劇場版でも、やはり俺の戦車道は間違っている。 作:ボッチボール
しかし書きたくても書けなかった試合の描写が多い…、観客席から見るのと試合させるのとではこうも違うのか…。
その機会はすぐにやってきた。
「…え?Ⅳ号、磯崎神社に入ってったんですか?」
『そうよ!発砲禁止エリアに逃げられたわ!!』
『我々も現在追跡を続けています』
クルセイダーからT-34へ戦車を乗り換え、一度戦線を離脱した俺達だがプラウダ本隊はもちろんそのままⅣ号を追撃している。
そのⅣ号だが、大洗磯崎神社に逃げ込んだらしい。この試合においての大洗アウトレットと同じく、発砲が禁止されているエリアだ。
境内でのドンパチはさすがにNG、これでは追いかけるプラウダ側もⅣ号に手は出せない。
困った時は神頼みとは良く言うが、本当に物理的に神頼みする奴があるか!!やっぱりあの娘、戦車道ではガチなんだよなぁ…。
「なるほど、なら俺達も向かうか」
「今行ってもⅣ号には手が出せませんが」
クラーラが疑問の声をあげる。そりゃさっきまで『絶好の機会』が来るまで潜伏する、なんて言った奴が手の平を返したのだ、その疑問は当然だろう。
だが、今が正にⅣ号を仕留める絶好の機会といえるのだ。
「カチューシャさん、発砲禁止エリアって“エリア内での砲撃”は禁止なんですよね?」
『当たり前じゃない!だから私達も手が出せないんだから!!』
確認の為、カチューシャさんに聞いてみると少しイライラした返答が返ってきた、まぁ名前通りの事を聞かれたらそうもなるだろう。
「…じゃ、エリア外からエリア内への砲撃はありって事じゃありません?」
禁止されているのがエリア内での砲撃なら、発砲禁止エリアに入らずに外から砲撃をぶちこめば良い。
これならエリア内の相手は砲撃が出来ず、外から一方的に砲撃を撃てる。勝ったな、がはは!!
『………』
無線越しに無言の圧力というか、ドン引く雰囲気が伝わってきた…。
『…比企谷さん、この場所は神社ですが、それで良いんですか?』
「…小町の合格祈願もお願いしましたし、止めときます」
あぁ…うん、そうね。これで神様の機嫌を損ねて小町が大洗に合格出来なかったら目も当てられない。
受験勉強に神頼みと聞くと疑問を持たれそうだが選択問題が出てくる以上、運に左右される事もあるだろう。
そもそも神社の中を戦車で突入して良いのか?という問題が出てくるんだけどね…本当に頼んますよ?
「ん?てか磯崎神社ならⅣ号にもう逃げ場ないんじゃないですか?」
磯崎神社への突入ルートといえば頑張って坂道を昇るか頑張って石段を登るかの2つだ。石段の方は前回、俺と西住が使った腰を砕けさせる91段の例のあれだ、戦車が登るには無理がある。
となれば当然坂道のルートから入ったはず、その唯一の出入口を固めてしまえばⅣ号の逃げ場はなくなるだろう。
発砲禁止エリアだから戦闘は禁止?だから禁止されているのは“発砲”だ、文面のどこにも戦闘禁止とは書かれていない。
禁止されているのが発砲だけなら他にやりようはいろいろある、よーし、やっぱり八幡も向かっちゃうぞー!!
『バッカじゃないの!ミホーシャ無理しちゃって!!』
と、そこでカチューシャさんが声があげる、え?西住がどうしたって?
「…なんかあったんですか?」
『Ⅳ号が石段を降りていきます』
…戦車で?あの急な石段を降りてんの?
「…無茶しやがって」
いや、冷泉の運転テクを考えたらあながち無茶とも言えないかもしれないが、西住の無茶振りも無茶振りだがそれに答える冷泉も冷泉だ。天才に天才を与えた結果がこれだよ!!
『戻って回り込みますか?』
そうなると坂道を戻る事になる、Ⅳ号を見失う事にもなるが…こればっかりは仕方ないか。
『このまま進むに決まってるじゃない!!』
「…大丈夫なんですか?」
このままⅣ号を追撃するとなるとカチューシャさん達もあの急な石段を下る事になるんですが…。
『知らないなら教えてあげるわ、ミホーシャにできる事はカチューシャにだってできるのよ!!』
「知っています」
無線から返ってくる自信満々のカチューシャさんの言葉にクラーラは満足そうに微笑みながら答えた。
きっと…こういう所が強く人を惹き付けるのだろう、ノンナさんやクラーラが彼女を慕う魅力と言えるのか。
『こちらチャーチル、よろしいかしら?』
「ダージリンさん?」
ダージリンさんからの無線だ、何かあったんだろうか?
『悲観主義者はすべての好機の中に困難をみつけるが、楽観主義者はすべての困難の中に好機を見いだす、という言葉があるわ』
「…はい?」
本当に何かあったんだろう(確信)。
『えと、その…大洗車両に見つかっちゃいました』
「まぁ、そうだよな…」
本当になんで見つかっちゃったんですかねー不思議ですねー。のんきに外でお茶とか飲んでる時点で正直時間の問題かなと。
「となれば当然、Ⅳ号も合流にかかるだろうな…」
フラッグ車を追いかけている状況が一変、今度はこちらが追いかけられる立場になる。
『逆にチャンスじゃない、ダージリン!頼れる同士の前に誘き寄せちゃいなさい』
『わかりました』
『頼れますか?』
アッサムさんの少し呆れた声が聞こえてくるがカチューシャさんの方は自信満々だ。
大洗の車両に追われながらも海岸へと逃げるチャーチル、こういう悪路での走行の強さは流石というべきか。
『では、お願いするわね』
チャーチルが通り過ぎたその瞬間、海の中から1両の戦車が進軍を開始した。
『出番よかーべーたん!蹂躙したげなさい!!』
試合序盤に俺の頼みを聞いて街中を砲撃してくれたKV-2だが、その後どこに行っていたというとこれだ。
ようするに『ずっと海底でスタンバってました』である。この命令をカチューシャさんから聞かされたニーナとアリーナの悲痛な表情は語る必要もないだろう。
いや、本当に出番があって良かったね…。最悪海底でスタンバイしたまま出番なく試合終了してた可能性もあった訳だし。
KV-2ギガント、街道上の怪物、その火力はこのエキシビションマッチでも最高火力の頼れる同士!!
だってほら、今まさにKV-2の放った砲撃が近くの建物に直撃して崩壊させていた。
KV-2は更に追撃、今度は大洗ホテルに直撃だ!…ホテルに泊まっている人は居ないと信じたいがチェックインしてる人達の荷物は…まぁ、ね?ほら…たぶん戦車道連盟がなんとかしてくれるんじゃない?
いずれにしろギガントの名に偽り無しの素晴らしい火力だ、この短時間で2つの建物を崩壊させている。
…ここまで言えばだいたいわかるとは思うんだけどね、戦車には当たってないって事なんだけど。
躍起になったのかKV-2は更に追撃しようと砲塔を旋回させる…あぁ!そんな角度で砲塔なんか回したら…。
足場も悪かった事もあり、KV-2はその場からひっくり返って倒れ込む、白旗もばっちり上がっていた。
…頼れる同士の姿か?これが?
「…あの、カチューシャさん」
『かぁっこいい…』
駄目だこの子、建物ぶっ壊した迫力に魅力されてる…。今ひっくり返っているのがそのかーべーたんなんですよー?
しっかし一つの試合…。しかも公式でもないのにこの被害とか、後で修復するにせよやはり戦車道は予算の使い方がぶっ飛んでいる、維持費やら経費削減の為の学園艦解体とはなんだったのか?
「…KV-2、やられましたけど」
…果たしてあれをやられたと言っていいのかは疑問ではあるが、これ以上とやかく言うのも頑張って海底に潜り続けていたニーナやアリーナが可哀想に思えてくるし。
『問題ないわ、だって』
砲撃の直撃にアリクイチームの三式中戦車が吹っ飛んでいく。
「このカチューシャが来たんだから!!」
チャーチルが海岸から階段を上がり再び大洗の道路へ、それを追おうと率先して階段を上がろとしたルノーをノンナさんが砲撃で仕留める。
「どうやら決着がついたようね」
ダージリンさんのチャーチルはそのままカチューシャさんやノンナさんのプラウダ組と合流、上から海岸にいる西住達を見下ろした。
ここまでお互い、かなりの戦力を減らしている。今ここにいる戦力が互いの全総力と言えるだろう。
こちらはダージリンさんのチャーチル、ノンナさんのIS-2、カチューシャさんのT-34の三両。
それに対し向こうはⅣ号戦車、ヘッツァー、八九式、九五式。うぬら…四人か…!!
数でこそ差があるが単純戦力ならこちらがずっと上だ、そりゃカチューシャさんが勝ち誇るのも頷ける。
「どうする?謝ったらここでやめてあげても…」
カチューシャさんの口上を遮るようにⅣ号は急発進して階段を駆け上がり、三両の前に。
…そうだよな、これくらいで素直に諦めるような奴じゃないよな。
『ちょっと!侵入許しちゃったじゃない!!』
『あら、てっきりあなたが撃つものかと』
『私もです、すいませんカチューシャ』
うーん、やはり獲物を前に舌なめずりはよくないな。流石軍曹の教えだぜ、コッペパン要求しそう。
…となれば西住の狙いは当然、チャーチルに貼り付く事だろう、これならカチューシャさんもノンナさんも同士討ちの可能性が出て迂闊に手が出せなくなる。
チャーチルとⅣ号はお互い接近戦とも言える距離で移動しながら砲撃を撃ち合い、その周りをIS-2とT-34が並走しつつ、Ⅳ号撃破の機会を伺っている。
このまま移動しながらの撃ち合いを続ける4両が向かうその先にある建物は一つ。
大洗水族館、アクアワールド。
「来るぞ」
「わかっています」
俺があんこうチームに不意打ちをかます為に潜伏場所に選んだ場所だ。
ダージリンさん、カチューシャさん、ノンナさんの三人との攻防となればさすがの西住も手一杯だろう。
一番嫌な場面で一番嫌な事。まぁ言われても仕方ないだろうが、この機会は逃さない。
『マックス』
『ハチューシャ』
『比企谷さん』
あんこうチームを誘い出し、ここまで協力してくれた三人に感謝しつつ、その瞬間が訪れる。
あんこうチームにとっては出会い頭だろうが、こっちの準備は万全だ。
ふと、西住と目が合った…気がした。彼女が俺に気付いたのか、そもそも撃破を偽装した事にさえ気付いていたのか、それはわからない。
だが、どっちにしろ、もう遅いーーー。
「撃ーーー」
その瞬間、意識が飛んだ。
というか身体が飛んだ。
なんだったら戦車が飛んでいた。飛ぶというか、物理的に吹っ飛んでいたんだろうが。
自分の乗っていた戦車が白旗を上げたのがすぐにわかった。え?このタイミングで砲撃喰らったの?
Ⅳ号じゃない。あんこうチームにそんな余裕は無かったし、砲塔も当然こちらを向いていない。
なら…あ!!
少し離れた所で硝煙を上げている戦車は…生徒会のヘッツァー?
いや、砲塔の角度的に当たるとは思えないんだけど…他に候補はないし、間違いなくヘッツァーにやられたのだろう。
…会長か。まーたあの人にやられたのかよ、俺。
ヘッツァーのキューポラが開き、そこから顔を出したのはーーー。
「や…やった、ははは初撃破だよ!柚子ちゃん!!」
「桃ちゃん、嬉しいのはわかるけどまだ試合中だよ…」
「おー、かーしまやったじゃん」
……………………………………………………………………………………は?