うずまきナルトの双子の、姉か妹かは些細な話ではあるが、片割れはひどくそつが無かった。
大抵の人間には打ち解け、穏やかで優しい。勉強も体術も、それこそそつなくこなしてしまう。うずまきナルトは、そんな片割れを大事にしていた。
彼女と自分はずっと一緒で、火影になったその時は一緒に里で生きるのだと。

探さないでください、逝ってきます。

そんな書き置きを見つけるまで話であったが。


ナルトの双子の妹と、その周りの視点でオニムバスで書いていきます。のんびり投稿になります。

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イルカの言うことには

探さないでください、逝ってきます。

 

 

不穏な置き手紙が机の上に置かれているのを見つけたのは、いなくなった当人の双子の片割れだった。

 

 

「イルカ先生!イナのやつ、どっかに行っちまったってばよ!」

 

そんなことを叫んで学校に駆け込んできたのは、海野イルカにとって思い出深い生徒であるうずまきナルトだった。

 

うずまきナルトの双子の、ナルト曰く妹であるうずまきイナは温和な少女であったとイルカは記憶している。

里から爪弾きにされ、二人ぼっちの彼らはひどく仲が良かった。少なくとも、イルカが見かけるときは大抵二人であったように思う。

そうはいっても、外で活発に動くことを好むナルトと、室内で本などを読むのを好んでいたイナとでは趣味はあまり合わないようであったが。

それでも二人は仲が良かった。

 

「イナ、ここわかんねえよ。」

「ナルト、そこは・・・・・」

 

その日、ナルトが宿題を忘れたと言うことで居残りを二人はしていた。イナは毎回宿題をこなすが、ナルトはどうしてもわからないらしくうんうんとうなっていた。

イナは別段気にしたふうもなく、根気強くナルトに勉強を教えていた。

特筆すべき点があるかというと悩んでしまう。

ナルトと同じ金の髪に青い瞳。チャクラ量は多いが、ナルトほどではない。

温厚で、物静かで、いつも穏やかに微笑んでいる。そんな少女だった。

けれど、いつの頃から、いや、あれは二人が下忍になってからだろうか。スリーマンセルを組ませるには数があまり、かつ、色々と問題のあるうずまき姉弟は一緒の組みになることは決まっていた。

4人組になり、そうして、実際の任務をこなすようになってから開きは出てきたようだった。

元より、大人びていたイナは、どんどん成長していく他の3人に遅れ気味であったようにイルカは思う。

成長が早い故に伸び悩んでいた。そのせいか、イナは他の3人から一歩下がった場所にいた。

春野さくらと交友を持つわけでもなく、うちはサスケを競い合うこともなく、うずまきナルトを母のように見守り続けていた。

元より、双子の弟であるナルト以外に特別な交友を持たない子どもであった。心配されるほど距離を置くこともなければ、さりとて友人と言える何かを持つほど繋がりもなく。

イルカはそんな彼女が心配であった。他人と距離を置く性質であったが、イルカの前ではある程度肩の力を抜く子どもだった。

何かを言ってやりたかったけれど、何を言えば良いのかもわからなかった。

心配ではあるけれど、心配であると口に出せなかった。

はたけカカシもいつかにイルカを訪ねてきたことがあった。その少女はどんな人であるのかと。

イルカは、それに、何と応えただろうか。ただ、優しい子であると答えただけだった。

3人がそれぞれの師匠といえる存在にあってもそれは変わらなかった。大蛇丸はもちろん、ナルトと共に自来也に師事することもない。

彼女は、里に残り、春野さくらと共に綱手姫に従事していた。

彼女は、綱手から医療忍術と彼女の母方のうずまき家の封印術について学んだそうだ。

 

(だが・・・・・・)

 

イナが綱手姫と師弟関係といえる何かを持てていたのか。それは、はっきり言ってわからない。表向きはそうだとしても。

 

(そんなふうに、見えたことはなかった。)

 

いつだって、彼女は一人であるように見えた。少なくとも、イルカにとっては。

 

 

「先生、どうしよう!?」

 

明らかに慌てているナルトにイルカは正気に戻る。

 

「おちつけ!何があったんだ!?」

「勉強でわかんないことがあってさ!そんで、イナに教えてもらおうと思って、部屋に行ったらこの紙が!」

 

ナルトはそう言って、イルカに持っていた紙を差し出した。それに、イルカはどれどれと視線を滑らせた。

 

ナルトへ

今までたくさんごたごたしており、休みは全くなかったのか疲れました。

そのため、暇を取らせていただきたいと思います。

探さないでください、逝ってきます。

 

 

 

イルカはそれに顔を青くさせた。それは、言っては何だが、見ようによっては遺書のようだった。

 

 

 

ほかほかの風呂上がり。

ある程度、熱の籠った体にイナは目の前のジョッキを取った。キンキンに冷えたジュースを飲み干した。

「あー、おいしい。」

イナはそう言って、ごろんとその場に寝転んだ。彼女がいるのは、とある温泉町の、温泉宿であった。

そこで風呂上がりの食事に舌鼓を打っていた。おそらくこういったときはビールだとかが良いのだろうが、年齢的にジュースになっている。

(お酒、おいしくないしなあ。)

ふうと、息を吐き、イナはちらりと窓から顔を出した。温泉街として有名な町のため、なかなかに賑わっている。

イナはゆるっと笑って、勢いよく後ろに倒れ込んだ。

「ひっさしぶりの休暇だあ!」

 

 

 

うずまきイナにとって、双子の弟は救いであったように思う。

お察しの通りの生育環境で、それでもたった一人の味方である弟を愛おしく思わずにはいられなかった。

イナは大抵のことはそつなくこなすことが出来た。

勉強も、手裏剣当ても、大抵のことはそつなくこなすことが出来た。けれど、ナルトは違った。大抵のことがひどく不器用で、特にチャクラの使い方が不器用だった。

それでも、イナは特別ナルトのことを嫌いになるだとか、厭うこともなかった。

たった一人の味方だったのだ。だから、イナはどれだけナルトの勉強に付き合うことになろうと、どうだってよかった。

イナは、なんとなく。

木の葉の里で、本当に信じて良いのはナルトしかいないと理解していた。

 

(・・・・どれだけ優秀な成績でも、周りの人間の眼は、変わらなかった。)

 

海野イルカと、火影を別にして、大抵の人間の眼の中には蔑みがあった。

嫌な者を見る眼をする大人に、それに習う子どもたち。

それならば、それでよかった。イナは目立たない程度の実力で大人になって、ナルトと生きていければそれでよかった。

元より、里の、よくわからない蔑みと戦うこと自体が面倒だった。

けれど、ナルトはそうは思わなかった。火影になる、そんな夢を抱えていた。

無理だろうと思った。何をしても無駄だろうとイナは知っていた。

何の理由かは知らないが、自分たちをこれほどまでに厭う大人たちが、認めるはずがない。何より、ナルトのような実力でそんなことを願っても無駄だろう。

理解はしていたけれど。

 

応援してくれるよな!?

 

たった一人の家族が、まるで太陽みたいに笑うのだ。だから、イナはそれに頷いた。

 

(君がそこまで願うのなら、あがき続けるというのなら。)

 

ナルトを火影にすること、それはイナの夢だった。

勉強も、修行も、ナルトに付き合った。彼が悲しめば慰めた、彼が苦しむときは共にいた。

特別な熱意を持たないイナにとって、ナルトだけが全てだった。

 

(そんなことは、なかったけれど。)

 

スリーマンセル、とは自分たちは言えなかったけれど。

それからだろうか、狂ってしまったのは。

春野サクラについてはあまり気にしていなかった。恋する少女に横恋慕するナルトに苦笑していたけれど、本格的に喧嘩になる前に止めるだけで、放っておいた。

たぶん、その初恋は叶わないだろうなあと理解していたからだ。

うちはサスケだけは、なにもかもが違った。

それからたくさんのことがあったけれど、イナのすることは変わらなかった。

ナルトを助けること、弟の夢を応援すること。

そのためにたくさんの努力をして、そうして、最後の決戦にたどり着いた。

 

(・・・・・ここまでになるとは思わなかったんだよ。)

 

決戦が終わった後、ナルトが火影になるための手伝いを多くした。里の復興だとか、そう言った面にもかり出されるようになった。

そうして、そこそこ有能で、いつの間にやら積み上がった仕事をこなす内にイナの中で何かがきれた。

 

もうやだ。

 

ただ、その一言が爆発した。

そこから、イナは早かった。貯めに貯めた貯金と、そうして疲労の内に書き切った置き手紙を机に置き、そうして木の葉の里を飛び出したのだ。

 

「ナルトには手伝ってくれる人がたくさんいるし、私がいなくても大丈夫ですよね!」

 

イナはそう言って、るんるんでバカンスの計画を練り始める。

里での弟の絶叫など、知ることもなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

己の双子の片割れの片腕がなくなった。ずっと追い求め続けた存在との決着になくしてしまったそれに、彼は満足しているようだった。

そうして、倒れ込んだ因縁のうちはの青年と交わった血を見ていると、そこには自分にはない繋がりがあるように見えた。

桜色の髪の少女が泣いている。うちはの彼は謝って。

全ては、全ての因縁は悉くそれで終わったのだと思った。

数千年に及ぶ、兄弟の因縁だとか世界だとか、憎しみだとか、そういったものが悉く、決着がついたらしい。

それに、自分は微笑んだ。

安堵ではない、よかったという喜びでもない、古い昔なじみの帰還でも、さりとて悲劇の終わるにでもない。

ただ、己にとって運命は、運命ではなかったし。

所詮、自分は蚊帳の外でしかないという事実への嘲笑でしかなかったのだ。

 

 

 


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