劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
いろいろと書きたい感想はありますがネタバレになってしまうとアレなのでただ一言だけ…レモングラスちゃんが良いと思いました、まる。
「遊園地跡とはいえかなり広いんだな…」
遊園地跡に無事到着した俺達はそのまま園内を進軍しつつ、エリアマップを開いてみる。
定番のジェットコースター、観覧車はもちろん巨大迷宮のようなアトラクション、更にボート乗り場まであるようで園内はかなり広い、遊園地というよりアミューズメントをつめるだけつめこんだテーマパークというか。
このラーメン屋なのにラーメン以外のメニューが充実置している飲食店みたいなごった煮感。廃園の理由、これじゃないの?
とはいえ敷地内が広く戦車戦をするにも都合は良い、西住が決戦の場所をここに選んだ理由と頷ける。
「私、ジェットコースターに乗りたいですわ!!」
「もう営業はしてませんが」
まぁ遊園地跡だからね…。とはいえこれだけのアトラクションを詰め込んだ遊園地が廃園になっている姿を見ているのはどうにも切ない気持ちにはなってくる。
武部がロマンチックとかぬかしていたがこういう所にデートにくるカップルなんかホラー映画の冒頭犠牲者の筆頭だ、最近ではそのお株も心霊系ユウチューバーに奪われつつあるが。
なんとなく感じていた既視感の正体はボコミュージアムだろう。あそこもあちこち廃れていてこのままだとここのお仲間になるのも時間の問題なのかもしれない。
成り行きとはいえ着ぐるみショーのバイトをした身としてはあそこのスタッフさん達は大丈夫だろうか…と思ってしまう。
仕事内容はともかく、人間関係的には良さそうな職場だとは思う。人間関係のしがらみを察して数多くのバイトをブッチしてきた俺の観察眼が珍しくそう評価しているレベルだ。…仕事内容はともかく。
「残念ですわ…、私、ジェットコースター好きですのに」
まぁ好きそうだよね…。なんならゴーカートで爆速してスタッフさんに怒られる姿が想像できてしまう。
「あんたの操縦はジェットコースターに乗ってるのとそう変わらないわよ…」
「なんと!それはありがとうございますわ!アリサさん!!」
「褒めてないわよ!!」
なんならローズヒップの操縦はシートベルト無しのジェットコースターだとでも思ってくれればいい。…それ、普通に死ねるんだよなぁ。
「ローズヒップには悪いが今回はコースター役は譲ってやれ」
「あれ、本当にやるんですね」
「当人達はマジでやるつもりだし、悪くない提案だとは思う」
「私だってできますわよ!!」
「はいはい、なんか機会がありゃな」
少し不満気なローズヒップにお菓子を与えてなだめつつ…、いや、マジでやりかねないからその時は全力で止めたいんだが。
『こちらアンツィオ、ジェットコースターの上は抑えたぞ』
『いやー、見晴らし良いッスね』
彼女達、アンツィオ高校からの通信が入る。
『思った通りここなら園内が一望できる、偵察にはうってつけの場所だ』
ジェットコースターは遊園地跡の中心をぐるりと囲うように設置されている。つまり高い所から園内の様子、更には遊園地の外まで見渡せる事が出来る偵察には最適のスポットだ。
どれくらい最適かっていうとあのジンの兄貴だって取り引き相手を確認する為にチョイスしたくらいだもんね、ジェットコースターは偵察に最適と兄貴のお墨付きだ。
「とはいえ、よく登る気になれましたね」
なんせ狭いコースターの上を戦車で登る事になるのだ、いくらCV33が軽戦車で小回りが利くとはいえ、レールから外れれば即落ちの危険もある。
『なーに、昔からうちの高校では言われてるからな、なんとかとアンツィオは高い所が好き、とかなんとか』
『なんスかそれ?』
『さぁ、私もよくは知らんが高みの見物、なんて言葉もあるくらいだし、きっと高みにいる我々アンツィオを讃えた言葉なんだろう』
『はー、よくわかんないけどなんかすげーッスね』
…高みの見物も別に上の立場から見るとか、そういう意味でもないんだが。
『…こんな言葉を知っていて?』
「ダージリンさん、ステイ」
たぶんことわざの誤用とか気になるんだろうがせっかくアンツィオの皆さんがやる気満々なので…。
『す、ステイ…こほん、悲観主義者はあらゆる機会の中に問題を見出す。楽観主義者はあらゆる問題の中に機会を見出すのよ』
『チャーチルですね。…ダージリン様のお言葉にそんな事を言う人は始めてですよ』
『…あなたはもっと楽観主義になるべきね、マックス』
あ、ちょっと拗ねてる…。うん、ごめんなさいね、確かにあのダージリンさんが『こんな話を知っている?馬鹿と煙は高い所が好き』なんてまんまのことわざ使わないよね…。
うーん…これはエアプダージリンさん。
『えーと、私ら褒められてんですかね?』
『もちろんですわ、チャンスはあなた達が作ってくれる。そうでしょう、みほさん?』
『はい、アンツィオの皆さんのおかげで敵の侵入経路も予想できます』
『あぁ、任せておけ!!』
園内のみならず、外の敵の様子も見る事が出来る。このアドバンテージはデカい。
『園内への出入口は3つ、その3つを防衛しつつ、相手を園内に誘い込みます』
遊園地跡はその周りをぐるりと城壁が囲んているのでおのずと相手の侵入経路も限られてくる。
南の正門。
東の通用門。
西の裏門。
一番大きいのは南正門、戦車による大部隊が来るのならここが本命だろうか。
しかし東通用門と西裏門も大部隊が通るには狭すぎるが無視も出来ない。相手が分散して攻めてくる事も考えればアンツィオのナビがどれだけありがたいかはわかるだろう。
…とはいえ、懸念が無い訳じゃないが。
『出入口は3つだけ…』
『本当にいざって時は逃げ場無いんだ…』
ふと1年ズウサギチームの不安の声が聞こえてくる。ちょうど良い、その懸念についても話しておくか。
「安心しろ、出入口なんて言ってるが結局は飾りみたいなもんだ」
『どういう意味ですかー?』
「簡単な話だ、いよいよヤバくなったら砲撃ぶっぱして城壁壊して逃げればいい」
某ハンター漫画でいうヨコヌキ作戦だ、出入口が無いなら作ってしまえばいいってノブナガさんも言ってましたし(言ってない)。
『そっかぁ、その手があったね!!』
『さすが比企谷先輩、破壊に躊躇がない!!』
『クラッシャー先輩だ!!』
いやそれ絶対褒めてねぇだろ…。そもそもこれが懸念材料にもなってるんだが…。
「つまり、こっちが出来るなら向こうも同じ事ができるって事にはなるんだが」
『…ダメじゃん』
『向こうにも比企谷先輩くらいクラッシャーな人が居るかもだし〜』
『…比企谷先輩みたいな人、向こうにも居るかなぁ?』
『こんな人が何人も居ないとは思いたいんだけど…』
俺も俺みたいな奴が何人も居るとは思いたくはないんだよなぁ…。
とはいえこれが可能なら頑張って3つの出入口を固めても横から城壁に穴を開けられて園内にぞろぞろと侵入…なんて事もあるだろう。
「で…そこん所どうなんだ?西住」
『ううん、それは無いよ。下調べした時にわかったんだけどあの城壁を戦車砲で抜くのは困難だと思う』
…そういえばあんこうチームで試合フィールドの下見をしていたんだったか。残業お疲れ様です。
それにしたって戦車砲で撃ち抜けない城壁ってどんだけだよ、本当にここ、元々はただの遊園地だったの?
「…まぁ実際に試した訳でもないんだし」
『間違いありません。私も調べましたがおそらく、城壁には戦車にも使用されている特殊なカーボン素材が使われているのかと思われます』
「よし、城壁破壊の件は考えるだけ無駄だな」
この世界において謎カーボンの存在は絶対。いいね?
「…しかしこの城壁全てがカーボン材とか」
ぐるりと城壁を見回してみる、これが元々この遊園地にあったものなのか、それとも…。
『比企谷さんが試合の度に何かを破壊する作戦ばかり考えているから、ついに戦車道連盟が本気を出したんじゃないのか?』
『電信柱の破壊は当たり前として、他所様の家の塀を好き勝手に破壊するのはどうかと…』
「…いや、練習試合の事言ってんなら実際に壊したの俺じゃないし」
それにほら、あの聖グロリアーナとの練習試合の時の事を言ってるなら実行犯はすぐそこに居るんですが。
『…なんかクラッシャー先輩、私達のせいにしようとしてない?』
『私達はクラッシャー先輩の指示に従っただけだもんね〜』
『指示役の人が責任を負うべきだと思います』
「んな闇バイトみたいな言い訳が通用すると思ってんのか、同罪だ同罪」
あとクラッシャー先輩やめろ。
「だいたい使えるもんを使って何が悪い、フィールドギミックは使ってこそだろ、せっかく用意してくれてんだから」
『あの〜、そもそもフィールドギミックとして想定されているものでは無いのでは?』
『別に戦車道連盟が用意した訳じゃないもんね』
いやほら…あるのがいけないっていうし。
『…フィールドギミック、使えるものは使う』
『どうしたの梓』
『あ、ううん。それで西住隊長、どうするんですか?』
『はい、整備が必要な車輌を中央広場でメンテナンスしつつ、各出入口に防衛部隊を配置します』
俺達の狙いは園内に敵を誘い込んでの遭遇戦…とはいえ、出入口の無条件開放はさすがに無い。ガバガバセキュリティは許されないのだ。
3方向の出入口から好き勝手に侵入されればそれだけ園内での遭遇戦も後手に回る、誘い込むにしても下地が出来てからが好ましい。
『南正門は黒森峰とプラウダにお願いします』
まぁ一番敵が来る可能性が高いのはここだろうし、重戦車で固めるのは当然か。
『また黒森峰と…』
『なによちびっ子、面倒見るのはこっちなんだから』
まーたこの二人がバチバチしてる…。お互い勝ち気な性格に売り言葉に買い言葉が飛び交ってのバーゲンセールが開催中だ、殺伐としてんなぁ…。
「…連携とか大丈夫なんですか?」
確認の意味を込めて姉住さんに念を押してみる。結局先の高地ではカール自走臼砲の一撃のせいで有耶無耶してたが、そもそも黒森峰とプラウダは去年の戦車道大会から因縁深いものがある。
この二人…お互い相手に合わせられんのか?
『問題無い、エリカもカチューシャも試合の中で実力を見せる事ができる』
『ですって、ちゃんと私に合わせなさいよ、エレオノーラ?』
『誰よそれ!そっちが合わせなさいよね』
…いや、マジ大丈夫かこの二人。あとカチューシャさんが教えてくれたが一般大洗生徒Eさんの名前はエレオノーラらしい。
『東通用門はダージリンさん達聖グロリアーナに』
『心得ましたわ』
東通用門は聖グロリアーナ、チャーチルやマチルダといった防衛向きの戦車で固めるつもりなのだろう。
さて、残る西裏門は…やはりサンダースが無難な所か?今後の立ち回りを考えたら残しておきたい戦力ではあるが。
『西住さん』
『西さん?』
ふと西から西住宛に通信が入ったようだ。
『先の戦いでは我が部隊が戦列を離れてしまい、申し訳ありませんでした』
それな、マジそれ。独断専行の単独突撃は部隊が部隊なら軍法会議ものではある。
『いえ、そんな…』
そんな謝罪程度で許されると思ってんの?とか暗黒西住殿ならその言葉から続きそうだが、生憎とうちの隊長はそこまで強くは言えない。まぁ…良いところでもあり、悪いところでもある。
『この地での戦いこそ、我々知波単の魂を…』
と、そこで西は言葉を区切った。一瞬の間は彼女の中の心境の変化を物語るようで。
『いえ、大洗の為に今我々にできる戦いにて先ほどの面目を果たそうと思います!!』
その戦い方が突撃一辺倒ではない事を祈りたいものだが…今は彼女の心境の変化を信じよう、それに頼りになりそうな後輩もいる事だし。
『…わかりました。では西裏門の防衛は知波単学園の皆さんにお願いします』
『!!、その大任…必ずや果たしてみせます!!』
その思いは西住にも伝わったのか、知波単学園に西裏門の防衛を任せるようだ。黒森峰、プラウダ、聖グロリアーナと名だたる強豪校と対等に。
『サンダースの皆さんと動ける車輌は待機し、状況を見ましょう』
『OKよ』
メンテナンスが必要な戦車は中央広場で自動車部が随時メンテナンス中、試合中にこれができる自動車部マジパねぇ…。
サンダースを筆頭に残りは遊撃隊として、状況に応じて3方向の出入口のどれかの防衛に加わる…こちらの迎撃準備は整った。
「…ん?俺らはどうすんの?待機組でいいのか?」
イージーエイトもメンテナンスが必要な程ではない、具体的な指示がないという事はサンダースと同じく、遊撃隊に加わればいいのか。
『キツネさんチームは…八幡君に任せようかなって』
「丸投げかよ…」
まさかここにきて見捨てられるとは…。
『えぇ!?あの、ううん…そうじゃなくて、八幡君には自由に動いて貰いたいな。ここって決めちゃうとそこから動けなくなると思うし』
「あぁ、任せろ…どこにも所属出来ないのは元ぼっちとしても得意分野だからな」
『そういう意味で言ったんじゃないんだけど…』
しかしこれで自由に動ける免罪符が頂けたのはありがたい。
「とはいえ、おおまかにどこ行くかは決めとかないとな…」
『え?なになに?比企谷余ってんの』
『なら中央広場でメンテナンスを手伝ってくれない?今なら戦車のメンテ仕放題だよ』
はいここで自動車部からの緊急入電、なんと今中央広場へ向かえば地獄のメンテナンス祭りが開催中との事で君も祭りに参加しないかと。
「…中央広場以外でな」
「…そうね」
「あはは…」
苦笑いで返すカルパッチョも否定しない、コクリと頷くクラーラに「うへー」と露骨に嫌そうな顔を見せたローズヒップ。
我々キツネチームの意見は一致団結して中央広場は無いと結論づけた。
大洗連合チーム23両VS大学選抜チーム24両。