劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
ガルパン10周年キャンペーンのスタート!!…え?10年前とか嘘でしょ?
「我々の突撃はまた失敗してしまったのか…」
先のOY防衛戦にてプラウダに向けて突撃し、敢えなく散ってしまった彼女は戦車から降りる。
「果たして我々はこのままで良いのだろうか…?いや、よくない…いや、良い」
知波単学園の隊長、西 絹代である。
戦車道全国大会が終わり、引退した先輩達から隊長としてチームを任された彼女は悩んでいた。
知波単学園の突撃には自信と誇りを持っている。もちろん、彼女だって突撃が大好きだ、そこに嘘は全く無い。
だが、その突撃も先の全国大会一回戦では黒森峰に一蹴された。いや、それよりもずっと前から試合で何か結果を残せた事は少ない。
はたして、このまま突撃だけで戦っていても良いんだろうが…?
「この試合で何か学べれば良かったのだが…」
ー結局また機会を見誤り、突撃して撃破されてしまった。
「西さん、お疲れ様ー」
「いやー、やっぱIS-2半端ないね、やられちゃったよ」
自分と同じく…しかし、自分とは違い奮闘の末にプラウダに撃破されたポルシェティーガー。
自動車部、レオポンチームの人達が西に声をかけてくる。
「…皆さん!先ほどの先走っての突撃、本当にすいませんでした!!」
そんなレオポンチームに西は勢い良く頭を下げる、あのタイミングでの突撃が失敗だった事はこの結果が何よりも語っているだろう。
「通信機の調子悪くて聞き取りにくかったんでしょ?だったら仕方ないよ」
「そーそ、あ!なんならちょっと見せてよ、試合はやられちゃったからもう使えないけど通信機くらいは修理してもいいよね?」
「いえ!そこまでご迷惑をおかけする訳には…」
「いーからいーから、どうせ試合が終わるまで暇だしね」
そういって彼女達自動車部は手際良く工具を持ち出すと九七式チハの通信機を弄り始める。
確かに通信機の調子が悪かったのは事実だ、それで後退の指示を聞く事が出来なかった。
というより、『後退』の言葉をうっかり『突撃』と聞き間違えてしまったのだ、今回の突撃と白旗はそれ故の結果である。
「防衛線突破されちゃったけど、西住隊長大丈夫かな?」
「うーん、相手は比企谷だし、また何か仕掛けてはいそうだけど」
「比企谷さん…」
比企谷 八幡、試合前に挨拶にいった時に少しだけ話をした男の子。
男性の身でありながら戦車道の試合に参加を許された、特例中の特例…と、事情を知らない西からすればよほどの素晴らしい実力を持つ選手に見える。
「…試合、見に行こうか?確か近くにモニターがあったはずだから」
試合全体の流れは大洗の各所に設置されたモニターで中継されている、撃破されてしまった自分達が見に行く事に問題はないだろう。
「いえ、しかし修理をお願いしているので…」
「もう直ったよー」
「…えぇ?」
これには流石の西も唖然としたが、大洗の戦術を学ぶ絶好の機会を見逃す程彼女も考え無しではない。
「はい!よろしくお願いします!!」
噂に聞く西住流、西住さんと、男性の身で戦車道の試合参加を許された比企谷さんの直接対決。
「いったい…どんな突撃が見れるんだろう?」
彼女はワクワクしながらモニターが設置されている場所まで移動し、そこに映された試合中継は。
「………」
なんかめっちゃ逃げてるクルセイダーと、それを追うⅣ号戦車の追撃戦だった。
「…逃げてるね、比企谷」
「まぁ、比企谷だし」
「やはりあれは逃げているのですか!?」
納得と頷くレオポンチームと、当惑を隠しきれない西。
「比企谷の方も作戦失敗したみたいだし、逃げてるんじゃないかな?」
「作戦が失敗したのでしたら…吶喊して潔く散るものでは?」
西のこの発言にレオポンチームはお互い顔を見合わせて笑い合う。
「比企谷が?ないない…絶対根に持つタイプだし」
「今は逃げてても、またやり返しに来るんじゃない?」
「…はぁ、そういうものなのですか?」
知波単学園では逃げるや撤退といった言葉には縁遠く、西には今一つピンと来ない。
「もちろんうちだって負けてないよ!直線勝負で差を付けられてもコーナーで逆転…ってね!!」
「ほら、九五式の娘達だって、うちのアヒルさんチームと一緒に頑張ってるみたいだし」
「…福田」
モニターには逃げる八九式と九五式、そしてそれを追うマチルダが映し出されている。
ーーー
ーー
ー
『あーっはっはっは!豆鉄砲などをいくら撃たれようと効くものか!!』
開幕高笑いを決め込んでいる彼女こそ、ゴルフ場の一戦で唯一生き延びた最後のマチルダの車長。ルクリリだ。
「そりゃ八九式と九五式相手にマチルダの装甲だしな…」
八九式…はっきゅんの火力の無さについてはさんざん、もう悲しくなるくらい言ってきたと思うが九五式も同じようなもので、日本戦車はね…うん。
「いや、それでも油断すんなよ?」
俺達のクルセイダーと同じく、彼女のマチルダもラストワン、聖グロリアーナの戦力はダージリンさんのチャーチルを合わせても残り3両しかない。
いや、ほんと頼んますよ?OY戦線を突破したといってもプラウダ側もかなり被害はあったみたいだし。
『油断?まさか、このルクリリ、生まれてこのかた油断などしたこともない!必ずやあの2両を仕留めてみせよう!!』
ほう…ならきっとこれは余裕というものなんだろう。
『…む!あぁ!あいつら発砲禁止区間に逃げ込むなんて、ズルいぞ!!』
…言ったそばからすぐ油断してるんだけど、大丈夫なの?口調もなんかやたら好戦的というか…闘争心に溢れてるし。
「落ち着けよ、相手もずっと発砲禁止区間には居られないんだろ」
…さすがにダメだよね?ずっと発砲禁止区間に居られるならフラッグ車そこに置いとけばもう試合終了なんだし。
『それくらいわかってます!それに奴らの、八九式の狙いはすでに看破しているのだから!!』
「…試合前に俺に聞いてたあれか?」
信じられないだろうが、いや、俺だっていまだにいまいちよくわからんというのが本音なのだが…。
『大洗にある立体駐車場の位置は全て把握している!このルクリリの完璧な対策にあいつらの驚く顔が目に浮かぶようだ』
…そんな訳でこのルクリリとかいうマチルダの車長、大洗にある全ての立体駐車場の場所を俺に事細かに聞いてきたのだ。
なんなのこの子?立体駐車場マニアなの?
格言マニア、データ収集マニア、スピード狂マニアに加えてここに新たな新マニアキャラクターが聖グロリアーナに追加された。
…お嬢様学園の姿か?これが。助けてペコ!!
『重要なのは同じ失敗を二度としない事なのだ、はーっはっはっは!覚悟しろ八九式!!』
…なんだろうか?なんかそのフレーズにはものすごく身に覚えがあるというか、フラグが漂ってるというか。
ーーー
ーー
ー
立体駐車場の中央に陣取ったルクリリのマチルダの眼前には稼働する駐車場、しかしそれはただのブラフだとルクリリは見抜く。
車庫の中身は恐らく空、本命は背後でゆっくり稼働するもう1つの方。
彼女は自信満々に振り返る、前回の、大洗練習試合の雪辱をここに果たす、その為に。
「馬鹿め!二度も騙されるか!!」
ーーー
ーー
ー
『えっ!横から九五式?ひっ!ひゃわわっ!!』
なにこの子、ひょっとしてものすごく可愛いのでは?
…なんて言ってる場合か。これ、マチルダ全滅じゃねーか、いよいよ戦力的にキツくなってきたな。
「待たせたわね、ハチューシャ!!」
まぁ、こちらとしてもようやくプラウダと合流できたので試合はまだまだわからないが。
カチューシャさんにノンナさん、クラーラ車とも無事合流する事ができた。
「このカチューシャが来たんだもの、ミホーシャもこれでおしまいよ!!」
「しかし、また裏路地に逃げ込まれるのでは?」
「いや、それはもう大丈夫だと思いますよ」
確かに、西住としては広い大通りでの戦闘は避けて裏路地での遭遇戦を望んでいるだろうが。
「裏路地をKV-2の砲撃で塞いだ戦法を見せたんですから、西住達からしてももう危なくて狭い道なんかは通れないはずです」
あの作戦最大の狙いはこれにあり、撃破はついでに出来れば良かったいくらいなまである。べ、別に悔しくなんかないんだからね!!
本来通れた裏路地が道が塞がれて通れない、だったら他にも塞がれている道があるのでは?…と考えてしまうのは当然だ。
実際はKV-2もカチューシャさんから別命を受けたのでそんな暇は無かったんだが、事情を知らない西住…いや、大洗からすればそんな事わかるはずがない。
となれば、当然裏路地のような狭い道は避けなければいけなくなる。大洗はもう裏路地に逃げ込む…という戦法はとれないはずだ。
「もう大洗に地の利はありません、後はフラッグ車…あんこうを仕留めるだけです」
「…案外、容赦が無いんですね」
「容赦してカチューシャさんが許してくれますかね?」
「まさか、きっとシベリアが待っていますよ」
ノンナさんがそう言って微笑むが、目が笑ってないんだよなぁ…目が。
「だってカチューシャはあなたと共に戦えるこの試合を、とても楽しみにしていましたから、負ける事は許されません」
「…いや、まぁその、負けず嫌いなのはいつもの事なのでは?」
「そうですね、しかし…そんな負けず嫌いのカチューシャだからこそ、誰よりも我々を強く勝利に導いてくれます」
「………」
…負けず嫌いだからこそ、隊長として強い。まぁ考えてみれば当然だが。
「あなただって負けず嫌いなのでしょう?」
「…まさか、むしろ負けっぱなしなまでありますが?」
やだ…私の人生負けすぎ?となる程度には。
「負けっぱなしと負けるのが嫌いなのは矛盾しませんよ、比企谷さん」
「………」
まぁ、そりゃそうだ。
…プラウダと合流できた事で戦力的には形勢逆転、後は西住が他の大洗戦車と合流する前に叩くだけ。
「そんなわけでローズヒップ」
「なんですの?」
「選手交代だ」
ーーー
ーー
ー
「麻子さん、囲まれないようコーナーを曲がれるギリギリの速度まで加速して下さい」
「わかった」
大洗の街中には一際大きなカーブのある場所がある。
速度を上げればそんな急カーブを曲がりきる事は当然難しい、ましてや乗っているのは戦車である。
だが、あんこうチームⅣ号は加速させ、そのカーブへ向かう。そうしないと後続の、彼女達を追いかける戦車群に囲まれてしまうからだ。
その先頭にはクルセイダー、クルセイダーもまた、速度を上げてあんこうチームを追っていた。
あんこうチーム、Ⅳ号がカーブを曲がる、そこまでは彼女、西住 みほの予想通りだった。
Ⅳ号戦車の操縦手、冷泉の技術を信じているからだ。だから、カーブを曲がるのは予想通り。
「…え?」
だが、予想と違うのは後続の、自分を追いかけてきたクルセイダーがカーブを曲がりきれず、曲がり角の旅館に激突した事だ。
「旋回っ!!」
その機会を、西住 みほは見逃さない。砲手である五十鈴も彼女の考えを察知し、すでに準備はできていた。
「撃てっ!!」
Ⅳ号の放った砲撃はクルセイダーに直撃し、白旗が上がる。
聖グロリアーナ最後のクルセイダーの走行不能、撃破が確認された。