劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。   作:ボッチボール

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またまたまた、比企谷 八幡は呼び出しを受ける。

【うちの隊長がマジ天使だった件について】

 

【可愛くて強いとか、無敵か】

 

【あぁ…そんな隊長を守ってあげたい。いや、むしろ守られたい】

 

【わかる。でも…いつまでも隊長に頼ってばかりもいられないわよ】

 

【わかってるわよ、私達に出来る事は一つよ】

 

【隊長に勝利を!!】

 

et cetera et cetera

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…なにこれ?」

 

「私に聞かないでよ…」

 

大学選抜チームが普段使いしている掲示板の書き込みを眺めながら俺とアリサは思わず顔を見合わせた。

 

先ほどまではネガティブな書き込みに溢れ、よもや炎上手前まで荒れていたであろう掲示板の書き込みはすっかり鎮火。

 

代わりに書き込まれ始めたのは【愛里寿ちゃんマジ天使】的なものだらけだ。大学選抜チームって大学中のロリコンを選抜して作られたチームなの?危なくない?

 

「具体的になにがあったかは…まぁ、書いてないわな」

 

「もともと私達がこの掲示板を利用して情報をリークしたんだから、そこを警戒するのは当然でしょう」

 

そりゃそうだ、大学選抜チームも馬鹿ではない。いや、今の書き込みを見てると馬鹿にしか見えないんだが。

 

【この試合は対戦相手である大洗学園の廃校がかかった試合である】というような書き込みが書かれたという事は、それを書いた者はこの掲示板を見る事ができるという事だ。

 

情報に規制を張るのは当然だろう。…いや、今書かれてるこの手の書き込みも規制した方が良いのでは?

 

「何があったかは知らないけど、作戦は失敗みたいね」

 

「…ちなみに、選抜側の作戦とか、戦車の編成がわかりそうな書き込みとか無いのか?」

 

このまま何の成果も得られませんでしたー!!となる訳にもいかない。せっかく大学選抜チームの掲示板に入れたならなにか情報の一つでも欲しいところだ。

 

「無いわね。そもそもこれ、あくまで雑談用の掲示板で試合に関係するものはまた別にあるみたい」

 

「しっかりしてんなぁ…、そっちの掲示板には入れないか」

 

アリサの話では試合用と雑談用で用途別に掲示板があるらしい、この掲示板の書き込みから大学選抜チームの動きを予測するのは無理か。

 

「パスワードが違うみたいだし、さすがに無理よ」

 

「…なんならこの掲示板に入れるパスワードを見つけたのがすげぇな」

 

今さらながら大学選抜チームの使用している掲示板にログインして書き込み。これにだってパスワードが必要だろうにマジでどうやったんだ?

 

「ふふん、私にかかればこれくらい簡単よ!もっと褒めなさい!!」

 

「いつ盗聴器を仕掛けたのかが気になるな」

 

「仕掛けてないわよ!あんた私をなんだと思ってんの!?もちろんちゃんと正攻法を使ったわよ、セキュリティの緩いこっちの掲示板ならパスワードは数字の羅列くらいなんだから」

 

「いや、それでも特定は無理があるだろ、まさか総当たりでもしたのか?」

 

そんなファミレスを矜持するような時間は無かったと思うんだが、しかもここにはドリンクバーも無い。

 

「メグミ先輩達が使いそうな数字の羅列に見当があったから、いろいろ試してみたのよ。実際入れるかはかなりの賭けだったけど」

 

「…なるほど、元は同じ高校の先輩だからこそか」

 

…それでも、パスワードの特定なんて簡単なものではない。アリサは自分に心当たりがある数字を片っ端から試し、試行錯誤をしてくれたのだろう。

 

「…悪かったな、せっかくパスワードを見つけてくれたのに作戦自体が失敗したみたいで」

 

「…まっ、仕方ないわよ。手に入れた情報が使われないまま終わる事だって情報戦じゃ良くある事だもの」

 

情報は有益ではあるが、あくまでも情報でしかない。

 

苦労して得た情報が実際に試合で使えるかは展開次第だし、なんなら無駄になる事だってあるだろう。

 

アリサはこれくらいはなんでもない、と言いたげに平然と答えた。なんとも心強いものだ。

 

…心強すぎて逆に引っ掛かる。なんならいつもはもっとヒステリックな感じで作戦失敗について何か言いそうなものだが。

 

「…なんか作戦失敗したってのにえらい機嫌が良いな?」

 

「…ふっふふふ、あっはははははは!そりゃあメグミ先輩達の考えたパスワードがアレなんですもの!!」

 

「え?急に何?パスワードって数字の羅列だよな?」

 

「えぇそうよ!まさに私の完全勝利だわ!まったく…戦いに明け暮れて愛を知らない人というのは可哀想ね!!」

 

なにやら知らんけどアリサは上機嫌だ、よほど大学選抜チームが設定したパスワードがアレだったらしい。…いや、だからアレって何!?

 

「…アリサ個人の勝利より大洗の勝利が重要なんだが」

 

「それに対して私はもはや勝ち組!リア充よ!!ふふふ…あっはははははは!!」

 

…聞いちゃいねぇし。うーん…こうなるとますますパスワードの中身が気になる。

 

『戦車道連盟本部より、お呼びだしをします』

 

「…ん?」

 

そんな中、突如ピンポンパンポンと蝶野教官のアナウンスが聞こえてきた。

 

…お呼びだし?試合ももう始まるっていうこのタイミングで?

 

嫌な予感がする。てか、嫌な予感しかしないまである。

 

『大洗学園、比企谷 八幡君、至急大会本部まで来て下さい、繰り返しますーーー』

 

「…は?」

 

ですよねー。うん、知ってた。…もちろん知りたくなかったが。

 

「………」

 

これには先ほど上機嫌だったアリサの表情も固まっている。ちなみに俺の表情はもっと固まっているだろう。

 

「…ど、どうすんのよこれ、もしかして私達が情報リークしたのバレちゃったんじゃないの」

 

「いや、まぁ...それだって別にルール違反はしてないはずだし…」

 

アリサだって盗聴器等を使用したりせず、正攻法…かは置いといて、自力でパスワードを見つけ出してくれた。

 

情報の拡散もあくまで大学選抜側にだけわかるように慎重に事を運んだ。

 

もちろん、やろうと思えば世間様に大々的に公表して文科省や選抜チームを叩いて貰う事だって出来た。一般プロ市民の力の恐ろしさは俺が良く知っている。

 

文科省が裏で糸を引き、大洗学園は廃校をかけて大学選抜チームと試合をする事になりました。…いかにも世間様が好きそうな話題だろう。

 

そして彼等彼女等プロ市民の方々は【正義】という建前を持つ事が出来たのなら、何をしても許されると勘違いをしている者もそう少なくはない。

 

叩けるにたる充分な理由を得られたなら、叩く人は巨万といるだろう。

 

だがそれはもう将棋盤をひっくり返すようなものだ。事は文科省や大学選抜チームだけでなく、戦車道連盟や西住流にも影響は出るだろうし、場合によれば大洗だって叩かれる対象にもなり得る。

 

だからその手の手段は論外、元から候補からは外している。今日の試合は関係者だけで始まり、終わる極秘の試合だ。

 

大学選抜チームはもちろん関係者だ、彼女等にこの情報をリークしても問題はない。

 

そう、ルール違反はしていない…はずだ。

 

『繰り返します。大洗学園、比企谷 八幡君、至急大会本部まで来て下さい』

 

蝶野教官のアナウンスは更に続く。これ、行かなかったら延々と呼び出し続けられるのでは?どうせもうすぐ試合なんだし、それまで無視出来ないかな…。

 

「こ、これ、私も行った方が良いのかしら!?」

 

アリサはもう上機嫌モードからヒステリックモードへチェンジしていた。なんだよヒステリックモードって、火弾のアリサかな?着火的な意味で。

 

「いや、アリサは呼ばれてない所を見ると俺個人に用があるっぽいな」

 

あと考えられるとすれば相手チームである大学選抜から抗議が届いた…か。これは…まぁ、あるだろう。

 

あるだろうが…なぜピンポイントで俺がやったと特定されるの?そんなのもう狙い打ちじゃん…。

 

「八幡君!今の放送…」

 

「あんた、今度はいったい何をやらかしたのよ…」

 

西住と大洗一般生徒Eさんも今の放送を聞いていたのだろう、慌てて俺の所にやって来る。…てかEさん、まだ残ってたのね。

 

「今度とは心外だな、それじゃまるで俺がいつも何かしらやらかしてるように聞こえるんだが?」

 

「決勝戦の後でも教官から呼び出しをされていたじゃないの、二度も教官から呼び出しを受けるなんてね」

 

「違うな、聖グロリアーナとの練習試合の後でも蝶野教官から呼び出しくらったからこれで三回目になる」

 

「今度以上のやらかしじゃないの!!」

 

よくよく考えたら蝶野教官、ちょっと俺の事好きすぎない?撃破率120%に狙われちゃってないこれ?

 

「あはは…でも、もう試合も始まるのになんでだろ?」

 

「さぁ、出場停止にでもなるんじゃないかしら?」

 

そう言いながらほくそ笑む大洗一般生徒Eさんだが正直笑えない…。

 

「安心なさい、あなた一人抜けた所で戦力的に何も問題ないわ、イージエイトには車長経験者がごっそり乗っているもの」

 

アリサ=車長。

 

クラーラ=車長兼砲手。

 

カルパッチョ=車長兼装填手。

 

ローズヒップ=車長。

 

…あれ?これマジで俺必要ないのでは?

 

「…ま、とにかく行ってくるわ」

 

もうすぐ試合が始まる今、大洗学園チームも大学選抜チームも各々の待機場所で試合の準備中だ。

 

大会本部はその中で中立の場所という事で、ここから向かうとなれば少し距離がある。

 

という事でまたゴリアテでの移動となる。ゴリアテに体育座りをする男子高校生の図がまた見られてしまう。

 

「…あんた、それで行くつもりなの?そんなノロノロなペースだといつまでたっても試合が始まらないじゃない!!」

 

「それでも歩くよりかはよっぽどマシなんだよ、恨むなら呼び出した蝶野教官を恨んでくれ」

 

「…ふん、仕方ないわね」

 

大洗一般生徒Eさんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるも深々とため息をつく。

 

「…クーゲルパンツァーの方がずっと速いわ、連れてってあげるからさっさと乗んなさい」

 

「…良いのか?」

 

そりゃクーゲルパンツァーならゴリアテよりもずっと速い、なんならサラマンダーよりもずっとはやい!!だったりする。

 

「良いわけないでしょ。でも、あんたのせいで試合全体が遅れるのはもっと良くないわ」

 

まっ…そりゃそうだわな。でも試合開始直前で呼び出した蝶野教官が悪いと思うんだが?

 

しかしクーゲルパンツァーに乗る事が出来たのは役得というもので、なんなら蝶野教官には感謝しかない。なんせレプリカとかいえ、世界で1両しかない珍戦車だ。後で秋山にも自慢しよう。

 

そう思い中を見ると…。

 

「…狭いな」

 

「仕方ないでしょ、こういう戦車なんだから」

 

いや、知ってた、知ってましたよ?そもそもが一人用の戦車ですもんね。

 

「ちなみに私の半径3メートルに入ってきたら追い出すわよ」

 

「それだともう乗れないんだよなぁ…、もう俺が一人で乗るから貸してくんない?」

 

「嫌に決まってるでしょ!黒森峰の校章が見えないの!!」

 

いやほら、一応は君も今は大洗一般生徒Eさんなんだし、その持ち物も大洗準拠になったりしない?

 

…しかし、そう考えると援軍に来てくれた皆さんの戦車も全て大洗の所属になるのでは?後で大洗の校章を書かないとなー。

 

「…ほら、行くわよ」

 

「あぁ、まぁ…よろしく頼むわ」

 

運転席に座る大洗一般生徒Eさんの後ろへ、当然座るスペースなんて無いので立ちっぱにはなるが。

 

…なるべく壁際についといて離れとこ、また何を言われるかわかったもんじゃない。

 

「…お、おじゃまします」

 

続けて西住がクーゲルパンツァーへと入ってくる。

 

「…え?」

 

「…え?」

 

「…え?」

 

最初に俺がそれを見てえ?と言葉を漏らし、釣られて大洗一般生徒Eさんがえ?と言葉を続け、最後に西住がキョトンと首を傾げながらえ?と呟いた。

 

「…えーと、西住?」

 

「うん、どうしたの八幡君」

 

「どうしてあなたまで乗ってくるのよ…」

 

大洗一般生徒Eさんもさすがに困惑している、ただでさえ一人乗りのクーゲルパンツァーに三人って…アンツィオでもCV33は二人乗りだったんだが…。

 

てか近い!ほんと近い!後ろは壁だし目の前には西住だし、横には大洗一般生徒Eさんだし、何この包囲網、誰が突破できんの!?

 

「まったく、ただでさえ狭いのに…」

 

「…だから、なんだけどな」

 

「…はぁ?」

 

「じ、じゃなくてね。わたしも隊長だから…その、ついて行った方が良いかなって」

 

「いや、呼ばれたの俺なんだが…」

 

「だから心配なんだけどな…」

 

うーん、この信用の無さ。…とはいえ今回の大学選抜チームへの情報リークも俺が勝手に動いた事なので西住の勘は正解ではあるんだよなぁ。

 

「…えーと、良いかな?エリカさん」

 

「…まぁ、そいつと二人きりよりはまだマシね」

 

…ちなみに俺の意見は?いや、乗せてって貰ってる手前何も言う権利はないんですけどね。

 

「…ありがとう、エリカさん」

 

「…別に、もう出発するわよ」

 

そう言い、大洗一般生徒Eさんは視線を前に向け運転に集中する。

 

「…あなたもずいぶん変わったわね」

 

その代わり、背中越しに西住に向けて一つの言葉が投げかけられた。

 

「…そうかな?」

 

「えぇ、そうよ」

 

「…うん、そうかも」

 

運転中なので当たり前ではあるが、俺からは決して振り向かない逸見の背中と、少し寂しげな表情を浮かべる西住の顔しか見えなかった。




作中に出てくるパスワードの詳細はもちろん漫画「ガールズ&パンツァー劇場版」のアレです。是非とも見よう!
漫画版は映画の補完的な話が盛りだくさんでオススメですよ。(ダイレクトマーケティング)。
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