転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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髑髏の火炎竜様から挿絵をご提供頂きました!!
これ……わかりますか?
またしても、本作オリジナル要素の場面なんですよ!

ガンダーとウインダムの激闘をサプライズで投げられた私の気持ち分かりますか? 低体温症でもないのに、心拍数バグりそうになりました。
特に00のバックルにチブルワッペン付けるとかいう発想は作者全く考えてなかったので、完全に斜め上行かれてしまいましたね……

どちらも該当話に挿入致しました。ありがとうございます!

なんか今週一気に評価数増えたし、一体何が起こったんや……と思いましたが、皆さんのガッツ編への注目度を改めて認識しましたよ……







セブン抹殺計画 第三段階

「そぉかぁ! 昨日からのイタズラは、きっと奴らの仕業だったんだ! なぁ!? そうだろ?」

 

何やら難しげな顔で押し黙っていたフルハシが、唐突に顔を上げると、掌をポンと打った。

昨晩から抱えていたモヤモヤが解消され、ようやくスッキリ出来たからだ。

 

まさしく天啓の如き名案! 早速この素晴らしい名推理を仲間達と共有して、言い知れぬ不安感を解消してやらねば。フルハシは作戦室中に響き渡る大声で持論をぶった。

……だというのに。

 

誰も彼の言葉に返事をしようとはせず、ただ気まずげに視線を逸らすばかり。

 

はて、今のはかなり真に迫っている自信があったのだが……ははあ、みんな手許に集中して聞こえなかったんだな?

 

もう一度、念押ししようと口を開きかけたフルハシの隣で、ホークの損傷報告書を非常に苦々しい表情で捲っていたソガが、見かねたように顔をあげる。

 

彼は、注意深く周囲を見渡し、誰も彼もが自分達を遠巻きにして、見えないふり、聞こえないふりをしているのを見てとると、これまた嫌そうに、差し出された貧乏くじを引く事にした。

 

作戦室中の空気が、こう言っているのを聞いてしまったからだ。

お前が言え、……と。

 

「……せんぱぁい。そんな事はもう皆とっくに分かっとるんですよぉ……。問題なのは! いったい、奴らが何をしようとしているか、という事なんですよぉ! わかるぅ?」

「う、うん……」

 

最初は形式的にとは言え、ヒソヒソと辺りを憚るような声で、先輩隊員の名誉を守ってやろうという涙ぐましい努力が垣間見えたが……言っている内に、あまりの周回遅れ具合に腹が立ってきたのか、最後は完全に、出来の悪い生徒を叱る教師か親の様相を呈していた。

 

がっちりと広い肩幅を、シュンと縮こめて項垂れるフルハシと、しょうが無い人ですね……と、資料を見せながら苦笑するソガ。

 

そんな室内の一幕を、全く耳に入らない様子で聞き流しながら、ウロウロと考え事をしているのは……モロボシ・ダンだ。

 

(ソガ隊員がパトロールに出たときも異常はなかった。フルハシ、アマギ隊員が出ていったときも何ら変化はなかった……それなのに、アロンに襲われたのも、ガッツに狙われたのも、僕が出ていったときだった……だとすると、敵の狙いは僕だ。しかし、何のために僕を狙うんだ?)

 

ダンが思い悩む中、作戦室に通信が入る。

ホーク3号で偵察中のアマギとアンヌからだ。

 

「キリヤマだ」

「隊長、泉が丘上空1万メートル付近に、何か存在しているようです……」

「何か存在している?」

「レーダーでは捉えているんですが……なにも見えないんです!」

「よし、さらにその付近のパトロールを続けろ」

「了解!」

 

―――――――――――――――

 

 

謎の物体が姿を現わしたとの報告を受けて、ダン、ソガの両隊員は泉が丘へ向かった。

ハンドルを握るソガの表情は、非常に険しい。

 

当たり前だ。彼はウインダムを救う事が出来なかったばかりか、ホーク1号まで損傷させてしまった。

銀色の戦友を救う事に拘った為、原作以上に不利な状況を作り出してしまったのだから。

 

そんな真剣な表情のソガへ、助手席のダンが遠慮がちに声をかける。

 

「あの……ソガ隊員……」

「なんだ?」

「止めて貰えませんか」

「なに!? 何か見つけたのか!?」

 

ソガの問いかけに、ダンは少しばかり躊躇うような様子を見せた後……しっかりと頷いた。

 

「……はい。少し気にかかる事があります」

「分かった! すぐに止める!」

 

慌てた様子のソガがブレーキを踏み、ポインターを路肩に寄せる。

ダムの上に作られた道は非常に狭いが、幸い後続車はいない。

泉が丘方面への道は現在、陸上戦力を展開する為に防衛軍によって緊急確保されているからだ。

 

「それで、何を見つけたんだ、ダン?」

「すみません、ソガ隊員……さっきのは……嘘です」

「な、なんだって!?」

 

座席から身を乗り出し、ダンに質問するソガは、その返答に目を見開いた。

完全に予想外の返事だったからだ。

 

「う、嘘ってお前……こんな非常事態に!?」

「はい、こんな時だからこそです。……こうでもしないと、ソガ隊員が話を聞いてくれそうにありませんでしたから」

「それにしたってお前なぁ……」

「お願いです。大事なお話があるんです!」

「……えっ? 大事な話って……」

 

非常に緊張した様子で、ごくりと唾を呑むソガ。

 

「……この間は、すみませんでした。ソガ隊員」

「……っへ?」

「僕はあの時、貴方に酷い事を言って、傷つけてしまった……ずっとその事について謝りたいと思っていたんですが、機会がなくて……」

「……? ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ! ……なんの話だ?」

「クレージーゴンの爆破準備中に、僕たちは言い争いになってしまったでしょう?」

「……は?」

 

ソガはしばらくポカンとした顔を晒していたが、ゆっくりと再起動を始めたらしい頭に、その時の光景が思い浮かんできたので、とてもとても微妙な表情をする事になる。

その記憶は彼にとって、一か月以上も前の出来事だったからだ。

 

「それ……一体何週間前の話だよ……てか、お互い謝っ……」

 

言いかけて、固まるソガ。

 

(……ってないわ。確かに)

 

正直なところ、この件に関して言えば、ソガの中ではとっくに『終わったもの』という認識だった。

なにせ、その後すぐにフルハシと互いの本音をぶつけ合った彼は、苦戦するセブンの窮地を救うために命懸けの突撃を敢行したし、その結果として脱出不可能となり、クレージーゴンと共に爆死する直前だったところを、セブンに救出して貰った。

そうした命がけの助け助けられを経て、ソガの中では些細な諍いなど、勝手に清算したような気分になっていたのである。

 

……だが、それはダンとセブンを同一視しているソガの視点においての一方的な納得であり、モロボシ・ダンの視点で言えば、その件に関して明確な謝罪の言葉を交わしていないという認識が完全に欠落してしまっていたが故のすれ違いであった。

 

ダンが長期入院していた事もあり、アロンに襲われた時のパトロールまで、ソガとダンが二人きりで出動する事も無く、個人的な会話をする機会を逸していた、という事に思い至ったソガ。

なにせダンが退院してからの数週間は、なんとかガッツ星人への対策が出来ないかと必死に駆けずり回っていたので、そんな事は頭の中からすっかり吹き飛んでしまっていたのだ。

 

(……って事は何か? この数週間、ずっとそんな事を気にしていたのか? ……ああ、確かにコイツなら在り得るな……)

 

「貴方は僕の為を思って言ってくれたのに……ごめんなさい、ソガ隊員」

「あの……その……それについては、俺の方が悪いから、謝られると居心地が悪いというかなんというか……」

「そんな事はありません! 熱くなってしまった僕が悪いんです!」

 

ダンの謝罪を受けたソガは、非常に困ったような、情けないような、なんとも言えない顔になってしまう。

さもありなん。自身の放ったしょうもない言葉と無配慮によって、彼のヒーローに頭を下げさせているというこの状況自体が、まさに穴があったら入りたいという程に、彼の羞恥心を刺激していた。

 

これが双方共に、同じ程度の認識から生じた齟齬であるなら、まだ救いはあったのだが……ソガは、モロボシ・ダンが、つまりウルトラセブンが一体どういう存在なのかという部分まで、自分でよくよく知っていたのにも関わらず、そこに踏み込んでしまったという認識があるからこそ余計に辛い。

あの場面で引くべきは確実にこちらであった。

 

なにせ……

 

(全宇宙を敵に回してでも、地球人の為にたった一人で戦うような頑固者が、オレなんかが止めた所で止まる訳ないわな……)

 

思えば最初から、ソガは彼のそういう部分に魅せられた者の一人であるのだから、ダンの持つ無限の博愛性と自己犠牲という部分を、否定できよう筈がなかったのである。

 

「あーすまん……お前には言ってなかったがな、あの後、俺の方でもこう……心境の変化というか、そういうのがあってだな……いや、思い出したというか……」

「え? なんです?」

 

ごにょごにょと尻すぼみに口ごもるソガに、ダンは首を傾げて続きを促す。

 

「俺達はさ、生まれも育ちも違うんだからさ、どう足掻いたって同じにはならんわけだ。立場も違えば、得意な事も、主義信条も異なる……例え生物学的には同じ地球人でも、その実、一人一人が別々の全く違う生き物なんだよ、俺達は」

「……ええ」

「まったく別の生き物が、全く同じ場所に立つ事なんか土台無理な話なのさ。そりゃ差異が限りなくゼロに近い漸近値で集まることが出来ても……決して100%にはならない。もしもそうなったら、それはただの同化だ。同化と相互理解は似て非なるものさ……だから……どれだけ言葉を重ねようが、俺達が真の意味で分かり合う事は決して無いんだ……」

「……」

「でもな……」

 

ソガはそこで言葉を切って、ダンの瞳を真正面から見据えてこう言った。

 

 

「同じ方向を向く事は出来る」

 

「……え?」

「どれだけ立ち位置が違っていても、東を向いてりゃ日の出を拝むことが出来る。別に富士山の上からでも、基地の中からカメラで見たって構わない。……さらに言ってしまうとだ。この時別にみんなでお日さん見てなくたっていい。朝日に照らされる皆の顔を写真に収めたっていいし、赤く染まる富士山の美しさを発見したっていいのさ。人それぞれに好みの方法で、その感動を分かち合う事だってできる……」

「……」

「つまりだ、大事なのは何か大きな目標の為に、それぞれが自分にできる事を探すのが肝要であって、同じ方向を向いてるうちは、その細かいやり方にいちいち横から口を出す権利は無いという訳さ。お前はお前のやり方で地球を救えばいいし、俺は俺のやり方でやる。それでいいじゃないか……それをすっかり忘れていたんだ」

「同じ方向を向く事は……出来る……いい言葉ですね」

 

ダンがしみじみと賞賛すると、ソガは気恥ずかし気に指で頬を書きながら白状した。

 

「……といっても、これ俺が考えたんじゃなくて……昔、友達が言ってた受け売りまんまなんだけどな」

「ご友人が?」

「ああ、お前と出会うずっと前に……それこそ、地球防衛なんて大それた話題じゃなくて、もっと下らない遊びの中で出た言葉だったけど……それでも俺は、感銘をうけたんだ……」

「なら……いいご友人をお持ちですね」

「お前の足元にも及ばんような奴らだったけどな」

 

もう、朧げにしか思い出せない者達の言葉を、ソガは反芻するかのようにもう一度繰り返した後、ダンに向き直って笑顔で告げる。

 

「だからさ、この前のは俺自身の主義主張に反する行いだったわけで……今はちっとも傷ついちゃいない訳。むしろ、これを思い出すきっかけをくれて感謝してるくらいだ。あの時は……個人的な事で苛々しててな、やっぱり俺も人間だからさ、調子の悪い時なんてあんなもんよ。だから許してくれっていったら……言い訳がましいか?」

「……いいえ、誰だってそうです。それを許さなかったら……僕は自分で自分を許す事が出来なくなってしまう」

「まったくチョロいなぁ……そんな調子で大丈夫か?」

「僕だって調子がいい時は、こんなもんですよ」

 

二人が朗らかに笑う。

くつくつと喉を鳴らしながらも、ソガの笑みはだんだん苦笑へと変わっていく。

 

「しっかし、なんったってこんな時に……今更だとは思わなかったのか?」

「そんな事はありません、やはりどんな事でも謝れるうちに謝っておくべきです。それも、相手が大切な人ならば特に」

 

なるほど、数ヵ月や数週間などは、彼にとって見れば『ついさっきの出来事』なのかもしれないなと、ソガが納得しかけたところへ、ダンは「それに……」と言葉を続けた。

 

「今度の敵……ガッツ星人と名乗る彼らは、今までの敵とはなにかが違う。いつにも増して、一筋縄ではいかないような……そんな気がするんです。胸騒ぎとでもいいますか」

「……ほう、俺もそれには同意見だ」

「やはりソガ隊員もですか……そんな難敵を前に、心につっかえを残したまま戦いを挑むのは、どうしても避けたかったんです。だから、申し訳ないとおもいつつも、僕の我儘に付き合ってもらう事に……ソガ隊員? どうしました?」

 

ダンが運転席を振り向くと、ソガは両手で顔を隠して、ハンドルに突っ伏してしまっていた。

まさしく痛恨の極みとでも言いたげな様子に、面食らうダン。

 

ハンドルと顔の隙間から、非常に弱々しく震えた、情けない声が漏れてくる。

 

「しまった……こんなタイミングで俺……フラグみたいな事言っちまったじゃん……なんて事言わせるんだよ、チキショウ……」

「……フラグ?」

「死亡フラグだよ! 死亡フラグ! どうしてくれんだ!」

「死亡フラグ……? なんだか前にも聞いた事があるような気がしますが……一体なんの事です?」

「えっ? あーそれはー……お前に貸した推理小説がいくつかあったろ?」

「ええ、まあ……捜査の参考にはなります……」

「その中でさ……『あっ、コイツ死ぬな』って分かる言動する登場人物がいるだろ? あれが死亡フラグだ。そして何も推理小説だけじゃない……戦記モノだってそうさ! 決戦前夜に、突然、聞いてもいないのに自分の人生観を語り出したり、いがみ合っていた者同士が和解したり……まさに今の俺達のようにな!」

 

非常に大げさな身振りで、一体何を言い出す事かと思えば……いつものソガ隊員の悪い癖が出てしまったようだ。

 

「でもそれは、作品の中だけでしょう?」

「いいや、そんな事はない。あれは使い古されてしまったから、そんな風に思うだけで、きっとリアルに則しているんだ! 殺人鬼からすれば、広間で互いに監視しあっている者達より、単独行動取った奴の方が殺しやすいし、戦場で未練がなくなるって事は、帰る理由がなくなるって事だ。それでなくとも、普段と違う心境で作業をすれば、ミスも起きるだろう。功に焦って突出したり、結婚に浮かれるなんて以ての外だ」

「はぁ……なんだかそう言われると……申し訳ない気がしてきました……」

「えっ? あっ違う違う。別にそこまで本気で言ってる訳ではなくて……!」

 

しまった。またしても不用意な言動で、ダンに不安感を抱かせてしまった。

自分で、戦闘における心境の些細な変化に言及しておいて、ガッツ戦を前になんて迂闊な事を……今まさに、彼らの頭上では不吉の旗が翻っているだろう。

慌ててソガは弁明に走る。

 

「安心しろ。どれだけ死亡フラグを重ねても、まったくピンピンしてる奴がいる」

「それは……?」

「主人公だ! 主人公はどれだけ不吉な言動をしても死ぬ事は無い! よく言うじゃないか、みんなが一人一人の人生の主人公ですって! だからダンは大丈夫だ!」

「主人公とは、物語において一人だけなのでは……? というかそれだと、ソガ隊員はどうなるんです?」

「……えッと……そう、実は効力が一段落ちるが、もう一つ無敵のポジションがある! それはな……主人公の相棒さ!」

「相棒ですか?」

「そう! さっき言った推理小説だって、ホームズとワトソンは無敵のコンビだ! な? 俺がホームズで、お前がワトソン! これなら安心だ」

「……え? 僕がワトソン博士なんですか? もう少し活躍させてくださいよ」

「何言ってるんだ! ワトソンめちゃくちゃ活躍してるだろ!? ちゃんと読め! というかお前みたいなお人好しが出来る役は、ワトソン以外無いね!」

「ええ……」

「完璧超人のホームズ役は、俺みたいに、なんでもできるナイスガイにこそ相応しいと思うだろ? 射撃も一流! 捜査も一流! ほら、やっぱりホームズだ」

「ハハハ」

 

彼の冗談がツボに入ったのか、腹を抱えるダン。

そんな彼の瞳だけが、僅かに失笑する。

そのまま冗談めかして、その実、かなり真剣にソガへもう一つ質問を投げかけた。

 

「名探偵のソガ隊員としては……今回の事件で何か気になる点はないんですか……?」

「気になる点か……実はある」

「へぇ……ガッツ星人の目的とか?」

「……いいや、そんな事より気になって仕方がない事があってな……」

 

ソガはそれを、少しの間、言おうか言うまいか逡巡していたようであった。

ダンは、彼がその常識外れの鋭さでもって、一体何に気付いたのか、まるで死刑宣告を受ける囚人の如き心境で彼の返事を待つ。

 

彼の疑問がもしも()()であったのならば……自分は一体、なんと答えてあげるべきなのか。

 

その覚悟を未だに決めかねていたダンは、どうかそれを口にしないでくれと願うと同時に……その実、彼の口からその質問が出てきて、彼らに対する唯一の、そして最大の不実に関して口を割らざるを得なくなる事を、どこか期待している自分が居る事を、確かに自覚した。

 

……でなければ、わざわざ自分から水を向けるような真似……なんと小賢しい。

 

だが、喜ばしい(残念な)事に、ソガの口が紡いだ疑問は、全く別の事であった。

 

「ウインダムは死んでしまったのだろうか?」

「……えッ?」

 

身構えていた所とは別に、がら空きの場所へ不意打ちが決まったため、ダンは非常に間抜けな声を返す事になってしまった。

 

「今まで、彼らは光になって何処かへ消えて行ったが……今回はガッツに眉間を撃ち抜かれて爆散した。つまり……あれはどう見ても死んだんだ。隊長やフルハシ隊員だって、ハッキリと、『ウインダムを倒した恐るべき敵』だと言っていた……でもな? ウインダムは……見るからにロボットだ。いつか、ユートがボーグ星人に脳天をかち割られた事があったが……バックアップで復活出来た。だったら……ウインダムも実はバックアップがあって……死んだわけじゃないんじゃないかと、そういう希望がさ……どうしても手放せないんだよ」

「……なるほど」

「ダンは……どう思う?」

「……」

 

ダンは腕を組んで、しばし考えこんだ。

それは傍目には、想像力を働かせて、よく知りもしない不思議な怪獣達の生態を妄想しているように見えたが……ソガの目には、ハッキリと別の心情が見て取れた。

 

「……これは、あくまで僕の()()でしかないんですが……」

「それでいい」

「彼は……死んではいない、と……思います」

「……そうか! ……やっぱり、そうか!!」

「しかし、かと言って、ユートのような完全にロボットかと言えばそれも違う。やはり彼も生命体としての一面を持っていて……あれほどに酷い傷を……それこそ、自分の電子頭脳が丸ごと吹き飛んでしまった後に、もう一度その存在を元通りに作り直すのは……非常に長い時間を要するでしょう」

 

ダンがまるで釘をさすような事を言ってみても、ソガの笑顔は変わらない。とても晴れやかなものだった。

 

「それでもいいんだ! 死んでさえいなければ、どれだけ長い時間をかけても、いつか復活できるというならば……俺はそれでいい」

「……あくまで、そうなんじゃないかって……僕の勝手な推理ですよ? そんなに無邪気に信用していいんですか?」

「当り前さ! お前のカンはよく当たるからなぁ……ホームズは、ワトソンの言う事を一番信頼しているんだぜ?」

「彼の推理が当たってた事は少ないでしょうに……やっぱり僕もホームズがいいなぁ……」

「そういう事はな、もっと戦闘で活躍してから言うんだな。推理小説の山場は捜査だが、俺達の仕事においてはその後の戦闘が一番大事なんだから。フルハシ先輩やアマギみたいに華々しい戦果を立てられたら、ホームズに昇格してやるよ」

「ソガ隊員は?」

「キングジョーにトドメをくれてやったのは、一体誰が引き金を引いたからだと思うかね? ンン?」

「はいはい、おみそれしました……」

 

ここでふと、あの時敵を押さえていたのは僕だったんですよ。などと明かした時に……ソガ隊員は一体どんな顔をするのだろうかという疑問を、ダンはどうしても拭い去れなかった。

別に悔しいとかそういう感情は全く抜きにして、純粋に気になったのだ。

驚くのか、そんな筈は無いと否定するのか、それとも……やっぱりな、と言うのか。

 

そして……あの恐るべきガッツ星人と戦う前に、連携において最も大きな効果を発揮する手段があるというのに、それを採らないというのは、出し惜しみに当たるのではないかと……そんな考えが……

 

「あの……ソガ隊員。実はもうひとつ……」

 

その時、ポインターの無線に連絡が入る。

 

「こちらホーク3号! 敵の円盤を捕捉! これより交戦を開始します!」

「いかん! バカ話でほっこりしとる場合じゃなかった! 急ぐぞ!」

「……はい!」

 




前書きを書いて、今話を書いてる最中にもう一枚頂いてしまいました!


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ヤッタ―! 『牧場に還れ!』より、ミクラスの番狂わせですよ!
原作でめちゃめちゃいい仕事をしたミクラスに、どうしても勝ち星上げさせたかったんです……
ありがとうございます!

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