劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
まぁ滅多に当たるもんじゃないらしいですし、なにより謎カーボンがありますもんね!!…マジで言ってる?
「お、比企谷ちゃんもやっと乗り気になった?」
「これが俺の人生において必要な戦いらしいですからね…」
「なんだそれは?」
いや、こっちが聞きたいくらいなんですがね。これって俺の人生に置いて必要な戦い…なのか?だってほら…。
ふと見ると殺人レシーブ作戦決行の準備の為、カルロ・ベローチェが八九式に乗っかろうとよいしょよいしょしている。
…しかし、改めて見るとなんだこの間抜けな絵面。俺の人生において必要な戦いの前準備がこれで良いのか…?
「…それに作戦はともかく、ここでカール自走臼砲は撃破しておきたいですし」
「そ、そうか?西住達本隊の応援を待ってからでも遅くはないんじゃないか?」
河嶋さんの言う事も方法の一つだが、それではリスクが多いのだ。
「俺達は少ない戦力を逆手に敵陣を横切り、最短ルートでここまで来れましたが西住達本隊から応援を出すなら更に迂回したルートを使うしかありません、そうなると単純にここに来るまで時間がかかる」
「でも、時間がかかっても戦力が増えた方が安定するんじゃ…」
「そ、そうだ、別に制限時間がある訳でも無いんだし、それでいいじゃないか!!」
「それがそうも言ってられないんですよ…西住、聞こえてるか?」
『うん、聞こえてるよ』
「…次、来るぞ」
都合良くカール自走臼砲の砲撃が発射されるのを見届けた俺は西住に合図を送る。
『着弾、やっぱり少しずつ狙いが正確になってきてる…全車両後退して下さい』
「…つまり、どういう意味だ?」
「ようするにあのカール自走臼砲も大学選抜チームからすれば扱いに困る兵器なんでしょう」
「なんだと!私達が山頂でアレにどれだけ苦しめられたか知らないのか!?」
「あれは山頂って狙いやすい的があったからで、その後のカール自走臼砲の砲撃は目立った戦果をあげていない」
まぁ上から定期的に爆撃が降ってくる…というだけでこちらの動きを制限するには充分すぎるほどの戦果とも言えるが。
「あのカール自走臼砲はこの試合の為に文科省が大学選抜チームに半ば無理矢理持たせた兵器なんでしょう」
「まーそうだろうね」
「…見てくださいよ、あれ」
相手戦車に気付かれないよう、そっとカール自走臼砲の様子を伺う。
本来カール自走臼砲には無い砲手室と装填手室が増設され、砲弾は大掛かりな自動装填装置が増設されている。
「あの魔改造っぷり。くっ…敵ながらカール自走臼砲が可哀想に見えてくる」
「…いや、まるで意味がわからんぞ!?」
「魔改造って点ならうちのヘッツァーも似たようなもんだけどねぇ」
「うちもヘッツァー改造キッドですしね…」
「根本的に違いますよ。だってあれ、無理矢理にでもカール自走臼砲を戦車道にねじ込む為だけに改造されたもんでしょう」
自動装填装置は良いとして、他は戦車道に合わせてカール自走臼砲を無理矢理戦車の枠にねじ込む為だけの改造と言っていい。
「あんなもん、カール自走臼砲への尊厳破壊じゃないですか、解釈違いにも程がある…」
「…カール自走臼砲に尊厳を求めるのはお前くらいだぞ」
いやいや、「お前、明日から戦車な」とか言われたカールさんの気持ちも考えてやって下さいよ。
◯ンダムが突然下半身を履帯改造されてガ◯タンクにされるような暴挙だ、許せるはずがない。
「つまり、大学選抜チーム側も初めて試合に使う…いや、乗員の習熟度なんてそれこそ初めて乗るくらいのレベルでしょうか」
元々カール自走臼砲を大学選抜チームが保有していた可能性もゼロではないがろうが…あの巨体にあの爆撃音、普段の練習で隠し通せとか無理な話だろう。
「ふふふ…つまりは見てくれは派手だが所詮は素人の砲撃と同じ、という事だな」
あ、河嶋さんが露骨にメガネをキラッとさせてる…。あー…うん、そうね。素人の砲撃のままなら良いんだけどね。
「で、そこんところなんだが…西住」
『はい、向こうも少しづつですがカール自走臼砲の扱いに慣れて来ています』
「な、なんだとっ!?」
つまり…「こ、コイツ…戦いの中で成長してやがる!!」を体現している。相手にこれをやられるとかたまったもんじゃないが。
試合開始からこの僅かな時間で初乗りの…しかも戦車とも言えない兵器の扱いに順応するこの速さ、各大学から選抜されたエリートを集めただけはある。
「これ以上大学選抜チームがカール自走臼砲の扱いに慣れる前に潰さないと、それこそ手がつけられなくなる。…だろ?」
『でも八幡君、えっと…その、さ、…しゃしゅひんレシーブ作戦っていうのは…』
「え?何だって?」
んー…ちょっとゴニョゴニョしてて聞こえないなぁ。
『うぅ〜…あの、さ、さ…しゃしゅひん…もにょもにょ…レシーブ作戦は…』
「…通信機の不調か?ちょっと良く聞こえないですねぇ」
『さ、殺人レシーブ作戦!!…ていうのは』
「…西住、もっかい言ってくれ、ちょっと良く聞こえなくてな」
『絶対聞こえてるよね!?…八幡君、こんな名前付けたらダメだよ』
「いや、付けたの俺じゃなくてアヒルチームなんだが…」
とはいえ、あの西住から殺人レシーブなんて物騒な言葉を聞けるとは思えなかったのでそこはバレー部グッジョブと言っておこう。
『…この作戦、八幡君も承諾してるんだよね?』
「…まぁ、多数決の総意もあるが」
カルロ・ベローチェをカール自走臼砲に向けて飛ばし、撃破させる(実現不可)。
この作戦を聞いた西住がどんな表情をしたかは個人的にとても気になるが…。正気を疑うのも無理はない。
「大隊長権限で止めてもいいんだぞ?」
『ううん、止めないよ。…八幡君もアンチョビさんもミカさんも居るんだもん、止める理由は無いかな』
うーむ…そう信頼するアンチョビさんはノセられてるし、ミカさんは…あの人マジなんなんだろうって感じだが。
『こちらアンツィオ、準備はバッチリだ』
…と、ようやくカルロ・ベローチェと八九式の合体が成功したみたいだ。
「継続ちゃん達、そっちはどう」
『いつでも構わないよ』
継続高校の方も配置についたようで、これで作戦開始の準備は完了した。
「…じゃあ西住にはいつもの作戦名の号令をやって貰うか、これよりまるまる作戦をってやつ」
「お、いーねぇそれ」
『えぇっ!?』
「いやほら、俺ってあんま西住からその手の号令される事って無かったからな、一度くらい経験したいというか」
なぜって?そりゃ練習試合とかで戦車に乗る事はあっても基本的に西住とは敵チームにされるからだよ、たぶんどこぞの干し芋食ってる人の策略で。
『その一度目が殺人レシーブ作戦で八幡君は良いの…?』
…うーん、言われてみれば確かに。そもそもこれ、西住が考えた作戦でも無いからなぁ。いい加減からかいすぎるのも良くないか。
「まっ…それはまた別の機会にって事で、今回はほどほどに締めてくれ」
『うん!…皆さん、カール自走臼砲は巨大ではありますが、その分、動きも遅く防御性能はありません、接近している今がチャンスです』
そう、カール自走臼砲自体は火力こそ高いが、そこは元々戦車戦を想定して作られたものでもないので防御性能は皆無といえる。…いや、カルロ・ベローチェの8mm機銃じゃ無理だよ、さすがに。
だからこそ大学選抜チームもパーシングを3両も護衛に置いているのだろう。
さて、そのパーシング3両をどうするか…ぶっちゃけ1両でも手に余るレベルの強戦車なんだが。
『ミカさん、パーシング3両お願いします』
『あぁそれじゃ、始めようか』
…の割には西住もサラッとミカさんに無理難題を、まぁ西住は本当に無理な事は言わないのはわかってはいるが。
ちなみに無理ギリギリの事は平気で言っちゃうのよこの子。やっぱり根が西住流なだけはある。
んー…つまり?
「なぁ、西住」
『どうしたの?八幡君』
「…ミカさん、継続高校ってやっぱかなり強いのか?」
『うん、すごくね』
ふと、カンテレの軽快な音楽が聞こえた。ーーー気がした。
それは通信機を通してなのか、もしかしたら直接外から聞こえてきたのかもしれない。
『いくぞ』
それと同時に森林から速度を上げて継続高校、BT-42突撃砲が空を飛び。
カール自走臼砲、そして3両のパーシングの眼前で着地して見せる。
「…は」
と、呆気にとられたのは恐らく俺だけでは無いだろう。
その証拠に相手パーシング3両もすぐには動けないでいる。無理もないだろう。
このパーシング3両は試合開始からずっとカール自走臼砲の護衛にまわされていた、ようするに留守番待機組だ。
敵がいつ来るか、むしろ来るかもわからない護衛役にいつまでも緊張感を持てというのも酷だろう。
その1両に向け、BT-42突撃砲は挨拶代わりとでも言うように砲撃を放ち、白旗を上げさせる。
ようやく自分達が敵襲にあっている事を理解した残りのパーシング2両が動き出した時にはBT-42突撃砲は逃走に向けて動き出した。
『どうやら二人共踊ってくれるようだね』
逃げるBT-42突撃砲とそれを追うパーシング2両、まぁ護衛役って任務を放棄して追いかけに出るのはアレだが…これも大学選抜側がカール自走臼砲の扱いに慣れていないからだろう。
それよりなにあの…BT-42突撃砲のもうあの1両だけでいいんじゃないか?とすら思わせる動き、なんなら今のでカール自走臼砲の撃破も狙えたのでは?
『よーし!我々も行くぞぉ!!』
とはいえ、このまま継続高校にだけ任せておく訳にもいかない、護衛のパーシングも居なくなった今なら簡単にカール自走臼砲に近付ける。
カルロ・ベローチェを乗せた八九式を先頭に俺達ヘッツァーも後ろについて橋からカール自走臼砲へ向かう。相手からの迎撃の心配はしていない。
そもそもこの距離だ、相手もあの火力の兵器をこちらに直接撃ってこようとは思わないだろーーーうん?
カール自走臼砲の砲塔がゆっくりと…ただ着実にこちらに向かってきたんですが…正気ですか?
それ600mm砲ですよ?この距離から戦車に向けて直接撃っていいもんじゃないと思うんですが(正論)。
戦車についてる謎カーボンを信用しすぎなのでは?
「うわぁ"あ"ああ!ごっぢ見でるぞお"おおお!!」
前からは安斎さんの汚い叫び声が聞こえてくる…え?あの人戦車から顔出してるの。じゃあさすがに脅しだけで撃たないか…。
だってほら、道徳的に見ても人が顔を出してる戦車に向かって600mm砲撃てるメンタルの人は居ないでしょ?
「木っ端微塵にしてやるわ!!」
ーーーあ、やるわこれ。大学選抜チームの連中って傭兵部隊かなんかなのかな?
「小山さん!アヒルチーム!!」
「はい!!」
『当たりません!!』
爆音と同時に容赦なく放たれる600mmによる砲撃は目の前の安斎さんの僅か横をかすめ、俺達ヘッツァーの少し後ろに着弾した。
…やり、やがったよ!マジーーーもう!マジっで!!
背後からの爆風を受け、後ろを確認しなくても最早退路が断たれた事を理解した。
「うわあああああああっ!!」
そしてその爆風をモロに浴びたであろう安斎さんの叫び声、あの人も戦車の中に入ってればいいのに…。
退路は断たれ、もう前に進むしかない。
『いっけぇぇぇぇえっ!!』
『必殺!!』
爆風の勢いも巻き込んだ全速力の八九式の急ブレーキ、それによって見事に車体から空中へと放り出されたカルロ・ベローチェ。
『殺人レシーブっ!!』
そう、カルロ・ベローチェはバレーのレシーブよろしく、空を飛んだのだ。
『やった!!』
『賢いね〜私達』
アヒルチームの歓声が聞こえる中、カルロ・ベローチェは空中からカール自走臼砲へ機銃を向け。
『今だっ!!マズルを狙えぇぇぇええっ!!』
パラパラと8mm機銃の嵐をカール自走臼砲に浴びせ。
ペチペチとそれはカール自走臼砲の装甲に弾かれ。
ガシャンと、最後は壊された橋の目前で着地した。…上下逆さまになって。
『…アレ?』
…まぁうん、そうなるよなぁ。あの状態で白旗判定が出てない辺り、豆戦車の白旗基準はだいぶ緩いのかもしれない。
大洗連合チーム24両VS大学選抜チーム27両。