劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
15周年…え?15周年!?15周年って事は15年前に生まれた子が15歳になるって事だよね?(再確認)。
世間ではガルパンおじさんの高齢化が心配になってますが俺ガイルおじさんの高齢化の方が心配なのでは?
…ん?あれ?この2つのクロスオーバー作品って事は高齢化問題の最先端という事に?いやいや、まだ大丈夫!!
…大丈夫だよね?
「改めまして、忙しい中わざわざ時間を頂いて申し訳ありません」
「まぁ別に構わん、そもそもそこまで忙しくないしな」
今の所は大学選抜チームの動きも無い。その隙に大洗連合はとある場所へ向けて移動中だ。
西からのプライベート通信に応じた俺達はその進軍中の中で合流した、移動中での会話にはなるが悠長に立ち止まる訳にもいかないので仕方ない。
「で、なんの相談だ?」
と、とぼけてはみたがこのタイミングで西から相談がある、とくればおおよその内容には検討がつく。…てか、それで合っていて欲しいと願う。
「はい!我々知波単学園はこのままでいいのか…比企谷さんの目から見てどう思われるでしょうか?」
…良かった、あってた。さすがにここにきてまだ突撃云々にこだわり続けていたらどうしたもんかと思ったが、西もまた今の知波単学園のあり方には疑問を持っているのだろう。
「その前に…相談相手は俺で良かったのか?こういうのは西住…あー、大隊長に相談するのが間違いないと思うが」
西住…と言いかけて、そういや今は西住シスターズが揃ってるんだと思い出して言い直す。え?名前で呼べば良いって?まぁ…大隊長で通じるだろうし、うん。
「西住さん…いえ、西住みほさんは忙しそうでしたので」
そんな俺のちょっとした葛藤を西はさらっと突撃していく。うーん…これが知波単魂。
「まぁ…そうだよな」
先ほど暇だとは言ったが、それはあくまで俺達が役職も持っていない平社員だからだ。大隊長である西住は今も作戦の立案や伝達で大忙しだろう。
「それで一度、ダージリンさんとお話をしてみたのですが」
「…ん?ダージリンさん」
「はい、なにやらお茶会…?をするとの事なので」
横で西住が忙しくしている中で隙あればティータイムかまそうとしてるダージリンさんェ…。西からも「あ、この人暇なんだな…」認定されてんじゃん。
「ダージリン様お茶会していますの!大変ですわ、私達も急いで向かわないとお菓子が無くなってしまいます!!」
「ひぃいっ!!」
お茶会…と聞いて興奮したローズヒップのハンドル捌きにシャーマン・イージーエイトの車体が大きく揺れる。なんならアリサの悲鳴付きである。
「お、落ち着きなさい!ほら、お菓子ならここのをあげるわよ!!」
「やったですわ!アリサさん、ありがとうございます!!」
おー…アリサもだいぶローズヒップの扱いには慣れてきたみたいだな。相変わらずヒステリックではあるが成長も見えてなによりだ。
「結局…お菓子を食べている間は大人しい、という結論になったので」
「小町がまだ小さかった頃を思い出すなぁ…」
子供ってちょっと目を離すとすぐどっか行っちゃうし、目の前のお菓子に夢中にさせるやり方は俺もよく使ったもんだ。
「このやり方はカチューシャ様にも効果的でしたので間違いありません」
…それが今でも通用するローズヒップとカチューシャさんは高校生としてどうなのか?
しかしこのやり方を続けているとローズヒップを聖グロリアーナに戻す時にはぶよぶよに太ってしまうのでは?信じて送り出したローズヒップがふくよかになって帰って来たのを見て、教育係のアッサムさんは何を思うのか?
「てか、ダージリンさんに相談したんならもう俺の意見いらないじゃん」
なんならあの人の方が俺よりもよほど良い意見を出してくれそうなものだが。
「いえ、ダージリンさんからは突撃を学ぶなら黒森峰の西住まほさんを訪ねては、と言われました」
…またあの人も体良く押し付けたな、そんなにティータイム優先だったの?
「なんでも我々知波単の突撃と黒森峰の理想としている機動戦は似ている…との事でしたので」
うーん、まぁ確かに、黒森峰…てか、西住流のスローガンって『突撃・突撃・また突撃』だったりするんだよね。そこだけ聞くと知波単と同じレベルではある。
それはそれとしてあの人、絶対にこやかな表情しながら西にその事を話してそう、良い性格してますもんね…。
まっ、こんな話を聞いたら確実に機嫌が悪くなる奴に心当たりはあるが。
「そういえば…この話をした時に黒森峰の副隊長さんがとても怒っていましたがなぜでしょうか?」
「あー…、気にすんな。なんか定期的に怒りが込み上げてくる体質みたいなもんらしいから」
「なんと!それは難儀なお体ですね…心配です」
西はたぶん本気で心配しているし、先の知波単と黒森峰が似ている…という話も悪意無しの純粋な気持ちで伝えただけなのだろう。
「…で、西住流の意見が聞けたんならなおさら問題無いだろ」
「いえ、そこで西住まほさんから比企谷さんを紹介され、こうして助言を頂くべく参上しました!!」
…え?まさかの姉住さんから押し付けられた案件なのこれ、そんなに知波単と黒森峰が似ている…と言われたのがショックだったのか。
「つまり…私達は紹介の紹介、という事でしょうか?」
「馬鹿ね…そんな話素直に言わなくていい事じゃないの」
「まぁ言ってしまえば妥協枠になるしな…」
相談をしに来た相手からこんな話を聞いて良い顔をする者は少ないだろう、それを素直に話した辺り、西に腹芸は無理だろうな…。
「で、どうするの?」
アリサが呆れた声で聞いてくる、どうする?とはダージリンさんや姉住さんのようにまた誰かを紹介するってのも手だと言いたげだが。
「愚問だな」
俺は不適に微笑んで答えてやる。
「元ぼっちに人をほいほいと紹介できる人脈なんかがあると思うか?」
「「「「あるんじゃない((ですか))(ですの?)(の)」」」」
…久しぶりのぼっちネタをこうもバッサリ切られてはこちらとしては立つ瀬がないんだが?
「まぁもう次の目的地までそんなに時間もないしな…、それに大洗が勝つ為にも知波単の意識改革は必要だろ」
「素直じゃないのですね」
「なるほど…これがタカちゃんの言っていた大洗名物、比企谷さんの捻デレですか、後でタカちゃんにも自慢しちゃお♪」
カエサル…いや、タカちゃんの奴、人の捻デレを勝手に大洗の名物扱いにしてんじゃねぇよ…。いや、捻デレってそもそも何って話たが。
「あー…で、だ。西、こうして相談に来たって事はお前は今のまま突撃してちゃ駄目だと思っている、という認識で構わないよな」
なにやらニヤついている気がするキツネチームの面々から話を強引にでも元に戻すべく、西に問いかける。
「…突撃は私達知波単学園の伝統であり、魂です!ですが…こうして皆さんに迷惑をかけている事も事実だと思います」
…迷惑をかけている自覚はあったのか。いや、あってくれなきゃ困るんだが。
知波単学園が突撃にこだわるのは良い。…いや、本来なら良くはないけど、それより問題なのは命令を無視しての行動が多すぎるという点だ。
先の大学選抜チームとの前半戦もそうだが、特に酷いのはエキシビションマッチでの事だ。フラッグ車をあそこまで追い詰めた状況を作っていたのにも関わらず、みすみすダージリンさんを逃したのは知波単学園の独断突撃が原因だといえる。
「…やはり、我々知波単学園は突撃を諦めるべき、なのでしょうか?」
答えにくそうに…それでも意を決したように西はその言葉を紡いだ。隊長になってまだ日が浅いらしい彼女にとって、その言葉の重さはどれほどのものか。
まがりなりにも先輩から受け継いで来たものを諦める、という選択を隊長になったばかりの彼女が口にしたのだ。
そんな彼女の覚悟を見せられば、俺も自分の意見をしっかりと伝える必要があるだろう。
「突撃は知波単学園の推しなんだろ、なら…わざわざ推し活を止める必要は無いんじゃないか」
「…あの、推し、とは?推し活とはなんでしょうか?」
推しとは何か?それはなんとも難しい質問だ。推しの定義は様々で複数ある者もいれば推しが移りゆく者もいる。決して不変の物ではない。
ただ生きる上で必要な物ではある。人は大なり小なり誰しもが推しを掲げて生きていくものだ。
人でもアニメでもドラマでもゲームでもキャラクターでも、推しの基準は様々ではあるが、総じてそれは生き甲斐となる。
「まぁ、知波単学園で言う所の突撃魂みたいなもんだ」
「なるほど!それならばわかります!つまり我々は突撃を推しとして、推し活している、という事ですね」
突撃に置き換えてみると一気に理解が早くて助かる。バレー部連中とそこら辺は似てるなー。
「…ちょっと、あんた何言ってんのよ!!」
アリサがちょいちょいと俺を呼ぶ、まぁ言いたい事もわかる。
「さっきと言ってる事が違うじゃない、それじゃ何も変わらないわよ!!」
「…じゃあアリサ、聞くが突撃を捨てた知波単学園の強みは何だ?」
「そんなの…」
「…まがりなりにも知波単学園は突撃一辺倒でここまでやってきた学園だ。当然、練習にも一番力を入れているだろう」
事実、錬度だけを見れば知波単学園の突撃はしっかり高いといえる。ほんとやる気だけはあるんだよなぁ…。
「そうですね、他の訓練をしていない…という事はないとは思いますが、やはり学園の特色にあった訓練に力を入れるのは当然だと思います」
突撃は知波単学園にとって最大の弱点ではあるが、それは同時に最大の武器でもある。それを捨てる必要はないはずだ。
「強い戦術、弱い戦術、そんなのは人の勝手だ、本当に強いチームなら推しの戦術で勝てるよう努力するべきだろう」
「…何か、良い言葉のように聞こえるんですが」
「どっかで聞いた事がある気がするのよね…」
いやー気のせい気のせい。
「なるほど!つまり我々はさらなる研鑽を積み上げ、突撃の錬度を上げるべきだと言いたいのですね!!」
「違う…」
これにはカリン様もあなた、だいじな事がわかってないわね…とか言っちゃうよ。
「西、知波単学園はただ単に突撃がしたいのか?それとも突撃して勝ちたいのか?どっちだ?」
「…それは、もちろん勝ちたいです」
「なら突撃は目的ではなく勝つ為の手段だ。突撃しか勝たんってならいっそ貫いてみたらどうだ?」
推しの戦術がある事、それ自体は間違いではない。人は推しのたなら無限の力を発揮できる。
ソシャゲの低レアキャラが推しの人はバフを盛り、デバフを盛り、戦況を見極め、接待プレイとはいえきちんと推しを活躍させてみせる。
「ただ闇雲に、突撃をしたいからするんじゃない。突撃を最大限に輝かせる瞬間を作る、その為にあらゆる努力をする」
「…つまり、機会は作り出せ、という事ですか」
「あぁ、そもそも本来なら突撃なんて試合の決着を付ける為の戦術だ、つまり…そこで突撃が成功するという事はーーー」
「我々の勝利!という事ですね!!」
もちろん簡単な話ではない、それに例えその瞬間を作り出せたとしても肝心の突撃が失敗に終わる可能性だって充分にある。
ただ、それでも…。
「推しの戦術である突撃で試合を決める、これ以上の推し活は無いんじゃないか?」
「…なるほど、それが推し活というものなのですね!なんとも奥深い!!」
いや、本当奥深いのよ、底無しの沼にハマると言ってもいい。
「…ですが、他の皆が納得すればよいのですが」
やはり問題はそこだろう。西と福田以外の知波単メンバーはまだ知波単の伝統にこだわり続けている。
「私も含めてですが、皆突撃と聞くとどうにも身体がむずむずとし、堪えきれないのですが…」
…もうそれ、そういう類の病気なのでは?
「だから言ってるだろ。知波単がやるべき事は突撃じゃなく突撃しか勝たん、を推す為の推し活だって」
「それって単に言葉を言い換えただけじゃないの…」
アリサはそう言うがこれは以外と馬鹿に出来ない言い回しだ。
大事なのは知波単連中にとっての突撃を目的から手段へと意識を変えさせる事。その為には言葉を変えるのが一番手っ取り早い。
間にワンクッション挟む事で「突撃をする」ではなく、「突撃を輝かせる為に推し活をする」へ目的をすり替える。
「まぁそれでも納得しないってんなら仕方ない、そん時は下の連中が納得するに値する大義名分を用意するしかないな」
「そんなものがあるのですか?」
「あるだろ、全部大洗のせいにしちまえ。大洗の名前を利用しろ」
いや、ほんと簡単な話で全ての責任を大洗に押し付けちまえばいい。
仕事をする上での部下からの不平不満を受ける上司が持つ最強の手札は『もっと上からの指示なので』や『会社の方針だから自分の力ではどうにも…』だ。
あくまで自分は気持ちはわかるけど…という体を残しつつ、不平不満の矛先を現場ではどうにも出来ない方向へ向けさせる。ヘイトコントロールの奥義がそこにはある。
「えぇ…それは、大洗の皆様に申し訳がないのですが?」
「…そもそもだ。西、お前は…いや、お前ら知波単は今、どこに転校してきたと思ってんだ?」
「大洗学園…そうでした!今の私達は大洗の生徒でしたね!!」
「だったら大洗の名前を理由にする事になんの問題もないだろ。むしろ当然の事だ、うちの生徒なんだから」
「…なるほど!なんだかそんな気がしてきました!!」
納得してくれたようでなによりだ。この調子で他の知波単連中も続いてくれれば良いが…。
「…なんか目の前で人が言いくるめられている瞬間を見せられているわね」
「詐欺の瞬間を見ているみたいであんまり気分の良いものじゃありませんね…」
えー…なにその反応、、同じ学園の生徒じゃないですかー。
「一度でも大洗の制服着て転校して来たんだし。これもう実質大洗の生徒だろ。学園が困った時は協力しないとなー」
「怖っ!大洗怖っ!!」
「それを皆さんを集めた比企谷さんの口から聞くのが一番怖いのですが…」
やだもー、みんな大洗学園の事を誤解してますよ?うちはいたって健全なアットホームな職場の環境を目指してますので(目指している、ここ大事)。
ーーー
ーー
ー
『知波単学園の件は上手くいったようだな』
「おかげさまで、西もたらい回しにあったかいがあったんじゃないですかね…」
『あぁ、君に任せて正解だった』
皮肉通じねぇなこの人…。黒森峰から通信が来たという事は姉住さんも西の様子の変化を感じ取ったのか。
知波単学園のここから先は西次第だろう。先ほどのやり取りを得て彼女がどう動くかはこれからの試合展開にも大きく関わるであろうがそこに俺の出来る事はおそらくない。
それに…俺が動くよりもよほど頼れるであろう後輩が彼女にはいるはずだ。
「助言ならまほさんの方でやっちゃった方が手っ取り早かったんじゃないですか?」
『確かに、突撃の戦術を教える事ならできるだろう。だが知波単学園に必要なものはそれだけではない』
知波単学園に必要なものは突撃の錬度ではなく、突撃をどう使うかにある。と…この人は気付いているのだろう。
『彼女も何かを掴んだ良い表情をしていた、よほど良い助言をもらえたのだろう』
まぁ…世間的に詐欺とか言われましたけどね。
『その調子でみほの事も助けて貰えれば助かるんだが…』
…なぜそこで西住?
「西住に俺なんかの助けが必要になるとは思えませんがね…」
こと戦車道になるとあの子マジでガチだからね、確かに前半戦では大学選抜チーム側がやや優勢にはなっているが。
「むしろ頼れるお姉ちゃんが一緒にいるんですし、そっちのがあいつにとっては充分心強いんじゃないですか?」
『…そうか、そうだと良いんだが。いや、それでも君がーーー』
『隊長?誰と通信を…あぁ!!』
ここで通信に割り込んで来たのは…まーたこの人、姉住さんの隣をキープしてんのか。
『ちょっとあなた!知波単学園の隊長に何を吹き込んだのよ!私の顔を見るなりいきなりご自愛下さい…とか本気で心配されたのよ!!』
「…あー、なんか通信の調子がイマイチ良くないので一度切りますね」
『ちょっと待ちなさーーー』
旗色が悪くなったのでブチッと切断、やはり切断厨は正しかった…。
「…良いのかしら?黒森峰の副隊長からプライベート通信がひっきりなしに来てるけど?」
はっはっは!アリサもおなしな事を言う。黒森峰に副隊長なんて居ないはずだが?