劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

60 / 77
おそらく年内の更新はこれで最後になるはずです、皆さん良いお年を!!
来年の今頃は劇場版のお話を書ききってるかな?たぶん書ききってないんだろうなぁ…(笑)


例え道を外れても、彼はその一歩を躊躇わない。

「えーと…」

 

一向にまとまりそうもないやり取りに西住も困り顔だ、まぁこれだけ個性のあるメンバーが好きすぎに意見を出していればまとまるものもまとまらない。

 

各員がろくろを回しながら好き勝手に発言をするブレーンストーミング方式は糞、はっきりわかんだね。

 

「みんなみほに従うと言っただろう、みほ」

 

それを察してか姉住さんが西住にバトンを渡す。

 

「…ひまわりチームを主力として、あさがおとたんぽぽが側面を固めて下さい、連携がとれる距離を保ちつつ、離れないように注意して」

 

「OK」

 

黒森峰、プラウダの重戦車で固めたチームを主力として、あさがおとたんぽぽでサポート…王道だな。

 

…王道と自分で考えてひっかかりを覚える。まただ、やはり妙な違和感にひっかかる。とはいえ、今日集まったばかりの急ごしらえなチーム、もともとやれる事は少ないか。

 

…それに問題ない。外道が必要だというなら、そっちの方はすでに準備してある。

 

「…八幡君?」

 

「ん?どうした西住」

 

「えぇっと…何か考えがあるのかなって」

 

…鋭い。さすが戦車道関連ともなると西住流補正がハンパないな。

 

「あぁ、考えてはいる」

 

「それって…もしかして」

 

「決まってんだろ、作戦名をどうするかだよ」

 

だが、西住にどれだけ戦車道補正がかかっても問題ない。俺が今からやる事は戦車道の試合の外。道を外れた盤外のやり方。

 

そのやり方はあのメガネ役人と似ているとも言えるだろう。

 

「三方向から攻めるんだから三種のチーズピザ作戦!!」

 

「ビーフストロガノフ作戦がいいわ!玉ねぎと牛肉とサワークリームの取り合わせは最高よ!!」

 

「フィッシュ&チップス&ビネガー作戦と名付けましょう」

 

「グリューワインとアイスバイン作戦よ!!」

 

「フライドチキンステーキWithグレービーソース作戦ね!!」

 

「あんこう干しいもはまぐり作戦」

 

「では、間をとってすき焼き作戦などはいかがでしよう?」

 

話を振った俺が言うのもなんですが、案が出るわ出るわ、なんかさっきの作戦決めるやり取りよりイキイキしてませんか皆さん。

 

「じゃあ俺は味噌ピートースト作戦、味噌で炒めたピーナッツがトーストに合うんだよ」

 

「君まで…好きな食べ物と作戦は関係無いだろう」

 

「じゃあ何が良いのよ?」

 

「む…」

 

カチューシャさんに言われて少し間を置く姉住さん、言われて真面目に考えてるのだろう。

 

「ニュインベルクのマイスタージンガー作戦はどうだ?これは三幕からなるオペラで…」

 

「長い!!」

 

解説付きで作戦名を提案した姉住さんを河嶋さんがばっさりとぶったぎる。

 

「というか、オペラとか見るんですね」

 

「君も興味があるなら今度見てみると良い、黒森峰には有名な会場もある、良ければ私が案内をしよう」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「隊長!こんな奴にオペラの高潔さが伝わるとは思えません!時間の無駄です!!」

 

西住と一般生徒Eさんがグイグイくる…。くるのはまだ良いんだが一般生徒Eさんはついでに俺をデイスらないといられないの?

 

てか、さっきはスルーしたけどグリューワインってお酒じゃないの?黒森峰だからノンアルの可能性もあるけど、ノンアルって書いとけばなんでもOKと思わない方が良い。

 

「それでみほ、作戦名なんだが」

 

「あっはい…『こっつん作戦』というのはどうでしょう?相手を突き出して「えいっ」と攻める作戦なので」

 

「なにそれ、迫力ないわね」

 

「わかった、それでいこう」

 

「えっ…」

 

またもや一般生徒Eさんの意見(文句)は姉住さんによってスルーさせられる、まぁ妹全肯定お姉ちゃんが居るのだ、相手が悪い。

 

そもそもグリューワインとアイスバイン作戦は迫力あると考えてるのか…いや、グリューワインはともかくアイスバインはなんか氷魔法の必殺技みたいな響きでいいな、ドイツ語って基本的に格好いいんだよなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

ゴリアテに体育座りで乗り、ノロノロと道を進む男子高校生の姿はさぞ滑稽に移るだろう。

 

ゴリアテ兵器、最大で100キロの爆薬を詰め込む事ができ、それをリモコン操作で敵陣へと突させ爆破する。要するに遠隔爆弾兵器。

 

こんな物騒な代物だが、なぜが大洗の学園艦にはいくつか置いてある、戦車は売り払ったのにゴリアテは残してた意味とは?

 

まぁこのゴリアテ、爆薬を取り外せば人間一人くらい乗せるのは訳がないポテンシャルがある、なんせ100キロの爆薬の搭載を想定されているのだ。

 

だから大洗では移動手段の一つとして使われている、これを使って俺と西住も作戦会議のするテントまで移動をした。なお、最大時速は10㎞未満…とはいえ、歩くよりはよほどマシだろう。

 

これ、試合で使えないかな、使えれば戦略の幅がぐっと増えるんだが…まぁ無理だよね。

 

ちなみに西住のゴリアテだがどうにも調子が悪いらしく、途中で止まってしまった、仕方ないので俺のゴリアテと交換するつもりだったのだが。

 

「遅いわね」

 

「ご、ごめんね、八幡君。エリカさんも送ってくれてありがとう」

 

そこで通りかかったのがこの一般生徒Eさんだ、それもなんとクーゲルパンツァーに乗っての登場である。

 

クーゲルパンツァー、ドイツ語で『玉戦車』と呼ばれるのも納得のまん丸ボディ。

 

これの何がすごいかって実物は存在するのにどこで作られたのかメーカは不明で、どんな用途で作られたかのデータも全く残ってない「なにそれ、こわ…」とホラーを疑いたくなるエピソードだ。

 

隠匿するほど強力な兵器…という事は全く無い、むしろ逆に兵器としても貧弱すぎて珍兵器に名を連ねている。

 

そんなクーゲルパンツァーは西住を乗せてゴリアテでノロノロと進む俺を放置して先に進んでた訳で、ようやく追い付いたのだ。

 

「ていうかクーゲルパンツァーの現物は博物館に飾ってある1両だけって話のはずだが」

 

「もちろんこれは黒森峰で使ってるレプリカみたいなものよ」

 

まぁ黒森峰の校章がデカデカと貼られてますしね。

 

「それにしても...あれがあんたのチームね」

 

一般生徒Eさんが見るのは今も練習を続けるシャーマン・イージーエイト。キツネチーム。

 

「え?何?またなんか文句でもあんの?」

 

「またって…いったい私をなんだと思ってるのよ」

 

いや、わりとそのまんまのイメージなんですが?

 

「操縦手、砲手、装填手、通信手の実力に文句をつける所はないわ、良いチームじゃないの」

 

「なにお前知らねぇの?戦車ってじつは車長ってポジションがあるんだぞ」

 

「ふん、そうね…ずいぶんと人の足を引っ張るのが得意な車長なら居るみたいよ」

 

「え、エリカさん!?」

 

「まぁでも、あなたの場合、それは相手も含まれてるのよね、そういうの…得意なんでしょう?」

 

「…まぁな」

 

一般生徒Eさんの軽口に軽く手を降り返して答える、西住と一般生徒Eさんはまだ少し残っているつもりなのかわからないが俺はキツネチームのシャーマン・イージーエイトに近付いた。

 

「あーと…アリサ?」

 

というか、正確にはその近くでスマホとにらめっこを続けているアリサに、だ。彼女の場合、元がよく知るシャーマン戦車という事で練習はそこまで重要じゃない。

 

ただ、それ以上に重要な役割を彼女には伝えてある。

 

「なによ!今度は西住流だけじゃ飽き足らず黒森峰の副隊長まで横に侍らせてんのね!!」

 

初手にヒステリック起こしてた…。なんでさ!?

 

「私が一生懸命やっている中、移動デートとか全く良いご身分ですこと!!」

 

「いや、落ち着けよ、そもそもゴリアテでひたすら遠くに進むクーゲルパンツァーの姿を見せつけられただけなんだが?」

 

クーゲルパンツァーの中には西住と一般生徒Eさんが二人切りで居たので、それをデートというなら間違いはないが。

 

八幡、百合の間には挟まらない。てか、ゴリアテじゃスピードが足りなくて挟まりようがないまである。

 

「で、一生懸命やっているって事は成果は…」

 

「ええ!もちろん完璧よ、大学選抜のチームの使用している掲示板、チャット、他にも情報が拡散出来そうな所はあらかた抑えたわ」

 

先ほどのヒステリックが嘘のようにふふんとドヤ顔でスマホの画面を見せてくる。

 

「さすが、情報戦じゃ敵なしだな」

 

「無線傍受なんてしなくてもこれくらいは出来るわよ、で…本当にやるの?」

 

これが最終確認。とでも言うようにアリサはジッと俺を見つめてくる。

 

「やる。アリサ、この試合での大学選抜側のメリットはなんだと思う?」

 

「はぁ?そんなの…」

 

俺に言われてアリサは思案する、大学選抜チーム側のメリットになりそうな事を考えてるんだろうが。

 

「社会人チームを倒したのに、今度の相手は全国大会優勝校とはいえ、相手は高校生、しかも当初は8両対30両の殲滅戦だ、こんな試合、受けるメリットはあるか?」

 

およそ試合の体をなさない蹂躙劇になっていた事だろう、勝っても負けても叩かれるのは目に見える。

 

「…まぁ無いわよね、でもそれも全部選抜チームの後ろ楯の文科省が仕組んだんでしょ?」

 

「文科省のゴリ押しで試合が決まったのはそうだろう。つまり、大学選抜チームも今回は不運にもそれに巻き込まれたと言っていい」

 

「そもそもこの試合の発端はあんたにあるって調べはついてるわよ?よく不運の一言で片付けられるものね」

 

…バレてたか。本当、情報戦となると敵なしだな、味方なのが本当にありがたい。

 

「まぁそこはそれ、同じ巻き込みでも俺は文科省と違って事態を隠すような不誠実な真似はしない」

 

おそらく文科省は彼女達、大学選抜チームにはこの事実は伝えていない。もし伝えていればこんな試合、成り立つはずがない。

 

「この試合に大洗学園の廃校がかかっている事を、きちんと誠実に、大学選抜チームにも伝える。巻き込んだ者としての責任と義務ってやつだな」

 

「…物は言いようね」

 

まぁ悪く言うなら今から相手するチームを倒せば、その学校の廃校は決定しますけど、やります?と相手に伝えるものだ。

 

ただでさえ文科省のゴリ押しで決定した試合で、そんな真実が明るみになれば士気なんて上がるはずがない。

 

「あぁもう…こんなのバレたら隊長になにされるかわかったもんじゃないわ、反省会どころじゃ済まないかも」

 

「まぁまてアリサ、よく考えてみろ?」

 

「なによ!?」

 

「こっちは廃校の話を知っている、向こうは知らない、それってフェアじゃないと思わないか?」

 

「………確かに、とか一瞬でも考えちゃったのが怖いわね、詐偽に合うのってこんな感じかしら」

 

「だから最初に言っただろ、全部俺の指示で動いてた事にすれば良いって」

 

「今さら引ける訳ないでしょ!やるならやるわよ!!」

 

こうしてアリサはこの試合が大洗学園の廃校がかかった試合だという情報を大学選抜チームにもリークする。

 

試合前とはいえ、この手の情報の拡散は一瞬だ、すぐに向こうのチームにも知れ渡るだろう。

 

「…ほんと、詐偽に合うのってこんな感じかしらね」

 

「…悪かったな」

 

「謝る相手が違うでしょう。向こうの隊長、大学生とはいえまだ13歳なのよ」

 

「…知ってる」

 

そんな事、ボコミュージアムで彼女を見た時からわかっていた。

 

ボコのショーに興奮し、ボコグッズに目を輝かせ、ボコの為に怒った年相応の姿を俺は見ているのだから。

 

戦車道で天才少女と呼ばれている彼女に弱点があるとすれば、それは戦車道以外の事だろう。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「おーい、準備終わったのか?」

 

大学選抜チーム側も試合に向けて準備を進めている、が、中隊長であるルミの見回りに対して周りのメンバーは手を止めている。

 

「…お疲れルミ、ごめん、まだ」

 

「おいおい、無駄話してないで早く済ませろよな、もう試合始まるぞ」

 

「いやー…それなんだけどさ」

 

「この試合、変な噂というか、情報が出回ってて」

 

「噂…?」

 

「この試合が大洗学園の廃校がかかった試合だって噂が、私達に勝ったら廃校は取り消しだって…」

 

「…どういう事だ?廃校を前に思い出作りの試合、と聞いてるが?」

 

当然、文科省は彼女達に試合の真相は伝えていない。元々廃校が決まった大洗が全国大会優勝校として、せめて廃校前に大学選抜チームと試合をする。

 

文科省が脚色した、いかにもなストーリーがそこにはある。

 

「結果的に大洗側が戦力を揃えてくれたけど、当初の予定じゃ30両対8両の殲滅戦でしょ?思い出作りにしてはおかしいとは思ったんだ」

 

だが、結局脚色したストーリーにはどうしたって矛盾が生まれる。

 

比企谷 八幡の振り撒いた真実という毒は大学選抜チームにすぐに蔓延し。

 

「………」

 

それはもちろん、隊長である島田 愛里寿の元にもすぐに届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

元々今回は観客の居ない試合である。

 

その理由は男子生徒、比企谷 八幡の試合参加という異例を認める為。

 

そして文科省が当初の予定としていた圧倒的有利な8両対30両の殲滅戦を隠蔽する為。

 

これらの理由によりただでさえ人が少ない観客席の中で一際、人が全く近付かない観客席があった。

 

その観客席に座っているのは二人。

 

西住流家元 西住 しほ。

 

島田流家元 島田 千代。

 

二人の流派の家元が座っているのだ、人が近付かない理由としてはこの二人の圧が原因だろうか。

 

「…文科省は弄しすぎましたね、策は試合の中だけで留めておくべきでした」

 

そんな中、島田千代は日傘を閉じるとスッと立ち上がる。

 

「ですが、事が愛里寿にまで及ぶというならこのまま黙っている訳にもいきません」

 

こうして比企谷 八幡は本人の意図せぬ所で彼女、島田流家元の島田千代まで動かす事となる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。