劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
漫画リトル・アーミーじゃ大洗に勝ってますし、ある意味最終章はそのリベンジだったのかもですね。
逆さまにひっくり返ったカルロ・ベローチェ。
こちらに向くカール自走臼砲の砲塔。
『また敵の強烈なスパイクが来ます!!』
『なんとかブロック出来ませんかね?』
『そうだ!私達にはどんな強烈なアタックもブロックしてきた根性がある!!今こそバレーの経験を生かす時だ!!』
ブロック(消し炭)、バレーって過酷なスポーツだなぁ…。
「向こうも600mm砲の装填だ、自動装填装置が付いているとはいえすぐに次弾は発射されない」
「そ、そうか!よし!なら今のうちにさっさと逃げるぞ!!」
「桃ちゃん…逃げようにも退路が無いよ」
「そうだったぁ~!!」
逃げようにも退路は先ほどのカール自走臼砲の砲撃で吹っ飛んだ事で途切れているし、進もうにも大学選抜チームが事前に橋を破壊した事で道は無い。
橋の中央で俺達は八方塞がりの状況に陥られた。
『というか私達は?こ、このままなのか!?』
『逃げようにも逆さまじゃ動けないッスからねー』
そもそもカルロ・ベローチェは逃げようにもひっくり返ってるのでどうしようもないもない。
『アンチョビ姐さん、ちょっと待ってて下さい!私が外出ても一度ひっくり返して来ますんで!!』
いや、そんなちょっとコンビニ行って来る。みたいな感覚で戦車ひっくり返すとか言われても…。
『おい止めろペパロニ!怪我したらどうする!!』
…怪我で済むのかな?まぁさすがの大学選抜チームも外に出てる生身の人間相手に600mm砲をぶっ放そうなんて事はーーー。
【木っ端微塵にしてやるわ!!】
…いや、戦車から半身乗り出してたアンチョビさんにも撃ち込んでたし、普通にやりそう。なんなの大学選抜チームの奴ら。普段死亡遊戯で飯でも食ってるの?
となると、カール自走臼砲の装填が終わるまでのこの僅かな時間で決着を付けるしかない。
カルロ・ベローチェは論外、八九式でも火力は足りない。
だが、このヘッツァーの75mm砲なら狙える、距離もあり確実に撃破出来る保証は無いがやらないよりはマシだろう。
「会長」
「うーん…」
だが俺の提案より前に会長は何やら考えているのか、ふと俺の顔を見た。
「比企谷ちゃん、浮く事って出来る?」
「会長!こんな時になんですが比企谷はすでにクラスで浮いています!!」
本当、こんな時になんですがね!!そもそもその原因の一端はあなた達生徒会にもあるのでは?と最近気付かされてるんだが。
「違う違う、そうじゃなくってね。さっき継続ちゃん達がやったみたいに出来ないかなって」
「継続高校…あぁ」
先ほど、継続高校はBT_42突撃砲を大ジャンプさせてカール自走臼砲とパーシング3両を強襲した。
つまり同じ事が出来ないか?という事だろう…。確かに距離が近付けば撃破の可能性も高くなる。
「…難しいですね、ここだと助走の距離も高さも足りません」
が、それはもちろんある程度の条件が揃ってないと出来ない荒業だ。戦車ジャンプは言うほど簡単なものではない。
継続高校だって森の奥から充分に助走をつけ、ある程度の高さから飛ぶ事で強襲に成功させた。
対してこちらは橋という平坦、このままかっ飛んだ所でカール自走臼砲に辿り着く前に自由落下してしまうだろう。
「そこはほら、いい感じに発射台になれそうなのがあるから」
会長の言う発射台ってのは…あぁうん、こう見ると本当にいい感じに設置されている。
「…マジで言ってます?」
「マジで言ってる。で…どう?」
「…まぁ、だいぶマシにはなるかと」
それでもギリギリ届くかどうか…こればかりはやってみないとわからない。
「決まりだね、チョビ子!履帯を回転させろ!!」
『私に命令するな!!』
「後で干し芋パスタ作ってやるからさぁ」
『パスタァ!?』
干し芋にパスタ?…それって合うのか?まぁ会長こう見えて料理得意だし、変な物は出てこないだろう。
『よっしペパロニ!履帯を回転させろ!!』
『ハイっす!!』
【総統は屈した】
それはそうとパスタをエサにされた瞬間のアンチョビさんの即落ち感が半端ない、パスタに屈してアンツィオ高校の秘密とか話してしまいそう。
「比企谷ちゃん」
「はい?」
「…やりたい?」
会長がチラリと俺を見てくる、その手はポンポンと砲手のレバーを叩いていた。
「…赤星の仇をこの手で討ちたいのは山々ですけどね」
「相変わらずだねぇ」
会長の言いたい事がそういう意味では無い事は俺にだってわかっている。
正直、俺個人としても文科省にはここまで散々煮え湯を飲まされてきた。
廃校の理由のダシにされ、この試合を成立させないダシにもしようとし、それでもダメなら大洗側に不利なルール成立のダシにもしてきたのが文科省だ。
そんなに俺って良い出汁が取れそうなの?いくら目が腐った魚みたいとか言われてても限度ってものがあるだろ…。八幡ってすげぇよな、だって捨てる所ないもん。
ちなみに捨てる所の無い魚の代表として上げられるのが何を隠そう、我ら大洗名物のあんこうだったりする。そうか…俺ってほぼあんこうだったのか。なんならあんこうチームよりあんこうしてるまである。
そんな文科省が隠し玉として用意してきたのがこのカール自走臼砲だ、この手で叩きたいか?と聞かれればそれはそうと答える。
「まぁでも…ここは譲りますよ、会長もだいぶ溜まってるでしょうしね」
それでもきっと、会長には敵わないだろう。
俺よりもずっと前からあの文科省のメガネ役人と渡り合ってきたこの人が、誰よりもこの一撃を放つ権利がある。
「んじゃ遠慮なく…とっつげきぃ!!」
ヘッツァーは逆さまになりながらも履帯を回転させているカルロ・ベローチェに向けて加速していく。
運が良かったのはひっくり返ったカルロ・ベローチェの向きがこちらに向いてくれた事だ。この状態が上手いこと斜めに斜面を作ってくれている。
発射台とは良く言ったもので、加速したヘッツァーはそのままカルロ・ベローチェの回転させている履帯にも乗りかかり…。
「飛っべぇえっ!!」
その勢いのまま空を飛ぶ、車内からでも感じる浮遊感…俺は今、戦車で空を飛んでいる。
もちろんそんなものはほんの一瞬で、すぐに落下していくだけだが問題は無い。
「お願いします、会長」
着地地点にカール自走臼砲があれば、それで良い。
着地と砲撃はほぼ同時に、そして砲煙と共にカール自走臼砲が白旗を上げた事を確認した。
「やった?やったか?やったんだよな!!」
「桃ちゃんそれ…」
フラグになっちゃいそうだからあんま言わないで欲しいんだが、白旗を確認したんだ、もう問題無いだろう。
「お見事です会長!!」
…これでカール自走臼砲は撃破、残るは。
「継続高校は…」
まだカール自走臼砲の護衛に付いていたパーシングが2両残っている、継続高校が引き付けてくれているはずだが。
この場所からなら下の様子を見る事が出来る。さっきまでは目の前のカール自走臼砲をどうするかで手一杯だったが今なら落ち着いて辺りを見回せる。
「ッ!!」
だが継続高校のBT_42突撃砲を見つけた時にはその車体はパーシングの体当たりを受けてゴロゴロと転がっていく様子だった。
履帯はその最中で外れ、黒煙が上がる。
…やられた。2両いたパーシングが1両しか居ない所を見るとあの後1両倒したのか?状況がわからない。
わからないが、継続高校がやられたならあのパーシングが次に狙ってくるのは俺達だ。酷いボスラッシュをやらされるものだ。
カール自走臼砲は火力こそあっても装甲は無いし、そもそも動けない。単純な戦車戦をここから始めるのならパーシングの方がずっと厄介だ。
「わ、我々の目的は果たしたんだ、撤退しよう!!」
…河嶋さんの提案も有りだ。カール自走臼砲を撃破した今、無理してパーシングと交戦する必要は無いだろう。
『お、おい!私達はどうなる!!』
…そうなると動けないカルロ・ベローチェは確実にやられちゃうが。
『どうやらそっちの演奏は終わったようだね』
「…え?ミカさん」
…継続高校から通信?このタイミングで。
「継続ちゃん達、おっきいのはやっつけたよ〜」
『聞こえていたよ。良い音色だった』
『本当にやっちゃったんだ…殺人レシーブ作戦』
「それ自体は失敗しちゃったんだけどね…」
『あっはは、だよなー』
…わかってたなら事前に止めて欲しかったなぁ。いや、あの作戦も込み込みでのカール自走臼砲撃破ではあったんだが。
「お前達…すまないがもう通信はその辺で良いだろう」
河嶋さんが申し訳なさそうに俯きながらも継続高校へ伝える。
『え?なんで?』
「白旗を上げた車輌とずっと無線を続けていてはまた文科省にどんな難癖を付けられるかわからんからな。…後は我々に任せて貰おう」
戦車道において白旗は戦線離脱を意味する。その戦線離脱した戦車と無線で長々とやり取りをしていればある種のゾンビ行為と捉えられても仕方ない。
…それでもずっと撤退したがっていたこの人が後は任せろとまで言ってくれるとは。1両で3両のパーシングを引き受けてくれた継続高校への感謝が込められているのだろう。
『…だからなんでですか?』
『そもそも私らまだやられてないし』
…なんですと?
「何を言っている!現に履帯だって外れているだろう!!」
パーシングの体当たりを受けて派手に転がったBT_42突撃砲から履帯が外れたのは俺も確認した。
履帯を修理すれば戦線復帰はルール上問題無いだろうが…あの様子ではもう履帯修復は不可能に思える。
『道を進むのに、履帯はそこまで必要なのかな?』
「…必要に決まっているだろう、戦車なんだぞ」
『そんなものが無くたって進もうと思えばどこにだって行けるものさ。人も、戦車も』
その瞬間、黒煙の中からBT_42突撃砲が勢い良く飛び出した。
「履帯無しで…動いてる」
「…そうか、そういやBT_42は」
いろいろバタバタしていてすっかり頭に無かった。こんな基本的な事を忘れていたとは…同じ戦車好きとして秋山には決して見られたくない失態である。
『天下のクリスティー式!なめんなよ!!』
クリスティー式サスペンション、ようするに履帯が無くても走行が可能なのがBT_42だ。
『あ、ちなみにもう1両のパーシングは瓦礫の下敷きになってますんで安心して下さい』
…ちょっと継続高校強すぎないか?正直全国大会で当たってたらわりとヤバかっただろこれ。
BT_42突撃砲1両でパーシング2両を撃破してる上に隊長のミカさんの底が未だに見えていない…。作戦主体の大洗とは相性も悪そうだ。
…味方なら良いんだけどね、味方なら。
「援護しますか?」
『必要無いよ』
「…言ってみただけですよ」
…本当に、言ってみただけである。いや、一応言わなくてはいけない事ではあるんだが。
カール自走臼砲の居たここは高台にあり、カルロ・ベローチェと八九式は橋の上。そもそもカルロ・ベローチェはまだひっくり返っている。…アンツィオの二人、そろそろ頭に血がのぼってないかな?
ここからでは下に降りるだけでも単純に時間がかかる。かといって砲塔を下に向けて動き回るパーシングに砲撃を撃っても返って邪魔になるだけだ。
継続高校への援護は間に合わない。
『じゃあこちらも聞いてみただけだよ』
その口振り…まぁその辺りもこの人はとっくに気付いているのだろう。
『ミッコ、合わせるから好きに動いていいよ』
通信越しにカンテレの軽快な音色が響いてくる、そこからのBT_42突撃砲の機動力には目を奪われるものがあった。
『それに…君達の戦いはまだ続くんだろう?』
パーシングの砲撃をかわし、接近し、スレスレで翻弄し。
しかし、そんな大立ち回りは長く続かない。BT_42突撃砲はパーシングの砲撃を受けて左車輌が吹っ飛んだ。
衝撃に傾く車体、だが…それも継続高校からすれば都合が良かったのだろうか。
重心がまだ生きている右車輌に傾いたBT_42突撃砲はそのままパーシングへと一直線に距離をつめる。
「…戦車で片輪走行」
自分で言っていても冗談みたいに聞こえるそれを、目の前で継続高校はやってのけている。
…ミカさん、継続高校ってやっぱかなり強いのか?
【うん、すごくね】
今なら西住の言っていた意味がよくわかる。
『Tulta(トゥルタ)』
放った砲撃にすでにボロボロだったBT_42突撃砲は耐えきれず、白旗を上げる。
だが、それは同時に相手パーシングの撃破も意味していた。
『皆さんの健闘を祈ります』
通信越しにポロンとカンテレの静かな音色だけを残して、継続高校は無双を終えた。
大洗連合チーム23両VS大学選抜チーム24両。