劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
詳しいネタバレは省きますがただ一つだけ…濃厚な戦車戦が久しぶりに見れて本当に良かった!!
「終わっちゃたねー、もうちょっと役に立ちたかったんだけどなぁ」
「私は久しぶりに全力でぶっ飛ばせたから満足だけどな〜、ミカもそうじゃない?」
「そうだね」
「へー、ミカが素直なんて珍しいね」
「いろんな音色の混じった良い演奏だったからね」
「と思ったけどやっぱりよくわかんないや…」
白旗を上げたBT_42突撃砲は試合を離脱、彼女達が戦線に復帰する事は出来ない。
「じゃあここからは大洗の応援だね」
「しないよ、そんなものに意味なんてないからね」
アキからの言葉にミカはあっさりとそう告げる。
「全くだ、応援で勝てるんなら最初から苦労なんてしないしな」
「え?あっ、比企谷さん」
…ようやく気付いてくれたかぁ、なんかもうまとめに入ってたから俺の事見えてないのかもと思ってたわ。
「…お疲れさん」
「へっへー、クリスティー式サスペンションの凄さは見てくれたか?」
「あぁ…それはもう」
クリスティー式サスペンションでの履帯無し走行どころか、片輪走行まで見せつけられれた訳ですから。
「ていうか…大洗の人が応援を否定するってどうなのかな」
「いやほら、俺達もう充分頑張ってるから、これ以上頑張れとか言われても…なんかもう、ツライだけじゃん」
「あー…そういえばこの人、こういう人だった」
「なんかミカと似てんだよな」
いやほら、ただでさえ大学選抜チームとかいう格上相手にしてんのにその上で予想外のカール自走臼砲の戦線投入ときてんだ。マジでもうずっと頑張ってんだよ…。
「だからそんな不確かなもんより、実益の方を重視するのは当然だな。…助かったわ、この場を制圧出来たのは正直大きい」
カール自走臼砲の撃破により向こうからの一方的な砲撃は終わる、加えて護衛のパーシング3両も片付けられた事も今後の試合展開を大洗に有利に進めてくれるだろう。
「…お礼くらい素直に言えばいいのに」
「そういう所もミカそっくりだよなー」
ニヤニヤと笑うアキとミッコ。あー…日頃からミカさんと一緒に居るせいかいろいろと耐性でもついてるのか。
「で、この後は?もう帰るんですか」
「そうだね」
「え?帰っちゃうの」
「演奏が終わった奏者がいつまでも舞台に残っている訳にもいかないだろう」
「…ていうか、比企谷さんはどうしてわかったの?ミカがもう帰るつもりだって」
「いや、俺がミカさんだったら同じ事してるし」
残っていても試合が終わるまでやること無いだろうし、なんなら試合が終わっても後片付けやら関係者への挨拶回りやらで面倒くさい事ばかりだ。
「…直帰って良い言葉だよなぁ」
良い言葉なんだけどあんまり使う機会が少ないんだよなぁ。せっかくの良い言葉なんだからもっと積極的に使える環境を作って欲しい…。
「「………」」
あ、二人の視線がなんか辛い。
「ほらアキ、ミッコ、私と彼はそんなに似てないだろう?」
「えー…そうかなぁ、ミカも比企谷…さんも似てると思うけど」
「おい、なんか今一瞬、ちょっとさんを付けるの躊躇してないか?」
「んー、気のせい気のせい」
…こいつら、よくよく考えたら年上で隊長なミカさんを相手に普通に呼び捨てでタメ口な辺り、わりと容赦ない性格してるよな。
「だって、私はまだ旅を続けたいからね、帰るのは全てが終わった後でも遅くはないよ」
「継続高校の学園艦って授業ないのか…」
…来年の戦車道全国大会、継続高校が参加しないなんてオチもあるかもしれない。
ようするにミカさんは仕事の出先でいろいろ見て回りたい派、俺は直帰したい派と。なんだ!こう考えたら全然似てないな俺達!!
「まぁでも、せっかくなんで帰るのはもうちょっと待ちませんか?」
「言わなかったかな?私はまだ旅を続けたいと、旅人の歩みを止める権利は誰にもないよ」
うーむ…この人ならそう言うだろうな。とはいえ…今はこの人達継続高校も大洗学園の生徒だ。
大洗学園の生徒が試合中に勝手に居なくなった事が文科省に知られたらまたどんな難癖をつけられるか…。河嶋さんも警戒してたけどもうアイツら、ほとんど輩みたいなもんだからね。
…それにまぁ、まだきちんとお礼だって出来ていないしな。うん。
「そうっすか…せっかく試合が終わった後は転校生への歓迎会を開くつもりだったんですが、継続高校は不参加って事で」
「歓迎会!?ねぇ、それって美味しい料理とかも出るのかな?」
「あぁ、料理の用意も(たぶんアンツィオやらサンダースやらが)バッチリやってくれてるし、なんならお土産(秋山提供によるMRE)も沢山用意している」
「お土産まであるなんてやったじゃん!大学選抜チームの所で拾ったレーションだけじゃこの先、心細かったもんなー」
…そのレーション、本当に落ちてたの?大学選抜チームの所で?よーし、聞かなかった事にしよう!!
「ねーミカ!歓迎会出ようよ、きっと美味しい料理がいっぱいだよ!!」
「そうだぞミカ!腹いっぱいにご飯を食べれるチャンスだぞ」
「もちろんおかわりもいいぞ!遠慮するな…今までの分も食うといい」
きっとうまっ…うまっ…と食べてくれる事間違いなしだ。
「…そうだね。いつ旅立つのかも自由だからこそ、私達らしい旅になるのかもね」
「「やったー!!」」
アキとミッコがパンとお互いの両手を叩いた、本当、継続高校は普段、どんな生活をしているのか…。
「まっ、サウナでも入りながら気長に待ってれば良いんじゃないですか?」
「いやー、さすがの私らでもそんな長い事サウナには入んないって」
「あれ?でもどうして私達がサウナ好きって知ってるの?」
「いや、ミカさんサウナハット被ってるし…」
「これはチューリップハットなんだけどね、もちろんサウナは好きだよ」
まぁフィンランドってサウナの発祥(諸説あります)とされているし、サウナの聖地とも言われている。
イタリアのアンツィオやイギリスの聖グロリアーナ等、他所の学園艦見てきた辺り、フィンランドな継続高校はサウナに関しても力を入れているのは容易に想像できる。
「…継続高校のサウナってやっぱすごいのか?」
これは一端のサウナーである俺にとっても無視できる学園艦ではない。思えば最近は学園艦廃校のあれこれでまともにサ活が出来ていない分、余計にサウナ欲が駆り立てられる。
「そうだなー、練習の後とかに入るサウナなんか最っ高だもん」
「気になるならサウナの案内もしますんで今度継続高校にも遊びに来て下さい、その時は大洗の皆さんもご一緒に入りましょう」
「…は?いやいや、さすがにそれは」
「あ!大丈夫ですよ、ちゃんと服を着てみんなで入れるタイプのサウナもありますから」
「いや、そもそもサウナって大勢で仲良く入るもんじゃねぇから、他人に合わせてサウナやっててもととのえねぇだろ」
サウナとは己との戦いである。自分の身体の限界ギリギリを見極めて籠るサ室、そしてその熱を開放する水風呂、仕上げの外気圧。そのループに他人の関与出来る瞬間などあってはならない。
誰かの限界に合わせてサ室から出た所で消化不良になるのは当然だ。具体的に言うならサウナでくっちゃべってる奴は全員出禁にすれば良い、こっちは遊びでやってるんじゃないんだよ。
「気にする所の視点がガチの方だった…」
いや、そりゃ混浴サウナも聞いた事はあるんだが、それはもはやサウナの熱気とは別の理由で身体が熱くなるだけなんだよなぁ…。
サ活とはやはり清く正しくありたいものである、そうやってととのう事にこそ、価値がある。
「みんなで仲良く入るサウナも、それはそれで楽しいと思うんだけどなー」
「みんなで入っても、1人で入っても良い。だからこそ、サウナは尊いんじゃないかな」
…継続高校のサウナか。思わず、試合が終わった後の楽しみがまた一つ出来てしまった。
「じゃあその為にもやっぱり大洗には勝ってもらわなきゃね」
「ただ、舞台を降りた私達に出来る事は何もないよ」
「またミカはそういう事を言って…」
「見てごらんアキ」
ミカさんの視線の先…というか、うん。俺の後方からヘッツァーがこっちにやって来ていた。
「…探したぞ比企谷、貴様ここで何をしている?」
河嶋さんが俺を見るなり睨みつけてくる。…ついに見つかってしまったか。
「えーと、ほら…今回の戦いの功労者へのお礼参り、的な?大事でしょう」
「ほう…それは殊勝な心掛けだな、ところで比企谷」
「はい」
「ひっくり返ったCV33を元に戻すぞ、まさか自分が居ない間になぁなぁで元に戻っている、等とは思ってないだろうな?」
「…ははは、まさかぁ」
いや、こういうのって特に理由もなく次のシーンでは戻ってるもんだと思うじゃないですかー、実際原作じゃそうだったんだし!!…はて?原作とは?
「…比企谷さんがわざわざここまで来たのって」
「私達へお礼を言いに、じゃないのかよー」
いやだってさ、カルロ・ベローチェの重量は豆戦車とはいえおよそ3トン。ひっくり返った3トンの鉄の塊を元に戻す作業こそがこの戦いの真のラスボス戦になるなんて誰が思っていたのか。
「…ミカさん、まさかこれを見越して退場とかしてないですよね?」
「………」
ポロンと、彼女はカンテレの音色一つを返事とした。…いや、なんか言えよ。
「それじゃあ、頑張って下さいね」
「歓迎会、楽しみにしてるからなー!」
三人に見送られ、俺はヘッツァーに渋々戻る事となった。「本当に、自由な連中だことだ…。」
「…貴様もだ!!」
…ちょっと河嶋さん、人のモノローグに口挟むのはルール違反じゃないっすかね?え?後半声に出てた?
ーーー
ーー
ー
「BT_42、パンター2輌、T_34、JS_2、KV_2、チハ、合計7輌が撃破されました」
「でもでも、こっちはカールとパーシングを5輌を撃破したよ」
「これで23対24ですね」
カール自走臼砲とパーシング3輌を撃破した俺達どんぐり小隊はそのままたんぽぽ本隊と合流。上からのカール自走臼砲の脅威が消えた事であさがお部隊とも無事に合流できた。
さすがの大学選抜チームもカール自走臼砲が撃破された事には衝撃を受けるはずだ、向こうも向こうですぐに何かを仕掛けてくる事はないだろう。
ようするにこの試合における前半戦が終了した。と見ていいだろう。あんこうチームが前半戦の総括をしているのもそれが理由だろう。
「…ずいぶん減っちゃったね」
「いや、よく持ち堪えた方だ」
総括として見れば冷泉の意見が正しい。こっちはただでさえ格上の大学生を相手にカール自走臼砲とかいう隠し玉まで出されてるからね。
「うちはカチューシャだけになっちゃった…」
「まだ私が居ますよ」
「それにあなたもね、カチューシャ」
「…わかってるわよ!イージーエイトに命令よ、プラウダは負けないって事を証明しなさい!!」
「…なんで私達までプラウダにされているのかしらね」
「あら、ハチューシャにクラーラも乗ってるんだからもうプラウダみたいなもんでしょ、戦車がロシア製じゃないのは残念だけどね」
「俺はプラウダにカウントされてんのか…」
「ほいほい他の戦車に乗り換えちゃうあんたには相応しいんじゃないかしらねぇ!!」
無事本隊と合流という事でもちろん俺はまたイージーエイト、キツネチームへと戻って来た。
「…なぁ、アリサの奴、なんかピリピリしてないか?」
…来たんだが…なんかアリサからの当たりがずっとキツいんだよなぁ。
「比企谷さんが私達をほっといてヘッツァーに乗り換えなんてするからじゃないですか…」
「…まぁ、悪かったとは思ってる」
今回のどんぐり小隊への参加は完全に俺のわがままによるもので、自分でメンバー誘って形勢したキツネチームを完全放置した訳だし。
じゃあわかっててなんでそんな事したのかって?赤星の仇討つ為に決まってんだろ!!
「それでも俺が抜けた穴はアリサが埋めれるはずだが」
俺が不在の間の車長はアリサに担当して貰っていた、もともと車長だし、俺とはある程度考え方も似ている事から適任だとは思ったんだが。
「あらそうありがとう!何が俺の代わりはお前しか居ない、よ!!甘い言葉にはもう騙されないわよ!!」
いや、別に騙したつもりもないんだが…マジで何があったの?
「…それがその、ローズヒップさんがですね」
「うん」
「…カール自走臼砲の爆撃に向けて叫びながら突撃しようとしてたり」
「…うん?」
「とにかく動き回ろうとするのをアリサさんが必死に止めようとして…大変、でした」
…リードが外れてはしゃぎ回る犬かな?
「…大変、でしたんですよ?」
「ーーーーー」
あ、カルパッチョからも圧を感じる…。というか、クラーラもじっとこっちを見てロシア語でなんか言ってる。怖い。
「…ごめんなさい」
三人の様子を見るとどれだけ大変だったのかもわかるというものだ、改めて自分の身勝手を反省しよう。
最悪、戻るべきイージーエイトがすでに白旗を上げてしまっていた…なんてオチなんかも有り得た訳だ。こっちはこっちで戦ってくれていたのか…ローズヒップと。
「本当よ、もう二度とごめんだわ…この戦車の車長はあんたなんだから、もう少し自覚は持ってほしいわね」
「よくわかりませんが…皆様仲直りができて良かったですわ!!」
「本当悪かったな。とりあえずだがローズヒップはこれから30分くらいはおやつ抜きにしとくわ」
「なんでですの!?」
なんででもなの、ちょっとは君も反省しなさい。
「…いや、30分って甘やかしすぎでしょ!!」
「いえ、アンツィオの生徒もおやつ抜きにはだいぶ堪えるわ」
「カチューシャ様も歯磨きを忘れた日におやつ抜きになった時はかなり落ち込んでました、そんなカチューシャ様も可愛いのですが」
「なんで私の周りにはこういう人達ばっかりなのよぉ〜!!」
うーん、この貴重なツッコミ役、アリサをこのチームに入れて本当に良かったと思いました、まる。
大洗連合チーム23両VS大学選抜チーム24両。