげるわ」
「カチューシャ…それは、いえ、良いですね」
「ーーー(しかし、カチューシャ様のこんな可愛らしい一面を引き出した比企谷さんには感謝ですね)」
「ーーー(はい、これが恋するカチューシャでしか見られない可愛さです)」
「ーーー(ですがノンナさん、それはそれとして)」
「ーーー(えぇ、もちろんわかっていますよ、クラーラ)」
「ーーー(カチューシャ様に焼きもちを焼かせた責任、彼にはどう償って貰いましょう?)」
「またロシア語で…ノンナ!!クラーラはなんて?」
「はい、クラーラは楽しそうですよ、とても」
「そ、そう…?そんなにきりたんぽ鍋が楽しみなのね」
ーーー
ーー
ー
「…砲手、クラーラで」
「急に何でよッ!?」
いや、何でって言われても…何事も命には変えられないっていうかね、もうさっきから背筋がゾクゾクしっぱなしなんですが…。
さっきから俺を見ているカチューシャさんが怖い、何が一番怖いかってそのカチューシャさんを見ている後方の二人が怖い。怖すぎる。
「あの…クラーラさんはロシアの人ですけど、日本語は大丈夫なんでしょうか?」
まぁさっきのやり取りを見ていればカルパッチョの懸念も理解できる、ノンナさんの通訳を毎回挟んでいた訳だし、不安にもなるだろう。
「ん?あー…」
それに関しては問題ないが…、今ここでネタばらしをすれば俺はノンナさんとクラーラにどんな目にあわされるかわかったもんじゃない。…なにこの理不尽。
「大丈夫だろ、たぶんロシア語も時々砲手席でボソッと呟くくらいだろうし」
時々ボソッとロシア語でデレてくれる砲手席のクラーラさんの誕生である。なお、デレるのはカチューシャさんに対してだけの模様。
「大丈夫な要素が何もわからないじゃないの!そもそも…砲手としてはどうなのよ?」
「そこは問題ない…と言いたいが」
そういえば、エキシビションでクラーラの乗る戦車に乗り換え、彼女は砲手となったが、肝心の砲撃は出来なかった。
なんでかって?砲撃する前に次元の彼方から飛んできた砲弾に撃破されたからですが?
いやー、どうやったらヘッツァーの砲塔のあの角度からこっちに砲撃出来たんですかね?河嶋さん、マジで凄腕砲手だなー(ガチ褒め)。
「急にめちゃくちゃへこんでるじゃない!!本当に大丈夫なの…?」
「ーーー」
「もちろん、問題ありません、と…クラーラは言っていますよ」
「…まぁ、心配もしてませんが」
そもそもクラーラは黒森峰の10連覇を阻止して優勝したプラウダ高校への留学生、つまりバリバリの実力者だ。ポジションも元々車長と砲手を兼任している。
「それに、あのエキシビションで悔しい思いをしたのはあなただけではありませんよ、比企谷さん」
「…そりゃそうでしょうね」
俺の指示でクラーラを含めたT-34/85メンバーはあのエキシビションでは終盤はずっと潜伏してた訳で、結局クラーラには砲手らしい仕事は何もさせられなかった。
「…今度は最初から最後まで付き合って貰う事になる。クラーラ、うちの砲手やってくれるか?」
「Понятно」
すまねぇ、ロシア語はさっぱりなんだ。…さっぱりなんだが。まぁ頷いてくれているし、ノンナさんの通訳もいらないだろう。
【砲手:クラーラ】
「そんな訳でカチューシャさん、クラーラをお借りしますよ」
「ふふん、仕方ないわね!ハチューシャがどうしてもって言うんだから、特別よ!!」
さっきまでの不機嫌さは嘘のように上機嫌なご様子だ。ふぅ…これで俺の身の安全も確保されただろう。
「その代わり、一つ条件があるわ!!」
「…えーと、条件というと?」
「この試合が終わったら今度カチューシャ達と一緒にきりたんぽ鍋を食べるわよ!クラーラがお餅を気に入ったみたいなのよ」
「…いや、きりたんぽって餅じゃないんですが?」
「…え?」
確かもち米ではなく普通のお米を使っていたはず、秋田小町とか。…あぁ、小町、小町に会いたいなぁ。
ちなみに茨城県にはあきたこまちはある、これはもういばらき こまちなのでは?いや、むしろひきがや こまちと銘打って大々的に売り出すべき。
「うぅ…えーと」
あ、いかん、俺がひきがや こまちの商品開発プランを熟考してる間にカチューシャさんがちょっと涙目だ。ずっと勘違いしていたのが恥ずかしいのだろう。
「………」
そしてそんなやり取りを隣でジッと見つめるのはクラーラである。
「ーーー」
あまつさえ、ロシア語でボソッとなにやら呟いてくる。ロシア語はさっぱりだが、確実にデレてない事だけはわかる。
ボソッとロシア語で殺意を向けてくる隣のクラーラさん。怖いよぉ…。
「ま、まぁ美味しければなんでもいいんですよね」
「…そうよ!美味しければ良いのよ、また一つ楽しみが増えたわ」
「…また、ですか?」
「もちろんよ、試合に勝つ楽しみは当然だもの」
ふふんと鼻を鳴らしてカチューシャさんは宣言して自分の戦車に戻っていく、試合に勝つ事など当たり前のように。
「まったく…プラウダの隊長はいつも自信満々ね」
「えぇ、それがカチューシャ様の素晴らしい所ですから」
「まぁ、自信が無いよりはずっとマシだけど…って、えぇえ!?」
あ、カチューシャさんが戻ってったの見るなり、シームレスに日本語に切り替えてきた。…この対応の早さ、何か慣れてない?
「えーと…クラーラさん?」
「皆さん、カチューシャ様には秘密ですよ?」
いたずらっ子のように微笑むクラーラに唖然とするアリサとカルパッチョ。
…ま、これ以上の自己紹介は必要ないわな。
ーーー
ーー
ー
「で!よ!そろそろ良いかしら?良いわよね?」
「…いや、良いけど、いや、何が良いんだよ?」
「誰も何も言わないから私が言うしか無いでしょう!操縦手よ操縦手!戦車で一番大切でしょう!!」
まぁ、アリサの言いたい事はわかる。無論、戦車のポジションはどれも重要なものだ。
だが、装填手も通信手も砲手も、兼任しようと思えばやれない事はない、実際、アリサもカルパッチョもクラーラも車長だけでなく、各々兼任している。
だが操縦手は違う。そもそも操縦手が居ないと戦車は動かない、戦車を動かす上で一番重要なのは操縦手だ。
機動力はもちろん、砲手の実力だけじゃどうしようもない砲撃の位置調整も操縦手の腕次第。当然敵の砲弾の回避も求められる。
「普通真っ先に決める所でしょう!わかってるの!?」
「…いや、わかってるんだが」
うーん…そろそろやって来るかと思ってたんだけど、思いの外、全然来ないんだよなあいつ。
「何か宛があるんでしょうか?」
「宛…ってか、操縦手は最初から決めてたんだが」
「はぁ?じゃあさっさと声をかければいいじゃないの!?」
…いや、これに関しては黙ってても向こうから来るもんだと思ってたんで、逆になんか恥ずかしいと言いますか。
「…ダージリンさん」
「ふふっ、それはあなたが直接言うべき事ではなくて?」
見透かしたように微笑むダージリンさんに俺は誤魔化すように軽く咳払いをした。
「いや…まぁ、それはわかってます、どこに居るのかくらいは聞きたいので」
「あの娘なら今も走り回っているんじゃないかしら?もちろん、クルセイダーで」
…新しい土地に来てはしゃでる犬かな?
「…無線とか、繋げれます?」
「えぇ、構いません事よ」
「どうぞ」
そう言うとペコが苦笑しながらも無線機を用意してくれる、むしろこの手際の良さからいって最初からわかってて用意してくれていたのだろう。
それに感謝しつつ、クルセイダーに通信を入れる。相手は当然だが。
「…あー、ローズヒップ、聞こえるか?」
『感度良好でございますよ!マックスさん!!』
…そりゃ良かった、感度良すぎて初手大音量の元気な声が耳に響くくらいだもんな。
「…で、お前今何してんだ?」
『クルセイダーの試運転ですわ!試合でもバリバリ動かせるよう、今から準備してますの!!』
「そうか、悪いがクルセイダーに乗る必要は無いぞ」
『えーと…、それはどういう意味でございますか?』
「…イージーエイトに乗るからに決まってんだろ、操縦手なんだから」
…言わせんな、恥ずかしい。
あまりにも恥ずかしいので無線を切ってしまった、そういやあいつ、試運転とか言ってたけどどこまで行って…。
「…最初からローズヒップに声をかけていれば良かったんですよ」
「いや、エキシビションの時みたいに向こうから来るもんだと思って…」
「チャンスの神様は前髪しかない、覚えておくといいわ」
「そんな前髪しか無い人の髪の毛引っ張るのも気が引けますし」
もし俺がチャンスの神様なら、貴重な前髪を引っ張る奴にチャンスなんぞくれてやる訳がない。…いやほら、俺も頭になんか引っ張りやすそうな毛出てますし。
「もう、そんなだからローズヒップさんも試運転に行っちゃったんですよ」
「…そうか」
そもそも自分から言うべき事だったな、ローズヒップには悪いことをした。
「…ところで、三人共なんか遠くないですか?」
気付けばダージリンさんもアッサムさんもペコもなんか離れてない?というか、ローズヒップは試運転とか言ってたけどどこまで行って…。
「そうね、そろそろ来る頃かしら?」
「…?」
…なんか向こうからものっそいスピードでクルセイダーがこっちに向かって突っ込んで来るんだが。
クルセイダーはスピードもそのままに俺の真横へと急停止、いや、危なっ!!
「真打ち、登場ですわー!!」
そして元気良く登場した暴走戦車娘、ローズヒップはクルセイダーから俺達の前に降りてくる。
「えぇっと…ローズヒップさん」
「…ハラショー」
「…ちょっと、大丈夫なのこの子で?」
困惑する三人には…うん、本当に申し訳ないが、これから試合中はずっと彼女の暴走に付き合って貰う事になるんだから、今のうちに慣れておいてねと、心の中で謝っておく。
三人には悪いが、操縦手は元々最初から決めていた。これも運命だと思って受け入れて欲しい。
「…さっきの一連の動きで大丈夫に見えるか?」
「見えないから聞いてるのよ!?」
「まぁ…大丈夫ではないな」
「…えぇと、マックスさん、やはり私はーーー」
「だからこそ、うちの操縦手はローズヒップだ。安心しろ、こんなむちゃくちゃな動きの出来る操縦手、そうそう居ないぞ?」
「…ッ!?」
だから、ローズヒップにはいつも通り自由に暴走して貰えれば良い、フォローだって当然する。
「どこに安心できる要素があるのよ!?そのむちゃくちゃな動きのする戦車の中で作業するのは私達よ!!」
「装填…頑張らなきゃ」
「カチューシャ様の為にも砲撃は外せません…」
まぁ、そのフォローをするのって基本的に俺以外なんですけどね。
「…良くわかりませんが、皆様私を褒めてくれてますの?」
「褒めてる褒めてる、めっちゃ褒めてる」
「やったですわー!褒められましたの!!」
わーいと無邪気に喜ぶローズヒップの髪の毛を思わず撫でたくなるまである。
「聖グロ1…いえ、今は大洗1の瞬足を見せてやりますわ!!」
【操縦手:ローズヒップ】
そしていよいよ今試合での八幡のチームが完成しました、感想とか見てるとだいぶ予想されていてビックリです。
そしてここだけの裏話として、俺ガイルメンバーを出して八幡のチームにするか、今のメンバーで行くかで最後まで悩んでました。ただ俺ガイルメンバー出すならそっちの話も書かなきゃで収集つかなくなりそうだったので泣く泣く断念しました。
一応構成としては…。
車長:八幡
砲手:雪ノ下
装填手:由比ヶ浜
通信手:一色
操縦手:川崎
と、こんな感じかな?操縦手が本当イメージ的なだけで悩み所。やはり戸塚か!戸塚ですよね!!戸塚しか居ないまである!!