劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
そしてついにアレがきます!最終章ではさすがにアレを超えるとんでも兵器は出せない…ですよね?試合の規模的に見ても。
それでもガルパンスタッフなら…いや、文科省のメガネ役人ならやってくれると信じましょう!!
「あさがおよりひまわりへ、敵に突破されたわ。そっちの後方に回り込んでる」
『了解した』
「私達も態勢を立て直してリベンジするわよ、被害はどう?」
大学選抜チームからの挨拶代りの襲撃はほぼ一方的に砲撃を受けただけの散々なものだった。
とはいえ、この切り替えの早さはさすがケイさん。すぐに後を追えれば良いのだが…。
「М4A1、左右履帯破損と砲塔故障」
「知波単学園、玉田車は横転中ですがまだいけます!新砲塔チハ1両、こちらは健闘するも撃墜!目次第もございません!!」
こちらも状況が状況だ。…あれを自信満々に健闘と称える知波単のメンタルやべぇ。
「A1があれだけ撃たれて無事だったのは運が良かったですね」
カルパッチョも言っているがМ4A1シャーマンは襲撃時に手前に居たからか相手から集中砲火を受けていた。
左右履帯破損に砲塔故障、これを無事と言っていいのかは疑問だが、白旗が上がってなければまだまだ戦えるのが戦車道スタイル、ここに自動車部がいればもうちょい修理も早かったんだが。
「ふふん見るがいいわ!あれがシャーマン戦車のタフな所なのよ!!」
「本来ならあなたが乗る戦車があの集中砲火を受けたシャーマンだったのですが…」
シャーマン戦車のタフさに上機嫌なアリサたが、クラーラの言う通り。アリサがイージーエイトに乗る事になったので代わりのМ4A1の乗員が必要になる。
具体的に誰かと聞かれれば名前は知らないがなんかヘルメットを被った生徒だ、そのヘルメッ娘がじとーっとこっちを見てる。え?これ俺が恨まれるの?
「こっちの主な被害は新砲塔チハが撃墜、М4A1が修理…ナオミは?」
「問題ありません」
ナオミの乗るファイヤフライは相手もマークしていたのか、攻撃に転じようとした所を集中的に狙われていた。ファイヤフライの狙撃力は重要な戦力、無事なら一安心か。
「………」
「…は?」
ファイヤフライから身体を出しているナオミを見るとフーセンが見えた、何を言っているのかわからないと思うが安心してくれ、俺にもわからん。
ただわかるのはナオミの顔の部分がフーセンになっているという事が、どうしよう…字面で書くとますますわからんくなってきた。
「なぁアリサ、あれナオミだよな?」
わからんので同僚…てか、同じ学校のアリサに聞いてみる。
「あぁアレ、いつものやつだから心配しなくていいわよ」
「それではナオミさんの顔がいつもフーセンになっていると言う事になるのでは…」
「フーセンガムめちゃくちゃ口に入れて膨らませてんのよ、さっきの戦いが相当頭にきてるのね」
それで頭フーセンになるのか…、普段のクールなイメージが吹っ飛んだなぁ。
「ちなみに戦車道全国大会の一回戦が終わった後なんてもっとデカいフーセン作ってたわよ…誰かさんのせいでね」
「…あぁ、うん。まぁ」
あれはね、完全にナオミへの個人攻撃というか、嫌がらせでしたもんね…。
「わかります」
「え?フーセンガムが?」
クラーラも頭フーセンになるの?もし砲手の間で流行ってんなら今度五十鈴も頭フーセンになったりするのか…。なんかノリノリでやりそう。
「いえそうではなく、同じ砲手として。撃てないのは屈辱ですから」
「わかります!私もかっ飛ばせないとモヤモヤしますの!!」
「そんな時はカチューシャ様がおすすめですよ、カチューシャ様の可愛さを前にすれば撃てない屈辱もどうでも良くなりますから」
「いや、何言ってんの?」
「…? すいません、日本の方はまだカチューシャ様の素晴らしさに追い付いていないのですね」
「え?ひょっとして今ので日本人全員ディスられたの?」
そもそも肝心のカチューシャさんが生粋の日本人なんですが?戦車少女との異文化交流がこんなにも難しいとは…。
「よくわかりませんが私はカチューシャさんよりフーセンガムが欲しいですの!!よろしいですの?ナオミさん」
「いいよ、たくさんあるから後で分けてあげる」
そういや前にサンダースに潜入偵察行った時、大量のフーセンガムを買ってたな…。
「気を落とさないでナオミ、確かに砲手にとって撃てないのは屈辱だけど、同時に相手からそれだけ警戒されてるって事よ」
「イエスマム」
ま、そういう事だろう。秋山も言っていたがナオミは月刊戦車道で特集が組まれるくらい有名な砲手だ。相手からすれば警戒して当然だろう。
「つまり〜、あんまり相手から攻撃されてない戦車って警戒されてないって事ですかぁ?」
「あ、わかった!比企谷先輩の戦車だ!!」
「お前らの戦車もなー…」
「比企谷先輩ひどーい!!」
そりゃ言わなければバレなかった事をわざわざ名指しで言ってくるのが悪い。
実のところこの襲撃でイージーエイトに目立った被害はない。もちろんローズヒップが回避を頑張ってくれた事もあるんだが、ナオミやケイさん達のシャーマン戦車に比べても明らかに狙われる頻度が少なく感じた。
「攻撃する優先度は低い…と見られているのでしょうか?」
「…要するにナメられてんのね」
…違和感はある。
向こうの隊長、島田 愛里寿にはいろいろあった事で決して良い感情は持たれてないのはわかる。
とはいえ私情で俺を優先的に倒そうとするような相手では無いだろうし、ナオミやケイさんと違って俺の戦車道での知名度は皆無だ。優先度が低いのは当たり前か。
「まっ、それならそれで楽できて良いだろ」
「あんたのそういう所、いっそ清々しいわね」
「いやほら、相手の優先順位が高いって事はそれだけ狙われる確率が高くなるって事だろ、現に俺達はこうして見逃されたんだし」
「? 相手は我々の気迫に圧されて手を引いたのでは?」
「どこに圧される気迫があったんだよ…」
「それはその…突撃、とか?突撃とか、そう!突撃とかです!!」
自信無さげな突撃も3度目にはもう自信満々の突撃へと変わっちゃってるよ…。
まぁ…砲撃戦してるのにいきなり敵戦車が突っ込んで来たら怖いって思うよね、ちなみにここでの怖いって物理的にではなく精神的に怖いの方なんで。
「黒森峰とプラウダ、重戦車で固めたひまわりチームね、…腹立たしいけど向こうを優先させたって所かしら」
この人から腹立たしいなんて言葉が出るとは…いや、そりゃ出るか、暗にサンダースと黒森峰、プラウダを比べられたとも取れる試合運びだったし。
「ですね、優先順位って話ならそこが一番でしょう」
だから相手は俺達との戦いをそこそこに切り上げてひまわりチームのいる高地へと向かった訳だ。
「そんな訳でひまわりチームが先に山頂を取ってくれれば…」
『こちらひまわり、高地山頂に達した』
「さすがね、まほ」
『あさがおが敵を引き付けておいてくれたおかげだ、私達はその分自由に動けた』
『まっ、あとはこのカチューシャ様に任せなさい』
『こちら大隊長車、たんぽぽはここで相手部隊を足止めします、そちらはひまわりとあさがおで挟撃して下さい』
西住達たんぽぽは別部隊と今も交戦中、あさがおを突破した部隊はひまわりとあさがおで叩く。
「ようやく理想的な形になったじゃないの」
「…理想的?」
「なによ、これよりまだ贅沢言いたい訳?」
いや、アリサの言葉がどうにも引っかかる。ひまわりが山頂を取り、俺達あさがおとひまわりで挟撃、まさに理想的だ。
だが、理想はあくまで理想であって現実ではない。それを今まで嫌っていうほど経験してきた俺だから間違いなく言える。
「…なんで相手はわざわざ俺達にちょっかいかけてひまわりに山頂を取らせたんだ?」
「なに?またその話?」
「これも罠かもしれないという事ですか?」
「例え罠があったとして、もうひまわりは山頂取っちゃったし、問題無いわよ」
「一度山頂に布陣した部隊を崩すのは簡単ではありません」
「まぁ…そうなんだが」
『あさがおを援護するわよ!蹴り落としてやるんだから!!』
カチューシャさんの指示が聞こえてくる、向こうも攻撃準備が出来たようだ。
『中隊長、良いわね!!』
『攻撃を許可する』
『撃っーーーーー』
その瞬間、無線越しに、いや、無線なんてなくても外からでもわかるくらいの轟音が周囲に響き渡った。
爆音、爆発音、ひまわりが布陣した山頂から鳴り響く轟音。
遠くからでもはっきりとわかる黒煙、煙雲。
『うぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!?』
『だんッッッちゃーーーーーーーーーく!!』
「ーーーーーは?」
なにあれ?爆弾?少なくとも戦車の砲撃とか、そんな程度の規模の爆発ではない。
『どうした!?』
『わかりません!上からの砲撃みたいですが!!』
『なんなのこの規模!!』
『無茶苦茶だべ!!』
遠くから見ている俺達ですら唖然とし、何が起きているか理解出来ない。なら、現場にいる彼女達からすれば更に意味不明な状況だろう。
「いったい今のは…?」
「…上からの砲撃」
現場も相当混乱してるが、そんな状況でも透き通るような天使の言葉があった。そう、赤星は確かに【上からの砲撃】と言った。俺じゃなくちゃ聞き逃しちゃうね。
『次弾、来ます!!』
慌ててキューポラを開けて身を乗り出すとケイさんと目が合う、ケイさんはシーッとジェスチャーをくれるが俺も頷いて耳を澄ませた。
赤星がくれたヒントだ、無駄にする訳が無い。
弾着、二度目の爆音と山頂を覆いかぶる程の煙雲。
だが、おかげで今度ははっきりとここからでも見えた、上からくる謎の砲撃の正体。
文科省…ここまでやるのか?戦車が水没しかかった去年の戦車道全国大会から何も学んでないのかよ。
とんでもないもん持ち出しやがって…怪我じゃすまないぞ、あれ。
「はえー…すっごい爆撃ですの」
「比企谷さん、今のは…?」
「あれはーーー」
ーーー
ーー
ー
「カール自走臼砲…」
来賓席。モニターのその光景を見て戦車道連盟会長、児島会長は苦々しく呟いた。
「これを文科省から大学選抜側に支給し、使用可能にしたのはこの大会の為だったんですか?」
「言いがかりはよして下さい、偶然運用テストがこの試合になっただけではないですか」
そんな児島会長の言葉にも文科省役人は顔色一つ変えず、涼しげな表情でモニターを見つめていた。
「しかし、オープントップなのに戦車と認めてよいのですか?」
「考え方次第ですよ。見て下さい、従来の操縦手室に砲手室と装填手室を加え、自動装填装置も取り付けてあります」
カール自走臼砲は本来、戦車と呼ばれる物ではない。
種類としても名前の通り、自走臼砲。用途も戦車戦というより要塞攻略や遠距離への射撃がメインだ。
だが、その自走臼砲を文科省が戦車道に対応可能にまで改造し、今回試合に初投入されたのがこのカール自走臼砲。
「ほら、どこからどう見ても立派な戦車じゃないですか」
ーーー
ーー
ー
「そもそもカール自走臼砲は戦車じゃねぇだろふざけんな」
「怒る所そこなんですか!?」
「は?大事だろ。いや、そりゃ自走臼砲は嫌いじゃないし、あの火力はロマンの塊みたいなもんだが戦車戦にそれ持ち出すのは違うだろ、剣士キャラクター最強議論で某惑星サイヤの王子の息子出してるようなもんだぞ」
文科省ないわー、センスないわー。
「例えはよくわからないけどあんたがめんどくさいタイプのオタクなのはよくわかったわ」
「すごい早口でしたね…。ところで王子の息子って王子ではないんですか?」
いや、だってあの人ずっと王子名乗ってるし…もう良い歳なんだけど。
「ってかひまわりはどうなった?まほさんにカチューシャさん、あとティガーIIは!!」
二度目の爆撃からの状況はまだ掴めない、ひまわりは黒森峰、プラウダの連合部隊、大洗連合の主力だ。
『無事だ』
『決まってるでしょ!カチューシャはこんなのでやられないわよ!!』
『…ちょっと、私だけなんかおかしくないかしら!?』
…無事か、良かった。まほさんもカチューシャさんもティガーIIも上手く切り抜けてくれたようだ。
『各車、状況を報告しろ』
『あ…』
「…赤星?」
無線越しに聞こえる赤星の声はどこか信じられないような、状況をまだ受け入れきれていないような。
『パ、パンター1号車…撃破され、ました』
『同じく二号車、行動不能…です』
それでも彼女は、彼女達はその言葉を口にした。
大洗連合チーム27両VS大学選抜チーム30両。